一血卍傑 マサカドサマ編3
琉生は、朝からそわそわして落ち着かなかった。
そろそろ、長期遠征からマサカドサマが返って来る。
いくら豪傑とは言え、一人で行くなんて言い出すものだから最初は引き留めたが
マサカドサマの腕を信じ、単身行くことを見送っていた。
予定では、今夜帰還することになっている。
朝からマサカドサマのことが気がかりで、いろいろなことが手につかない。
時間がとても長く感じたが、ようやく陽が落ちた。
社の縁側に座り、外へ続く道をじっと見る。
まだ人影はないが、今日は一晩中でも待つつもりだった。
数時間、そうして待っていた。
カァ君に心配されたが、部屋に戻る気はない。
けれど、予定通りにはいかないかと、やや諦めかける。
徐々に気落ちしてきたとき、風に乗って血生臭い匂いが漂ってきた。
はっとして、だんだんと濃くなる血の匂いへ向かって駆ける。
自分を気絶させる嫌な匂い、けれど今はそうも言っていられない。
道の奥から姿を現したのは、赤い服をまとった英傑。
それは、鮮血にまみれ白より赤の面積の方が多くなっているだけだった。
普通なら、悲鳴を上げて遠ざかるだろう。
けれど、その鬼神は待ち望んでいた相手なのだ。
「お帰り・・・マサカドサマ」
鮮血をまとう相手に、優しく呼びかける。
「帰還したぞ、ちゃんと、首と胴と一緒にな」
琉生は手を伸ばし、首の傷へ触れる。
そこに外傷はないようで、ほっとした。
どれが自分の血で、返り血かわかったものではないので、手当てしたいけれど
血の香りをまとったままでは、集中できそうにない。
「早速だけど、湯浴みでもしようか。匂いがついたままだと集中できなくて・・・」
「そうだな、このままでは将軍を抱くこともできん」
抱く、が意味深に聞こえてしまって琉生は少し戸惑うが
ただ疲れを癒したいだけで他意はないと、マサカドサマの手を引いた。
大浴場に行けば他の英傑を驚かせてしまいそうで、個室の浴室に移る。
血にまみれた衣服は明日洗ってもらおうと隅に寄せておいて、琉生も浴室に入った。
「血の量の割には、ほとんど傷がないみたいだね」
「半端な悪霊どもに、俺が致命傷を負うとでも思うてか」
「侮ってるわけじゃないよ。・・・でも、心配だった」
いくら強靭な英傑と言えども、遠方へ一人で行かせるのは不安だった。
それが、仲睦まじくなった相手ならなおさらだ。
「背中でも流すよ」
琉生はマサカドサマの後ろに回り、背を柔らかい布で擦る。
広くて筋肉質で、たくましさを感じる体つき。
こうしてしげしげと眺めるのは初めてで、男らしくて羨ましい。
掌で触れると、その固さがよくわかる。
そうしてじっとしていると、もっと広い面積で触れてみたくなる。
多少失礼かと思いつつも、マサカドサマの背に身を寄せていた。
浴室に居るから当然だが、体が温かい。
人の温かみを求めていたようで、触れている間は安らいでいた。
「将軍、どうせなら前に回ると良い」
「あ、ご、ごめん」
背後を取られるのは落ち着かないのかと、琉生はさっと離れる。
けれど、前に回ることはやや躊躇われた。
もたもたしていると腕を取られてぐいと引かれ、体がマサカドサマの前に移動し視線が交わった。
じっと見詰められると、どこか落ち着きがなくなる。
離れようとしないでいると背に腕が回り、あぐらをかいているマサカドサマの上に乗る形になった。
膝立ちになり、とっさに下腹部が合わさるのを防いだが
素肌を間近にするだけで、心音が反応した。
「遠出をすると別種の悪霊が居て中々楽しめた。だが・・・」
マサカドサマは、琉生の頬へ片手を添える。
「将軍の姿を見て、声を聞き、肌に触れることを渇望していた。どんなに悪霊を切っても満たされぬものよ」
それほど望んでいてくれたのかと、琉生の頬が緩む。
誰かの特別な存在になれることが嬉しい。
独神と英傑と言う立場はあるが、自分にとってもマサカドサマは特別だった。
「マサカドサマを、癒せるんなら・・・」
琉生は、そろそろと大きな傷口の辺りに手を当てる。
そこは、特に熱を持っているように温度が高い。
マサカドサマは琉生の後頭部へ手を移動させ、軽く押す。
琉生は引き寄せられるように体を下げ、身を近づけてゆき
