エースコンバットZERO4


合戦の日、サイファーはノスフェラトゥと共に空を飛んでいた。
最近は防衛線が続き、敵側の脅威にさらされていた
だが、ノスフェラトゥの特性であるADMMのお陰で、壊滅的な被害を受けることはなかった
その特殊兵装に気圧されたのか、敵側は少しずつ数が減ってきていた


「よし、もういいだろう。大活躍だったな、相棒」
ピクシーから無線が入り、サイファーは上機嫌になる

「まーな。やっぱ、ADMMはすげーわ」
機体の性能も文句ないものだったが、特に魅力的なのはその特殊兵装だ
他の、どれ程早い機体でも、この圧倒的な兵装はついていない
ノスフェラトゥには散々なことをされてきたサイファーだったが、こうして飛んでいると今までに受けた辱しめなんて気にならなくなっていった


あらかたの敵が引き上げたところで、サイファーは肩の力を抜く
「やーっと終わったか。連日の防衛線とか、勘弁してほしいもんだ」
やれやれと言ったように機体を反転させ、基地へ向かう
そうして、サイファーが感染に油断していたとき、耳をつんざくような音がどこからか聞こえてきた
とたんに、激しいミサイルアラートが鳴る

「何だ!?」
周囲を確認するが、ミサイルらしきものは見えない
その代わりに、遠くの方に何か光るものが見えた

「相棒、避けろ!」
ピクシーが叫んだときには、遠くにあったはずの光が一直線に向かってきていた
「っ!」
サイファーは反射的に機体を急上昇させ、その光を避けようとする
だが、光線は予想以上に早く、左翼がわずかにかすめてしまった

「しまった・・・!」
とたんに機体が揺れ、一気にバランスが崩れる
「相棒!」
冷静さを失った声が届く

「大丈夫だ、基地までは何とかいける!」
破損はしたものの、幸いにも飛べない状態ではなかった
それでも、少し油断すると墜落しかねなくて、その飛び方は危ういものだった


その後、サイファーは何とか基地に帰ることができた
着陸すると、すぐに機体から下りてその姿を確認する

「ノス・・・」
全体像を見ると、右の羽が焼け焦げ、破損してしまっている
思わず手を伸ばしそうになったが、駆け付けた修理工に阻まれた

「まだ高温になっているので危険です。後は、我々にお任せ下さい」
「あ、ああ・・・頼む」
そう言われて引き下がったが、サイファーは後ろ髪を引かれるような思いにかられていた




その日は、連日の戦闘で疲労感に勝てず眠ってしまった
だが、翌日から格納庫が気になって仕方がなくなっていた
自分が最後の最後で油断したせいで、負傷させてしまった
気を張り詰めていれば、完璧に回避できたかもしれないのに

そう思うと自分のふがいなさに苛立ち、また格納庫が気になるのだった
そんなとき、修理工から「暫く特殊兵装は使用できません」などと告げられたものだから、サイファーはとうとういてもたってもいられなくなった


そして、夜
サイファーは人目を忍んで、格納庫を訪れていた
修理中のはずの機体を探すが、すぐには見つからない
すでに、人の姿になり暗闇の中に紛れているのだろう

「ノス、いるんだろ」
闇に向かって、呼びかける
すると、少しの間が空いてから、堅い足音が聞こえてきた
音が近付くにつれ、相手の姿がだんだんと見えてくる

「ノス・・・」
ノスフェラトゥの姿を見て、サイファーは胸を撫で下ろす
だが、右肩の辺りを見てはっとする
そこには亀裂が入り、接合された痕が残っていた

『よく、のこのこと来られたものだな。事の原因を作ったお前が』
「う・・・」
サイファーは、何も言い返せなかった
ノスフェラトゥが負傷したのは自分のせいだと、自覚していたから

『どうやら、ADMMが使えなくなったようだな。お前のせいで』
ノスフェラトゥは、たたみかけるように言い放つ
「わ、悪かった・・・」
相手の口調から不機嫌な様子が伝わって来て、サイファーは気まずそうに謝った

