後輩攻めをさせてみたかった1。


「先輩、おじゃまします!」
部屋の持ち主の後輩が、意気揚々と家に入る。
「・・・あんまり走り回らないでくれよ」
幸人(ゆきと)は、どこか不安げな面持ちで玄関に上がった。

一人暮らしを初めて、早1ヶ月。
自立の一歩だとして、自宅が近くにあるにも関わらずこのアパートを借りた。
つい最近その話をしたら、すぐさま後輩が行きたいと申し出て。
大学の帰りがけに、遠慮なく上がり込まれていた。


「へー、ここが先輩の部屋か。何か面白そうなものはあるかな、と」
あまり広くもない部屋に入ると、純也(じゅんや)は辺りを興味深そうに見回す。
そして、持参してきたデジタルカメラで何枚も撮影していた。
これも写真部の制作の一環だとして幸人は特に咎めなかったが、半ばハラハラしつつ伺っていた。

急に来たいと言われたので、ろくに掃除はできていないし、それ以上の問題点がこの部屋にはある。
今更おかしな動作はできず、ただ祈りつつ見守るしかない。
見回しただけで判明してしまうことはなかったが、純也がタンスを空けようとしたので幸人は慌てた。

「純也、そこからはプライバシーの侵害だから・・・」
「タンスが?先輩の私服見てみたいんですけど」
純也に不思議そうに問われ、あまり過敏に反応しては怪しまれるかと、幸人は言葉に詰まる。
そもそも、タンスは服を入れるものであって、隠しだてするようなものを入れる場所ではない。


「・・・わかった、いいよ、見ても」
無下に断っても怪しまれるのなら、いっそ許可してしまったほうがいい。
純也は嬉しそうに笑い、引き出しを引く。
そこには、パーカーやタートルネックなど、カジュアルで暖かそうな服がみっしりと入っていた。
下の引き出には、シンプルなジーンズがまたみっしりと入れられている。

「無難な服ばっかりだ、先輩らしい」
「まあ、シンプルイズベストって言うし」
平然を装っていると、純也はつまらなさそうに引き出しを戻す。
他の場所を見ても無駄だと思ったのか、純也がタンスから離れたので幸人は内心安堵していた。

「あ、トイレ借りていいですか?」
「いいよ、すぐ向かい側の扉の奥にある。ユニットバスになってるから、滑らないようにな」
純也が部屋を出ると、幸人はすぐにタンスへ駆け寄り、一番上の小さな引き出しを開ける。
その中身をどこか別の場所へ移動させようとしたが、どこに置いても同じような気がして仕方がなかった。

部屋を見回していると、トイレの水を流す音が聞こえてきて焦る。
やはりもとに戻しておこうと、気付かれない内に引き出しを閉めようとしたが。
そのとき、タンスの中身のものが足りないことに気付いた。
とたんに、頬からさっと血の気が引いていく。
部屋の扉が開くと、幸人はとっさに引き出しを閉じた。




「先輩、ユニットバスに忘れ物してましたよ」
純也が笑顔で差し出したものを目の当たりにすると、幸人は思わず目を見開く。
それは、水鉄砲のようにして遊ぶ、玩具の注射器だった。

「これ、注射器ですよね。何で風呂場なんかにあるんですか?」
「それ、は・・・」
幸人は昨日片付け忘れた自分を悔やみつつ、必死で言い訳を考える。
玩具の注射器なんて、大学生の家の風呂場にあるのは奇妙なことでしかない。
何かを想像される前に誤魔化さなければならないと、幸人は頭を振り絞った。

「それは・・・と、ところてん・・・作れないかと思って。詰めて出す構造は一緒だから」
振り絞った末に出てきたのは、そんな言い訳だった。
呆気にとられたのか、純也は口を半開きにさせている。


