双子と僕 F


輪が双子に、愛の告白をされてから。
双子のスキンシップは、明らかに変化していた。
抱きつくときは、がばっと勢いよく飛びつくのではなく。
ゆっくりと幸福感を味わうように、そっと手をまわすようになっていた。
輪も、その思いを受け止めるように、そっと双子を抱きしめていた。

もう一つの変化は、寝る前のこと。
双子は毎日輪が風呂から上がるのを待ち、部屋に入る前に必ずねだるようになっていることがあった。
そして、今日も双子は輪を呼びとめていた。


「兄さん・・・今日も・・・その・・・」
「今日も・・・キスしていい・・・?兄さん・・・」
遠慮しているのか、緊張しているのか、双子の声は小さかった。

「ん・・・いいよ」
輪は拒むことなく、双子を受け入れる。
了承を得ると、双子は手を伸ばして輪の頭を少し下に向ける。
自分の背が届く範囲になったところで、双子は背伸びをして。
下から見上げるような形で、そっと唇を重ねた。

輪は目を閉じ、弟に身を任せる。
今までに、数回されてきたこの行為を、一度も拒んだことはなかった。
双子に、報われる恋愛をさせたいのなら、拒むべきことかもしれない。
けれど、自分の中には確かに、双子を受け入れたいという思いがある。

それは、双子を大切に思ってのことかもしれないし。
もしかしたら、知らず知らずの内に近親に抱くには相応しくない感情を抱いているのかもしれない。
後者の考えは薄いと思っていたが、否定することはできないでいた。


一人の弟が離れると、すぐにもう一人が輪を引き寄せ口付ける。
輪は二回分の行為が終わるまで、じっと首を傾けていた。
双子の行為は、胸が温かくなり、幸福感を与えてくれるものだった。

このまま許し続けていれば、双子はもっと要求してくるかもしれない。
輪は、それはまだまだ先のことだと思っていた。
愛情を知ったばかりの双子は、まだそれを求めないと。
だから、それが意外と早く訪れることになるなんて、思っていなかった。




その切欠となったのは、双子の誕生日だった。
「ただいま」
輪が家に帰ると、今日は特別な日だというのに両親の姿はなかった。
「「お帰りなさい、兄さん」」
双子はいつものように、輪を出迎える。

「今日は二人の誕生日なのに・・・母さんも父さんもいないのか」
毎年、この日には母がケーキを買ってきて、父も多忙な仕事を休んで祝い事をしていた。
今回は日をずらすのだろうかと思ったが、それは違った。

「お父さんもお母さんもいなくて、驚いてる?」
「実は、ぼくらがお祝いはいいから一日家を開けてほしいって頼んだんだ」
双子の言葉に、輪は目を丸くした。
「何で、そんなことを?」
双子は、家族が揃う誕生日を毎年楽しみにしていた。
なのに、なぜ今年に限ってそんなことを頼んだのかわからなかった。

「兄さんに、誕生日のお祝いをしてほしかったから・・・」
「何か、いいきっかけがないと、言えないことだから・・・」
輪は、まだわけがわからないといった様子だった。
両親に家を開けてもらった理由、それを説明するために双子は一呼吸置いて、口を揃えて言った。


「「ぼくら・・・・・・兄さんと、行きつくとこまで行きたいんだ・・・」」
「え・・・?」
告白以上の衝撃的な言葉に、輪は驚きを隠せない。
双子が両親を遠ざけた訳が、やっとわかった。

気軽に望むことはできない、特別な日のお祝いという名目があってやっと言い出せること。
修学旅行から帰ってきたときに、双子が浴室でしていたと思われる行為。
それを、双子は望んでいる。
一年に一回だけの、誕生日プレゼントとして。

「・・・二人でするだけじゃ、物足りない・・・のか?」
話の流れに乗って、輪は恐々と問いかける。
「あ・・・やっぱり、あのときばれちゃってたんだ」
「でも、あれは練習なんだ」
「練習?」
双子は、少し恥ずかしそうに言う。

「うん。・・・この日のために、たまにしてたんだ」
「兄さんを、ちゃんと満足させられるように・・・」
「な・・・」
輪はまた、言葉を失った。
あんな行為を、全て自分のために練習していたなんて、考えられなかった。

「兄さん・・・ぼくら、兄さんと一緒に、同じことがしたいんだ」
「こんなことまでお願いするなんて、欲張りだって思われてもいい。。
ぼくら・・・本気で望んでるんだ、兄さん」
双子は左右から輪の腕に抱きつき、顔を見上げて様子をうかがう。
輪はすぐに答えることはできず、硬直していた。
双子は、お祝い事を全部投げ打ってまでして、兄との行為を求めている。
それほどまでに強く望んでいるのなら、叶えてあげたいとは思う。

けれど、許してしまってもいいのだろうかという懸念が頭を離れない。
自分が双子を愛しているか、はっきりしていないのに。
行為の途中で、双子を拒まない保証はない。
それなら、ここで断っておいた方が傷は浅くなるのではないかとも思う。
それでも、おそらく双子は最も強く望んでいる。
家族揃って祝ってもらうより、ただ一人の許しを得ることを。


