エースコンバットZERO8


(相棒・・・お前は、俺を落とした・・・)
「うぅ・・・っ、ピクシー・・・」
(俺は、まだ諦めていない・・・V2を・・・)
「ピクシー、駄目だ・・・行くなっ・・・!」
サイファーは叫び、勢いよく飛び起きた。
もう、かつて相棒だった男の声は聞こえない。

先日、タリズマンの助っ人としてレーザー兵器を搭載した敵機を落としたときから
過去の記憶がよみがえってしまい、よく夢を見るようになった。
片羽を、この手で撃ち落としたあの日の夢を。
今まで無理矢理封じ込めてきた過去が、呼び起こされてしまったのか。
夢は連日のように続き、サイファーはろくに眠れず精神的にまいってきていた。
そんな操縦士の変化を、いつも共に飛んでいる機体が察しないわけがなかった。

あくる日の夜。
サイファーは、今日もうなされていた。
「う、うう・・・ピクシー・・・っ!」
いつもなら、あるタイミングで飛び起きるところ。
だが、今日はその前に、肩を強く揺さぶられていた。
「っ、何だ・・・」
悪夢から呼び起こされ、目を開く。
そこには、闇に紛れるようにして、見慣れた機体が佇んでいた。


『呆けていないで、さっさと起きろ』
襟を引っ張られ、起き上がるよう促される。
ベッドに座ると、目の前の相手がはっきりと見えてきた。
「ノス・・・」
まだぼんやりとする眼を何とか開き、相手を見上げる。
もしかしたら、うなされているのを心配してくれたのだろうかと一瞬思ったが。
この機体に限って、それはないだろうとわかっていた。

『今、誰の名を呼んでいた』
「え?誰って・・・ピクシー・・・俺の、相棒だった奴だよ・・・」
サイファーが名を告げたその瞬間、ノスフェラトゥの目が鋭くなる。
本能的に身の危険を感じたが、覚醒したばかりで体がついていかなかった。
無機質な手に、腕を取られる。

『いい加減、過去を回顧することは止めろと言ったはずだ。死んだ奴の事など忘れろ』
「・・・そんな簡単に忘れられるわけねーだろ!
アイツは・・・俺にとってすげー大切な存在だったんだ!」
非情な言葉に、サイファーは声を荒げて反発する。
言い終わったとたん、ノスフェラトゥはサイファーの両肩を掴み、壁に体を押しつけていた。
思い切り背中をぶつけ、サイファーは顔をしかめる。


『いつまでも過ぎた事を・・・お前は案外女々しいところがあるようだな』
「うるせー!機体のお前に、俺の気持ちなんてわかんねーよ!」
サイファーはノスフェラトゥを押し退け、ベッドから下りようとする。
しかし、再び腕を取られ、瞬時に引き寄せられていた。
背中に、壁に似たひやりとしたものがぶつかる。

『それ程過去に執着するのなら、忘れさせてやろう』
「は!?何言って・・・」
サイファーが文句を言おうとしたが、言葉は途中で途切れた。
ノスフェラトゥはサイファーの顎を掴み、無理矢理自分の方を向かせる。
そして、言葉を言い終わらない内に、その箇所を塞いでいた。

「っ・・・!」
サイファーは、とっさに口を閉じようとする。
だが、それよりも早くノスフェラトゥは自身を相手の中へ進めていた。
「ぅ・・・」
すぐに、舌に触れられ、絡め取られる。
ノスフェラトゥは、相手の気を解す間もなく、思いのままに蹂躙し、
逃れようとするものを執拗に絡め、追い詰める。
それは、まるで昂らせることだけを目的としたような激しい口付けで
口の隙間から漏れる淫猥な液の音が、行為の激しさを物語っていた。

「は・・・っ・・・ぁ」
いつになったら解放されるのか、長い行為にサイファーの息が自ずと熱を帯びる。
液が混じり合うさなか、高まる体温を感じたノスフェラトゥの気分は高揚していた。
相手の息が荒くなろうが、容赦なく絡ませてゆく。
気が昂ってしまっては、相手の思うつぼだとサイファーはわかっていたが
生理的な反応は、自分の意思で抑制できるものではなかった。


ノスフェラトゥが離れると、サイファーは肩で息をする。
だが、息つく暇も与えぬまま、ノスフェラトゥは耳の形をなぞっていった。

「ぅ・・・っ・・・」
今度は耳に感じた柔いものに、意図しなくとも声が発されそうになる。
それは、耳朶から全体を弄るようにして動かされてゆく。
優しく愛撫するような、ゆったりとしたものではない。
ノスフェラトゥはわざと音をたてるようにして、荒々しい動きを繰り返す。
耳元で嫌でも聞こえる液の音に、サイファーは身震いした。
そのまま柔らかい箇所を甘噛みされ、外側だけではなく内側までも弄られる。
サイファーは肩で息をしつつ、心音が強くなってゆくのを実感していた。