どちらともなく、唇が重なった。
こうして触れ合うと、胸の内から温かみが湧き上がってくる。
無理矢理ではない行為は、自分からも求めてしまいたくなる。
しばらく、その存在をただ感じ取るように重ね合っていて
数分の後、特にそれ以上のことはなく離れた。
「将軍、俺との間に隙間など作らずに、身を委ねてくれてもよいのだぞ?」
「あ・・・うん、でも、そうなると・・・」
立ち膝などせずに、密着しろと言われる。
けれど、そうすればどこが触れるか子供でもわかることで
そこを重ねてしまえば、離れがたくなることは決まっていた。
長期遠征から帰還したばかりで、余計に疲れるのではないかと懸念する。
まごまごしていると、マサカドサマがふいに首元へ唇を寄せる。
動脈の辺りを目ざとく見つけ、舌先で血管をつうっとなぞっていた。
「ひ、う・・・」
血の流れと共に弄られた感覚が昇ってくるようで、琉生は肩を震わせる。
下から上へ、ゆっくりと舌が伝う。
何も隠すものがない無防備な状態で、そんなところへ触れられては反応しない方が無理だ。
動脈をなぞり終えると、マサカドサマは首筋を軽く甘噛みする。
「ひゃっ・・・」
固い歯が当たったけれど、琉生に怯えはない。
相手の皮膚を噛み千切り、血を啜るような、死に至らしめることなどしないと信頼していた。
ただ、力を抜かせようと、違う刺激を与える行為。
マサカドサマは、何度か琉生の首筋を噛んではその痕を舌で弄り続ける。
「あ、ぅぅ・・・」
マサカドサマの行動一つで、体を支える力が徐々に抜けてしまう。
心が、この身を委ねてしまいたいと望んでいるようで
観念したように膝が折れ、体の前面が合わさっていた。
胸部が、深い傷に接する。
ちゃんと心臓の音がしていて、まるで共鳴するようだ。
「・・・マサカドサマ、帰還したばかりで負担になる・・・」
「将軍の身を抱くことが負担になどなるものか」
抱く、という単語がどうしても意味深に聞こえてしまう。
それでもいいと、そう思って琉生はマサカドサマに腕を回した。
もう、体が密接になっていても構わないと。
「身を委ねてくれたこと、感謝する」
マサカドサマの手が背に回り、背骨に沿って掌がなぞる。
その手は、どんどん下方へ下がってゆく。
ぎくりとしたけれど、琉生はマサカドサマから離れない。
それを確認事項としたかのように、指が後ろの隙間へ滑り込む。
そして、奥の窪まりへ人差し指が添えられていて、その中へと埋められていた。
「ひゃ、っ・・・」
驚きの混じった声をあげ、琉生はマサカドサマにしがみついた。
突き放されないことをよしとして、その指は少しずつ奥へ進んでゆく。
反射的に窪みが縮こまると、動きは一旦止まった。
じりじりとした熱がそこから込み上げてくるようで、琉生は息を吐く。
「無理に押し進めることはせん、ゆるりと解してゆこう。その方が長い間将軍を抱いていられるからな」
「う、ん・・・」
琉生はマサカドサマを信頼し、ただただ肩にしがみついていた。
少しずつ指は動かされ、本数も増える。
琉生の息は熱っぽくなり、心音も落ち着かなくなる。
最も変化があったのは、言うまでもなく下腹部の方だ。
ゆったりとした動作でも感じるものは蓄積されてゆき、今となっては猛りが隠しようもない。
それは、自ずとマサカドサマの腹部に当たり、悦を感じていることがはっきりとわかってしまう。
そんな琉生の反応が密接に伝わる中で、高揚感を覚えないほうが無理と言うものだった。
「そろそろ、良い頃合いのようだな」
幾分か体が慣れ、締め付ける力が弱まってきたところで、マサカドサマは指を抜く。
琉生はほっと息をつき、力を抜いたが
丹念に緩められた箇所は、刺激がなくなったとたんに疼いてしまっていた。
腰が軽く持ち上げられ、指が抜かれた箇所に膨張したものがあてがわれる。
そして、慎重に体が落とされていった。
「あう・・・!」
とたんに全身に力が込められて、琉生はぎゅっと目を閉じる。
その反応は、痛みなどの辛いものとは正反対の感覚からだ。
それをわかっていて、マサカドサマは琉生の身を下ろしてゆく。
「は、ん・・・あ、あ・・・」