「確かに、入れて押し出せば出てきそうですけど・・・お風呂場で作ってたんですか?」
「・・・汚れても平気だから」
どこに、風呂場でところてんを作る大学生がいるだろうか。
自分でも苦しすぎることを言っていると自覚し、幸人は情けなくなった。

「へー、そうなんだ・・・あ、じゃあ味が残ってんのかな」
そう言うと、純也は注射器の先端を舐め、口内に含もうとした。
「だ、駄目だ!」
幸人はとっさに駆け寄り、注射器を奪う。
その慌てように、純也は確信したように口端を上げた。

「どうしたんですか?そんなに焦って。汚いものじゃあるまいし」
「これは・・・汚いんだ」
幸人が神妙な顔で言うと、純也はさっとタンスの前に走り、一番上の引き出しを開けた。
声にならない声が、幸人の喉元を通り過ぎる。


「やっぱりあった。一人になったからには、こういうのがあってもおかしくないと思ってたんですよ」
純也は平然と中にあるものを掴み、しげしげと眺める。
一見、電動マッサージ器のように見えるけれど、それは違う用途で使われる物だった。
もうどんな言い訳もできないと、幸人は諦めたように肩を落とす。

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。玩具の1つや2つ」
「開き直れるほど、厚顔無恥じゃない・・・」
折角一人暮らしをしたのだからと、最初は興味本意で、通販で購入した。
それが、思いの外得られるものが多く、調子に乗って他のものにも手を出してまった。
タンスの中にはそんな快感を得るための器具が数個転がっており、注射器もその内の1つだった。


「これで、先輩がしてるんですよね。自分の中に入れて、何度も・・・」
綺麗なものではないとわかっていながらも、純也は指のような形をした器具を撫でる。
そして、あろうことかそれの先端を含み、舌を出して舐め始めた。

「な、何してるんだっ」
見ていられなくなって、幸人が器具を奪い取る。
そのとき、肩を掴まれ、その場に押し留められた。

「先輩、さっきの注射器で潤滑剤入れてるんでしょ。寂しくなったら、そうやって・・・」
「う、うるさいっ。改めて言わないでくれ」
振りほどこうと身をよじると、純也は逃さぬよう背中に腕をまわした。


「そんなもの使わなくても、オレがする」
「・・・え?」
「こんな玩具より、オレの方が先輩を気持ち良くできる」
「な、にを、言って・・・」
幸人の言葉は、そこで途切れる。
言い終わらないうちに純也に唇を覆われ、何も言えなくなっていた。
衝撃的な出来事に目を白黒させていると、口内に柔いものが入り込む。

「ん・・・!」
とっさに離れようとするが、逆に引き寄せられ、さらに深く重なった。
それは遠慮なく口内を蹂躙し、舌同士を絡ませる。
柔くて、しっとりと濡れたものに淫らなものを感じてしまい、幸人の目は虚ろになっていた。


唇が解放され、お互いの間に余韻の糸が伝う。
純也は軽く口付けて液を舐め取ると、幸人の首を引き寄せ、耳元で囁いた。

「先輩、オレにさせて下さい。一人でするときよりも、ずっと良くしてあげますから」
「ち、ちょっと、待ってくれ・・・」
甘い誘惑の囁きに、脳が痺れていく。
何とか理性を保ちつつ純也の腕から逃れ、後ずさった。

真っ向から対峙すると、これは冗談なんかじゃないと真剣な目に訴えかけられる。
純也が距離を詰めると一歩身を引き、それを繰り返していると壁に背がついてしまう。
迫ってくる視線を受け止められず、幸人は体を反転させて壁の方に目をやる。
ほどなくして背中に純也の体が密着すると、肩が強張った。


「先輩、無防備に背中さらされると、もうオレ止められませんよ」
片手を腰元にまわして引き寄せ、ズボンの金具を外す。
「じ、純也、本気なのか・・・」
「冗談なんて一言も言ってません」
金具を外すと、純也は下着の中へ指を滑り込ませていく。

