擬人ペットの緩やかな日々 兎編4


とうとう、明日から仕事が始まる。
朝から溜め息しか出なくて、外へ遊びに行く気にもなれない。
不安感を抱いてソファーに座っていると、ロップが飛び乗ってきた。

「ご主人、元気ないです・・・ボクにできること、何かありますか?」
「うーん・・・」
気持ちは嬉しいけれど、思い付かない。
とりあえず、ロップのふかふか頭を撫でて気を落ち着かせようとした。
触っていると、ロップが身を乗り出して、鼻を触れさせる。
昨日はどきまぎした行為でも、今はそんな気にならなかった。
様子が変わらないのを見て、ロップは不安そうな顔をする。

「・・・ボク、レイとお話してきますね」
ふいに、ロップが離れて暖かみがなくなる。
無反応な主人に呆れたのだろうと、深追いしなかった。


何もやる気が起こらないままぼんやりとしていると、しばらくしてロップが戻ってくる。
「ご主人、ボク、レイにご主人を元気にする方法聞いてきました!」
「へえ、どんなことなんだ?」
猫じゃらしでくすぐるとか、そんなことだろうか。
様子を見ていると、またロップが飛び乗ってきて、距離が近づく。
同じように鼻ちゅーをするのかなとじっとしていたけれど、触れたのは鼻じゃなかった。
むしろ、鼻をずらしてぶつからないようにしていて、やんわりと唇に柔らかい感触が重なっていた。

一瞬、状況が理解できなくて硬直する。
気付いたときには、急激に体温が上がってきていた。
何もできないまま固まっていると、やがてロップが離れる。
「ご主人を元気にするには、こうすればいいって・・・間違えてましたか?」
「あ、いや・・・元気出たというか、驚いた」
「そうですか?じゃあ、もう一回」
ロップがまた身を乗り出してきたので、慌てて肩を押さえて止める。

「あのさ、ロップ、こういうことは、好きな相手にすることで・・・」
「ボク、ご主人のこと大好きです!」
即答されて、言葉に詰まる。
「ご主人は、ボクのこと嫌いですか・・・?」
「もちろん好きだよ。嫌いなわけない」
「じゃあ、してもいいですか?」
また、言葉が出てこなくなる。
けれど、ここで断ることなんてできなかった。

「・・・わかった。いいよ、気の済むまでしても」
許可したとたん、ロップが唇に覆い被さってくる。
人の柔さに触れて、自然と目を閉じる。
慣れない感触だけれど、決して嫌なものではなくて
いけないことかもしれないけれど、心地いいなんて感じてしまっていた。




最後の休みは、どこへも行かずに家で過ごす。
明日の準備をしていると、無意識のうちに溜め息が漏れた。
「ご主人、ぎゅーってしてもいいですか・・・?」
「もちろん、いいよ」
答えると、すぐさまロップが抱きついてきた。
耳を撫でると、いつもより暖かい気がして目を向ける。
風邪でもひいたのだろうか、頬がほんのりと赤い。

「ロップ、体調が悪いのか?」
「ん・・・よくわかんないんです。ご主人にすりすりしたくなって・・・」
ロップはしきりに頬を擦り寄せ、甘えてくる。
そうして、ロップが強く抱きついてきたとき、下半身に違和感を覚えた。
体の一部が当たり、ぎくりとする。

「ご主人、なでなでしてほしいです・・・」
ややぎこちなく、耳を撫でる。
しばらくしても、ロップは一向に離れる様子がない。
「・・・ロップ、撫でるのは耳だけでいいのか?」
ぴくりと、耳が震える。
ロップは顔を上げて、じっと見詰めてくる。

「ご主人、さわさわしてください、耳だけじゃなくて、ほかのところも撫でてほしいです」
求められて、どきりとする。
そのとき、何かで気を紛らわしたかったに違いない。
「・・・寝室に行こうか」
そんなことを言って、ロップの腕を引いていた。


寝室に入り、ロップを下にしてベッドに乗り上げる。
「ご主人・・・」
せかすように、ロップは腕を回してくる。
瞬間、理性は消えてロップに覆い被さっていた。
鼻ではなく口を重ね、目を閉じる。
「ん、ん・・・」
鼻から抜けるような声が微かに聞こえ、心音が反応する。
一旦離れると、熱っぽい眼差しを目の当たりにする。

「ご主人、もっと、もっと触ってください・・・」
しきりに求められて、相手がペットだということを忘れてしまう。
もう一度同じ箇所を覆い、舌先で軽く触れた。
すると、すぐに隙間が開いて、導かれるように中へ舌を進めていた。

「ふぁ、ん・・・」
柔らかな舌に触れたとたん、甘い声が耳につく。
誘惑されるようにロップと交わり合い、口内を撫で回していた。
「は、ふ、ぁ・・・」
触れるたびに漏れる声や、温かな吐息に理性が侵される。
舌先を触れ合わせ、奥まで進んで絡ませる。
混じる唾液が飲みきれなくなって口端から伝ったところで、ゆっくりと身を離した。


