クー・フーリン三兄弟のご近所さん ランサーとの話3





ランサーと深い仲になった後、お互いの関係が変わるかと言われたらそうでもなかった。

普段通り遊ぶし、話をするし、何もよそよそしいことはない。

そして、今日も普通に家に来ていた。

「リツ、これから水族館行こうぜ!イルカショーあるんだってよ!」

「うん、行こう」

いつものように誘われ、リツはぱっと笑顔になる。

ランサーも嬉しそうにリツの腕を取り、ぐいと引いた。



少し変わったことと言えば、普段より何となくスキンシップが多くなった気がする。

移動するときは腕を引き、喜ぶときは肩を組む。

何だか、触れる機会を逃さぬようにしているようにも思えるけれど、考えすぎかもしれなかった。





休日ともあり、水族館は家族連れやカップルで結構混みあっていた。

もうすぐイルカショーが始まるとのことで、まずは目当てのドームへ移動する。

「結構人多いね、はぐれないようにしないと・・・」

「ん、そうだな」

ランサーは一言同意すると、ふいに手を握る。

腕ではなく手を掴まれると、一瞬どきりとした。

ただはぐれないための意味合い、けれど今は、まるで周囲にいるカップルと同じような。

一人勝手にどきどきしていたけれど、悟られないように調子を変えないようにしていた。



ドームの席につき、ショーが始まるのを待つ。

前の方はあまり人がいなかったので狙い目かと、最前列に座っていた。

もう、人混みにまぎれる心配はないけれど、まだ手は離されない。

たぶん、周囲からは仲のいい兄弟として見られていると思う。

ショーが楽しみで離すことを忘れているのか、それとも意図的なのか。

でも、どちらでもいいやとリツも自分から手を離そうとはしなかった。



ほどなくして人が集まってきて、ショーが開幕する。

数匹のイルカが元気よく跳ね、きらきらと輝く水飛沫が綺麗だ。

一瞬、もしかしてここの席はまずいかもしれないと思ったけれど、今更移動はできない。

イルカが、高い高い場所にあるボールめがけてジャンプする。

「すげえ!イルカってあんなに高く跳べんだな!」

ランサーは興奮気味になり、手に力が入る。

少し強めに握られ、リツはまたどきりとしていたけれど、わあーとイルカを見ていた。





輪っかくぐりやインストラクターを乗せて泳ぐ、一般的な芸でも間近で見ると迫力があり楽しめる。

最初からずっと手を繋いだままだったけれど、後半はほとんど気にならなくなっていた。

まるで、それはとても自然なことのように。

ショーもクライマックスにきて、最後は全てのイルカが高々とジャンプして綺麗に弧を描く。

そして、見事に着水したとき、ひときわ大きい水飛沫が上がり

ショーが終わって拍手喝采の中、ランサーには水が滴っていた。



「ラ、ランサー、体半分くらい濡れてる!」

「最前列が空いてたのはこういうわけかよ・・・」

水をかけられたときのリアクションは拍手にかき消されたのだろう、隣にいたリツもぎょっとしている。

「ひとまず帰って着替えよう!そんな状態でうろうろしてたら風邪ひくよ」

「いや、でも中の方全然見てねえ・・・」

「それよりランサーの体のほうが大事だよ。水族館はまた来ればいいから」

今度は、リツがランサーの手を引いて出口へ向かう。

身を案じてくれていることに、ランサーは密かにはにかんでいた。



「とりあえず、ランサーの部屋に戻って・・・」

「あ、あー、いや、オレの部屋はちょっと・・・」

「じゃあ、オレの家にしよ。だぼっとした服もあるから」

とにかく早く着替えなければと、リツは早足になる。

何で駄目なのかと、理由も聞かずに帰路を辿った。







家につき、すぐランサーを部屋に入れる。

そこでようやく手を離し、リツはクローゼットをあさった。

