後輩攻めをさせてみたかった12


広斗がとんでもない告白をしてから、あからさまに態度がよそよそしくなった。
変な敬語を使うようになり、気軽で気さくな雰囲気がまるでなくなる。
部員も妙に思っているようだったけれど、一番違和感を覚えているのは他でもない睦月だった。
親しい友が、急に疎遠になってしまったような物寂しさを感じる。
部室内では、頻繁に孤独感に苛まれて仕方がない。
疎遠になって、初めて広斗の存在の大きさに気付いていた。

原因は、みなまで言わずともよくわかっている。
何とか、元の関係に近い距離まで戻せないだろうか。
睦月は、かき混ぜ続けて角が立った生クリームを見て、じっと考えていた。

あくる日、部活が終わった後、広斗は部員との会話もそこそこにさっさと帰ろうとしていた。
「広斗、ちょっと待ってくれ」
睦月に呼び止められると思っていなかったのか、広斗は目を丸くする。
「何か用・・・ですか?睦月先輩」
違和感がありすぎる敬語を聞くと、苛ついてしまう。
こんな状態は、一刻も早く解消したかった。
有無を言わさず広斗の腕を引き、廊下へ出る。


「広斗、僕と料理対決をしよう。お題はお菓子系全般で、部員に審査してもらう」
「対決って、いきなり何言い出すのさ。ボクがお菓子作りで睦月先輩に敵うわけ・・・」
「僕が勝ったら、よそよそしい態度は止めてほしい。

広斗が勝ったら・・・とんでもない欲望を、叶えてもいい」
広斗ははっとして、言葉を止める。
よくよく考えれば、広斗ばかりが特をする提案だけれど、
簡単には負けない自信はあったし、どうしても大きな餌で釣りたかった。

「本当にいいの、もしも、万が一ボクが選ばれたら・・・」
「万が一がないように、僕だって準備はする。日程は、一週間後だ」
迷いが生まれない内に、睦月は広斗から遠ざかる。
大それた提案をしたことに、後悔はなかった。


結論から言うと、料理対決は一票差で広斗が勝った。
その結果を、睦月は薄々覚悟していた。
広斗の目の下のクマを見れば、どれだけ努力したのかは明らかだし、
何より、部員の好みをリサーチして、大多数に好まれそうな見た目と味を完成させていた。
自分も、この日に備えてアレンジを考えていたけれど、
食べさせる相手のことを考えていなかったことが、大きな敗因だった。

部員が帰ると、睦月は広斗に歩み寄る。
「広斗、僕の負けだ。・・・どう、すればいい?」
望みを叶えようとする言葉は、自分でも驚くくらいあっさりと出てきた。

「いいの、本当にいいの、睦月先輩が途中で嫌になったって、止められないかもしれないよ」
「広斗は、この日のために本当に努力してきたんだ。願いを聞くのは当然だ」
正直、体に何やらを塗りたくられるなんて、現実味がわかない。
だから、緊張感や恐怖心は、今のところなかった。

「・・・じゃあ、次の休みにボクの家に来て。
親には、何としてでも外出してもらうから」
くだけた口調になり、親しみが一気に増す。
これで、少しは元の関係に戻れるかと、睦月は安心した。
「わかった。じゃあ、行かせてもらうよ」
とたんに、広斗の顔がぱっと明るくなる。
こんな素直な表情が見られるなら、多少のことは我慢できると、そう思えた。




そうして、あっという間に休みの日になる。
睦月はとりあえず朝風呂に入り、着替えを持って、広斗の家に来ていた。
「睦月先輩、来てくれたんだ・・・!」
広斗は心底安心したように、柔らかな笑顔を見せる。

「約束しただろ。どこに行けばいい?」
「こっち、ボクの部屋に来て」
手を引かれて、二階の部屋へ入る。
中はやたらこざっぱりとしていて、全力で片付けた感じがした。
そして、床にはビニールシートが敷いてあり、回りには蜂蜜やらホイップクリームやらが置いてある。

「じゃあ・・・服、汚れるから、脱いでほしい」
「わかった」
まるで子供の遊びのように思えて、あまり抵抗なく睦月は服を脱いでいく。
上半身の服を置き、ベルトに手をかけるときは多少躊躇ったけれど、
一回深呼吸してから、下半身の服も置いた。
視線を感じると、男同士なのにどこか落ち着かなくなる。
気付けば、広斗も上の服を脱いでいた。