『そんな薄っぺらい言葉で御機嫌がとれるとでも思ったか?
謝罪しに来たのなら、それなりの態度を示せ』
「態度って・・・」
言いかけたところで、脳裏に嫌な予感がよぎった


『まずは部屋へ連れて行け。醜態を他の奴に見られたくはないだろう?』
どうやら、嫌な予感は的中してしまったようだった
もはや、その命令を聞いただけで、予測ができる

「醜態って、お前な・・・!」
今までのことを思い出してしまい、頬にかっと熱が上る
今回も、何かよからぬことをするつもりなのだろうと、察しがついてしまった

そう感付いてしまったのに、部屋へ招くのは気が引ける
だが、肩の傷を見てしまうと、無下に断ることはできなかった
サイファーは複雑な表情をしたが、やがて諦めたように溜息を吐いた

「・・・わかったよ」
操縦士の了承の答えを聞き、ノスフェラトゥは企てがうまくいったと言わんばかりに口端を上げていた




自室へ着くと、サイファーは背後から襲われない内に厄介な訪問者と向き合った
「・・・で、どうすればいいんだ。土下座でもすればいいのかよ」
強がるように、ややぶっきらぼうに尋ねる

『そんなことで終わっては面白くない。俺が望むのは別の事だと、お前は感付いているはずだ』
鋭い視線に射抜かれ、背筋に悪寒が走る

『まずは、そこへ横になれ』
ノスフェラトゥは、部屋の奥にあるベッドを指差す
大人しく言うことを聞いてしまったら、もう逃れられなくなると本能的にそう感じたので、サイファーは躊躇った

『ほう、お前は床の方が好みなのか』
ノスフェラトゥが、一歩を踏み出す
このままでは、どちらにしろ襲われてしまう


「わ・・・わかったよ」
どうせ結果が同じなら、少しでも楽な方が良い
サイファーはきびすを返し、渋々ベッドに寝転がった
そのときの気分は、自ら死地へ向かうような感じと似ていた
操縦士が大人しく横になったのを見ると、ノスフェラトゥは少しも遠慮することなく、サイファーの上に覆い被さった

『従順にしていればいい。そうすれば、お前にも快感を与えてやる』
冷たい指に顎を取られ、視線を合わすよう強制される

「う・・・」
従順でいるなんて、癪に障ることでしかなかった
だが、鋭く、冷やかな眼差しを向けられると、まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまう
そんな瞳をずっと直視していることができなくて、つい視線を逸らしてしまう
その瞬間、ノスフェラトゥは身を下げ、サイファーが抵抗する間もなく唇を塞いでいた

「ん・・・!」
軽く重ね合わせる程度のものではなく、最初から深く口付けられ、思わず強く目を閉じる
これだけでも、心音が強くなってしまう
もちろん、この程度で終わるはずはなく、次に感じたのは柔いものに唇をなぞられる感触だった

「っ・・・」
身震いしてもおかしくないことをされているはずなのに、むしろ熱が上って来る
そうして触れられていると、言いなりになってはいけないと思う反面、いっそのこと口を開いてしまいとも思ってしまう
それは、ただ、強まった熱を吐き出すためなのだと信じたかった

意地になって口をつぐんでいても、唇を甘噛みされ、また弄られ、だんだんと体の中に熱が籠ってゆく
とうとう耐えきれなくなり、サイファーが口を開いて息をつく
ノスフェラトゥはそれを好機と言わんばかりに、再びそこへ覆い被さった


「はっ・・・」
満足に呼吸する間も与えられないまま塞がれ、吐息が漏れる
そして、すぐに、自分の中へ柔らかなものが入って来る感触がした

「んん・・・っ!」
自身の舌に、ノスフェラトゥのものが触れる
触れた瞬間、容赦なく絡め取られ、サイファーはくぐもった声を発した

優しく触れるなんて生易しいものではなく、欲望のままに蹂躙される
それは、まるで相手を昂らせようとしているような激しさだった
舌が動かされるたびに反応してしまう体に羞恥も加わって、サイファーからは少しずつ平静さが失われていった