「これ、大きめのパーカーとズボン。ちょっときついかもしれないけど、とりあえずこれで」

「ああ、悪いな」

歩いている途中であらかた乾きはしたが、まだ一部湿っている。

ランサーがおもむろに服を脱ぐと、リツは思わず凝視していた。



「わ、ランサー腹筋割れてるんだ」

「おうよ、槍術は結構力いるからな」

「確かに、自分の身長くらいあるもんね」

ふいに、リツはランサーの腹筋に掌で触れる。

押してもびくともしない硬さで、おおーと感心していた。

「二の腕も、贅肉なんて全然なさそう」

そのまま二の腕も掴むと、やはりガチガチに硬い。

たくましいんだなあと、自分とはまるで違う体つきに惚れ惚れする。



「かくいうお前はどうなんだよ?」

ランサーはいたずらっぽく笑い、リツの服をがばりとめくる。

「ちょ、ちょっと」

「なんだ、薄っぺらい腹だなー」

ランサーは、リツの平らな腹部をぺたぺたと触る。

そんなに運動が得意なわけでもなく、鍛えてもいない、いたって普通の状態だ。

「二の腕も、やっぱ柔らけえし」

からかうように腕を揉まれ、リツは少し悔しくなる。



「どうせ、オレはランサーと違って男らしくないよ」

リツはぷいっと後ろを向き、服を渡さないようにする。

「そんなスネんなよー、むしろお前はムキムキじゃないほうがいいって」

ランサーは後ろからリツの腹部に腕を回し、するりと服の中に入る。

「ひゃっ」

くすぐったいような、そんな感覚に変な声が出た。

一瞬、ランサーの動きが止まる。

迷っているような、そんな雰囲気があったけれど、やがて、掌でなだらかにリツの腹部を撫でていく。



「く、くすぐったいよ・・・」

からかうようなスキンシップとは、どこか違うことに戸惑う。

身をよじると、ぐっと腕が回され抱き寄せられた。

そうだ、もう、以前とは違う、一歩踏み込んだスキンシップをする仲になったのだ。

実感すると、体が強張る。

「あ、あの、ランサー・・・?」

ランサーが急に黙るものだから、ふざけた雰囲気はなくなる。

硬直していると、ふいに耳に吐息がかかるのがわかった。

ますます緊張して、全く動けなくなる。

どぎまぎしていると、その耳に、ふにっと柔らかい部分が当てられた。



「え、う・・・」

そんなところ、ふざけ半分で触るところではない。

思わず身を前のめりにして逃れようとすると、ぐっと腹部が引き寄せられた。

そして、湿ったものが耳の形をなぞっていく。

「ひ、ぁ、ぅ・・・」

身震いするような感覚なのに、吐息が熱くなる。

戸惑うけれど、振り払おうと思えない。

じっとしていると、ランサーの片手が胸のあたりに移動する。



「・・・心臓、早えな」

「だって・・・ランサーに、そんなとこ・・・どきどきする・・・」

リツは、この先どうなるのだろうとおぼろげに思っていたが、逃げる気はなかった。

後ろを向くと、すぐ近くにランサーの顔がある。

視線が交わり、お互い言葉をなくす。

ランサーとの距離が、さらに近くなっていく。



もう触れる、と思ったとき、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。

リツはぎょっとして、反射的にぱっと腕から抜け出していた。

「そ、そうだ、今日、母さん帰りが早いんだった」

「あ、あー・・・そんなら、服だけ借りて帰るな」

お互い、我に返ったようにわたわたする。

寸前で止められ、正直もどかしい思いはあったものの、見られては家族会議だ。

その日は、適当な服だけ貸して寂しそうな背を見送った。







曇りがちの日、貸していた服を取りに行こうとリツはランサーの家に行く。

特に何も言っていなかったけれど、誰かいるかなと思い呼び鈴を押した。

「へーい、って、リツ?」

