限りなく危ない夢と妄想12


前に、シュンと会ったとき、僕はシュンが想い人と結ばれればいいと願っていた。
けれど、節操のない奴の望みなんて叶えてはもらえなかったようで。
僕はシンに頼まれて、残念な結果を慰めるため、家に来ていた。

「ルイ、また刈り出して悪い、シュンの奴がお前と行きたいって言うもんだから」
「気にしないでくれ。僕も、シュンといたら楽しいし、懐いてくれるのはいいことだ」
どういう流れになったのかというと、シュンが友人から告白の返事を貰ったのだが。
そこで、友達としてしか見られないという結果に終わったらしい。

絶交はされなかったからいいと、本人は強がっていたが。
身内からしてみれば、時たま暗い目をして明らかに落ち込んでいるとわかったようだ。
見ていられなくて、シンが遊びにでも行くかと提案したところ。
それなら、僕とカラオケに行きたいと、そう指名があった。


「シュン、何やってんだ、もうルイが来てるぞ!」
シンが部屋に向かって声をかけると、慌ただしい足音と共にシュンがやって来た。
「ルイさん、待たせてごめんなさい」
焦って服を着たのか、袖口が折れ曲がり、襟が立っている。
赤と黒のチェックの服に、ダメージジーンズといういでたちは格好良かったが、詰めの甘さに子供っぽさを感じた。

「今来たばかりだよ。行く前に、服を少し直さないとな」
シュンの腕を持ち上げて袖を直し、首元に触れて襟を直す。
服を直される、なんて子供扱いされたことが恥ずかしかったのか、シュンは急に静かになっていた。

「ほら、さっさと行ってこい。あんまり遅くなるなよ」
「わ、わかってるよ。ルイさん、行こう」
シュンが早足で出て行ったので、僕も急いで後を追った。




近所のカラオケボックスは料金が安い事で定評があり、学生に人気だ。
満員で入れないこともあるのだが、今日は運の良い事にすんなりと部屋を取ることができた。
フリータイムを設定して部屋に入ると、シュンは早速曲を選び始めた。

「お、ゲームのテーマソング入ってるし、新作アニメのOPもある!」
選曲にも子供らしさを感じて、僕はかすかに笑う。
シュンが曲を入れると、何かのゲームのテーマソングだろうか、テンポの早い曲が流れ始める。
背景画像には激しい戦闘シーンが映し出されていて、曲調とよく合っていた。


それにしても、シュンの声は少しシンと似ていて聞き心地が良い。
原曲は知らないけれど音程が外れている感じはせず、歌い慣れているようだった。
早い曲が好きなのか、シュンは足でリズムをとって楽しそうにしている。
僕はじっと、聞き心地の良い声に聞き入っていた。

やがて、音がフェードアウトして音楽が止まる。
まだ次の曲を入れていなかったので、僕はアーティストから曲を探した。

「はー、大声出すと気持ち良いな。ルイさんは何歌うの?」
「そうだな・・・今から選ぶよ」
早い曲が好きならそれに合わせようと、歌い出しを思い出しつつ選ぶ。
何を歌うのか興味があるのか、シュンはすぐ隣でじっと操作盤を見ていた。
せかされているようで焦ったが、目的の曲を見つけたのですぐに送信する。
入れたのは、やや昔のアニソンだった。

「あ、このアニメ、昔よく見てたやつだ!」
選曲は正解だったらしく、シュンはアニメキャラが映された画面に見入る。
僕は音楽番組を見ないので、ドラマやアニメ、CMで流れる曲しか知らない。
偏ったレパートリーだが、幸いにもシュンの趣味に合っていたようだ。
オープニングテーマにはアップテンポなものが多く、それも好みだったようで。
自分が歌う番でなくとも、楽しんでくれているようだった。


「ルイさん歌うまいんだね!採点したら、兄ちゃんといい勝負できるかも」
「そうかな、ありがとう」
自分の声と、相手が聞いている声の印象が違うもので。
音程が合っていても聞き心地が良いかどうかはわからなかったが、どうやらお気に召したようでほっとした。

その後は、お互いにアップテンポな曲のオンパレードだった。
主にアニソンが中心で、昔のものも最新のものもあり、耳が喜んでいる感じがした。
交代で歌っていたが、少し疲れてきて一旦マイクを置く。
シュンも同じタイミングで歌を止め、隣に座った。




「ルイさん、今日はオレのわがままに付き合ってくれてありがとう。。
何か、家族と行くのちょっと恥ずかしくて」
「そういう年頃だもんな」
そこで会話が途切れ、歌っていたときとは裏腹に静かな雰囲気が流れる。
話を促すこともなく、僕は画面に流れる広告をぼんやりと見ていた。