このままでは、自分の体が取り返しのつかない状態になってしまう
そんな危機感を抱いても解放されるはずはなく、お互いの液は交わり続けていた

「っ、は・・・やめ・・・っ」
苦し紛れに訴えるが、ノスフェラトゥは聞く耳を持たなかった
それどころか、サイファーの頭に手を添え、決して逃れられないよう引き寄せた

「んん・・・っ、ぁ・・・」
吐息と共に、あられもない声が出そうになる
絡め取られる度に発される淫猥な液の音が、耳について仕方がない
心音は、いつの間にか制御出来ないくらい早くなっている
もはや、自分の体も静めることはできない状態になってしまっていた



相手の体に反応が表れたことがわかったのか、ノスフェラトゥはやっとサイファーを解放した
「は・・・っ」
ようやく満足に息を吐けたが、熱っぽい気分は少しもおさまらない
それは、ろくに呼吸ができなかった息苦しさのせいだけではないと自覚していた

『クク・・・お前は案外、感じやすいのだな』
息を荒げているサイファーを見て、ノスフェラトゥは口角を上げて笑う
サイファーは相手を睨んだが、今の状態では迫力も何もあったものではなかった

『反抗的な目だな。だが、いずれ抗う気など起こらなくなる』
ノスフェラトゥは、無機質な指でサイファーの顎をなぞる

「う・・・」
自分とはあまりに温度差がある指に、びくりと肩が震える
その手は首筋へと降りてゆき、胸部を通り過ぎて行く
そして、ついには胸部のさらに下まで伸ばされようとしていた

「なっ・・・何する気なんだよ!」
流石に黙っているわけにはいかず、相手を押し退けようと思わず右肩を押す


『ッ・・・』
とたんに、ノスフェラトゥはわずかに顔をしかめた
サイファーは、はっとして手を離す
相手が無機質な機体でも痛みを感じるのだと知り、そこに思いもよらぬ人間味を感じて動揺してしまった
そうして、隙をつくってはいけなかったのに
ノスフェラトゥはサイファーが怯んだのを見逃さず、手を下方へと進める

「ノ、ノスッ・・・!」
うろたえたときには、もう遅かった
冷たい手はすでにズボンへ侵入しており、そして、その中心へ触れていた

「あ・・・!」
入り込んできたものの温度差に驚き、思わず声が上がる
しかし、その声は温度差だけが原因で発されたものではなかった
最も、物を敏感に感じる箇所
そこを刺激され、サイファーの体は一気に熱くなった

『クク・・・』
サイファーの様子を嘲笑うかのように、ノスフェラトゥは妖しい笑みを浮かべる
とてつもない羞恥を感じ、サイファーはとっさに顔を背けた
その前に、相手を睨み、こんなことは止めろと言わなければならないはずなのに
サイファーがそうして手を跳ね退けないままでいると、ノスフェラトゥは掌で触れているものを包み込み、なだらかに愛撫し始めた

「う、あ・・・っ」
緩やかに撫でられるだけでも、体が反応してしまう
シーツを強く掴んで声を抑えようとしても、無駄なことだった
ノスフェラトゥの手が少しでも動くと、そこに感じる冷たさとは裏腹に体温が上がってくる
そして、だんだんと、下肢の衣服がきつくなる
それは、自分がノスフェラトゥの手によって確かに悦を与えられている証拠だった


『この布は邪魔だな。お前にとっても、煩わしいものだろう』
ノスフェラトゥは一旦手を離し、返答を聞かぬまま衣服に手をかける
ここが、抵抗する最後の機械だった
だが、サイファーは自分を襲う刺激から解放されたことにほっとしていて、相手を突き飛ばすことを忘れていた
その間に、ノスフェラトゥは圧迫から解放されたサイファーのものを掴んだ

「っ、あ・・・!」
再び襲ってきた刺激に、サイファーの声が上ずったものになる
何て声を出しているんだと自分でも思ったが、生理的な反応には抗えなかった
たぶん、今、自分の表情を見てしまったら恥ずかしくて死ねるかもしれない
大げさな例えだが、それ程情けない顔をしてしまっているだろう
その証拠に、さっきからノスフェラトゥの目は爛々と光り、高揚している様子がありありと感じられていた

