軍事国家 番外ラト編B 差分


薄らと目を開くと、腕の中におさまっていたはずの相手がいなくなっていた
目を凝らして時計を見ると、ベッドに入ってからまだ一時間も経っていなかった
それでも、寝起きの体は喉の渇きを覚えていて
僕はやや重たく感じる体を起こし、キッチンへ向かった

ラトもそこにいるだろうと思っていたが、リビングは暗く、人気がなかい
たぶん、トイレにでも行っているのだろうと、さして気にしなかった
コップ一杯の水を飲み、寝室へ戻ろうとする
しかし、その途中で洗面所から光が漏れていることに気付いた
こんな夜更けに洗面所へ何の用があるかと、僕は好奇心からその扉を開く

洗面所の奥にある浴室にも電気が点いていて、ラトはそこにいるようだった
体が冷えてしまって、風呂に入り直しているのだろうか
声をかけてみようかと、僕は一歩、浴室の扉へ近付く
そのとき、扉を通して、ラトの声が聞こえてきた

「ん・・・っ、あ・・・」
思わず、足が止まる
今の声は、ラトから発されたものなのだろうかと、耳を疑う
その声には、今までに聞いたことのないような響きが含まれていた

「あ、ぁ・・・は・・・っ」
ほどなくして、また同じような声が聞こえてくる
どう声帯を震わせれば発することができるのだろうかと、疑問に思うような上ずった声だ
初めて聞く、未知のものとも言えるその声を聞いていてもいいのだろうか
けれど、一方で、ラトがどんな状態で、そんな声を発しているのだろうかという好奇心も生まれてきていた

「は、あ・・・っ、リツ・・・さん・・・っ」
そうして迷っているとき、ふいに名を呼ばれた
途切れがちな高い声を聞いた瞬間、僕は足を進めていた
扉の奥で発されている声に、引き寄せられるように
足は勝手に扉の前まで進み、手は扉を開いていた


「ラト・・・?」
驚かせないように、控えめに声をかける
すると、ぴたりとラトの声がやんだ
いきなり姿を表した僕を、ラトは紅潮した頬に、ぼんやりとした瞳で見上げていた
座っているのに、まるで運動をしているかのように、肩で息をしている
演習後の疲れた後の息使いとは、どこか違う様子で、もう一つ、明らかに違うところがあった

「リツさん・・・何、何で、どうしてこんなとこにいるのさ!
で、出てって、見ないで、どっか行って、早く!」
ラトは早口でまくしたて、背を向けて自身の体を隠そうとする
けれど、僕はその言葉に従わず、扉を閉めるどころか、浴室へ入り、傍へしゃがみこんだ
ラトはとたんに身をちぢこませ、身を固くした

「・・・リツさんが悪いんだ。昼間、あんな思わせぶりなことしておいて、夜はさっさと寝ちゃって・・・
いくら、ずっと軍部にいたからって、こういうことを何も知らないわけじゃないよね・・・?」
ラトの言葉は尻切れで、声はか細い
何を言わんとしているのか、なんとなくだがわかっていた
さっき見た、ラトの体の様子で
そして、その状態を放置しておくと、えもいわれぬもどかしさを感じることも
自分でそれをして、試してみたわけではない
軍部で一般知識を身につけるとき、そう教わっただけだった

「ラト」
ラトの隣に座り、呼びかける
床が湿っているせいで寝具が濡れたが、それを気にしているときではなかった
しかし、ラトは顔を向けるどころか返事さえもしない
今の状態を見られてしまったことが、よほど恥ずかしいのだろう
俯きがちのラトの様子を、横から見る
自分でしていた行為のせいなのか、それとも僕に見られたせいなのか、その頬はかなり赤くなっていた

「ラト、別に隠さなくてもいい」
そう呼びかけても、ラトは顔を上げようとはしない
僕は、ラトが自慰の行為をしていても、嫌悪感など全くわいてこないでいた
それよりも、むしろラトがこうせざるをえなくなってしまったのは、僕に責任がある
だから、何も見なかったことにしてすごすごと寝室へ帰るわけにはいかない