「・・・兄ちゃんから、聞いてる?」
聞いたからここへ来たのだと、僕は頷く。
「これからも、友達でいようって。。
絶交されなかっただけよかったはずなのに、オレ・・・」
言いにくいことがあるのか、シュンの言葉は途切れがちになる。
フリータイムの時間はまだまだあるので焦る必要はないと、僕はじっと言葉を聞いていた。

「あー、キスしたかった!いろいろ触りたかったー!」
思いのたけを吐き出すように、シュンが大声で叫んだ。
本音が抑えきれなかったのだろう、ここが防音室で良かった。
引かれる発現かもしれないが、これが思春期の欲と青春なのかと、悪い印象は持たなかった。

「変態かって思うかもしれないけど・・・オレ、何か、そんな気持ちが溢れてきて・・・」
「当たり前の反応だよ。もう少し歌って気を紛らわそう」
僕がマイクに手を伸ばすと、それを止めるようにシュンの手が重なった。
もう歌う気はないのかと隣を見ると、やけに真剣な瞳に見詰められていた。


「・・・ルイさん、年下は嫌?」
「え」
突拍子もない発言に、僕は固まってしまう。
じっとしていると、シュンが近付いて来る。
何をしようとしているのか気付き、僕ははっとして肩を押した。

「そういうことは、本当に好きな相手とした方がいい。自暴自棄になったら駄目だ」
そう言うと、シュンはやけに素直に身を引いた。
「普通、何するんだって怒るよ?それなのに、オレのこと心配するようなこと言って」
「僕は・・・普通じゃないから」
本当は、シュンに説教できる身ではなかった。

僕は、好感を持っている相手から求められたら、拒めない。
相手が離れて行ってしまうのが怖くて、望んでいる事なら叶えたいと思ってしまう。
そうして相手が満足することで、僕自身も満たされて、安心する。
特に、僕は欲望が強いのか、誰一人として手放したくなくて。
だから、だらしなくも不貞を働いてしまっていた。


「ルイさん、一回だけ、駄目かな・・・」
じっと直視され、視線を逸らせなくなる。
一緒に遊園地へ行ったときから、シュンは活発で良い子だと、好感を持ってしまった。
それは恋愛感情ではないにせよ、要求に応えたがる厄介な性質が反応している。
それに、一度湧き上がった好奇心や欲はそう簡単に抑えられるものではないと知っていた。

「・・・わかった。シュンがしたいんなら」
そう言ったとたん、瞬く間に唇が塞がれていた。
一切の迷いのない口付けに、動揺する。
少なからず好意を持ってくれていることは嬉しかったが、本当に許してもよかったのだろうかという懸念もあった。

一回を長く味わおうとしているのか、触れ合っている時間は長くて。
わずかに身を引こうとすると、瞬時に後頭部に手がまわされて、引き寄せられていた。
唇が深く重なり合い、鮮明にその感触を感じるようになる。
最初は冷静でいたけれど、数秒では終わらない口付けに、平静ではいられなくなりそうだった。

何とか平常心を保とうと、余計なことは考えないようにする。
やがて、やっと満足したのか、シュンが離れた。
まだ目と鼻の先にある顔は赤く染まっていて、初々しさが見て取れた。


「ここって、すっごい柔らかいんだ・・・なんか、オレ、すごいドキドキしてる」
こんな相手に心音を高鳴らせてはいけないと、シュンに忠告したかったが。
自分も人の事は言えないので、ただ黙っていた。

「ルイさん、他に、兄ちゃん達と、どんな事してるの」
「えっ・・・ま、まあ、触ったり、舐めたり・・・いろいろと・・・」
羞恥心がないわけではないので、とても細部まで言うことはできない。
そうやって、素直に答えてしまったのがいけなかった。
シュンは首元へ身を寄せ、今度はそこへ唇を触れさせていた。

「っ、シュン」
触れた次の瞬間には、もっと柔い、湿ったものが首筋を這った。
液を帯びた感触に身震いし、声を出さないようとたんに閉口する。
まるで、犬がじゃれつくように、縦横無尽に柔いものが触れていく。
堪え切れなくなりそうで、僕は思わずシュンの肩を押していた。

「シュン、止めるんだ・・・」
何とかシュンを引き離すと、とたんに大人しくなった。
「されるのが嫌なら、オレにして」
真面目な表情が、冗談ではないのだと告げている。
欲が強くなり、見境がなくなっているのだろう。

