エースコンバット、ソーグ×アークバード2


ソーグに、「寂しくなったら来い」と言われてからというもの、アークバードはほぼ毎日ソーグの元を訪れていた
ソーグは、いつまでたっても単調な受け答えしかできない相手の元に来ることをまだ疑問に思っていたが
アークバードは会話を弾ませることを望んでいるのではなく、ただ自分の話を聞いてほしいだけなのかもしれない

確かに、寡黙な相手でなければ、言葉が遮られ、自分の言いたいことをすべて言うことはできない
それだから、ソーグはうってつけの相手だったが、それ以前にアークバードはソーグ自体が好きだった
そして、今日も、アークバードはソーグの所へ行っていた



「そーぐ、今日もおはなししに来たよー!」
もはや所定地となっている木蔭へ、楽しそうに近付く
そこにはすでにソーグが待っていてくれたが、返答はなかった
いつもなら短い返事の一つが返ってくるのだけれど、今日は木を背にして座ったまま動かない

「そーぐ?」
どうしたのだろうと、前のほうに回り込んでみる
すると、返事がない理由がわかった
オーバーヒートしているわけではなく、ソーグは珍しく眠っていた

「そーぐー」
声をかけてみるが、やはり反応はない
これじゃあ話せないと不満に思ったアークバードは、肩を揺さぶって起こそうと手を伸ばす
けれど、その前に、ふと、ある考えが思い浮かんで、その手を引っ込めた

アークバードはふわりと浮かび、ソーグの目の前にゆっくりと降りる
そして顔の高さを合わせ、そっと近付いていった


「う・・・」
相手の気配を感じたのか、ソーグが薄らと目を開く
そのとき、目の前にあったのは、あまりに近い距離に居る相手だった

「っ―――!?」
反射的に、とっさに肩を押して相手を引き離す
目を閉じていたのはアークバードも同じだったので、驚いた様子でソーグから離れた

「あ、そーぐ、おはよー」
アークバードは、先の出来事などなかったかのように、いつもの調子で言った
「な・・・何、しようとして・・・」
寝覚めの突然すぎる出来事に、ソーグはまだ対応できないでいる

「えっとねー、えーさっと、そーぐとしたいことがあったの。だから・・・」
「・・・お前なっ!」
アークバードの言葉で、何をやらんとしていたか判別したソーグは、とたんに声を荒げた
その声に気圧され、アークバードの言葉が止まる

「いくら、その・・・やりたいことがあったとしても、寝込みに近付いて来るのは止めろ!
お前はこの暑いのにべたべたひっついてきて、少しは自粛ってやつを・・・」
動揺のあまりつい声を荒げ、浴びせるように言ってしまう
だが、今度は、ソーグの言葉が途中で止まった
気付いた時には、アークバードは目に涙を浮かべて、堪えるように服の裾を強く握っていたから

まるで幼子が泣き出したいのを堪えているように見えたが、そんなことを言っている場合ではない
アークバードはふわりと浮かび、普段からは考えられないような速さでソーグから離れて行った

「お、おいっ!」
引き留めようと声をかけるが、もはや相手は遠くに行ってしまった

アークバードが去った後、ソーグは無意識のうちに重々しい溜息をついていた
動揺して、つい言葉を強くしてしまった自分に呆れかえると同時に
ソーグは、罪悪感と後悔の年を覚えずにはいられなかった




次の日、ソーグはいつもの場所でアークバードを待っていた
幼い性格からして、昨日のことなど忘れ、いつものようにやって来るかもしれないとも思ったが
いつまで経っても、無邪気な声は聞こえてこなかった

その次の日も、また次の日もソーグはアークバードを待っていたが、一向にやって来る気配はなく
流石に心配になったソーグは、初めて自らアークバードを探しに行っていた


だが、あてがあるわけではなく、縦横無尽に飛び回り、ひたすら白い姿を探す
下手をすれば宇宙の彼方まで探すことになるかもしれないが、それでも構わないと思う
今、自分を動かしているのは罪悪感や後悔などではなく、もっと別の感情だと、ソーグは実感していた




辺りはあっという間に薄暗くなり、陽が沈もうとする
あまり暗くなっては探索がままならなくなり、今日は無理かもしれないと思ったとき
薄闇の中で目立つ、白い姿を見つけた
それが探していた相手だと判明した瞬間、すぐに近付いて行った

