血界戦線6


朝、レオナルドは中々起きられなかった。
やけに温かくて、まだベッドに潜っていたくなる。
それ以前に、体が固定されていて動けない。
そこで、昨日は森羅の家に泊まり、抱き寄せられたまま眠ったのだと思い出す。
少しみじろぐと、逆に強く抱きしめられた。

「森羅さん・・・?」
ますます密接になり、体温が鮮明になる。
レオナルドはほっと溜め息をついて、また眠りこけた。


昼過ぎ、ライブラの拠点を二人は慌ただしく走る。
勢いよく扉を開け、ぜいぜいと息を切らした。
「す、すみ、すみません、寝坊、しました」
「すみません、僕がレオを引き留めていたから・・・」
息を整える間もないまま、二人してクラウスに頭を下げる。
「休暇なのだから、存分に楽しんだのは良いことだ。今日は、早く眠るように」
強面で叱責を受けず、二人は胸を撫で下ろした。

朝からバタバタしていて食事の暇がなく、昼頃に地鳴りのような腹の音が鳴る。
「森羅さん、昼飯食べに行き・・・」
「おっと、これから森羅は俺と大切な話があるんだ。引っ込んでな」
ザップは森羅と肩を組み、レオナルドをしっしっとあしらう。
「・・・わかりました。少し、待ってますから」
レオナルドは一旦は引っ込み、廊下に出る。
部屋には、森羅とザップの二人だけになった。


「話って、何なんだ」
「昨日、レオと過ごしたお熱い一夜ののろけ話でも聞こうかと思ってな」
明らかにからかわれているが、恩があるから無下にはできない。
「確かに、ワイン飲んで体温は上がってたけど、抱きしめて眠っただけだ」
「・・・マジ?家に連れ込んでおいて、それだけ?」
恥ずかしながらも頷くと、ザップが盛大な溜め息をついた。

「この根性無しが!今時のガキでももっと大胆なことするぜ!?」
「だ、だって、嫌われたくない」
「かーっ、うだうだしてたら他の女に取られんぞ!せめて、こんぐらいしてやりゃあいいんだよ!」
ザップが、ぐいと森羅を引き寄せる。
そして、一瞬の間に唇を塞いでいた。

「っ、ん・・・!」
突然すぎる行為に怯み、ザップの胸を押して離れようとする。
だが、その前に唇を割られて舌が入り込み、力が抜けてしまった。
性急に舌が絡み付き、森羅の理性を奪う。

「は、っ・・・んん・・・」
いけないとわかっていても、息つぎの合間に声が漏れる。
体は以前の行為を覚えていて、抵抗力を無くしていた。
がっしりと肩を掴まれ、舌が繋がりあったまま動けない。
頬が熱を持ち始めたとき、扉がノックされて、開いた。

「森羅さん、ザップさん、昼飯の時間なくな・・・る・・・」
レオナルドの声を聞き、森羅は目を見開く。
反射的に、精一杯ザップを押し返したが、遅かった。
「あ・・・え、えっと・・・・・・バーガー食べてきますっ!」
レオナルドは、脱兎のごとく駆け出す。
そこで、森羅はやっと解放された。

「っ、レオ・・・」
追いかけようとしたが、ザップが森羅の腕を掴む。
「今行ったところで結果は同じだ。その前に教えてやるよ、意中の相手の落とし方を」
後半、耳元で囁きかけられ、ぞくりとする。
正直に言えば、教えてもらいたかった。
どうすれば、レオナルドとほどよい距離で接することができるのかを。




そして、夜、森羅はまたザップの家を訪れていた。
これも、レオナルドと親密になるための教授だと、自分を説得させて。
「お前は、ほんとにレオのこととなると・・・いや、さっさと始めるか」
ザップは、足早に森羅をベッドに連れて行く。
いきなり押し倒すことはせず、まずは肩を抱き寄せた。

