血界戦線3


ホテルに泊まった翌日、森羅とレオナルドは豪華な朝食を食べてチェックアウトした。
相変わらず口数は少なくとも、あまり気まずい雰囲気はなく
目的の店で部品を買って、ひたすらバイクを走らせる。
朝早く出たおかげで、夕方にはライブラの拠点に着けた。

「クラウスさん、部品ってこれでいいんですよね?」
レオナルドは、すぐさまクラウスへ部品を見せに行く。
その様子を、森羅はどうしても目で追ってしまっていた。
「またまた熱視線送ってんな、とりあえずお疲れさん」
珍しくまともなねぎらいの言葉をかけられ、ザップに視線を移す。

「他の街でも案外物騒だったから、クラウスが僕を護衛に指名してくれてよかった」
「それで、やったのか?」
「死んだかどうかはわからないけど、何人か撃退した」
真面目に答えると、ザップは大きな溜め息をつく。

「ちげーよ!レオの童貞奪ってやったのk」
最後まで言い終える前に、森羅の手が軽口を塞ぐ。
平静な表情に見えるが、必死になっていた。
口が動かなくなったところで、手を退ける。

「手を握ってはくれた。でも・・・」
そこで、閉口して言いよどむ。
急かすことなく、ザップはタイミングを待っていた。
「・・・男同士で握るなんて、気持ち悪いですよねって・・・諭された」
他の誰にも聞こえないよう、声を落とす。
それ以前に、勝手に小さくなっていた。

「あの坊っちゃんは、平和的な世界に生きてきたからな。けど、それなら教えてやればいいじゃねえか」
森羅は、ザップを注視する。
「世の中にはそういう気質もあるっていうことを教えてやれるし、嫌悪感なんて払拭させてやれる」
「・・・話が、上手すぎるな」
ザップは一瞬口端を緩ませ、森羅の肩に腕をまわす。


「一晩付き合えよ、そうしたら、のほほんとした坊っちゃんに新しい価値観を刷り込んでやる」
すぐさま拒否することができず、森羅は沈黙した。
床の一点を見詰めてしきりに葛藤し、思い悩む。
本当に、ザップはやり遂げてくれるのだろうか。
この身を売れば、本当に。

「自分じゃどうにもできないって、わかってんだろ?けど、俺ならできる」
ぐらぐらと、思考が揺さぶられる。
口の中が渇き、ザップの声以外耳に入らなくなる。
首を縦か横に振るか、意思を示さなければ解放されないだろう。
じんわりと、背中に汗がにじむ。
ザップがもう一押ししようと口を開いたとき、どかり、と上から何かがぶつかった。

「ぐえ!」
カエルにそっくりな声と同時に、ザップの体が潰される。
「またまた失礼、人様を困らせている猿がいたようなので、つい」
「こ、こんの、空気読めねえ無神経犬女・・・」
森羅はほっと息をつき、チェインに軽く頭を下げる。
「い、いいか、タイムリミットは、今夜の0時だからな・・・!」
ザップは呻くように言った言葉に、森羅の表情は曇りに曇った。




深夜、ザップはちらちらと時計を見ていた。
日付は、もうすぐ変わろうとしている。
ワインボトルと二人分のグラスを準備して待ち望んでいる情況が、滑稽だ。
駄目か、と思ったつかの間、ノックの音がした。
ザップは跳び跳ねるように立ち上がり、扉を開ける。

「タイムリミット五分前、だいぶ悩んだみたいだな」
「悩まないわけないだろ、こんなこと・・・」
数時間、本気で悩んだ。
何をされるかわかったものではないけれど、他に手段は思い付かない。
レオナルドに、気持ち悪いと言われる心配がなくなるのなら、一晩だけ。
一晩だけ、この身を売ってもいいかと、そんな結論に辿り着いていた。
ザップは森羅の腕を取り、部屋へ引き入れて椅子に座らせる。

「さ、飲むか」
目の前にあるグラスに、8分目までワインが注がれる。
ふわりと葡萄の香りがして、森羅は目を細めた。

「一晩付き合えって、飲み相手のことか・・・?」
「そうだけど、ナニ考えてた?」
「っ、何でもない」
答えをはぐらかすように、森羅はワインを半分ほど一気に飲む。
アルコールで、かっと喉が熱くなり、口内が葡萄の香りで満たされる。

「なかなか、良い飲みっぷりじゃねえか。一人でちびちびやるのは性に合わねえからな」
ザップは、一息でワインを飲み干し、二杯目を注ぐ。
森羅も一杯空けると、すぐにまた8分目まで注がれた。