「・・・おい」
脅えさせないよう、少し控え目に声をかける
それでも驚かせてしまったのか、相手はびくりと肩を震わせ、振り向いた

「そーぐ・・・」
ようやく、アークバードを見つけることができ、ひとまずはほっとした
だが、そこにいつもの明るい表情はなく、どこかおどおどとしているようだった

「・・・もう、話すことがなくなったのか」
来なくなった訳を、遠まわしに問いかける
そんなことが理由ではないとわかっているのに


「ううん・・・だって、えーさっと、そーぐにきらわれちゃったから・・・
ごめんね、そーぐ・・・」
謝罪の言葉を聞いたとたん、自分の中のどこかの回路が痛んだ
謝るべきなのは、目の前にいる相手ではない

「・・・いや、謝るのは俺の方だ。脅えさせて、悪かった」
こんな言葉の一つや二つで、元の関係に戻れるとは思っていない
アークバードを見ると、やはりまだ遠慮するように距離を空けていた

普段なら、そうやって怯え、敬遠する相手は放っておくはずだった
けれど、今は、その相手を庇護したくなる
その怯えを解消できるのは自分しかないのだと気付くと、思わず距離を詰め、手を伸ばしていた
遠慮しているものの、ソーグの傍にいたいという気持ちはあるのか、アークバードは逃げなかった

「エーサット。・・・目を、閉じていろ」
初めて名前を呼ばれ、少し驚いたけれど
言われた通り、アークバードは目を閉じる

せめてもの詫びの印に、相手がしたかったことをしてやりたい
それは、ソーグにとって多大な羞恥心を伴う行為だったが
今は、庇護欲や、胸を温かくさせるような感情の方が強かった


それらの思いに背を押され、ソーグはアークバードの肩を掴み、屈んで高さを合わせる
お互いの吐息が感じられるほどの距離まで近付いたとき、わずかに躊躇ったが
もはや、自分の行動を止める要因はなく、そのまま唇をそっと重ねた

初めて感じる感触に、やはり戸惑いが生まれる
少しでも強く重ねたら、傷付けてしまいそうな柔さ
ふいに動悸を感じたソーグは、ものの数秒で身を離した
同時に、アークバードが目を開く


「そーぐ、今・・・」
事が終わるとどっと羞恥心が湧き上がってきたのか、ソーグはそっぽを向いている
アークバードは今の感触を確かめるように口元に手を当てると、ほんのりと頬を赤くして笑った
その頬笑みをちらと横目で見て、ソーグは安心していた

「そーぐ、すき、すきー、だいすきー!」
想いが溢れ、アークバードは思い切りソーグに飛び付く
そして、横を向いているソーグの前に回り込み
今度は自分から、愛しい相手と唇を重ねていた

ソーグは反射的にアークバードの肩に手をかけたが、もう跳ね退けはしなかった
その手は、アークバードの背にまわされる
ソーグは、このときやっと気付いた
自分も、エーサットのことを想っているのだと



満足したのか、アークバードが重ねていた箇所を離す
けれど、体は離さずに、ソーグに強く抱きついた
「そーぐ、もう、おこらない・・・?」
「・・・ああ」
ソーグも、アークバードの背に腕をまわしたまま答えた

「ずっと、いっしょにいてもいい?」
「・・・ああ」

「これから、もっといっぱいぎゅーってしたり、ちゅーしてもいい?」
「っ・・・・・・ああ」
それはもしかして、自分からべきことなのではないかとソーグは思ったが
今の自分にそんな度量はないので、ひとまず肯定の返事を返しておいた


「ありがと、そーぐ・・・だいすき!」
アークバードはソーグに擦り寄り、思い切り甘えた
ソーグは、そんな風に身を寄せてくる相手を受け入れ、柔らかい髪をそっと撫でた

最初は、ただ鬱陶しいと思っていたが、今は違う
その鬱陶しさは、ほとんど逆の感情に成り変わっていた
それは、ソーグが生まれて初めて覚えた、愛しさという感情だった




―後書き―
まさかのノマカプ二本立て、これもどれもあれも友人のイラストに触発されたのです(´Д`*)
さて、いよいよ就活が本格化してきたわけで・・・
この更新も日曜の夜、もしかしたらこれからは不定期更新になるやもしれませんがorz
余裕あるときを見計らって、溜め書きの分をUpし続けたいと思います