「あの・・・じゃあ、座ってほしい」
言われた通り、睦月はビニールシートの上に腰を下ろす。
広斗は目の前に座り、蜂蜜の瓶を手に取った。
「・・・瓶詰めなんて、いい蜂蜜だな。
メイプルシロップだって安くないし、結構費用がかかったんじゃないか」
「途中で味に飽きたり、胸焼けしたりしないようにね。
それに、睦月先輩に塗るんだから、安っぽいものじゃあ失礼だし」
果たして喜んでいいのか、睦月は微妙な気持ちになる。


「・・・塗るよ、睦月先輩」
睦月は、覚悟を示すように小さく頷く。
広斗が瓶の蓋を開けると、甘い香りが漂った。
その蜜が、広斗の指先によって腕に塗られていく。
何となくくすぐったくて、笑いそうになった。
腕がしっとりと濡れると、香りが強くなって、睦月は思わず蜜を舐める。
上等なもののようで、他の甘味でごまかされていない、優しい甘さがした。

「駄目だよ、自分で舐めちゃ。すぐに、ボクが身も心も甘くしてあげるから」
調子を取り戻したのか、まるでホストが言いそうなことが告げられる。
指先まで塗り終わると、広斗が掌に舌を這わせた。
あまりいやらしい雰囲気がないせいか、くすぐったさが先行して、睦月は微かに笑う。
指の間、手の甲、その後は腕へと、なだらかに舌が伝っていく。
今のところは、子供の好奇心を満たすための遊びだと、そう認識できていた。

「ん、美味しいな。やっぱり、良いやつを買って来てよかった」
「なら、そのまま食べた方がいいんじゃないか」
「それじゃあ意味ないよ。睦月先輩の肌の感触を感じながら味わえるって、最高だよ」
そんな心境を理解できず、睦月は苦笑する。
そうやって、もう片方の腕も同じように塗られ、舐められたけれど、
特にいかがわしい感情は湧いてこなくて、今のうちに広斗が満足してくれないものかと願った。


「睦月先輩も、味わってみる?」
目の前に、蜂蜜をつけた広斗の指が差し出される。
人差し指に唇をなぞられると、甘い香りにひかれて隙間を開いてしまっていた。
細い指が舌を撫で、甘味を感じさせる。

「ん・・・う・・・」
睦月が顔を背けることはなく受け入れていると、広斗は本数を二本に増やす。
上等な甘露に酔いしれるように、睦月は自分からもわずかに動いて指を弄っていた。
意外にも素直な反応をされ、広斗の気は高揚していく。

ほどなくして指を引き抜くと、蜜の代わりについた唾液を自分でも舐め取った。
そのときの表情がどこか妖艶で、一瞬だけ凝視する。
ずっと見ていると引き込まれてしまいそうで、睦月はとっさに目を逸らした。

「次は味を変えてみようかな。これも、美味しいと思うよ」
広斗は蜂蜜を遠ざけ、メイプルシロップが入った瓶を開ける。
また違う甘さが漂って来て、睦月は唾を飲んだ。

今度は、首元や胸部、腹部へと塗りたくられていく。
首元や胸部に触れられると、腕とは微妙に感じるものが変わった気がした。
そして、首筋に舌が這わされたとたん、反射的に肩が震えた。
そんな反応に広斗は目を細め、首を集中的に弄り始める。

「っ・・・は、っ・・・」
首をなぞられると声が上ずりそうになり、息を吐いて何とか抑える。
「睦月先輩、首筋気持ち良いんだ。きっと、ここからは、くすぐったいだけじゃなくなるよ」
「・・・お手柔らかに、してくれ」
広斗はわざと首元に息を吹き掛け、姿勢を低くする。
そして、小さく舌を出して胸部の起伏へ軽く触れた。

「ひっ」
確実に感じるものが強くなり、睦月は怯む。
広斗は舌先でその部分をやんわりと押し、少しずつ刺激していく。
「ぅ、ぁ・・・」
細かな動作でも、体の反応は声になって現れる。
もっとそんな声が聞きたくてたまらなくなり、広斗は起伏を咥え込んだ。
睦月は奥歯を噛み締め、恥ずかしい声が出ないよう、必死に堪えようとする。
思惑通りに行かなくて、広斗は起伏を強く吸い上げた。

「ぁっ・・・」
堪えようとしていたのに、か細い声が喉の奥から発されてしまう。
液はすぐに拭われたけれど、まだ広斗は離れようとしない。
少しでも睦月の気を昂らせようと、舌で弄ぶようしきりに起伏をいじっていた。

また声を堪えているうちに、徐々に睦月の息が荒くなっていく。
そこで、やっと広斗が離れた。
触れている側でも、その息は熱っぽい。


「睦月先輩の素肌に、こんなに触れられるなんて・・・何だか、ドキドキする」
「そういう、ものなのか・・・」
「だって、好きな人を自由にできてるんだから、ドキドキしないはずない」
好きな人だと、直球で言われて睦月は目を丸くする。
これは、ただの好奇心ゆえの行為ではないのだと実感すると、
急に緊張感が増したけれど、嫌な気持ちにはならなかった。