「ランサー、ちょうどよかった。服が乾いてたら引き取ろうと思って」

「あ、あー、すまねえ、まだ乾いてねえんだ。3人いると洗濯物多くてよ。

・・・そ、それよか今からゲーセンでも行かねえか?」

何やらごまかそうとしている雰囲気がありありで、リツは不信に思う。

「でも、雨降りそうだし・・・。そうだ、時間あるならランサーの部屋で過ごしたいな」

とたんに、ランサーの表情がひきつる。



「あー、部屋、掃除してねえし・・・」

「それなら手伝うよ。よく家の掃除もしてるから任せてっ」

ランサーの脇をかいくぐり、リツは家に入る。

「ちょ、ちょ、待てって・・・!」

明らかにうろたえていて、何だか面白い。

いやらしい本でも散らかりっぱなしなんだろうかと想像しつつ、二階に上がる。

確か、ランサーの部屋は階段の一番近く。

追いつかれないうちに扉を開けると、あー、と半ば呆れる声を出した。



部屋の中はごちゃごちゃして物が散乱して、縦横無尽に散らかっている。

服はクローゼットからはみ出て、ハンガーにもかかっていないものがあるし

床には漫画やら雑誌やらが散らばり、隅には捨てる予定なのか積み上げられている。

机の上も筆記具やらプリントやらが散らかり放題で、まるで整理整頓ができない子供の部屋のようだ。

「あー・・・最近、バイトのシフトがな、結構入っててな?」

「掃除しがいがありそうだね」

恥ずかしいとこを見られたと、ランサーは苦々しく笑っていた。





まずは床に散らかっている漫画やらを拾い、定位置に戻すことから始まる。

戻そうとしたのだが、本棚は縦に横に本が積み重なっていて入る場所がない。

まずは棚の整理だと、次々と中身を抜いていく。

バトルものの、懐かしい少年漫画が圧倒的に多く、あとはゲームの攻略本などだ。

「あ、これ懐かしいなあ。オレもはまってた」

ゲームの攻略本を手に、ぱらぱらとめくる。

「それなら今もあるぜ!この後一緒に・・・」

「掃除が先だよ」

「へーい」

あまり気乗りしないのか、ランサーは適当だ。

読みたい漫画も出てきたけれど、中を見ていたら散らかしたままで終わってしまう。

とりあえず大きさの違う本を揃え、端からきっちりと並べていく。

すると、はみ出していた本がちゃんとおさまりそうなスペースができてきた。



「これなら、隅に置いてあるのも入るんじゃないかな」

「あ!そ、それは別に・・・」

ランサーが制止する前に、リツは本の山を取る。

その表紙が目に入り、一瞬動きが止まった。

隠しようもない、いやらしい本だ。

「・・・健全な成人男性だもんね!本棚の隙間に入れる?」

「い、いや、それは捨てようと思ってたんだよ。

何か、最近そういうの見ても面白くねえっていうか・・・」

ランサーは少し言葉を途切れさせ、続ける。



「・・・やっぱ、お前に惚れてるからだろうな」

急に熱烈なことを言われ、リツは目を丸くする。

ありがとうか、興味なくさせてしまってごめん、と答えるか迷う。

「えっと・・・本棚は綺麗になったし、次はクローゼットにしよ」

照れ隠しをするように、クローゼットの方へ行く。

洗濯してあるのかしていないのか、とりあえずだらしなく放置してある服をハンガーにかける。

よく着ている青いシャツ、カジュアルなTシャツやズボンなどなど。

結構な枚数があり、自分でもどこへ片付けるか考えられていないんだろう。



「・・・あ!い、いや、服は自分でするからよ」

何か思い出したのか、ランサーはとっさにリツの方へ駆け寄る。

破廉恥な下着でもあるのだろうかと中をよく見ると、見覚えのあるパーカーがかけられていた。

「これ、オレが貸した服・・・なんだ、もう乾いてるや」

「す、すまねぇ、まだ洗濯してねえんだ」

「いいよ別に、うちで洗うから持って帰るね」