僕がやらねばならないと、そう思った
ラト自身に恥ずかしい思いをさせるのではなく、原因を作った僕が

一度思い立つと、行動するのは早かった
ラトの正面に座り直し、髪をそっと撫でる
それだけで、ラトは怯えるように肩を震わせた
そして、僕は、ラトがこんなにも恥じらう原因となっているものに
いつもとは明らかに様子が違っている下肢のものを、自らの手に掴んだ

「やっ・・・!」
突然の刺激に、ラトの体が跳ねる
初めて見る反応に怯みそうになったが、ここで手を離すわけにはいかない
僕は、あまり強い刺激は与えないように、やんわりとそれを愛撫していった

「ぁ、あ・・・っ」
ラトから、聞いたことのない、熱っぽい声が発される
驚かずにはいられなかった
上ずった声をあげているラトと、その声をもっと聞いてみたいと思っている自分に
気づけば、胸の内には、そんな欲求が芽生えてきてしまっていて
ラトがもっと声を発するように手を動かし、熱くなっているそれに触れ続けた

「は、や・・・ぁ・・・っ」
とたんに、ラトが声を上げる
吐息が交じり、わずかに息が荒くなっている
まるで、体の内にこもる熱を和らげるように、ラトの呼気は短く、小刻みになっていた
荒くとも、ただ単に疲労しているときの呼吸とは違う
その息遣いはどこか官能的で、僕は、ラトの声だけではなく、その熱っぽさを帯びた息にさえも何かを感じていた

「ラト・・・顔を上げて」
そう呼びかけたが、ラトは躊躇う
頬をそっと包み、ゆっくりと持ち上げると、おずおずと視線が合わせられた
その顔は完全に紅潮していて、瞳はどこかぼんやりとしている
そんな様子を見たとたん、瞬間的に心音が高鳴って、目が離せなくなった
悦を感じている瞳と、焦がれているような、求められているような視線から

ラトは何も言わなかったが、その目は、この昂りを解放させてほしいと訴えかけているように感じた
掌が触れているものは、もう熱い
僕は、その熱を解放させるために、ラト自身を少し強く、掌全体を使って愛撫した

「あっ、あぁ・・・っ」
声を抑えきれないことが恥ずかしいのかラトは俯きがちになる
少しでも触れる回数を大きくするように、僕は手の動きを早めていった
上へ下へ、手を動かすたびにラトの肩が震え、声が発される
至近距離で、熱っぽい息遣いが伝わってきて
それを感じていると、なぜか僕の体もどこか熱を帯びてきている気がしていた
これが、欲を覚えているということなのだと思う
現に、僕は、ラトのあられもない姿を見続けていたくなっていて
いくらラトが肩を震わせ、反応しても、僕の手が止まることはなかった

「や、ぁぁ・・・っ、リツさん、もう・・・どいて・・・っ」
絶え絶えの声で訴えかけられるが、それを無視した
もっと、ラトに触れ続けたいという欲求は、止めようがなかった

「は、あ、や・・・っ、あぁ・・・!」
突然、ラトがいっそう上ずった声をあげ、強く目を閉じる
それと共に、手の中にあるものが瞬間的に脈打ち、震えた
とたんにそこから熱が解放され、白く濁った白濁が、服と手に散布されていた


「っ・・・は・・・・・・あ・・・ご、ごめんなさい、汚して・・・」
「いや・・・」
ラトは急にぐったりと力を無くし、虚ろな目で僕を見た
不思議と、その姿が妖艶に見える
まだ熱の余韻が残っているせいで、ほんのりと朱に染まっている姿が
「リツさん・・・着替えて、洗わないと・・・」
ラトは肩で息をしつつ、立ち上がろうとする

「まだ、座っていたほうがいい」
疲労していると一目でわかる状態の相手に、無理はさせたくない
僕は液がかかっていないほうの手でラトの肩を押し、動きを制した
手を洗おうとする前に、指の間にまで絡みついている粘液質な液体が目に入る
淫猥な感触がするそれを、僕はじっと見ていた
多少、独特の匂いがするものの、嫌なものだとは感じない
むしろ、これがラトの精なのだと思うと、自分がどこか高ぶってゆくのを感じていた


「・・・早く洗ってよ、そんなもの・・・」
恥ずかしいのか、控えめな声でラトが呟く
せかされたので、僕は絡みついている液を洗い流した
服についたものも洗った方がいいだろうかと思い、着ていた寝具を脱ぎ、お湯で流した