「っ・・・」
体の中心に触れられ、幸人は身震いする。
逃れようと反射的に身をよじったが、腰元に腕がまわり引き寄せられた。
下着の中の指は遠慮なく動き、まだ静かなものを撫でて付け根を掴む。
そして、反応させるため上下にやんわりと動かし始めた。

「ぅ、う・・・っ」
下肢への刺激に、幸人は下唇を噛み、声を抑える。
自分の身に起きていることが信じられなくて、ただ赤面していた。

「声が漏れるの気にしてるんですか?一人でしてたんだから、今更堪えることもないじゃないですか」
抑制を外すよう、純也は手の動きを早くする。
「う、ぁ・・・」
単調な動作でも、包まれているものは確かに反応してしまう。
幸人の下着がきつくなると純也は服をずらし、それを露にした。

「もう固くなってきてる。やっぱり、一人でするのとはわけが違いますよね」
「う、うるさい・・・っ」
まだ擦り始めてから間もないのに、下肢へどんどん熱が溜まっていく。
今、そういった行為をしているのは、甘い感情などない、親しいだけの後輩のはずなのに。
それでも、手が往復するたびに悦を覚えずにはいられなかった。


「先輩、首白いですね。いかにも文化系って感じで」
そう呟き、目の前にある細いうなじに舌を触れさせる。
「ひっ、ぁ・・・」
新たに加わった刺激に驚き、口が開かれてしまう。
やや上ずった声に純也はにやりと笑い、うなじをゆっくりと弄る。
下から上へ、何度も這わせると、そのたびに密着している体が震えた。

「首筋弱いんだ?一人じゃ、こんなとこ舐めるなんてできませんからね」
言葉を言い終えると、純也はまたうなじを舐め始める。
「や、やめ・・・っ、ぁ、あ・・・」
その間も下肢の手は動かされ続けていて、幸人は気の昂りが抑えきれない。
いつもと違う悦楽に、体が熱くてたまらなくなる。
脳は欲求に侵され、早く、この熱を解放させてほしいと、そんなことしか考えられなくなっていた。


「そろそろいきたいんじゃないですか。言ってくれれば、もっと激しくしますけど」
濡れたうなじに息を吹き掛け、誘い掛けるように囁く。
羞恥のあまり返事ができないまま、幸人はただ赤面して俯いていた。
すると、じれったさを感じさせるよう、純也の動きがゆったりとしたものになる。

「う、ぅ・・・」
中途半端な愛撫に、体が疼く。
溜まりに溜まった欲求が行き場をなくし、強い刺激を求めていた。

「まあ、オレは先輩に長く触っていられるから、しばらくこのままでも構いませんけど」
純也はうなじへ触れることも止め、手も止める。
固くなったそれは掌の中で脈打ち、愛撫を待ち望んでいるようだった。
幸人は息を荒くし、熱を吐こうとするけれど、一向に気が落ち着かない。
このもどかしさを解消する方法は、1つしかなかった。




「純也・・・触って、くれ・・・」
恥を忍んで、小声で訴えかける。
「もう触ってるじゃないですか」
根本を強く掴むと、幸人は身震いした。
そこで止めないでほしいと、体が要求する。
そんな本能に負け、諦めたように呟いた。

「もっと、強く、早く・・・純也に触ってほしいんだ・・・っ」
求められた瞬間、純也の気が一気に高揚する。
自然と頬が緩み、幸人が望んだとおり手を動かして全体を擦った。
「あ、あぁ・・・っ」
悦がよみがえり、思わず声を上げてしまう。
もう堪える余裕などなく、恥も忘れて喘いでいた。

「先輩のこと、夢の中で何回犯したと思います?最近は、ほんとにやばかったんですよ」
自分の先輩を抜いている興奮のあまり、純也の手はどんどん早くなる。
「う、あ、ぁ・・・」
幸人から先走ったものが流れ落ち、起ちきっているものに絡まり、いっそう淫らな感触になっていく。
一時も止められることのない上下運動に膝が震え、体は限界を示していた。