それだけハンガーから取って床に置き、他の服の整理を続ける。

ランサーは言いたいことがありそうに口をぱくぱくとしていたけれど、言葉は出てこなかった。





クローゼットが終わると、次は机の上の整理と、いっそ掃除機もかけようとはりきった。

ランサーは何をしていいかわからないようなので、リビングに引っ込んでいてもらう。

一部屋掃除するだけでもそこそこ疲れる、けれどランサーの生活が見られて楽しい。

持っている本も、服の趣味も知ることができるのが嬉しくて、全然苦にならなかった。



小一時間ほどして、ランサーの部屋は見違えた。

落ちている物はなく、服はきっちりクローゼットにおさまっていて、本棚も整理されている。

「おお!すげえ、オレの部屋じゃないみてえだ」

「はー、結構疲れた。少し休ませてー」

リツはふらふらとベッドに向かい、ばたんと倒れ込む。



「お疲れさん、感謝してるぜ」

ランサーは、ごく自然なことのようにリツの隣へ寝転がる。

「整理しててわかったけど、ランサーって青系統好きなんだね。服とか、文房具とかそういう色多かったし」

「ああ、爽やかで髪の色とも合うしな。お前は白黒が多いよな、たまには派手にしてみりゃあいいのによ」

「そんなの似合わないよ。目立ちたくないし」

ランサーみたいに明るくないし、むしろ周囲から気に留めてほしくないと思う。

場を盛り上げられるわけでもなく、ただの数合わせでいるような、そんな感じなのだ。



「それより、せっかく掃除したんだから、一週間経ったら元の状態なんてならないようにしてね。

何だか、今日来なかったらオレの服もクローゼットの奥に追いやられてた気がするよ」

からかうように言ったのだけれど、ランサーにはあまり笑顔がない。

「・・・あの、借りた服な、着たときにお前の匂いがして・・・。

だから、洗うの、勿体なくなったっていうか・・・」

また、熱烈なようなことを言われてリツは言葉に詰まる。

「・・・なんつーか、キモイこと言っちまったな、すまねえ」

「そ、そんなことない、気持ち悪くなんて、全然、そんなことないよ」

取り繕うように、あせあせと早口になる。

そこから、ぴたりと会話が止んでしまった。





お互い、仰向けに寝転がったまま沈黙が流れる。

黙ると、ベッドの上に寝ているということを改めて自覚する。

以前なら、何ともない友達同士の付き合いだったけれど、今は関係性が違う。

ぴたりとひっつく腕から、だんだんと体温が伝わってくる。

「「・・・あ、あの」」

お互い同時に切り出し、声が被る。

顔を向けると、距離の近さを目の当たりにした。



リツは体ごと横に向けて、ころんとランサーの方へ半回転する。

そして、ランサーは反射的にリツを抱き留めていた。

身長差もあり、体が包まれてリツは心地よさを感じる。

ランサーの鼓動が伝わってくると、共鳴するように自分のも強く鳴るのがわかる。

身を寄せていると、ほんのりとした幸福感が満ちてくる。



しばらく抱き留められたままだったが、髪をいじられ上を向く。

そこには、すぐ近くにランサーの顔があって

視線が交わったとき、距離が詰められ重なっていた。

「ん・・・」

リツは静かに目を閉じ、ランサーに身を任せる。

場所が変わると、感じるものも違ってくる。

そこに触れていることは深い仲だという証明で、鼓動は早まるばかりだ。



じっとしていると、ふいに、湿ったものが唇の隙間をなぞる。

それが何なのかわかってしまい、どきりとしたけれど、ランサーが求めるままに口を開いていた。

柔い感触はすぐに中へ入り、そっと絡ませられる。

「は、ぅ・・・」

どうしても、吐息が漏れ出す。

恥ずかしさはある、けれど触れていてほしいとも思う。



交わる柔らかさに、液の感触に気が落ち着かなくなっていく。