『ククッ、やはり、こういった刺激を与えるとお前はいい顔をする。
すぐに終わらせてしまうのは惜しいな』
ノスフェラトゥは、掴んでいたものを離し、指先でやんわりとなぞる

「は・・・ぁ・・・」
達するには弱く、無視するには強い感覚を与えるような微妙な手つきで愛撫され、サイファーはわずかに呻く
刺激は弱くなっても、体が楽になったわけではない
いっそのこと、荒々しく触れて、そして解放させてほしいと思う
そう懇願することは、自分のプライドが揺らぐことだとわかっている
それでも、本能はそんな意に反してしまっていた


緩やかな手つきに焦らされていると、理性が侵されてゆく
無意識の内に、手が伸びる
躊躇うように伸ばされたその手は、気付けばノスフェラトゥの腕を掴んでいた

「ノス・・・!」
荒い息のさなか、その名を呼ぶ
発された言葉はそれだけだったが、自分が望んでいることを伝えるには十分だった
予想外の出来事に、ノスフェラトゥの表情に、一瞬だが変化が表れた

無理強いをしたこの行為で、まさか求められるとは思っていなかった
とたんに、昂揚感が湧き上がる
次の瞬間、ノスフェラトゥは反応しきっているサイファーのものを強く掴み、首筋に思い切り噛み付いていた

「いっ・・・!ぅ、ぁあっ―――!」
首筋の痛みが引き金になり、サイファーは羞恥も忘れて声を上げた
今までにない程の感覚に、全身が反応する
その声と同時に、熱が解放されていた
そうして、手に散布されたその熱を感じたとき、ノスフェラトゥの欲望は昇華されていた




声が途切れ、サイファーが少し落ち着いたところでノスフェラトゥは手と口を離す
首筋には血が滲み、赤い痕がはっきりと付いている
ノスフェラトゥが鮮血を軽く弄ると、サイファーはわずかに体を震わせた

何も、血を啜りたかった訳ではない
腕を掴まれた瞬間、本能的に噛み付いていた
所有の証を付け、自分のものにしてしまいたいと思った
気付けば、ノスフェラトゥはサイファーを絶対に他の奴には渡したくないという独占欲にかられていた
自覚したとたん、ノスフェラトゥはわずかに動揺したのか、体を起こした


「・・・なあ、ノス」
普通の声が出せるようになり、サイファーがノスフェラトゥを呼び止める
ノスフェラトゥは体を起こした体勢のまま、サイファーを見下ろした

「ノス、お前にとって・・・俺って、何なんだ?
ただの、欲求不満の道具か?・・・それとも・・・」
言葉の続きは出てこない
自分でも、どうしていきなりこんな事を尋ねてみたくなったのかわからなかった


ノスフェラトゥは、サイファーを見下げたまま黙っている
その間、なぜかサイファーは緊張していた
この相手から、甘い言葉なんて出てくるわけはない
それでも、道具ではないと言ってくれることに少なからず期待を抱いているのかもしれなかった

『・・・お前は、どうなんだ。ADMMが使えなくなった機体に利用価値はないと思っているのではないのか』
「え?」
逆に問われ、サイファーは一瞬呆ける
だが、馬鹿らしいことを聞くなと言うように、かすかに笑った

「そんなことねーよ。良い特殊兵装があったってだけで、タリズマンからお前をぶんどったりしない。
ADMMがなくたって、俺はきっとお前に乗ってた」
恥ずかしげもなく言えたのは、それが本心からの言葉だからだった
特殊兵装だけなら、他の機体でも良いものはある
それでもこの機体を選ぶのは、他に確固たる理由があるからだ

その理由をサイファーはうまく言葉にできなかったが、それは性能が良いということだけではないと感じていた
ノスフェラトゥは、サイファーにじっと視線を落としたまま、動かないでいる


「・・・次はお前が答える番だぞ。お前にとっての俺って、一体・・・」
そこまで言ったとたん、ノスフェラトゥが急に動き、サイファーに覆い被さる
そして、相手がそれ以上何も言わぬよう、開いたままの唇を塞いでいた

