血界戦線8


想いを伝え合った後、森羅とレオナルドの雰囲気は和やかなものになった。
積極的なことをする気配はなくとも、離れようとはせずになるべく近くに居たがる。
ただ、仲良くなったなとしか見られていなかったが、ザップだけは二人の仲を感じ取っていた。

「レオ、今日、任務の帰りに飲みに行かないか。雰囲気の良い店を教えてもらったんだ」
「は、はい、行きたいです!」
レオナルドは、少し緊張しつつ答える。
ただ、飲みに行くだけでは終わらないだろうなと、薄々考えていたから。


そして、夜、レオナルドと森羅は無事に合流できていた。
森羅は、ザップに教えてもらったバーへ向かう。
閑静な住宅街の中にある店はひっそりとしていて、普通の家のように見える。中に入ると、薄暗い空間にジャズの音楽が流れていて、本当に雰囲気が良かった。
二人席に座り、適当にカクテルを注文する。

「ゆったりした、雰囲気ですね」
「ああ、静かに時間が流れる感じがする」
カクテルはすぐに運ばれてきて、小さいグラスに透明な液体が注がれる。
いかにもおしゃれなグラスを、レオナルドはまじまじと見ていた。

「乾杯しようか」
「あ、はい、お疲れ様でした」
軽くグラスを合わせて、一口飲む。
結構度数が強くて、鼻にアルコールの香りが通り抜ける。
けれど、粗悪なアルコールではなく、心地よい温度を残して喉を流れて行った。

「これ、ほんのりと桃の味がしておいしいです」
「こっちはレモン系かな。一口、味見したい」
「はい、どうぞ」
グラスを差し出され、森羅は唇の跡がついているところへ口をつける。
意図的だとわかっているのか、レオナルドの心音は強まっていた。

「・・・僕も、一口欲しいです」
「ああ、いいよ」
グラスを受け取る時、レオナルドはわずかな間を空けたけれど、さっと受け取る。
そして、緊張気味に唾を飲んだ後、森羅と同じ個所へ口をつけていた。




とりとめのない話をして、食べ物も間に挟みつつ、飲み進めていく。
結構度数が高いカクテルが多かったのか、一時間もしない内にレオナルドは呂律が回らなくなってきていた。

「見た目は綺麗だけど、なかなか強いな」
「そうれすね、しんぞうバクバクしてまふ」
「・・・後は、ソフトドリンクにしような」
意識が飛んでしまっては元も小もないと、グレープフルーツのジュースを注文する。
自分も次の一杯で終わりにしようと、森羅もソフトドリンクを頼んだ。

アルコール以外の飲み物を飲むと、少し酔いがましになる。
大人な雰囲気のバーは、いつまでも居たくなるけれど
素面になるまで居たら踏み出せなくなると、森羅はそっとレオナルドの手を取った。

「・・・泊まって、行かないか。僕の家、そんなに遠くないから」
レオナルドは森羅を見て、何かを考えるように口をつぐむ。
数秒間の間が、とても長く感じられる。
レオナルドはふいに視線を反らし、森羅の手を強く握り返した。


レオナルドと手を繋いだまま、森羅は自宅へ向かう。
室内は相変わらずいびつで、何度か出っ張りにぶつかった。
緊張している、と森羅は実感する。
レオナルドは酔って思考が麻痺しているのか、黙ってベッドへ運ばれていった。
ザップの教えの通り、いきなり押し倒すことはせず、まず腰かける。
そして、肩をやんわりと抱き寄せてお互いの隙間を無くした。

「レオ・・・さっき、同じ位置でカクテルを飲んだだろ。
・・・あれは、了承してくれたって、そうとらえてもいいのか・・・?」
「う・・・あ、あれは・・・」
だいぶ答えに詰まっているようだったが、やがてレオナルドは小さく頷く。
そんな様子を見たとたん、森羅はもう堪えきれなくなった。
レオナルドの頬に手をやり、上を向かせる。
そうして、躊躇いが生まれない内に口付けていた。

「ん、ん・・・」
柔くて温かな感触に、一瞬で森羅の理性は狂わされる。
しばらく重なった後、おもむろに唇を舌でなぞる。
むずむずとした感触にレオナルドが隙間を開くと、そこへ入り込んでいた。