「レオみたいな奴はがっつくと怖がらせて終わりだ。まずは、強張りを解してやったほうが効果的だ」
まともなことを言い、ザップは森羅の耳に唇を寄せる。
軽く息を吹き掛けてから、耳朶を甘噛みした。
森羅は、一瞬だけ肩を震わせる。
やんわりと食まれたと思えば、湿った感触が耳の形をなぞっていった。

「ひ、ぁ」
息をつくと、喉の奥からか細い音が漏れる。
怯えではなく、他の意識が発させていた。
ぬるり、と、ザップの舌が中へも入り込む。
独特な感触に、森羅は目を見開いて息を荒くしていた。
ザップが動くと、唾液の音が直に聞こえてきて羞恥が増す。
ほどなくして舌が抜かれ、森羅は肩を下ろした。

「これからどんなことすんのかを、自然と諭させるのがコツだ。まずは、こうやって体に教えてやるんだな」
「こ、これなら、誰でも高揚しそうだ・・・」
「それはあんたのテク次第だ。受ける側の感覚を刻み付けておきな」
ザップは森羅の頬に手をやり、自分の方を向かせる。
目が合った瞬間、静かに唇を塞いだ。
同時に、片手は後頭部に回り、森羅の髪を撫でる。

「ん・・・う・・・」
似つかわしくない、優しげな手つきに、森羅は自然と目を閉じる。
肩が引き寄せられて、お互いの間に隙間がなくなる。
ザップの舌が唇をくすぐると、意識せずとも隙間を開いてしまっていた。
滑らかな動きで、ザップは森羅の中へと入り込む。

「は、ふ・・・」
ゆったりと、舌先が口内を撫で回してゆき、少しずつ強張りを解いていく。
その間も片手は髪や頬を愛撫し、森羅を脱力させていった。
滑らかな動きで、ザップは森羅と絡み合う。
場数を踏んだベテランの行為に、森羅は頭が痺れるような感覚に身を任せていた。


やがて、口内から舌が抜かれる。
離れる直前に唇を軽く弄られ、 森羅は身震いした。
続けて、ザップは森羅の上着を取り、肌着も脱がそうとする。

「ちょ、ちょっと、待ってくれ、僕はそこまでする気は・・・」
「人の欲望なんて際限ないもんだ。最後まで経験しておいた方が、いざというとき物怖じしないで済む」
ザップは、森羅の肩を押してベッドへ押し倒す。
力任せではなく、背中に手を添えてそっと寝かせた。
いっそ、知っておいた方が後の為になるのかと、森羅は抵抗しない。
服を脱がされることも、抗議しなかった。

「さて、と。ここで相手が我慢しきれなかったら、下も脱がせてさっさと触ってやればいい。
まだ、焦らしてやりたい場合は・・・」
ザップは身を下げ、森羅の胸部へ近付き、躊躇いなく突起をなぶる。
「あ、っ・・・」
敏感な部分が反応し、森羅の声を震わせる。
ザップはもう片方の突起にも触れ、指の腹でやんわりと押し、いじり回した。

「ん・・・っ、ぁぁ」
確かに感じるものがあり、森羅は足をよじる。
ザップが少しでも動くと、その刺激が下半身へ伝わっていくようだった。
ザップは、森羅の下肢の中心へ手を添える。

「男でもここは感じるみたいだな。あんたの、もう半起ちだ」
「うう・・・」
服の上からでも、反応していることはわかる。
ザップは森羅のズボンと下着をずらし、中のものへゆったりと指を這わせた。

「あ、ぁ、っ・・・」
最も敏感な箇所に触れられ、反応を抑えきれるはずはない。
ザップは激しくはない手つきで、森羅を下から上へとなぞっていく。
森羅の体は悦に震え、下半身へ急激に熱が巡った。