「ん・・・!」
突然の事に、サイファーは一瞬目を見開く
また蹂躙されるのかと思い、つい目を閉じる
だが、その口付けは、先にされたものとはまるで違った

相手を無理矢理昂らせようとするものではない
まるで、相手を慈しんでいるような、そんな感覚を覚える
開いたままの口に柔いものが入ってきたが、そこに欲望にかられた荒々しさはなかった

「ふ・・・ぁ」
舌が、ゆっくりと絡め取られる
その動作は、この相手からは考えられないような慈愛が込められている気がして、戸惑う
けれど、触れ合っているこの時が、不思議と心地良く感じられていて
サイファーは抵抗せず、そのままノスフェラトゥに身を任せていた




ノスフェラトゥがゆっくりと身を離し、サイファーは目を開こうとする
だが、その前に、頬にひんやりとしたものを感じた
その冷たさがまた心地良くて、サイファーはまだ目を閉じたままでいた
まるで、先の行為の熱を冷まそうとしているような労わりを感じる
そんな優しさの片鱗なんて、自分の勘違いかもしれなかったが
今は、勘違いでもいいから、そう思っていたかった

「ノス・・・」
無意識の内に、相手の名を呼ぶ
同時に、頬をそっと撫でられる感触がした
安心したのか、今頃疲労感がやってきて、サイファーはもう目を開けなかった




次にサイファーが目を開けたとき、もうノスフェラトゥはいなかった
それもそのはず、外はもう明るい
しばらくはぼんやりとしていたが、今日は出陣の日だと思い出し、サイファーは慌てて飛び起きた

そして、支度をしているとき、ふと気付いた
自分の首筋に、はっきりと赤い痕が残されていることに
それが、昨日のことが夢ではないのだと物語っていて、サイファーはとても痕を直視できなかった
とりあえず、今、うろたえている暇はないので、痕を絆創膏で隠し、部屋を出る
そうして格納庫へ向かう途中、タイミングの悪いことにピクシーと鉢合わせした

「お、相棒、今日は寝坊しなかったんだな」
「あ・・・ああ、まーな」
サイファーは、どこかぎこちなく答える

「・・・おい、その絆創膏、どうしたんだ?」
やはり気付かれ、サイファーの表情が硬くなる
まさか、正直に答えるわけにはいかない

「あ、ああ・・・こ、これな・・・・・・・
な、何か、すげー虫刺されができて、ひっ掻いたら血が出て・・・お、俺、先に行くわ!」
追求されてはかなり困ることになるので、サイファーは早足で格納庫へと向かう
この痕を意識するだけで、昨日のことを思い出して赤面してしまいそうだった




サイファーが格納庫へ入ったとき、目の前にあったのは漆黒ではなく、別の機体だった
「おい、これじゃなくて、ノスを出してくれ」
すぐ修理工にそう言うと、相手は目を丸くした

「ノスフェラトゥのことですか?ですが、あの機体は特殊兵装が・・・」
「でも、飛べんだろ?なら、俺はそいつに乗りたいんだ」
修理工は迷うように黙ったが、サイファーの真剣な表情を見ると、戸惑いつつも了承した


その後の手配は素早く、格納庫の奥から漆黒の機体が運ばれてくる
滑走路にスタンバイすると、サイファーはすぐに乗り込んだ
コックピットが閉じ、声が外へ聞こえないようになる

「約束通り来たぜ、ノス」
それは独り言のはずだったが、すぐに声が返ってくる

『当たり前だ。契約を違えたなら、昨日程度のことでは済ません』
返って来た反応に、サイファーは苦笑した
その間に、滑走路へ続くシャッターが開かれてゆく


どんな激戦区でも、この機体となら飛んでゆける
操縦桿を手にしたとき、サイファーは、そう確信していた

「行くぜ、ノス」
『ククッ・・・』
漆黒の機体が、空へと飛び立った




―後書き― 読んでいただきありがとうございました!
とうとう擬人化機体との発禁モノ・・・まさか、ここまで書けるとは思っていませんでした
今までは、ここまできたら連載は終わっていましたが
エスコン小説はまだ続いてゆくので、興味がある方は見ていただけるとありがたいです