「ん、っ・・・」
怯んだように、レオナルドはシーツを掴む。
抵抗されないとわかると、森羅はレオナルドの舌をなぞり、優しく愛撫した。
側にある肩が一瞬震えたが、相手を突き放そうとはしない。
森羅は慎重にレオナルドの口内へ触れ、舌を絡ませた。

「は、あふ・・・」
繋がり合う隙間から、アルコールの香りが残る吐息が混じる。
その温度に酔いしれてしまうようで、森羅は奥まで自身を進めていく。
舌先で撫でるたびにレオナルドからかすかな声が漏れ、森羅は必死に理性を保っていた。


ほどなくして絡まりを解き、口を離す。
間に細い糸が伝い、落ちる前に軽く舐め取った。
「森羅、さん・・・」
一旦安心させるよう、森羅はレオナルドを抱きしめる。
アルコールで体温がだいぶ上がっていて、油断するとこのまま眠ってしまいそうだった。

「なんだか、ねてしまいそうでふ・・・」
「ま、まだ寝ないでくれ」
森羅は慌てて、レオナルドをベッドへ押し倒す。
眠りを誘ってしまう態勢だったが、ここで一緒に寝るわけにはいかない。

「僕、君と触れ合いたい。・・・許して、くれるか」
怖がらせないように、森羅はレオナルドの頬へ手を添える。
レオナルドはぼんやりと森羅を見上げ、小さく頷いた。

事の意味なんてわかっていないかもしれない、けれど、重なり合いたい。
森羅は思いのままに、レオナルドの服を脱がせていく。
抵抗されないものだからあっという間に服がはだけ、肌が露になった。
見ている方がどぎまぎして、唾を飲む。
ゆっくりと、指の腹でレオナルドの胸部をなぞる。
そのまま腹部へ伝うと、体がぴくりと震えた。

「く、くすぐったいれす・・・」
「・・・すぐに、くすぐったい、以外のことも感じるようになる」
森羅は、指先を、胸部の突起へと移動させる。
「ひ、ぅ」
怯むように、レオナルドは身をよじる。
森羅は身を下ろして、その起伏を口に含んだ。

「ひぁ、や」
レオナルドの体が跳ね、反応する。
もっと高揚させたくて、森羅は含んでいるものを弄る。
「あ、ぅ・・・し、森羅さん、やらしいです」
言葉が正常になってきて、酔いが冷めかけているのかと、森羅は身を離す。
酔っている勢いに任せて、最後まで行き着きたかった。
森羅がレオナルドのズボンを取ろうとすると、腕が掴まれる。


「な、何だか、俺ばっかり、恥ずかしい・・・」
「すまない、不公平だったな」
森羅は、自分の上着も肌着も脱ぎ捨てる。
先にズボンも取り払ったが、手袋はつけたままだ。
見ていられないのか、レオナルドは顔を背けている。

「これで、いいか?」
「う、えー、と・・・・・・はい・・・」
レオナルドが弱々しく頷くと、森羅はズボンの留め金を外す。
いざとなるとする方も緊張したが、戸惑ってはいられない。
自分のものはもう高揚しきっていて、だいぶ下着がきつくなっていた。
同じようにしてしまいたいと、森羅はレオナルド服を全て取り去り、下肢へ手を滑り込ませる。
そして、中心にあるものを掌で包んだ。

「あぁ、っ」
敏感な箇所は、包み込まれただけでレオナルドの声を高くさせる。
先の行為で感じていたのか、手の中にあるものは熱っぽさがあった。
森羅は、ゆっくりと手を上下に動かして、それを刺激する。
レオナルドは必死に声を堪えているようだったが、それでも微かに喘ぎが漏れていた。
恥じらっている様子が愛おしくて、激しくしたい衝動にかられる。
それをぐっと抑えてなだらかな愛撫を続けていくと、レオナルドのものが掌の中で固く強張った。

「こんな、男の手でも感じてくれるのか」
「そりゃあ、触られれば・・・・・・あの、手袋、外さないんですか」
意外なことを言われて、森羅は動きを止める。

「シルクの手袋をしたままの方が、感触がいいと思うけど・・・」
「・・・別に、素手で触るのが嫌ならいいですけど」
「そ、そんなことない、君が望むのなら、そうする」
森羅はすぐに手袋を取り、床に放る。
そして、おずおずとレオナルドの中心を掴んだ。

