後輩攻めをさせてみたかった18


一週間前から、純也はいつも以上に積極的に幸人と距離を詰めるようになった。
二人きりになれる時間が数分でもあれば、すぐさま身を近づけて
幸人がぎょっとしている隙に、体を抱き留めて自分の元へ引き寄せる。
学内では、それ以上何をすることもないのだけれど
どこか、いつもと違うような雰囲気があると幸人は感じていた。
今日も今日とて、部員がいなくなった隙に純也は幸人を抱き締めていた。

「・・・なあ、純也。そんなに、密着していたいのか」
「していたいですよ。先輩となら、いつだって」
あんまり正直に言われると照れて、幸人は言葉に詰まる。
「・・・そんなにひっつきたいなら、校内じゃないほうが、いいんじゃないか。
誰が入ってくるかわからないし・・・」
なぜか、純也は何も答えない。
そうしてじっとしていると足音が聞こえてきたので、さっと離れた。
やはり様子がおかしいと思いつつも、他の部員が居る中では深くは聞けない。
そんなもどかしさを感じている中、絶好の機会がやってきた。

3連休に、写真部は、1泊2日の写真撮影校外学習のため、バスで移動していた。
一人では中々行けない遠方へ行き、違う風景を撮影できる絶好の機会で
ほとんど遊びつつ撮影できるので、部員には評判のイベントだ。
「行先は、海がすごく綺麗に見える所なんだ。是が非でも撮影しないとな」
「そうですね」
純也にとっては初めてのことなので、緊張しているのか口数が少ない。
無理に話すこともないだろうと、幸人も黙って外の風景を眺めていた。


見知らぬ景色は見ているだけでも楽しく、あっという間に目的地に着く。
ホテルに荷物を預けると、早速自由行動だ。
この日の為に、幸人は周辺の下調べを入念に行っていた。
「滅多に来られないんだ、いろいろ回ろう」
「・・・そうですね」
車酔いでもしたのか、純也の返答にはまるで覇気がない。
珍しい被写体を見れば気も紛れるだろうと、幸人は純也の腕を引いた。

その街にしかないオブジェ、珍しい店、雰囲気の違う街並みを、幸人は次々と撮影していく。
けれど、純也は撮影枚数も少なく、テンションがかなり低い。
「・・・純也、最近、疲れてるのか?」
「そんなわけじゃ、ないんですけど・・・」
純也は、後半の言葉を濁す。
連れ回されるのが嫌なのかと、幸人は心配していた。



ホテルに帰ってからも、純也は思い詰めているような感じで会話がままならない。
楽しめないまま終わるのはあんまりだと、幸人は暗くなってから純也を外へ連れ出していた。
「気乗りしないかもしれないけど、折角海が近いんだから、行ってみよう」
「気乗りしてないわけじゃ、ないんですけど・・・」
有無を言わさず、幸人は純也の腕を引く。
余り長い時間は出ていられないので、早足で浜辺へ向かった。

夜の浜辺に人気はなく、砂浜が街灯にぼんやりと照らされている。
さくさくとした砂浜を踏みしめ、水がかからない程度に海辺へ近付いた。
「今日は星も出てるし、月も綺麗だ。気が落ち着くと思うんだけど、どうかな」
目を閉じると、さざ波の静かな音が心を癒してくれる。
良い雰囲気とは、こういうことを言うんだろうなと感じていた。

「純也、あんまり楽しくないか?案外、環境の変化に弱いのか」
「そういうんでも、ないですけど・・・」
相変わらず歯切れが悪くて、幸人のもどかしさは急上昇する。
「どうしたんだ、いつもと全然違う、気遣わなくていいからはっきり言ってくれ!」
強めに言うと、純也はじっと幸人を見詰める。

「・・・わかりました、包み隠さず言います。でも、ホテルの中の方がいい、絶対に」
純也に腕を引かれ、幸人は期待と不安を募らせて、小走りでついて行った。

ホテルの部屋に入るなり、純也は幸人を強く抱き寄せる。
普段より力が強くて、全く身動きが取れなくなった。
「最近、頻繁に夢精するんです。先輩の夢を見ると、必ずする」
「え」
「無理強いしたくないから必死に堪えてました。でも・・・先輩が気になってるみたいだから言います。
俺、先輩が欲しくてたまらない。キスだけじゃ、足りないんです」
明らかにキス以上のことをしただろう、という言葉が出てこない。
心臓が高鳴るばかりで、幸人は驚きと戸惑いで口を半開きにしていた。

「駄目ですか」
「え、え・・・っ、と」
前にしたこと以上のことなんて、想像がついてしまう。
それだけに、おいそれと返事はできなかった。
「・・・玄関、鍵閉めてませんでしたね」
純也が腕を解いた隙に、幸人は部屋へ引っ込む。
けれど、どこへ行くこともできず立ち尽くしていた。
純也が入ってきて、幸人は思わず後ずさる。
後ろにベッドがあるのも気付かず、座り込んでしまった。