その間、隣からずっと視線を感じていた
もしかして、こんなことをしてしまった僕を咎めているのだろうか
恥ずかしいところを見られ、しかも精を放つところまでされてしまったことを
ラトが感じている姿をみたとき、僕は何の前触れもなく湧き上がってきた欲にかられ、自分を止められなかった
それは、ラトを達させた後でもおさまらないでいる
もう、これ以上行為をすることはできないとわかっているのに

「リツさん、ズボンも汚れてるよ・・・」
指摘され、下を向く
ラトの言うとおり、そこには、わずかだが白濁がかかっていた
本当にわずかなので、放っておいてもいいと思ったが
それではラトが羞恥を覚えてしまうのだろうと、僕は下肢の寝具も脱いだ
身につけているものは下肢の肌着だけになったが、恥じることはない
たぶん、相手が気を許した相手だからだと思う
寝具を脱いだ後、疲れ果てているラトに何と言葉をかけていいかわからず、この場から立ち去ろうとした

「リツさん、待って!」
ふいに、腕を取られ引き止められる
張り上げられた声と、腕を掴む手に、僕は動きを止めた
「リツさんは・・・リツさんは、何も感じてないの?ボクが、どんなに反応しても、リツさんは・・・」
ラトの言葉の語尾が、とたんに弱くなる
「何も感じてないわけじゃない。・・・それが何なのか、はっきりと分からないんだ」
ラトの声を聞いて、紅潮した姿を見て、僕は確かに何かを感じていた
しかし、一体何を感じているのだろうか
この欲求はどのような言葉で形容されるのか、僕は知らない
今までに、自分が感じているこの感覚を覚えたことがなかったから

「リツさん・・・もう、寝るの」
「・・・ああ、そうするつもりだ」
自分の内に芽生えた感覚は、まだおさまってはいなかったけれど
無理矢理にでも眠ってしまえばおさまりがつくだろうと、そう思っていた


「・・・リツさんも、恥ずかしい思いすればいい」
「え?」
ふいに、さっと両腕を取られて引き寄せられる
そして、気付いた時には下肢の肌着を下ろされていた
「っ・・・!?」
突然のことに、僕は驚いて尻餅をついた
ラトは距離を詰め、にじり寄ってくる

「ボクだけが恥ずかしい思いして・・・そんなの、不公平にもほどがあるよね?
だから・・・リツさんも、同じようになればいい」
「ラト、どういう・・・」
どういう意味かと尋ねようとしたが、それは叶わなかった
質問をする前に、ラトがふいに身を屈め、僕の下肢にあるものを咥えていた

「あ・・・っ!?」
突然、体が震えた
自身のものを相手に含まれたとたん、驚愕の声が上がる
温かなラトの口内に、自身のものが咥えられているなんて
早く、離させなければならない
不思議な焦りを感じ、ラトの頭へ手を伸ばす
しかし、頭に触れる直前に、液を帯びていて、柔らかなものに自身が愛撫されて、体が再び震えた

「・・・あ、ぁ・・・っ」
とたんに、声が抑えきれなくなった
今度は、驚愕ではない声が口を割って発される
僕が反応することがわかったからか、その柔らかな物による愛撫は丹念なものになった
ぬるぬるとした、液を伴う感触に、だんだんと体が熱を帯びてくる
頬は紅潮し、指先まで暖まり、そして、含まれている下肢が熱くなり
その熱を何とか逃がそうと、自然と呼気が乱れたものになってゆく
まるで、さっきのラトと同じように

いくら呼気が乱れても、ラトの愛撫は止まることがない
先端に柔らかな感触を感じたと思えば、そのまま下へ形をなぞるように這わされる
そして、無理矢理にでも咥えているものを昂らせるように、強く吸い上げられた

「っ、は、あぁっ・・・!」
ぞくぞくとした感覚が体を震わせ、呼気を乱す
羞恥を感じているのか、とっさに声帯が閉じられようと、声がくぐもったものになる
そこで、ラトが一旦身を離し、僕を見上げた