「・・・もう、出よう。料金は払うから」
返答も聞かず、僕は辺りを片付けて立ち上がった。
これ以上ここにいたら、自分も、相手も止められなくなる。
時間はあり余っていたが、外へ出たら流石に大胆な発言はしなくなるだろうと、さっさと部屋を出ていた。





案の定、外へ出るとシュンは黙りこくっていた。
励ましてくれと頼まれて来たのに、厳しい事をしてしまったかと心苦しくなる。
会話もないまま歩いていると、家の近くに来たところで、シュンの歩みがぴたりと止まった。

「ルイさん、オレ・・・さっき、キスしたときから、ずっとドキドキしっぱなしで、変なんだ。。
・・・まだ、帰りたくない・・・」
絞り出したようなか細い声に、足を止める。
シュンはそれ以上何も言わず、僕の袖口を掴む。
それが何を示しているのか、察してしまっていた。

「・・・さっきはなすがままにされてたけど、僕も男なんだ。家に来たら、どうなるかわからない」
本来は女性に対して使う台詞だが、抵抗はない。
警告しても手は離されず、僕は軽く溜息を吐いた。
シュンに対してではなく、断れない自分に。





僕は家にシュンを招き、自室へ通した。
そして、辺りを観察する間も与えないまま、ベッドへ押し倒す。
多少乱暴だったが、途中で怖くなって、止めてほしいと言ってくれてもよかった。
相手が拒まなければ、僕はきっと自分を止められない。

「嫌になったら、すぐに言ってくれ」
拒みやすいようにそう促したが、シュンは僕を見詰めたまま視線を逸らさなかった。
実際、相手を完全にリードしたことは1回しかない。
僕は自分がされたことを思い出し、シュンの耳元に唇を寄せ、やんわりと噛んだ。

「う・・・」
とたんに、シュンが肩を震わせる。
わずかに触れただけで反応する体は、行為に全く慣れていないと示しているようだった。
その相手が、こんな節操のない奴で申し訳なく思う。
けれど、今更中断するのは相手にとって酷なことだ。
あまり負い目を考えないようにし、耳にゆっくりと舌を這わせて行った。

「ひ、あ・・・」
また、シュンの肩が震える。
そうやって怯えて、たまらなくなって押し退けてくれてもよかった。
けれど、抵抗する素振りはなく、舌はシュンの耳の形をなぞり続ける。
外側を湿らせ、わずかに内側にも触れてゆく。
もう濡れていない箇所がなくなったところで身を離すと、シュンの顔は真っ赤になっていた。


「ほら、恥ずかしいだろ?嫌なら、すぐに止めるから」
再び促したが、シュンは首を横に振る。
「何か、体がぞくぞくしたけど、熱い・・・変なんだけど、気持ち悪くない・・・」
その表現は、僕がされているときと同じものだった。
肌を露わにすれば動揺するかと、上半身の服のボタンを外す。
わざと動作をゆっくりとしていたが、止められることはなくて、素肌がさらけ出された。

まだ成熟しきっていない、中学生の体を見るとやはり罪悪感を覚える。
今、拒んでほしいという思いと、このまま行為を進めて満足させたいという思いが交錯していた。
僕は身を下ろし、シュンの心臓の辺りに耳を寄せる。
鼓動は早く、強く鳴っていて、体が反応しているのだとわかる。

自分がしたことで、相手が胸を高鳴らせていることは喜ばしいことだけれど、複雑だった。
鼓動は、早く続きをしてほしいと急き立てる。
少し待っても落ち着かないので、もう、欲を解消させるしかないと思った。
これは単なる自慰の助長だと自分に言い聞かせ、身を起こして下肢の服へ手をかける。
シュンの表情がわずかに強張ったが、それでも手はシーツに括りつけられているように断固として動かなかった。


「・・・僕は、君の本命にはなれない。それでも、いいのか」
「わかってる、兄ちゃんから聞いてるし・・・。それでも、ルイさんに、してほしい」
何をどう聞いたのかは知らないが、恐らく、こういうことを頼んでもいい存在だと認知されたのだろう。
その通りなのだから、失礼でも何でもない。
むしろ、その方が後腐れがなくて良いのかもしれなかった。

僕は、決して、シュンに相応しくない。
八方美人を止められない性質は、誰の気持ちも受け止めきれない。
そんなことを考えていると勝手に落ち込みそうになり、その前に済ませようとシュンのベルトを解く。
そうしてズボンを下ろすと、シュンのものは落ち着きがなくなっていることが目に付いた。
もう、お互い、抑制する事はできない。
僕は下着の中へ指を滑り込ませ、中のものへ触れた。