「は、うぅ・・・」
「ご、ごめん、やっぱり痛かったか」
森羅は、さっと手を離して手袋を拾いに行こうとする。
レオナルドはたまらず身を起こし、森羅の腕を掴んでとっさに引き留めていた。

「痛くないです、ないですから・・・大丈夫ですから・・・」
そこまで言って耐えきれなくなったようで、レオナルドは顔を真っ赤にして俯く。
何を言わんとしているのか察し、森羅は鼓動を強くしていた。

「レオ・・・」
そのままの手でレオナルドを抱き寄せ、口付けを交わす。
欲を帯びた、熱い吐息に高揚して、迷わず舌を絡ませていた。
「は、ふ、んん・・・」
森羅はレオナルドと思いのままに交わり、柔い感触を味わう。
もはや自分の昂りは隠しようがなくて、身を寄せると下肢のものが触れていた。
抑えきれない興奮がそこへ手を誘導し、森羅は自分とレオナルドのものを同時に愛撫した。

「は、あ、あふ・・・」
レオナルドが苦しそうに息継ぎをしたので、森羅は唇を離す。
同時に、自分からも吐息が漏れた。
素手のざらついた感触が、むしろ強い刺激になっていて
往復運動をするたびに感じる強い感覚に、下半身が震えた。
刺激に耐えようと、レオナルドが森羅の背に腕を回す。
たまらなくなって、森羅はさらに身を押し付けて、お互いをしきりに擦った。

「ああぁ、森羅さん・・・っ!」
レオナルドが力の限り森羅を抱き締めると、お互いの間に隙間はなくなる。
堪えようのない先走りが先端から漏れ、液が潤滑剤になり、手の動きを流暢にしていく。
動きが滑らかになったところで、弱い箇所を探そうと指の腹でまんべんなくなぞっていった。
「ひ、や」
ふいに、レオナルドの震えが強くなる。
確認するようにそこを二度三度となぞると、背に回る腕の力が強まった。


「ここが反応しやすいんだな。・・・僕と同じだ」
森羅は手を広げ、お互いの感じやすい箇所を上下に愛撫する。
「ひぁ、あ、森羅さんっ・・・」
体の反応は堪えようがなくて、レオナルドは上ずった声を抑えられない。
達したときの姿が見たくて、森羅は下肢を密接にしたまま、指に絡む液ごと撫で回す。
潤滑剤が艶かしい感触になり、欲望のままに、何度も何度も敏感な部分をなぞり上げた。

「あぁっ、も、う、だめ、っ、ああぁ・・・!」
触れられ続け、身を震わせていたレオナルドの体は、ふいに強く跳ねる。
次の瞬間には溜まりに溜まった欲が溢れ、森羅の手とその身にまとわりついた。

「っ、は、レオっ・・・!」
余裕がなかったのは同じで、森羅も声が裏返る。
レオナルドの白濁に包まれた身から、どうしようもない高揚が散布されていた。
まだ触れ合っている下肢が、悦ぶように脈動する。
ほとぼりがおさまると、二人は息をついて脱力した。
レオナルドは、ぐったりと森羅にもたれかかる。
行為の余韻で熱くなっている体を、森羅はしっかりと抱き締めた。

「痛くなかったか・・・?こんな手で、だいぶ擦ったから」
「い、いえ・・・少しざらついてて、むしろ・・・・・・気持ち、よかった・・・なんて・・・」
どんどん声が小さくなり、最後はほとんど聞こえなくなる。
照れている様子がたまらなく可愛らしくて、森羅はレオナルドの髪を撫でていた。

「・・・このまま、寝てしまいたいです・・・」
「いいよ。温かいから、心地いいと思う」
「すみません・・・ありがとう、ございます」
レオナルドは森羅の肩に頭を乗せ、息を整える。
ものの五分もしないうちに呼吸は規則的になり、寝息をたてていた。

レオナルドが寝付いたのを確認し、体をベッドへそっと横たえる。
安らかな寝顔を見て、森羅は満たされていた。
この混沌の世界で、自分の傍で安らいでくれる相手を護ってゆきたい。
森羅はレオナルドの頬をそっと撫で、胸の内から沸き上がる衝動と共に決意していた。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
血界戦線、これにて終了です。マンガを貸してくれた友人に感謝!