「リツさん、声、我慢しないでよ。ボクだって、さっき恥ずかしい思いしたんだからさ・・・」
声を抑えなくなったら、自分はどんな風になってしまうのだろう
それは、確実に羞恥を伴うものだと予測はついたが
先の行為でラトを辱しめてしまった僕に、拒否権はなかった
息も絶え絶えに、わずかに頷く
それを見ると、ラトは体を起こして僕の頬に触れた

「リツさんも、こんな顔するんだ。・・・もしかして、不感症なんじゃないかって、心配してたんだよ」
ラトは、何かに酔いしれるように、はたまた見惚れるように、うっとりとした瞳で僕を見詰めた
こうして落ち着いてみると、自分の心音の強さがよくわかる
ラトが離れても、下肢がまだ熱い
そして、一旦行為が中断されると、僕は言い知れぬもどかしさを感じていた

止めてほしくない
また、触れてほしい
そんな思いが、渦巻いていて、熱く脈打つ下肢のおさまりがつかない
「ラト・・・」
ほとんど無意識のうちに、名を呼んでいた
懇願し、求めるように
熱を与えてほしいと、そう訴えるかのように

「せかさなくてもいかせてあげるよ、リツさん・・・」
ラトが、再び身を屈める
そして、下肢のものが、温かな口内に含まれた
「は・・・っ、あ・・・ぁ」
すぐに柔らかなものが這わされ、また熱を覚える
僕はもう、ラトを突き離そうとは思わなかった
むしろ、ラトの好きなようにしてほしいと、そんなことを思うようになっていた
自分の考えを変えさせてしまうほどの感覚
これが、欲を覚えていることなのだと、実感した瞬間だった

しばらくは、相手をじわじわと昂らせるように、どこか控えめな愛撫が繰り返される
少しずつ、だが確実に熱が蓄積されてゆく
そうしてラトを感じているとき、ふいに感じるものがあった
ラトの口内の液とは違う、もっと粘液質な液体が、自身のものを滑り落ちてゆく感触を

「リツさん、感じてるんだね。ほら、出てきてるよ・・・」
口を離したラトが、その液を指先で拭う
「あ・・・」
僕はおずおずと、自分の下肢を見る
そこからは、さっきラトから溢れ出てきたものと同じ
白濁した、粘液質な液体が、控えめに流れ出てきていた
それは、始めて見る自分の精で、とたんに羞恥を感じた僕は、さっと視線を逸らしていた

「これなら・・・もう、手でもいけそうだね。
咥えてたら、リツさんの感じてる顔、見れないから・・・」
ラトが体を起こし、顔が目と鼻の先まで迫る
このまま重なるのだろうかと思った瞬間、下肢がラトの掌に包まれた
「は、あっ・・・」
粘液質な液ごと包み込まれ、ラトがすぐ近くにいるにもかかわらず、声をあげてしまう

「リツさん・・・ボクを見ていて」
さっき拭った液を絡ませながら、熱を帯びているものを愛撫する
「あ、っ・・・ぅ」
液の感触に、どうしようもない声があがってしまう
そんな声をラトに聞かれ、紅潮しているであろう頬を間近で見られ、羞恥心が湧き上がる
けれど、口を閉じることも、顔を背けることも忘れていた
自身を包み込んでいるものの動きは止まらず、しきりに欲を昂らせようと動かされる
すでに口内で愛撫されていたそれは、もう限界に近かった
強い高揚感が、せり上がってくる

「ラ、ラト・・・っ」
このまま触れ続けられれば、抑えきれなくなる
けれど、ここで止められても、もどかしさを覚えるだけだろう
僕は、戸惑いつつ呼びかけていた
「がまんすることないよ・・・リツさん、いって・・・」
僕が限界に近いことを知ると、とたんにラトは動きを速めた
急激に、さらなる熱が与えられてゆく
もう、この昂りを抑えられない―――

「ラト・・・ッ、は、や・・・あぁ・・・!」
自分のものかと疑いたくなるほどの、上ずった高い声が発され、指の、先の先まで力が込められる
そして、瞬間的に体が震え、止めようのない自分の精が、その場に散布されていった