「だから、もっと触りたいんだ。睦月先輩が、一番気持ち良くなるところに・・・」
広斗は、睦月の下肢へと目を向ける。
先の刺激が伝わっているのか、そこは起立しようとしていた。
自分のものを見る気にはならなくて、睦月は前を向いたままでいる。
平静でいるのではなく、どうしていいかわからない様子だった。
けれど、広斗がホイップクリームを手にしたのを見ると、まさかという予感がよぎった。

「ま、まさか、それ・・・」
「うん、これから睦月先輩をデコレーションしたいんだ。それほど量がないから、場所は限定されるけどね」
限定される場所とは、言われなくてもわかる。
広斗はホイップクリームの蓋を外し、その中身を睦月の下肢へ押し出した。

「ひ、や・・・」
液体とは違う、滑らかでふんわりとしたものが下肢に落ちて来る。
ただぞんざいに落とすだけではなく、広斗はキャップの部分を近付けて、根元へ絞り出した。
小さな山形のクリームをいくつも作り、下肢を覆っていく。
柔らかいものに包まれる感覚なんて初めてで、睦月は動揺するしかない。

「美味しそう・・・少し、舐めたいな」
睦月が息を飲むと、広斗は身を下ろして顔を下肢へ近づける。
そして、周りのクリームを巻き込みつつ、中心のものを弄った。
「ああ、っ・・・」
一気に淫らな感触が襲って来て、どうしようもない声が上がる。
先まで舌が這わされると、もう体の反応は抑えきれなくなってしまう。
広斗の動きは激しいものではないのに、ほどなくしてそこは完全に起立していた。


「睦月先輩、敏感なんだ。もっと甘くなろう?満たしてあげるから・・・」
「そんなとこ、誰だってそうだろ・・・っ、ぁ、あ」
広斗が再びクリームを手にして、起ちきっているものへ押し出す。
先端を包み込むように山を作り、周りには縦方向に線をつけて行く。
そこはどんどんデコレーションされてゆき、肌はクリームで包まれた。

「は・・・あ・・・ぅ」
自分の熱が中でくすぶっているのか、下肢が微妙に温かい。
ちらとその様子を見てみると、クリームしか見えなくて、とてもいやらしく思える。

「今の睦月先輩、どんなお菓子よりも魅惑的だよ。・・・食べつくしたい、睦月先輩を」
「広斗・・・」
もはや、ここまで言われても嫌悪感が沸いてこない。
体をデコレーションされて、その身を食べられようとしているのに、
強く求められている現状を、受け入れようとしている。
高揚のあまり、爛々としている広斗の瞳を目の当たりにしても、蹴り飛ばそうとはしなかった。

「睦月先輩・・・いただきます」
広斗はクリームを置き、再び身を下げる。
そして、口を開けて睦月の先端を咥えた。
「あ・・・!」
自信のものがさらに柔いものに挟まれ、声を抑える気がなくなる。
広斗がその部分を何度も食むと、敏感なものに震えが走った。
クリームを舐め取り、肌へ舌を這わせて、直にその感触を感じさせていく。

「や、あぁ、っ・・・」
広斗の口内でクリームが溶けて、その身を伝って零れ落ちて行く。
反応しきっている個所は、液が流れてゆく感覚ですら感じ取ってしまう。
まるで、もう白濁が滴っているようで、とても卑猥だった。
「睦月先輩、もっと良くしてあげるよ。クリームもいいけど、一番味わいたいのは別のものだから」
睦月を見上げて言うと、広斗はまた同じものを含む。
今度は先端部だけではなく、半分ほど口内へ誘った。

「あ、ぁ・・・っ」
クリームが舐め取られると、すぐに柔い舌が触れる。
二種類の液体の感触は、嫌でも睦月の気を昂らせていった。
無意識の内に、その動きを止めようと足を閉じようとする。
けれど、広斗の指先が太股の付け根をなぞると、怯むようにびくりと震えた。


少し苦しくなってきたのか、広斗が一旦身を離す。
触れている側でも息遣いは早くて、だいぶ興奮しているようだった。
口に溜まったクリームを飲み込むと、濃厚な甘さが喉を通り抜ける。
そろそろ甘味に飽きてきていて、他の味が欲しかった。

「ん・・・ちょっと、胸焼けしそう」
「っ、いくら上等なやつでも、そんなに舐めれば当たり前だ。・・・もう、止めても、いいんだぞ」
口ではそう言ったものの、下肢の疼きは少しもおさまらない。
控えめな提案に、広斗は首を横に振った。