「あ、っ・・・」
シュンの体が、びくりと震える。
他の部分よりやや温度が高いものは、指先で撫でると徐々に反応して行く。
苦しそうになってきたので、下着をずらしてそれを外気にさらす。
羞恥を覚えているのか、シュンの頬がはっきりとわかるほど染まっていた。
そんな様子を見ると、僕の心音も反応を示し始める。
ここで理性を飛ばしてはいけないと、何とか気を保ちつつ、じわじわと愛撫していった。

「んっ、あ、ぅ・・・ルイさん・・・っ」
まるで、もっと求めるように、名を呼ばれる。
シュンの吐息が熱を帯びて来て、息も不規則になってきているのが分かる。
焦らしていては、こっちの理性がもたなくなりそうで。
早く達させてしまおうと、僕は触れているものを掌で包み込み、全体を擦った。

「あ、あ・・・!は、っ、ぁ・・・」
強くなった刺激に驚いたのか、とたんにシュンの声が高くなる。
感じている声を聞くと、耳が侵されている気分になり、理性がじわじわと薄れていってしまう。
加えて、掌から伝わる温度は確実に熱くなっていて、その状態を想像してしまっていた。

焦りからか、手の動きは自然と早いものになっていく。
一時も息を吐く間を与えず、ひたすら悦楽を与え続ける。
単調な刺激だけでなく、たまに指先だけを使って全体をなぞると、シュンの声は抑制を忘れたものになった。


「シュン・・・もう、いいよ。我慢しなくてもいい」
限界が近いのだと察し、できるだけ優しい口調で諭す。
自分を抑えることなんてせずに、欲を解放してしまえばいい。
そんな姿を見たいと、僕はいつの間にかそんなことを考えていた。

起ち切っているものからわずかな白濁が漏れ、手を濡らす。
その液と共に愛撫すると、感触がとても淫らなものになり、シュンの全身が強張った。

「っ、ああ・・・ぁ・・・!」
何かに耐えるようにして、シーツが強く握られる。
けれど、それで抑えきれるはずはなく、下肢のものが脈打ち、欲を解放させていた。
とたんに、掌に粘液質な液が散布される。
僕はさして気にすることなく、シュンの反応を見た。

激しい運動をした後のようにせわしない吐息、脱力して虚ろになっている瞳。
相手にも欲を覚えさせるには十分な要素を、眺めていたくなったけれど。
直視していると自分の体も反応してしまいそうで、とっさに目を逸らした。


早く淫猥な感触を取ってしまおうと、僕はティッシュで手と、シュンのものをそっと拭う。
体が敏感になっているようで、それだけでもシュンは身を固くした。
これ以上あられもない姿を見ていられなくて、慎重に服を直す。
そうして胸元のボタンをつけたとき、手が掴まれた。
わずかに引き寄せられたのを感じたが、逆に自分の方へ惹き、体を起こさせた。

そのとき、まだあまり体は動かないだろうと油断していた。
手を離すと、シュンは膝立ちになり顔を近付けてきて、唇が塞がれていた。

「っ、ぅ・・・」
まだ温かい唇を押し付けられ、思わず抵抗を忘れてしまう。
そのまま、シュンが体重をかけてくる。
僕は危機感を覚え、反射的に肩を押し返す。
無理に事を進める気はないのか、シュンはあっさりと身を離した。

けれど、今度は首の辺りにすがりつき、顔を埋めていた。
再び危機感を覚えたが、シュンはそれ以上何もしなかった。


「ルイさん、オレ・・・」
その先の言葉は続けられない。
僕は、今の事は他の意図は何もなく、ただ感謝の念を示したがっているのだと決めつけた。
背を抱きたい、という思いが湧き上がったが、軽く叩くだけに留める。
今、理性が綱渡りをしているような、それくらいギリギリの状態だった。

「気が晴れたんならよかった。そろそろ帰った方がいい、シンが心配する」
シュンは、名残惜しそうに離れる。
本当は、素直に言う事を聞く良い子だ。
先の行為に抵抗しなかったのは、ただ、失恋のショックと、思春期の欲に負けてしまっただけに違いない。
相手が多くを語らないのをいいことに、僕はまた決めつけていた。
そうでなければ、ふしだらな性格が、シュンに必要以上の好意を抱いてしまいそうだった。

「ルイさん・・・慰めてくれて、ありがとう」
シュンは一礼して、部屋から出て行く。
慰めというのは、精神的なものか、肉体的なものか、どちらのことを言ったのだろう。
僕は、引き留めたくなる思いを必死に押さえつけ、シュンの背を見送った。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!。
すみませんとうとう手を出させました、私は年下好きなんです←。
もう、もうこれ以上は増えない・・・と、思います、たぶん。