「上等なワインだな、後味が軽くて飲みやすい」
「まあ、今のところはな」
それだから、お互いは二杯三杯と杯を空けていく。
けれど、四杯目にさしかかったところで、森羅の手が止まった。


「ちょっと・・・水、飲んでくる」
椅子から立ち上がると、急激に視界が揺れてふらつく。
右往左往とし、台所に着く前に、壁にもたれて座り込んでしまった。

「時間差で、結構来るだろ」
ザップは平然と歩き、森羅の前にしゃがんで目線を合わせる。
森羅の頬は真っ赤に紅潮していて、目は虚ろだ。
平静な表情とは違う様子に、ザップは生唾を飲んだ。
そろそろと手を伸ばし、頬に触れる。
やたらと熱い体温は、ザップを興奮させるのに十分だった。
ザップは手を移動させ、唇に触れる。

「何・・・」
その柔さを感じた瞬間、辛抱たまらなくなった。
食らいつくように唇を重ね、後頭部に手を回す。

「ん・・・!」
森羅は虚ろだった目を見開き、ザップの胸を押す。
けれど、まるで体に力が入らなかった。
案外すぐに口が離れる音がし、唾液でしっとりと唇が濡れる。
ザップからは、森羅の唇がやけに艶めかしく見え
一瞬離れたかと思うと、すぐさま角度を変えて塞いでいた。

「う、んん・・・っ」
森羅は苦しそうに呻き、ひたすらザップの胸を押す。
無駄な抵抗をされるとザップはますます高揚し、その唇を舌で割った。
ぬるりと、淫猥な感触が入り込んできて森羅は身震いする。
伸ばされた柔いものは中に絡みつき、しきりに吸い上げていく。

「は・・・っ、う、あ・・・」
口内を蹂躙されて、森羅は呼吸がままならない。
液が乱れ合う音、触れられたことのない湿った柔い感触に、逆上せてしまいそうだった。
やっと離されて、森羅は肩で息をする。


「僕は、男だぞ・・・」
「俺は博愛主義者なんでね。それに、こういう価値観をレオに教えたがってんだろ?」
ザップの手が、するりと服の中に入り込む。
「っ、やめ・・・」
無駄な言葉は聞きたくないと、ザップは再び森羅の唇を塞いだ。
思考を麻痺させるように、舌を挿入して掻き回していく。

「は、あ、うう・・・」
口内に触れられつつ、手が胸元をまさぐる。
森羅は抵抗しようとしたけれど、もう片方の手に後頭部をやんわり撫でられ、すっと力が抜ける。
その間に器用に上着が取り去られ、あっという間に上半身が無防備になる。
そして、手袋にも手がかけられようとしたとき、流石に拳を握って拒んだ。
とたんに、ぐい、と後頭部が引き寄せられ、深くザップと交わる。
より深い場所で舌を絡められ、びくりと肩が跳ねた。

つい拳が緩み、その隙に手袋もさっさと取り去られる。
流石に怯むだろうと思いきや、ザップはおどろおどろしい色の手を掴んでいた。
掌を軽く撫で、弛緩した指を絡めて繋ぐ。
相変わらず口内に触れられているさなか、手を繋がれた瞬間、森羅の心音はどっと温かくなっていた。


ゆっくりと舌が解かれ、解放される。
ざらついてごわごわとしている手に、ザップは何も言わず森羅のベルトを外す。
外されたベルトは自由な手の側に、わざわざ置かれた。
本気で抵抗したいんならすればいいと、そう示すように。
森羅はベルトをちらと見たものの、掴もうとはしない。
少しの間を空けて意思を確認した後、ザップは森羅の前を開け、下着の中のものに触れた。

「あ・・・!」
アルコールで体が敏感になっているのか、指先がかすめただけで声が上がる。
ザップは体温を感じ取るよう、それを掌で包んだ。
「あ、あ・・・」
頭がぼんやりとしていても羞恥はあり、森羅は俯きがちになる。

「森羅、顔を上げてろよ。あんたが乱れた姿が見たい」
耳元で囁かれ、森羅は躊躇いがちに前を向く。
虚ろな眼差しと紅潮した姿に、ザップはまた生唾を飲み、下肢を包む手を上下に動かし始めた。

「う、あぁ・・・っ」
掌に擦られ、体の反応が抑えられずに震える。
包まれているものは刺激に応えるよう、みるみるうちに熱が溜まっていった。
ザップの手の中で、それが起立する。
固くなった感触に、ザップは軽く唇を舐めた。