純也が目の前まで来て、幸人に手を伸ばす。
掌が頬に触れた瞬間、幸人は身を固くしていた。
「・・・シャワー、浴びてきます」
純也は案外すぐに手を離し、浴室へ向かう。
幸人は、一時の間だけほっと息を吐いた。

純也が出てくると、幸人は入れ替わりでそそくさと浴室に入る。
何だか、行為の前に体を清潔にしているようだと、ふと思ったけれど
冷水を被って、一瞬で打ち消した。
この後、さっさと寝てしまおうか、少しくらい相手をした方がいいのか
考えつつ長湯になり、やがて部屋へ戻った。

テレビもついてなくて、やけに静かだ。
ふと見ると、純也が背を向けてベッドに横になっていた。
出てくるのが遅くて、もう眠ってしまったのだろうか。


「純也、寝たのか・・・?」
近付いてみても、特に反応がない。
我慢したまま眠って、今日も、いかがわしい夢を見てしまうのだろうか。
少しだけ申し訳なくなって、純也の髪をそっと撫でる。
寝顔は見られてばかりで、見たことがなかったけれど
もてなくはなさそうなのに、どうして自分なんかに過度な興味を抱いてしまったのか。

まじまじと見ていると、なぜか指が勝手に動いて純也の頬に触れる。
なついてくれることは嬉しいけれど、勿体無いとも思う。
頬にに触れつつ考え事をしてうると、純也がうっすらと目を開いた。
「あ、ごめん、起こしたか」
さっと手を退けると、おぼろげな眼差しで見上げられる。
どことなく色気があって、幸人はどきりとしていた。

「・・・先輩」
「ん?なに・・・」
呟くと同時に、純也は勢い良く起き上がり、幸人の肩を押す。
幸人は目を丸くして、抗う間もなく押し倒されていた。

「ちょ、ちょっと、純也」
「先輩・・・」
純也は小さく呟き、幸人の頬を両手で包み込む。
大切な物を扱うようにそっと手を添え、身を下ろしていった。
幸人が反射的に目を閉じると、すぐに唇が触れ合う。
柔らかな感触が嫌ではなくて、幸人はじっとして受け入れていた。

純也はただ重なるだけではなく、何度か離れ、また塞ぐ。
そのたびに唇を食み、軽く弄って変化を与えていくと、幸人が軽く吐息をついた。
熱っぽさを感じるとたまらなくなって、純也はその中へ舌を差し入れる。

「は、んん・・・」
柔らかなものが舌に絡み、幸人はわずかに声を漏らした。
表面を撫で、裏側へ潜り込み、左右に動いて口内を乱す。
静かな部屋に聞こえる液の音と交わる感触に、幸人は赤面していたけれど
嫌じゃないと、そう感じてしまうようになっていて、力が抜けていた。


ひとしきり弄った後、純也は幸人を解放する。
そして、幸人が息つく間もなく寝具のボタンを外し始めた。
「じ、純也、これ、夢じゃないんだぞ」
欲求不満の夢を見ているのかと、幸人が慌てて諭す。
純也は一瞬だけ動きを止めたが、寝具を脱がせて前をはだけさせた。
腹部の辺りまで身を下ろし、そこへも口を近づけて、舌で触れる。

「うぅ・・・」
湿っていて、なまめかしい感触に幸人はわずかに怯む。
純也はゆっくりと上へ移動し、胸部の中心から首筋まで、ゆっくりとなぞっていく。
首筋まで着くと、純也は唇を押し付けて、軽く甘噛みした。
「ひ、ぁ、純也・・・っ」
舌で触れられた喉仏が、びくりと震える。
それでも、突っぱねることなんて忘れていた。

「先輩・・・俺、先輩の上ずった声聞いて、高まった体温感じて、
紅潮してるとこ見てると、もう、こうなるんですよ・・・」
純也は幸人の手を取り、下方へ持っていく。
そして、ズボンの中へ滑り込ませて、自分の中心へ触れさせた。

「な、なに、して・・・」
掌に、熱を帯びた、固いものがあてがわれて、幸人は言葉を止める。
それは純也の昂りを示していて、触れるだけで心音が高鳴った。
まだ離れないよう、純也は幸人の手を上から押し付ける。
無理矢理握るようにされて、掌全体に純也のものを感じると
脈動までもが伝わってきて、幸人はどぎまぎしていた。


「先輩のは、どうなってるんですか」
純也は一旦手を離し、幸人の下着ごとズボンをずらす。
「な、あ、ちょ、ま」
いきなり下半身を露わにされて、口がうまく回らなくなる。
幸人のものは無反応ではなくとも、起つまでには至っていなかった。

「先輩も、もっと感じてください」
今度は、純也が幸人のものを掌で包み込む。
「あ、や・・・っ」
広い掌が添えられて、とたんに声が上がる。
ゆったりと上下に動かされると、どうしようもない感覚が競り上がってくる。
後輩の手に愛撫されて、体はどうしても反応してしまい
敏感な部分はみるみるうちに熱を帯び、固くなっていた。