少しずつ体の中が圧迫されてゆき、声の収まりがつかない。
先へ進むことを押し留めるよう、そこは縮こまるけれど
まるで、相手の欲を搾り取るような動きのようでもあった。
琉生の狭い内部は、完全に猛りを咥え込む。
もう自分を支える力はなく、体重をマサカドサマに預けていた。
呼吸をするたびに、自身の中に相手の存在をはっきりと感じる。
求めて止まないその身が有ることで、身も心も温かみに包まれていた。
「苦しくはないか」
ふいの問いかけに、琉生は目を開けマサカドサマを見る。
気遣いの言葉は嬉しい、けれど遠慮はしてほしくなかった。
「僕・・・朝から何も手につかなかった・・・。
きっと、この時を待ち望んでいたんだと思う・・・。マサカドサマと繋がることを・・・」
虚ろな眼差しのまま告げられ、マサカドサマの下肢が脈動する。
今直ぐ躰を突き動かし、気が触れるほど犯してしまいたい。
だが、一時の欲望で琉生を壊してしまうほど愚かではなかった。
「喜ばしいことを言ってくれるものよ。ならば、共に果てるとしようか・・・」
猛りを奥に沈めたまま、マサカドサマは勃ちきっている琉生のものを掴む。
「ひゃ、んっ」
琉生は驚いたように収縮し、内部のものを圧迫する。
その反応をもっと求めるよう、マサカドサマは広い掌で琉生を包み込む。
「あ・・・マサカドサマ・・・」
無意識のうちに、欲している相手の名を呼ぶ。
甘い声で呼びかけられ、マサカドサマの下肢はまた脈動した。
求められているのなら、この欲を一滴残らず注ぎ込んでしまいたい。
本能に動かされるように、マサカドサマは琉生を包む手を上下に動かしていく。
「ん、ん・・・あぁ、あ・・・っ」
相手を最奥に留めたまま前を擦られると、収縮が収まらなくなる。
身体の表面も内側も、特に下腹部が熱くてたまらない。
手淫に翻弄され、猛りに身を暴かれ、欲深くなってしまう。
マサカドサマが欲しい。
その望みは、ほどなくして叶えられる。
昇華させる刺激が欲しいのは相手も同じで
広い掌が、昂っているものを強めに握りこんでいた。
「ひゃ、あぁ、んっ、あ・・・!」
望んでいた感覚を悦ぶように、体は感じるままに反応する。
白濁が散布されると同時に、後ろは中を犯すものを激しく圧迫していた。
「ッ・・・」
微かに呻き、マサカドサマは同時に果てる。
最奥に留められたままのものから欲深い液が溢れ出し、琉生の中を濡らす。
どくん、と何度か脈動し、一滴残らず注がれていく。
「ふ、あぁ・・・」
粘液質な、卑猥な感触に、琉生は吐息を漏らす。
ぶつけられた欲望を?み込んでしまうよう、琉生の中も脈打っていた。
ほどなくして、マサカドサマを中に収めたまま、肩にぐったりともたれかかる。
「あったかい・・・な・・・」
ただ単に、湯浴みをして温まるのとはわけが違う。
体の真から、心の奥底から幸福感が湧き上がる。
「すまんな、背を流すだけで終わらずに」
「ううん・・・僕も、こうしたかったから・・・」
このまま繋がっていてもいいと思うさなか、マサカドサマに体が持ち上げられる。
ゆっくりと身が抜かれてゆき、琉生は身震いした。
繋がりが離れたとたんに、奥から濃い液体が中を伝ってくる。
卑猥な感触に、窪まりは疼くようにすぼまっていた。
[newpage]
今夜は、これで離れてしまうのだろうか。
離れていた期間があったからか、とたんに名残惜しくなる。
「・・・あの、マサカドサマ・・・」
「異物感があるのなら、掻き出すか」
「そ、そういうことじゃなくて・・・。・・・マサカドサマの負担になるんなら、全然構わないんだけれど・・・その・・・もう、少し・・・」
恥知らずなことを言っている気がして、とても歯切れが悪い。
言わんとしていることをなんとなく察したのか、マサカドサマは口端を上げる。
「将軍、はっきり伝えてもらわねば俺も動きようがない」
「・・・・・・あの・・・もう、一度・・・・・・マサカドサマと・・・・・・繋がり、たい・・・」
身を抜かれた瞬間から、疼きが治まらない。
淫乱のようなことを言っているようだけれど、本心は隠すことができなかった。
自分の主から求められ、先に達したはずの猛りが再び欲を取り戻す。