「は・・・あ・・・」
震えがおさまると、とたんに脱力感に身を包まれる
肩で荒い息を繰り返し、体が疲労を示す
頭の芯がぼんやりとして、何も考えられない

虚ろな瞳で、ラトの様子を見る
その肌には、白濁した液がかかってしまっていた
「あ・・・ご、ごめん・・・」
ラトの手にはもちろん、腹部にも、胸部にも、液は広範囲に散布されていた
「ずいぶんたまってたんだね、リツさん。こういうこと、全然しないんだ・・・」
そう、こんなこと、誰かにされたことも、自分でしたことさえもなかった
感じた欲、発したことのなかった声、そして、流れ落ちた白濁の感触
全てが、初めて感じたものだったが、その感覚は不快なものではなく
むしろ、感じる熱や、この脱力感に酔いしれてしまいそうだった

まだ、体が重くて動くのがだるい
ラトにかかった液を早く洗い流してしまいたいと思ったが、どうにも億劫で仕方がない
自分で洗ってくれないだろうかと思っていた矢先、ラトがさっきまで僕に触れていた手を、自分の口元へ持ってゆき
絡みついている液を、軽く舐め取っていた

「えっ・・・」
僕は、目を丸くしてラトを見る
「ん・・・やっぱり、全然出してなかったんだね。結構苦いや」
苦いという言葉とは裏腹に、ラトは不快を表わしてはいない
むしろ、液の味に恍惚を感じているような、そんな様子だった
「ラ、ラト・・・」
自分の精を何の躊躇いもなく舐め取られ、羞恥心が湧き上がる
ラトは、くすりといたずらっぽく笑った

「わかったわかった。洗ってほしいんでしょ」
ラトがシャワーを取り、体についた液を流してゆく
僕はようやく倦怠感がましになってきたので、ラトの隣に立とうとする
しかし、とたんに肩を押されて阻まれた
「いいよ、座ってて。ボクが洗ってあげるから・・・」
ラトがしゃがんで、僕と視線を合わせる
そして、シャワーの水圧を少し弱め、出ている湯の勢いを下肢へ向けた

「え、あ・・・っ!」
それほど強くない水圧でも、今の僕にとっては充分な刺激だった
さらに、その箇所を洗うために、ラトの掌が触れる
「っ、や・・・ラト・・・っ、やめ・・・!」
先程達したばかりの箇所は、まだ敏感すぎて、やんわりと手で包みこまれるだけでも、体が震えてしまった
落ち着きかけていた体が、かっと熱くなる
シャワーの水圧と、ラトの掌の感触に、さっき以上に自身が反応を示してしまう

これ以上触れられると、おかしくなってしまう
敏感になりすぎて、強すぎる反応を示してしまう身が、耐えられなくなる
僕は、防衛本能からとっさにシャワーを奪い取り、ラトの手を払い除けていた
抵抗されて我に返ったのか、ラトははっとしたような表情を見せた
脱力感が未だに消えず、これ以上の行為はできそうにない
その訴えは届いたのか、ラトは申し訳なさそうに少し目を伏せ、シャワーを止めた

「・・・ごめんなさい。・・・・・・もう、寝よっか」
ラトはのろのろと立ち上がり、浴室から出て行く
残された僕は大きく息をつき、ひとまず倦怠感が和らぐのを待つことにした




その後、寝室へ戻ると、ラトは背を向けて眠っていた
僕は、起こさないように静かにベッドに入る
ラトの様子を窺ってみたいとも思ったが、同じく倦怠感を覚えて疲れているだろうと思い、そっとしておくことにした
枕の端に頭を乗せ、横になる
目を閉じると、様々な考えが浮かんでくるようだった

ラトに触れ、そして触れられた
その行為をしたことはなくとも、ただの友人同士がすることではないとわかっている
そう思っても、僕もラトも、お互いを拒否しなかった
僕は、ラトに友人以上の感情を抱いているのだろうか

ラトのような弟がいればいいと思ったことはある
けれど、僕が感じている感情は、本当に近親に思うものなのだろうか
庇護したくなり、触れずにはいられなくなる
そんな思いを誘発させるものは、近親を大切に思うことと同じなのだろうか
それとも、お互いに触れられることを許すということは
もっと深い、密接な関係を思わせるものなのだろうか

触れたい、触れられたいと、その両方を望むこと
それは、僕が知りようもなかった幸せな感覚なのかもしれなかった




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
最初、これを三話として書いていたのですが
もう完全にクライマックスになってしまって、次につなげるのが難しかったので没にしたものです
なので、この続きはありません、あしからず・・・