「このままイかせるのは猿でもできる。けど、攻める側は満足できねえだろ?」
「そう、だな・・・」
ザップは一旦手を離し、ズボンを脱ぎ始める。
そして、自分の猛りを露にし、森羅のものと触れ合わせた。

「ザ、ザップ・・・」
「一緒に擦ってやれば、お互いイけるだろ?」
ザップは広い掌でお互いのものを包み込み、上下に大きく擦った。

「ああっ・・・や・・・!」
熱い物同士が擦れ、森羅の全身が跳ねる。
一往復するたびに、喘ぐのを止められない。
ザップのものがとても固く、熱を帯びていて、それが鼓動の高鳴りの要因になっていた。
大人の雄が欲情していると実感すると、気が昂って仕方がなくて
森羅のものからは、先走った欲が零れてきていた。

「もう出てきてんのか?よっぽどイイみたいだな」
ザップはにやりと笑い、前後に腰を振って己を森羅と擦り合わせる。
「ひ、ああ、あっ・・・」
自分の液の感触が艶めかしくて、森羅はあられもない声を発してしまう。
掌とはまた違う、固さと熱を帯びたものに、気の昂ぶりは最高潮になっていた。

「入れてるわけじゃねえけど、悪くねえな・・・」
前後に動くさなか、ザップの手は触れられていない裏側をすっとなぞる。
そこを指先が撫でた瞬間、身がびくりと打ち震えた。
以前の行為でも激しく反応した個所を、ザップは何度も撫で回す。

「あ、あ、やあぁ・・・っ」
強すぎる刺激に、森羅は身をよじって離れようとする。
「レオの奴にやってやるんだろ?弱い場所の感覚を覚えておけよ」
レオナルドの名前が出ると、森羅はぴたと動きを止める。
都合がいいが気に食わない、ザップは微妙な心境になった。
そんな微妙な感覚を欲で覆ってしまうよう、急に手つきが荒々しくなる。
お互いの隙間をなくし、激しく擦り合わせた。


「ああ、っ、ザップ・・・!」
喘ぎのさなか、無意識のうちに名前を叫ぶ。
それだけなのにザップはたまらなく高揚し、森羅の首元を舐め回す。
獣のような荒い行為に、森羅の気は急激に追い詰められてゆき、必死にシーツを握り締めた。
ザップは手の動きも、舌の感触も途切れさせることなく攻め立てる。
お互いから、先走った液が限界を示すように溢れだしてきて
入り交じった潤滑剤の感触に、先に耐えられなくなったのは森羅の方だった。
先走りを放出させるよう、ザップが森羅のものを強く掴んだとき、全身が震えた。

「ザップ・・・っ、ああ、あ・・・!」
裏返った声と共に、森羅の先端からどっと欲が沸き上がる。
その瞬間、卑猥な感触がザップのものを包んだ。
「っ、森羅・・・!」
森羅の白濁に濡れ、ザップも達する。
お互いの精は混じり合い、森羅の太股や腹部に散布されていく。
生暖かくて粘液室な感触に、森羅は微かに震え、脱力した。

目を開けることさえ億劫になり、肩で息をして余韻に浸る。
ぼんやりとしていると、ふいに、髪が撫でられた。
労ってくれているようで、気が落ち着いていく。

「終わったら終わったで、放置すんのはタブーだ。こうして、余韻を感じさせてやった方が安心するだろうよ」
ザップは森羅に身を寄せ、そっと口づける。
普段よりもだいぶ温かな体温に、森羅は安らいでいた。
「ザップ、ありがとう・・・教えてくれて・・・」
ぴた、と、髪を撫でていた手が止まる。

「・・・いいってことよ。俺も、案外興奮したしな。ティッシュ取ってくるわ」
ザップはもう平然としていて、森羅から離れる。
温かみがなくなり、とっさに引き留めようとした手を、森羅は抑えていた。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
レオがほのぼのな分、ザップはだいぶがっつりです。
不健全で不節操な下半身持ってるから、つい・・・