怯えさせないよう、ランサーはゆっくりとリツを愛撫する。

少し動くだけでリツは鼻から抜けるような可愛らしい声を発して、理性を奪う。

堪えるようにシャツにしがみついてくる仕草も、愛しくて仕方がない。

もっと深く入りたかったけれど、リツがやや苦しそうにしていたので一旦身を離した。



リツは、余韻に酔いしれるようにランサーを見詰める。

胸の内に溢れる感情が抑えきれない。

「ランサー・・・すき・・・」

ぼんやりと、虚ろな目で訴える。

ランサーは一瞬目を見開くと、たまらずリツを仰向けになるよう押していた。

そして、身を下げて首筋に唇を寄せる。



「ひゃっ」

ちょうど動脈の辺りに当たり、リツはわずかに怯む。

ランサーは構わず、舌から上へ首筋をつうっとなぞっていく。

「あ、う、や、ランサー、あの、掃除して、少し汗かいてるから・・・」

「・・・お前の匂いがして良い」

「え、あ・・・」

クローゼットに吊るしてあったパーカーのことを思い出す。

好きでいてくれている、そう実感してランサーの背に腕を回していた。

拒否されていないとわかると、ランサーはリツの皮膚を軽く吸ったり、弄ったりを繰り返す。



「あ・・・ぅ、ん、ゃ・・・」

リツは身震いしつつも、変に出てしまう声を堪えようとする。

ランサーに舐められているんだと、そう思うだけで気持ちが昂っていた。

もじもじと、何かを我慢するように身をよじると、一旦ランサーが離れる。

顔を合わせると、事を行っているランサーの頬も、染まっているのがよく見えて

今の今までに見たことがない、相手を欲しているような、そんな顔のように思えた。



「・・・ランサー、あの・・・・・・オレと・・・エッチなこと・・・したい、の・・・?」

「・・・ああ、抱きたい」

こわごわ聞くと即答されて、どうしようか混乱する。

抱く、というのは抱きしめたま眠るなんて生易しいことじゃない。

さすがのリツも意味を理解していて、返答に迷っていた。



「・・・嫌なら止める」

余裕がないのか、ランサーの言葉数は少ない。

頷いたらどうなってしまうのか、想像がつかない。

けれど、今、舐められても熱くなるだけで気持ち悪いことなんてなかった。

そう思ったことが、もう答えなのかもしれない。

「・・・嫌、じゃない。ランサーのこと、好きだから・・・」

難しいことは考えず、本音を告げる。

ランサーは、はっとしたような表情をした後、優しく笑った。

そして、シャツを脱がそうと裾に手をかける。

リツは想像できない行為に、唾を飲んでいた。



始まったらたぶん止められない、そう覚悟したのだけれど

そうやって始められる前に、玄関の扉が開く音が聞こえてきていた。

ランサーの手が、ぴたりと止まる。

入ってきた相手は足音を鳴らし、二階へ上がってくる。

扉を開けられたらどうしようかとひやりとひたけれど、音は部屋の前を通り過ぎて別室に入って行った。



「・・・たぶん、オルタの方だな。キャスターなら、坊主が来てんのか?って入って来てたかもしれねえ・・・」

ひやりとしたのはランサーも同じだったのか、上から退いてベッドに座り直す。

誰か帰って来てはこれ以上事は進められないと。

リツは我に返ったかのようにあせあせと服を直し、ランサーの隣に座る。

けれど、何て声をかけていいかわからない。

しばらく黙っていると落ち着いてきたのか、ランサーが口火を切る。



「3兄弟もいる家じゃやってらんねーな、外泊すっか!」

「え?」

「旅行行こうぜ!あんまし遠くへは行けねえけど、1泊で」

その目的は見え見えだったけれど、ランサーとの旅行なんて楽しいに決まっている。

「うん!オレもランサーと一緒に遊びに行きたい」

リツの純粋な答えに、ランサーは屈託なく笑う。

突然の提案だったけれど、断る理由なんて何にもなかった。