一瞬、何をしていたのだろうかと我に返る。
けれど、虚ろな目で見上げてくるロップを目の当たりにしたら、また本能が先行していた。
「ご主人、もっと、別のところにも触ってほしいです・・・」
甘え上手なペットから、目が離せない。
気づけば、ロップの服のボタンを外し、素肌を晒していた。
腕以外は完全に少年のものだけれど、高揚感がおさまらない。
腹部を指の腹で撫でると、体がびくりと震えた。

「どこを、触ればいい?」
「もっと、下の方です・・・むずむずして、びくびくして・・・」
下半身に目をやると、服の上からでも変化がわかる。
慎重にズボンを脱がせると、起立しているものが目についた。
発情期、なのだろうか。
そうでなければ、飼い主に欲情するはずなんてない。
なら、早く何とかしてあげようと、ロップのそれをやんわりと包み込んだ。

「ひゃ、ぁ」
驚いたような声に、手を止める。
「ごめん、びっくりさせたか」
「そんなことないです、ないですから・・・なでなでしてください」
ここを愛撫してほしいのだと、言われて自分も恥ずかしくなる。
掌の中にあるものの感触にやや戸惑いつつも、手を少しずつ上下に動かした。

「あぁ、んぅ・・・」
往復するとロップのものが脈打ち、反応する。
感じているのだと実感すると、熱が自分にも伝わってくるようだった。
緩やかな動きを続けていると、ロップがじれったそうに身をよじる。
「もっと・・・もっと、ご主人・・・」
吐息混じりにねだられて、一瞬瞳孔が開く。
こんな状態で求められては、止められるはずがない。
応えるように、単調な往復運動だけでなく、指の腹で先をいやらしく撫で回した。

「ひゃぁ、ん、ん・・・」
よがっているのか、耳が小刻みに震える。
「ロップ、気持ちいいのか・・・?」
わかっているのに問いかけると、ロップが素直に頷く。
そう感じていることが嬉しくて、手の動きはますます早まった。
切っ先だけでなく、根元から余すとこなく触れてゆき、弱い箇所を探す。
そうして愛撫しているうちに、触れた瞬間震えが強くなるところがあった。
ロップの体が跳ね、抑えきれない反応を示す。

「や、ぁ、ご主人、そこ、だめです・・・」
「ここ?」
意地悪く、同じ箇所をなぞる。
「あっ、ふぁ、あ」
声が一段と上ずり、触れているものが脈打つ。
愛くるしい少年が、達するところが見たい。
そんな欲望に急かされて、弱いところを集中的になぞる。

「あぁ、ん、ひぁっ・・・」
確かに感じていることを示す液が漏れてきて、指を濡らす。
理性なんてとっくに消えていて、ひたすらにロップを攻めたてていた。
ぬるぬるとした卑猥な液が、さらに感度を良くする。
往復するたびにロップの体が震え、高い喘ぎが止まらない。


「可愛いな・・・」
ぽつりと、そんな言葉が漏れる。
その言葉に反応するように耳が揺れ、おぼろげな眼差しが見上げてきた。
「ご主人、ボクのこと、好きでいてくれますか・・・?」
荒い息交じりに、じっと見詰められる。
この状態で答えられることなんて、一つしかない。

「今の姿だって、すごく愛らしいって思ってる。・・・ロップ、大好きだよ」
同時に、ロップのものを握り込む。
「あぁ、んっ、ご主人・・・ああっ・・・!」
瞬間、ロップがひときわ高い声を上げる。
途端に下肢のものが強く脈動し、白濁を吐き出した。
生暖かくて粘液質な感触が、手の平に散布される。
それでも嫌悪感なんてなくて、むしろ高揚していた。

「はぁ・・・ぁ、ご主人・・・すごく、きもちよかったです・・・」
「ん・・・よかった」
汚れていない方の手で、ロップの耳を撫でる。
「ご主人・・・いつも、ボクのわがままきいてくれて、ありがとうございます。
ボク、ご主人と一緒に居られて、とっても幸せです・・・大好きです」
ロップが身を起こして、軽く唇を重ねる。
いつの間に、こんなに愛おしい存在になっていたんだろう。
そのとき、自分の胸中にあったのは、これ以上にない幸福感だった。

仕事が嫌だなんて言っていられない。
こんなに愛しい子のためにも、自分が奮闘しなければならない。
自分だけのためではきっと潰れるけれど、ロップのためならきっと持ちこたえられる。
「ロップ・・・僕の傍に居てくれ。君のためなら、僕は・・・」
そんな確信が、胸の中にあった。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
4話でいかがわしい、結構性急な感じになり申した。
こういう、普通ではない色恋沙汰が大好きでございます。