「この熱っぽくなる感じ、結構イイだろ?」
にやにやと笑み、指の腹で森羅のものを丁寧に撫でる。
下から上まで、まんべんなく触れていくと、とある一点で森羅が身震いした。
その箇所を、ザップは手早くなぞり、何度も往復する。

「ひ、や、ああ・・・!」
弱い箇所を知られてしまい、そこばかり執拗に攻めたてられる。
軽い愛撫だけでも震えがくるのに、激しく擦られてはもう堪えようがない。

「酔って感度が良くなってるみたいだな。一回イってもいいんだぜ」
ザップは薄ら笑いを浮かべたまま、一瞬たりとも手を止めない。
過呼吸になるかと思うほど森羅の息は荒く、限界だった。
指の腹を、弱い箇所へ押し付けられた瞬間、全身が跳ねた。

「あ、あ・・・っ、あぁ・・・!」
抑制の効かない声を上げると同時に、ザップの手を痛いほど握りしめる。
そして、下肢からはどっと白濁が溢れ出していた。
卑猥な液体はザップの手にまとわりつき、ますます気を高揚させる。
達した余韻で何度か脈動した後、森羅はぐったりと力を抜いた。

「イイ瞬間だったぜ、乱れた表情と、あられもない声」
「っ・・・もう、これで、いいんだろ・・・」
訴えたけれど、未だに手は繋がれたままでいる。


「一回、じゃなくて一晩だ。まだ終わらせるかよ」
ザップは、森羅の手を引いて立ち上がらせ、ベッドへ向かう。
まだ抵抗するだけの力がなく、背を押されてうつ伏せになった。
ザップがその上に覆い被さり、森羅のうなじに舌を這わせる。

「うぅ・・・」
寒気に似た感覚がし、森羅は微かに呻く。
感覚は、うなじから背中へと伝ってゆき、再び下肢を高揚させようとする。
行為が終わったばかりなのに、アルコールと余韻のせいで、森羅の体はまだ火照っていた。
軽いリップ音がし、うなじや背中の皮膚が軽く吸い上げられる。
点々と残る赤い痕は、まるでマーキングのようだった。

「一晩だけなんだ、とことん付き合えよ」
ザップは森羅の腰元に腕をまわし、下半身を少し持ち上げる。
間に足を挟んで固定すると、濡れたままの手でおもむろに森羅の猛りを掴んだ。
「は、や、あ・・・」
ぬらぬらとした感触に、森羅は怯えの混じった声を発する。
ザップの手がゆっくりと動き、液が全体を侵食してゆく。

「もう、欲しくて堪らなくなってんじゃねえか。いいぜ、嫌っていうほど擦ってやるよ」
ザップの手は粘液を纏ったまま、ひたすらに上下運動を行う。
潤滑剤がなかったときよりも動きは滑らかで激しく、森羅の昂りを助長する。
身を近づけると荒々しい吐息が感じられて、たまらずうなじを弄った。

「あぁ、っ・・・や、め・・・」
「素直になれよ、体はこんなに俺のこと欲しがってんだろ」
声をかけつつ、ザップは愛撫の手を止めない。
乱れに乱れた姿が見たくて、卑猥な感触を与え続けていく。
さらに身を下げて森羅にのしかかり、無防備な耳へと舌を這わせる。

「ひ、や・・・あ」
柔い舌が遠慮なく中へと入り込み、液の音を立てる。
逃げようと反射的に身をよじっても、筋肉質な腕に制されてしまう。
上も下も犯され、高揚しきった体は堪えることを知らず、また震えた。

「は、あ、う、ああ・・・っ!」
留まる事を知らない動きに、森羅は再び達する。
ザップの手がさらに白濁にまみれる中、まだ手の動きは止まらない。

「やああ、っ、やめ・・・!」
達した直後の刺激が強すぎて、森羅の声が裏返る。
辛そうに懇願すると、ザップがようやく手を離した。
ゆっくりと森羅の体を反転させ、仰向けに寝かせる。
ようやく楽な姿勢になり、森羅は大きく息を吐く。
目を閉じると、ものの数分で眠れそうだった。
その前に、ザップが森羅の首元を指先で撫でる。

「そうそう簡単に眠らせるかよ。まあ、俺のテクの最中じゃ、眠る余裕なんてねえけどな」
「まだ、終わらない、のか・・・」
首を撫でた手は、腹部へ、そして、さらに下方へと下がって行った。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
ザップとあらばいかがわしい場面を書かずにはいられなかった(*´Д`)
3話で発禁に展開したのも、ザップが節操のない下半身を持つキャラゆえにできること←