「けど、睦月先輩のを貰えれば、味が変わって平気になると思うんだ」
「ま、まさか、そんなものまで・・・」
広斗は口端を上げて笑み、姿勢を低くする。
そして、睦月の先端をゆっくりと舌で愛撫した後、それを奥まで咥え込んだ。

「あ・・・っ・・・!」
一気に感じるものが強くなり、抑えきれなくなる。
温かな口内に全体が包まれ、それはしきりに脈打った。
広斗は舌を何度も往復させ、睦月を絶頂へと誘おうとする。
甘いものよりも、渇望している液体を早く味わいたくて仕方がなかった。
全体をくまなく弄り、お互いに一時も息つく暇もなくならせる。

「や、も・・・離し・・・っ」
もうクリームはなくなっているけれど、広斗が睦月のものを解放する気配はない。
荒く呼吸をするたびに、睦月からは喘ぎが漏れて、限界を示す。
反応しているのは下肢も同じで、広斗の舌に違う味を与えていた。
粘液室な液を感じると、それがもっと欲しくてたまらなくなる。
とたんに、広斗は昂りを強く吸い上げた。

「ああ・・・っ、ん、あ・・・!」
瞬間、脳髄まで届くような悦が全身に走り、体が打ち震える。
その衝動は下肢に伝わり、高まりきった欲を解放させた。
もう、広斗の口内に甘いものはなくて、苦味と独特の匂いを持つ液が注がれる。
思った以上に飲みにくくてえづきそうになりつつも、一滴も零さぬよう慎重に口を離した。
鼻で呼吸すると、匂いが広がっていく。
広斗は一回息を吐いてから、液の全てを嚥下した。


睦月は肩で息をし、苦々しい顔をしている広斗を見下ろす。
不快な思いをしているのに、それほど渇望していたのかと目の当たりにすると、
ふいに、胸の内に愛しさが込み上げて来ていた。
だいぶ苦かったのか、口内の液がなくなると広斗はすぐに蜂蜜を舐める。
苦味が紛れると、広斗は瓶を置いて息を吐いた。

「・・・美味しかったよ、睦月先輩の」
「そんな顔で言われても・・・吐き出してもよかったのに」
「一度、味わってみたかったんだ。お礼に、いいものあげるよ」
広斗は、ズボンのポケットから小さな紙包みを取り出す。
それを開けると、黄金色に煌めく飴玉が出てきた。
安っぽいビニールではなく、しゃれた紙で包まれているところが高級感を醸し出している。
どんな味なのか興味が沸き、睦月は態勢を立て直す。
けれど、その飴は広斗の口へ放られてしまった。

からかわれたのだろうかと、睦月は身を引こうとする。
その前に広斗がにじり寄ってきて、すぐに口が塞がれた。
驚いて閉口していたけれど、唇をなぞられると自然と隙間が開いてしまう。
そこへ、さっき広斗が含んだ飴玉が差し入れられた。

「ん・・・」
さわやかなレモンの酸っぱさと、優しい蜂蜜の甘さを感じて、睦月は目を閉じる。
差し入れられたのは飴だけでなく、広斗の舌も同時に入ってきていた。
ゆっくりと動かされると、お互いの間でじわじわと飴が溶けて行く。
もはや羞恥心が麻痺していて、あまり動揺が生まれない。
たまに、苦味の余韻が残っているようだったけれど、それでも広斗を突き放さなかった。


お互いの温度を感じつつ、静かな交わりが続く。
たまに睦月が味を飲み込むと、広斗の液も一緒に喉を通り過ぎて行った。
大それたことをされた後だからか、微塵も嫌悪感が生まれない。
飴が完全になくなったところで、広斗は名残惜しそうに離れた。

「睦月先輩、全身ボクの唾液でねとねとだね。お風呂入ってく?」
「・・・できれば、そうしたい」
そう言うと、まだ拭いていないのに広斗が抱き付いてきた。
濡れてしまうと、睦月は少し身を引いたけれど、構わず体が密接になる。

「よかったら、一緒に入ろっか。全身くまなく綺麗に洗ってあげるから」
「いや・・・また襲われそうだし、いい」
密着していると、広斗の下半身がどうなっているのかよくわかる。
わかって言っているのか、広斗は無邪気に笑った。
一緒に入ったら、たぶんもっと大胆なことをされる。
そこまで身を開く度量は、今のところ、睦月にはなかった。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
同人誌で見たプレイ、後悔はしていない←
残った甘味は後で二人が美味しくいただきました。