「先輩の声、聞かせて下さい。恥ずかしいことなんてありませんから」
とどめをさすように、純也はうなじへ舌を這わせる。
そして、親指に力を込めて、弱い箇所を何度もなぞった。

「は、あ、そこは・・・っ、ああぁっ・・・!」
最も敏感な箇所への刺激に耐えきれず、幸人の全身が一瞬跳ねる。
次の瞬間には純也の手の内にあるものも脈動し、身を震わせて吐精していた。
白濁が純也の掌に絡まり、壁や床に散布される。
幸人は力が抜け、支えがなければ膝から崩れ落ちてしまいそうだった。


純也が幸人のものを離し、手を自分の方へ戻す。
体を解放すると、幸人はだるそうにその場へ座り込んだ。

「こんなことして、すみません。してみたかった、先輩と、どうしても・・・」
幸人は、何も反応できなかった。
手が離された今でも、まだ触れられているような、そんな余韻が残っている。
自分ではない、純也の掌の感触が。

目を伏せてぼんやりとしていると、ふいに横からピピッという電子音が聞こえた。
聞き覚えのあるその音にはっとして、さっと振り向く。


「・・・ちょっと、トイレ借ります。すぐに終わらせますから」
「純也、今、まさか・・・!」
呼び止めようとしても、純也は早足でまたトイレに入ってしまう。
何をする気なのか察し、幸人は慌てて辺りを拭いて服を直す。
そして、十円玉を持ってユニットバスへ続く扉の前に立った。
鍵はとても簡易的なものなので、細くて硬いものを隙間に挟み、捻れば簡単に開く。
扉を開けると、純也がデジカメから目を離して幸人を見た。

「純也・・・そのデジカメを渡すんだ」
そこには、きっとあられもない姿の写真が残ってしまっている。
一刻も早く消してしまいたかったが、純也は良い顔をしなかった。

「・・・嫌ですよ。別に、これ使って脅そうってわけじゃありません。。
ただ、オレが毎晩眺めていかがわしいことを考えたいだけです」
臆面もなく言う純也に、厚顔無恥とはこういうことだろうかと実感する。

「そうだとしても、恥ずかしすぎるから・・・勘弁してくれ」
そんな写真が残っていると、何に使われるか気が気でならない。
幸人がしきりに懇願すると、純也は溜息をついた。



「・・・わかりました、消してもいいですよ」
「本当か。じゃあ、今すぐに・・・」
幸人がカメラを奪おうと近づくと、純也はさっと腕を取って自分の元へ引き寄せた。
体がぶつかり、お互い至近距離で視線が交わる。

「その代わり、これからも、オレに先輩が感じてる顔見せてくれますか?」
「え・・・!?」
何と返事をしていいものか、幸人は目を丸くする。
そんな様子を見て、純也は声を出しておかしそうに笑った。


「あははっ、先輩、あんなもん持ってる割にはまだ恥じらいがあるんですね。。
勿体ないですけど、そんなに頼むんなら消しますよ」
純也がカメラを操作して、写真を消す。
画面が真っ黒になったのを確認すると、幸人はほっと胸を撫で下ろした。

「じゃあ、オレ帰りますね。このままだと、また先輩を襲いかねないし」
「じ、純也・・・」
冗談に聞こえなくて、幸人は視線を彷徨わせた。
「そういう焦ってる顔も面白くていいなあ。また今度、被写体にさせて下さいね」
そう言い残し、純也は家を出て行く。
被写体にさせてほしいというのは、写真部ならさして珍しい頼みでもないけれど。
幸人にとっては、とても不安な言葉として耳に残っていた。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
唐突に思い付いたいかがわしいネタ、年下責めっていいよね←
写真部だけじゃなく、他のジャンルでもやってみようかと試行錯誤中です。