「っ・・・もう止めろ!」
うまく力が入らない腕で、ノスフェラトゥを押し返す。
すると、意外にもあっさりと離れた。


『ククッ、早く触れてほしくて仕方がなくなったか』
危険を察知し、サイファーはノスフェラトゥから逃れようとする。
しかし、みすみすと手放されるはずはなかった。
ノスフェラトゥは、サイファーの体に腕をまわし、束縛する。
そして、相手の熱が冷めない内に、下肢の寝具へ手を滑り込ませた。

「いっ・・・!」
まだ昂りきっていないものを無理に掴まれ、サイファーは呻く。
羞恥のあまり、思わず俯いてしまう。
顔が見えなくなったことを、ノスフェラトゥが良く思うはずはない。
後ろからサイファーの顎を掴み、顔を上げさせる。
そして、下肢の物に触れている手を動かし刺激を与えていった。

「ぐ・・・うぅっ・・・」
サイファーは唇を噛み締め、声を漏らすまいとする。
『意固地な奴だ、まだ声を発そうとしないか。
ならば、その口こじ開けてやろう』
ノスフェラトゥは、指先でサイファーのものを撫でまわす。
同時に、露になっているうなじに舌を這わせていた。

「い、ぁ・・・っ」
下肢だけではなく首にも感じた刺激に、わずかな声が抑えきれない。
その隙を見逃さず、ノスフェラトゥは開いた隙間に自らの指を含ませていた。

「うぅ・・・っ」
口内に固い指が侵入してきて、サイファーは再び呻く。
入ってきた二本の指は舌に触れ、液を絡めとった。
冷たい感触に、サイファーは肩を震わせる。
下肢に圧迫感を覚えつつ、開かれた唇から荒い息が漏れる。
ノスは口端を上げて笑うと、サイファーのものを掌全体で包んだ。

「・・・っ、あ、ぁぁ・・・っ」
口を閉じることができず、喉の奥から上ずった声が発されてしまう。
いまいましい指を噛んでやろうと思ったが、やはりうまく力が入らなかった。
『ククッ、良い声だな。もっと、聞かせてみろ・・・』
いつの間にか、寝具から己のものが解放されており、圧迫感がなくなっている。
冷たい指はところ構わず動き回り、柔い舌をもてあそぶ。

「は・・・ぁっ、あぁ・・・っ」
以前のように達する間際の反応を楽しむわけではなく、完全に気を昂らせようと下肢を掴む手も動かされてゆく。
やがて、サイファーは上だけではなく下にも液の感触を感じるようになっていった。
もはや、熱い吐息も、上ずった声も抑えきれない。
下肢の手は絶えず動かされ続け、サイファーの体は火照っていた。


相手の限界を察したのか、ノスフェラトゥはいつかのように抑制を解放させるよう首筋に噛み付く。
血を滲ませない程度だが、痛みを感じないほど弱くはない。
同時に、口内の指も、下肢を包む手も、サイファーを攻め立てる。
そして、昂りきったものを荒々しく愛撫した。

「ぅ、ぁ・・・っ、あ、ぁ・・・!」
前からも後からも攻め立てられて、サイファーはとうとう耐えきれなくなった。
感じるままに声が発され、体が一気に熱くなる。
一瞬、全身が強張ったかと思うと、次の瞬間には熱が散布されていた。

吐精を見届けると、サイファーの口内にある指が引き抜かれる。
ノスフェラトゥは自分の指に伝う液を舐め、昂揚感を抑えきれないように笑みを浮かべていた。
「うぅ・・・」
やっと終わったかと、サイファーは力を抜く。
自分で体を支えられず、ノスフェラトゥにもたれかかった。
そうして、身を預けてくる操縦士を目の当たりにすると、ノスフェラトゥはさらに高揚していた。

「満足したかよ・・・もう、いいだろ・・・」
身を委ねつつも、放すように主張する。
だが、ノスフェラトゥは逆にサイファーの体に腕をまわし、引き寄せていた。
『この程度で終わると思ったか?何度でも喘がせてやろう、お前が自ら俺の名を呼び、求めるようになるまでな・・・』
「なっ・・・」
たまらずサイファーは身をよじったが、冷たい腕からは逃れられない。
ノスフェラトゥは、まだ熱いものを再び自分の手で包み込む。