輪は葛藤の後、結論を出した。
そして、不安そうに見上げている双子に向かって言った。
「二人が好きなように、してもいい」
輪の言葉を聞いた双子は、喜びよりも先に驚きを露わにしていた。
こんなにすんなりと兄が応えてくれるとは、思っていなかったのかもしれない。

「本当にいいの?僕ら、いやらしいこと、兄さんにするんだよ?」
「僕ら、二人で兄さんのこと触ったりするんだよ?本当にいいの?」
一時の気の迷いではないかと確認するように、双子は何度も尋ねた。
それでも、輪の答えは変わらなかった。
輪が拒まないでいることを確認すると、双子は腕を引き、早々に浴室へ連れて行った。




脱衣所で、輪は臆することなく服を脱いだ。
双子の方が緊張しているのか、どこか動作がぎこちない。
緊張しているのは輪も同じだったが、なるべくその様子を表に出さないようにしていた。


三人で浴室へ入るのは、覚えている限りでは初めてのことだった。
準備がいいことに、浴槽にはもう湯が張られていた。
「・・・とりあえず、先に体を洗おう」
輪は、必死に平静を保ちつつ双子に言った。
洗い場に三人もいては狭いので、輪は先に浴槽に入って場所を譲った。

双子が体を洗っている間、輪は何とか気を落ちつけられないかと試行錯誤していた。
だが、その時が迫るにつれて、緊張感は高まってゆくばかりだった。
やがて、双子が体を洗い終わり、場所を交代する。
お互い口数が少ないことから、同じ緊張感を抱いているのは明らかだった。
自分の体を洗い終えれば、いよいよ事が始まる。
リラックスできるはずの風呂で、輪はずっと落ち着けなかった。


そして、とうとう輪も一通り体を洗い終わった。
双子は輪と視線を合わせ、浴槽から出る。
「兄さん・・・断るなら、今の内だからね」
「たぶん・・・途中で止めるのは難しくなるからね・・・兄さん」
少し間を開けた後、輪は答える代わりに、浴槽にもたれかかる形でその場に座りこんだ。
羞恥と緊張のあまり、言葉を発することができなかい。
だから、意思表示として双子の手を掴んで軽く引いた。

「「兄さん・・・」」
双子はやんわりと頬を緩ませ、兄の正面に座った。
「兄さん、ありがとう・・・。じゃあ・・・するからね・・・」
「あ、でも、兄さんの体の負担になるようなことはしないから・・・安心して、兄さん・・・」
何に安心していいのかわからなかったが、すでに双子に身を任せる覚悟はできていた。
拒否する様子を見せないのを確認して、憂は輪の首に両腕をまわす。
そして身を寄せ、口付けた。

「んっ・・・」
軽くではなく、強く重ねられた唇に、輪の喉の奥にくぐもった声がこもる。
背伸びをせず、楽な状態でしているからか、それは長いものになった。


やがて憂が離れると、今度は陽が口付ける。
双子の口付けは強さも長さもほぼ同じで、ほぼ同じ量の熱を輪に与えていた 。
次に、双子は輪の胸部に手を伸ばす。
左右同時に、同じ大きさの手に胸元を撫でられ、輪は奇妙な感覚を覚えていた。
少しの間は愛撫するだけだったが、双子はふいに起伏している箇所に指先で触れた。

「っ、・・・」
とたんに感じた感覚に、輪は肩を震わせる。
双子は、ぴたと手を止めた。
しかし、それは当たり前の反応だとわかっているのか、すぐに動きを再開させる。
双子は兄の起伏部を弄ぶように摘み、指の腹で撫でまわした。

「っ・・・ん・・・ぅ」
両側に同時に触れられ、湧き上がってくる声を羞恥心が抑え込む。
輪は条件反射で、手で自分の口を塞いでいた。
「兄さん、声出すの、恥ずかしい・・・?」
「恥ずかしさなんて忘れさせてあげるから・・・兄さん」
双子は触れていた胸部から手を離し、顔を近づける。
そして、胸の起伏を軽く、ぺろりと舐めた。

「あ、っ・・・」
柔らかな感触に、輪の口から思わず抑えきれない声が発される。
液を帯びたものに敏感な部分を触れられ、一気に熱が上昇していった。
双子はそんな反応を良く思ったのか、もっと声を発させるべくその起伏を口内へ含んだ。

「あ・・・ぁ・・・っ」
さらに増した感触に、手では抑えようのない声が漏れる。
双子は、柔らかさと共に粘液質な感触も伝えてゆく。
含まれているものが一瞬でも吸い上げられると、輪はどうしても声を抑えきることができなくなった。


双子が口を離すと、間に細い糸が伝う。
輪の頬には熱が上り、完全に紅潮していた。
「兄さんのそんな表情・・・始めて見る」
「顔が真っ赤になって・・・もっと見せて・・・兄さん」
そう言うと、双子は同時に兄の下腹部へ手を伸ばす。
そして、中心にある、最も敏感な個所へ二つの手が触れた。