「負担になどならんと言っただろう。将軍から求められる、とても喜ばしいことよ」
マサカドサマは琉生の腰を抱き寄せ、思いのたけをぶつけるように唇を重ねる。
もう逃すことはないと、相手に覚悟させるように。
琉生は目を閉じ、力を抜く。
抵抗することはないと、相手に示すように。
「将軍、一度湯に入って休むか」
折角の気遣いだが、琉生は首を横に振る。
「・・・マサカドサマのが、流れちゃうから・・・」
もごもごと控えめに言われ、マサカドサマはさらにいきり立つ。
とたんに、琉生を木の床に押し倒していた。
「煽ることを言う・・・」
誘い掛けられ、マサカドサマの理性は揺らぎに揺らぐ。
琉生を眼下に見据え、下の窪みへ手を伸ばしていた。
そこはまだ緩く、すんなりと指を受け入れる。
「んん・・・」
粘液質な液が中を満たしていて、指がゆったりと掻き回す。
卑猥な感触は身を昂らせ、控えめな刺激は相手を欲する要因になる。
「ほう、もう欲深くなっているようだな」
マサカドサマは、琉生のものをやんわりと撫でる。
「あ・・・うう」
先に吐き出したはずの熱いものが、再び溜まっている。
マサカドサマの掌に撫でられ、そこは悦びを覚えていた。
前に触れられ、指を咥えている個所がきゅっと締まる。
けれど、それだけでは足りないと疼いていた。
どうしようもない本能を今更抑制できなくて、思わずマサカドサマの首に腕を回す。
我慢が効かなくなったのは相手も同じ、マサカドサマは指を抜き、自らを琉生にあてがう。
わずかに息を飲んだ瞬間、それは押し進められていた。
「あぁっ・・・!」
ぬるりとした感触と共に、圧迫感がよみがえる。
潤滑剤があり、熱い猛りは苦も無く奥へ埋められていく。
じりじりと中を侵され収縮はするけれど、抑止力にはならない。
最奥を暴いても、そこで止まる訳ではない。
マサカドサマが一旦身を引いて行くと、反射的に縮こまった。
「まるで引き留められているようだな」
「だ、だって・・・体、が・・・」
自分でしているわけではない、全て反射的な行動。
ただ、そうなってしまうのも、相手を求め欲しているからに違いなかった。
「将軍から欲されているのだ、応えなければなるまい。先よりも激しくな・・・」
身を引いたマサカドサマは、己の身を一気に奥まで進め琉生を突き上げた。
「ああっ・・・!」
とたんに強い悦の感覚が襲いかかってきて、琉生は身を震わせて喘ぐ。
窪みは激しく収縮したけれど、中の動きは止まらない。
抵抗をものともせず、中ほどまで引き、再び奥まで挿入する。
「あ、あ、ひ、ぁっ・・・」
往復運動が一回成される度に衝撃が走り、甘い声が抑えられない。
先に注がれた液が事を助長し、滑らかに動き続ける。
苦しい、けれど続けてほしい。
快楽が強くて、頭も体もどうにかなってしまいそうで、恐怖ではないけれど、琉生の目には涙が滲んでいた。
目が潤んでいることを目の当たりにして、ぴた、と動きが止まる。
琉生はぜいぜいと肩で息をして、マサカドサマを見上げた。
本来なら、相手を泣かせてしまうことは喜ばしいことではない。
だが、悲しみからではない涙は欲情を膨らませる大きな要因になる。
連動するように、マサカドサマの下肢は琉生の中でさらに膨張していた。
「あ、ぅ・・・マサカド、サマ・・・なんだか、大きく、なって・・・」
蕩けるような甘い声が、耳をも侵す。
即座に、マサカドサマは身を下げ、琉生の口を塞いでいた。
開いたままの口内へ、舌を滑り込ませてすぐに絡ませ合う。
「は、ぁ・・・ふぁ・・・んん・・・」
息が落ち着かないさなかに交わり、多少苦しくなる。
それでも繋がっていたくて、琉生は両腕をマサカドサマの首に回していた。
ますます煽られ、マサカドサマは巧みに絡みつかせ、琉生を自分の口内へ誘い掛ける。
引き込まれるままに、琉生はマサカドサマの中へ触れていた。
相手が自分の思うままになっている状況に、高揚感を覚えずにはいられない。
欲望が先行し、マサカドサマはその舌に軽く犬歯を突き立てる。
そして、ぷつりと表面を切り出血させていた。
「ん・・・!う・・・」
刃物で切られたような痛みがし、琉生はわずかに呻く。