「あ・・・!っ、やめ・・・」
敏感になっている体は、少し触れられるだけでも反応する。
ノスフェラトゥは素直に反応するサイファーを見て、また笑みを浮かべる。
そして、同じようにサイファーを攻め立てていく。
今夜は、悪夢を見る余裕はなかった。




朝、サイファーは腰に痛みを感じて目を覚ました。
もたれかかっているのは、無機質な壁。
服は乱れておらず、昨日の事は新しい悪夢か何かだったのかと思った。
けれど、体を動かすと、腰に痛みが走る。
そして、敷布に違和感があることを感じ、あれはやはり夢ではなかったのだと実感した。

いつ、眠ってしまったのか覚えていない。
ノスフェラトゥがいないということは、散々攻め立てられたあげく名を呼んでしまったのだろう。
疲労して熟睡したからか、悪夢を見ることはなかった。
時計を見ると、いつもの起床時間よりだいぶ早い。
今の内に文句の一つでも言ってやろうと、サイファーは格納庫へ向かった。

整備兵もまだ起きていないのか、格納庫には誰もいない。
だが、ただ一人、漆黒の機体が壁にもたれて座っていた。
サイファーが近付くが、反応を示さない。
恐る恐る顔を覗き込むと、ノスフェラトゥは珍しく寝息をたてていた。
「何だ、寝てんのかよ・・・」
眠っている相手を無理に起こして文句を言う程、サイファーは非常識ではなかった。


それにしても、寝ている姿を見るのは初めてなので、この機会にまじまじと観察する。
こうして黙ってさえいれば、顔立ちは整っている奴だと思う。
性格にはかなり問題があるが、自重しないことをされても遠ざけようとはしなかった。
性能が特別良く、手放すのが惜しいからではない。
いつか白い少女に言われたように、波長が合っているんだろう。
だから、自分は不思議とこの機体から離れられないでいるんだと、サイファーは思っていた。

ふと、滅多に触れられない黒い前髪を撫でてみる。
意外と髪質は柔らかく、手触りが良かった。
ノスフェラトゥはまだ起きず、規則的な寝息をたてている。
じっと顔を凝視していると、サイファーにはわずかな衝動が湧き上がってきていた。

目が閉じられていることを今一度確認し、慎重に顔を近付ける。
そして、本当に軽く、一瞬だけ、寝息が漏れる箇所に唇を触れさせていた。
わずかな間だけ感じた柔らかい感触に、サイファーは一人で赤面する。
そこで、自分は何をしているんだと我に帰り、相手が起きない内にさっさと離れようとした。
しかし、サイファーが一歩退いたそのとき、まるで見計らったかのように漆黒の腕が伸ばされていた。

「いっ!?」
とたんに、体を抱き寄せられる。
目の前には、完全に覚醒しているノスフェラトゥの目があった。
『何だ、まだ足りなくて自分から求めに来たのか』
「ち、ちげーし!お前、いつから起きてたんだよ・・・」
自分が大それたことをした後であってほしいと願ったが、その願いは怪しい笑みに掻き消された。

『俺がどれだけ高性能なセンサーを搭載しているか、お前はよく知っているだろう』
つまり、最初から気付いていたと言っているようなもので、サイファーは顔から火が出るかと思った。

『それにしても、お前も積極的な事をするようになったものだな。昨晩の効果が早速出たということか』
「だ、だから、それとは関係ねーし!」
ここで否定しておかなければ、この先どんなことをされるかわかったものではない。
恐ろしい事を平然と告げるノスフェラトゥだったが、その雰囲気はどこか楽しげだった。

一方、サイファーは辱しめられたばかりだが、もう冷たい腕を厭わなくなっていた。
こうして真正面から抱き留められる事が、また珍しい事だからだと思う。
昨夜の様な行為は自重してほしかったが、ノスフェラトゥの無機質な体に触れているこの状態は、決して嫌ではなかった。

サイファーは、少しだけ体重を預けてみる。
ノスフェラトゥは無言でいたが、体にまわされた腕はしっかりとサイファーを抱き留めていた。
それは、ただの独占欲ゆえのものかもしれなかったが。
それ以外の要因もあってほしいと、サイファーははかない希望を抱いていた。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
前回は、タリズマンのことばかり言うノスのことをサイファーが気に食わなくなって、大胆な事をする話だったんで
今回は、ピクシーの名前を呼ぶサイファーが気に食わなくて、ノスに大胆なことをさせてみました
やっぱり、書いてると自然とサイファーの方がノスを好きになっていく感じがする・・・
最も、ノスフェラトゥはああいう性格なんで仕方ないかもしれません。だがそこがいいなんて思っていたりします←