「あっ・・・!」
他人に触れられたことのない、そんな箇所に刺激を受け、輪はまた肩を震わせる。
「兄さんの声聞いてると・・・どきどきする」
「気持ちよくしてあげるから、もっと聞かせて・・・兄さん」
双子はうっとりとした表情で兄を見詰め、触れているものを二人で撫でた。

「あ、ぁ・・・っ」
弟に触れられ、こんなあられもない声を出してしまう自分が恥ずかしかった。
そういう羞恥は感じる、しかし嫌悪は感じない。
自分は、それほど双子を信頼しているのだと自覚した。

「兄さん・・・気持ちいい・・・?」
「感じてくれてるんだね・・・兄さん・・・」
気付けば、輪のものは双子の手の内で熱を帯びていた。
輪がいくら羞恥を覚えても、その反応はどうしようもなかった。
輪が感じていることを好機だと思ったのか、双子は触れているものを指先でなぞった。

「あっ、う・・・!」
突然、体に電流が走ったような強い感覚が輪を襲った。
喉の奥から上ずった声が発され、体が震える。

「兄さんも・・・ここ、感じるんだね・・・」
「よかった・・・もっと、感じさせてあげる・・・兄さん」
練習の成果と言うべきか、双子は兄が強く反応する箇所を執拗になぞる。
与える熱を途切れさせないよう、何度も指の動きを繰り返す。
「は・・・っ、ぁ・・・あっ・・・」
一回なぞられるたびに、輪の口からは熱を帯びた吐息が漏れる。
呼吸は荒く短くなり、もはや口を閉じることはできなかった。


「「兄さん・・・」」
双子が、じっと兄を見詰める。
その表情を、じっくりと目に焼き付けるように。

「兄さん・・・兄さんがいくとこ、見せて・・・」
「声、抑えないで・・・全部聞かせて、兄さん・・・」
双子の愛撫が早くなり、相手に確実に欲を与える動きに変わった。
こもっている熱を解放させるように、一気に輪を揺り動かす。
すると、双子の触れているものから、わずかな滴が伝い始めた。
それは、輪がこの行為に悦を感じている証拠だった。

双子はかすかに笑み、自分の手に伝った液を絡ませる。
そして、輪のものにもその液は絡みついてゆく。
その上から、双子は液を全体に絡ませるように輪のものをなぞり、愛撫した。
その粘液質な感触は強い悦となり、輪を襲った。

「あ、ぁ・・・っ!は、や・・・っあ・・・!」
強まった刺激に、輪は耐えきれなかった。
自分でも驚くような、高い声が発される。
下肢にあるものがとたんに熱くなり、与えられていた熱が、解放される。
そして、白濁した液が、双子の手に散布された。

「は・・・っ、は、ぁ・・・」
熱を解放した輪は軽い倦怠感を覚え、脱力した。
頭の芯が痺れているような感じがして、ぼんやりと双子を見る。
「兄さん・・・兄さんの声も、表情も・・・すごく、よかった」
「ぼくらも、すごくどきどきしてるよ・・・兄さん」
双子はうっとりとしたような表情で、輪に擦り寄った。


隔たりが無いこの状況、しっかりとした双子の心音はすぐに輪へと伝わった。
双子にあられもない姿を見られ、触れられてしまった。
行為の後は、羞恥心のあまりしばらく双子の顔をまともに見られなくなるのではと思っていた。
けれど、恥辱を受けたという感覚はなく、ただぼんやりとした虚脱感が身を包んでいた。

「・・・二人は、そのままでいいのか・・・?」
双子から感じる、自分がさっき感じていたような熱。
そして、下肢の方に当たっているものを感じ、それを懸念した。

「いいんだ・・・今は兄さんにこれ以上負担をかけたくないから」
「僕らは自分達で何とかするから・・・兄さんのがあるし」
輪はふと、双子の手を見た。
そこには、粘液質な液が絡みついている。
輪は思わず、そこから視線を逸らした。

「兄さん、ぼくらがするとこ、見る・・・?」
「ぼくら、兄さんになら見られてもいいよ・・・?」
無意識の内なのだろうが、双子は誘いかけるような眼差しを輪に向けていた。
輪は一瞬、返答に困った。
自分も恥ずかしいところを見られたのだから、双子のそんな姿も見てみようかと。

だが、すぐに自分は何を考えているんだと、我に返った。
弟同士がそんなことをする姿を進んで見ようとするなんて、どうかしている。
「い、いや、少し、疲れたから・・・もう、寝るよ」
輪は濡れてしまった箇所を手早く洗い、迷わないうちに浴室を出た。


体を拭いても、服を着ても、まだ体が熱っぽい。
誕生日だから、今日は全てを許したつもりだった。
けれど、もし誕生日と言う特別なことがなくても。
自分は、双子に体を許していたかもしれない。
そんな疑惑が、輪の中に渦巻いていた。
自分は確かに、双子との行為に欲を感じていたから。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!。
とうとう親近相姦・・・まだ、中途半端な感じですが。
でもまだ書き足りないので、さらに話は続きます。