微かに感じる血の匂いに、マサカドサマはその舌をきつく吸う。
「んん、っ・・・!ん・・・」
血を、唾液を吸い上げられ、このまま飲み込まれてしまうんじゃないかと錯覚する。
それでもいいなんて思ってしまうのは、既に心が取り込まれているからだろうと、そう感じていた。
上も下も繋がっていて、猛りは痛いほど昂っている。
早く解放してほしいとせがむように、先端からはじわりと白濁が滲み出ていた。
マサカドサマが体を起こし、やっと口が解放される。
少し楽になったと思いきや、再び下半身が動き始めた。
「あぁ、んん・・・っ」
前後の動きは大きく、琉生を激しく揺さぶる。
浅く引いて深く突く動作は、繰り返す度に限界へと近づけていく。
奥へ届くと反射的に締め付け、その存在をはっきりと感じてしまう。
体も気も昂って、衝動を堪える術がない。
「将軍よ、俺の精が欲しいか」
恥じらいもなく、直接的に問われる。
今更、羞恥心とか、言いにくいとか、そんな理性的なものは飛んでいた。
「マサカドサマ・・・欲しい・・・このまま、離れないで・・・」
本能のままに求め訴え、自らも相手を引き寄せる。
もう何十回目か、とたんにマサカドサマは琉生を突き上げていた。
「あ、あ、んっ・・・!っ、あぁ、や・・・!」
甘い喘ぎと同時に、今まで以上にきつくマサカドサマを圧迫する。
ひときわ強い衝動が全身に走った瞬間、前のものがかっと熱くなり震えた。
「将軍・・・ッ・・・」
ほとんど同時に、マサカドサマも果てる。
濃い液体がさらに中へ注がれ、満ちて行く。
奥へ流れ落ちたものは一滴も出すことができなくて
琉生は虚ろな目をしたまま、その精を体に受け止めていた。
ぐったりと力が抜け、もう指一本動かすのも怠い。
下半身は粘液質な感触で溢れているけれど、洗い流す気力がなかった。
「将軍・・・」
マサカドサマは琉生の体を抱き、ゆっくりと起こし、労わるように抱きしめる。
優しい抱擁が心地よくて、琉生は静かに目を閉じる。
行為が終わった後でも、このまま身を預けていたかった。
湯浴みが終わった後、マサカドサマは琉生を部屋まで運び、布団に寝かせる。
体を拭いたり服を着せたりと、何から何まで介助し、今も琉生の隣に寄り添い傍に居た。
「すまんな、久々とは言え無理をさせた」
マサカドサマは、労わるように琉生の髪を撫でる。
「ん・・・大丈夫。そんなに痛くもなかったし・・・疲れることは疲れたけど、運んでくれたし・・・」
行為自体は激しくても、こうした気遣いが何より嬉しい。
琉生は甘えるように、自らマサカドサマの首元に擦り寄っていた。
マサカドサマはふっと笑み、留めるよう体を抱く。
以前は恐れさえ抱いていた相手なのに、今はこんなにも接したがっている。
残酷なだけではない、こうして慈愛を感じさせるような触れ合いもできると知ったから。
腕の中で眠り、朝目覚めると、ちょうどマサカドサマが軍服に着替えているところだった。
「・・・もう、行くのか」
琉生が立ち上がろうとする前に、マサカドサマが膝まづいて背を支える。
「早く出れば、それだけ帰還も早まる。・・・体に痛む所はないか」
「ん・・・少し、腰が怠いけど大丈夫」
下腹部にも、もう違和感はない。
肝炎に体の中に取り込んでしまったのだと自覚する。
不快感はなく、ただただ赤面しそうになるだけだ。
「あのさ、遠征は・・・」
琉生は、未練がましい言葉を途中で閉ざす。
決して、私情で討伐を引き留めてはいけないとわかっていた。
「何、前ほど時間はかからん」
マサカドサマは微かに笑み、琉生の髪をそっと撫でる。
そして、耳元へ唇を寄せて怪しく囁いた。
「帰還した時は、また背を流してくれるか」
その言葉で、琉生の頬がかっと朱に染まる。
激しい行為が、自分から求め訴えたことが思い起こされてしまう。
「もう、あのような激しい事は承諾してはくれぬか」
「う、う・・・そんなこと、ない・・・けど・・・」
言葉が、どんどん小さくなる。
面白がるように、マサカドサマは琉生の頭をわしわしと撫でた。
声は小さくても、偽りではない。
再び出会うときも、血にまみれていてもいいとさえ思う。
そうすれば、湯浴みをしようと、自然とそう言えるから。