「先輩の、感じてくれてるんですね」
「そんなとこ触られたら、誰だって・・・!」
言葉を言い終える前に、純也は幸人のものを強めに握る。
「っ・・・!」
幸人の体が跳ねると、純也は恍惚の笑みを浮かべた。

「今まで、先輩に負担かけないように一人でしてきた。でも、足りないんです、解消されないんです」
純也が腰を落とし、身を近づける。
下半身が密着すると、幸人は息を飲んだ。
お互いの昂りが触れていて動揺したが、言葉にならない。

「先輩が欲しい・・・もっとあられもない声が聞きたい、感じてるところが見たい、擦り合わせて達したい・・・」
「あああ、言わなくていい、いいから、耳が耐えられない」
恥ずかしい台詞を連呼され、幸人は耳を塞ぎたくなる。
おぞましい、ではなく、ただ恥ずかしい。
そう思ってしまうことが、気を許している証拠だった。


純也の手が再び下方へ伸ばされ、二人分のものを包む。
一緒に握られてお互いがますます密接になり、幸人の鼓動が強まった。
「痛いことはしませんから、俺に任せてくれますか」
少し間を空けたが、幸人は小さく頷く。
気が高揚しきっているこの状態で、断れるはずはなかった。
拒まれないとわかると、純也はすぐさま手を動かす。
指先まで使って全体を擦らせ合うと、幸人が震えた。

「ああ、っ、純也、早・・・っ」
先よりも動きが激しくて、幸人は上ずった声を抑えられない。
純也は腰を前後に動かし、しきりに欲を募らせていく。
先端が擦れると、そこからわずかに白濁が漏れ始めていた。
「先輩も欲しくてたまらないんですね、反応してくれるんなら、幾らでもしますから」
指先を巧みに使い、純也は幸人の身を撫で回す。
もう弱い個所を熟知しているように、指の腹が裏側をなぞり上げた。

「ひあ、は、ん・・・」
そこは少しでも刺激されると、悦楽が全身に走る。
息つく間など与えず、純也はひたすら幸人を攻め立てていた。
「幸人先輩、もう先走って反応しっぱなしだ。でも、きっと先輩以上に俺のほうがヤバい」
純也がやっと手を止めて身を離したかと思うと、猛ったものを幸人の太股へ擦り付ける。

「な、なに・・・」
これ以上にないくらい高まっているものが触れ、幸人は今更ながら動揺する。
それは徐々に移動し、腹部の辺りにも当てられる。
そこまで来たところで、純也は幸人の手を取って自分のものを握らせた。
「うわ、あ・・・」
純也のもの先よりもさらに肥大し、手の中でしきりに脈動している。
熱が直に伝わってくると、幸人の下肢も疼いていた。

「先輩と重なり合って、もうどうしようもないくらいに興奮しきってる。一緒にいきましょう、幸人先輩・・・」
純也は、再び下方へ移動して幸人と体を重ねる。
隙間なく密接にすると掌で包み込み、上下に往復運動を繰り返した。

「あぁ、は、や、あ・・・っ」
絶頂を急かすように動きが荒々しくて、幸人は喘ぎを抑えきれない。
少し強く握り込まれると、圧迫感がとたんに快楽に変わった。
先端からお互いの液が零れて伝い、潤滑剤がより淫らな感覚を与えていく。
ぬらぬらとした白濁の感触に今まで以上に高揚してしまって、幸人はシーツを握り締めた。


「堪えないでください、先輩の達した顔が見たい・・・」
「そ、んな、の・・・っ」
言葉を発するたびに声が裏返り、もう続きを言えない。
そして、純也が何度目かに幸人の裏側をなぞりあげた瞬間、身が打ち震えた。
「あぁ、っ、や・・・あ、ああ・・・!」
最後にひときわ高い声を発し、幸人の下肢が脈動する。
次の瞬間には競り上がった欲が溢れ出し、純也を濡らしていた。

「ああ、幸人先輩・・・っ!」
幸人の白濁にまみれ、純也も達する。
温かで液は幸人と交わり、卑猥な感触の余韻を与えた。
幸人は、虚ろげな眼差しで純也を見詰める。
そのまま純也の身が下りてきて唇に重なり、静かに目を閉じた。
このまま眠ってしまえるほどの、心地よさを感じながら。




翌朝、二人は同じベッドで目を覚ました。
先に起きたのは幸人で、シーツの乱れようと散らばる寝間着を見て、あらかた察する。
昨日の行為は夢とみまごうものだったけれど、全裸で寝る癖は自分にはなかった。
とりあえず着替えて、顔を洗ってさっぱりする。
純也が起きていないからだろうか、案外冷静だった。

部屋に戻ると、純也が身を起こして辺りを見回している。
まだ眠いのか、目は開ききっていない
「・・・おはよう、純也」
声をかけると、純也ははっとして幸人を見る。

「幸人先輩、俺・・・先輩のベッドに潜り込んでたんですね」
「潜り込んだというか、堂々と・・・」
「それで、暑くて脱ぎ散らかしたんですかね。やらしい夢見てたら、思いきりシーツを汚してたとこでした」
まさか、覚えていないのかと幸人は訝しむ。
けれど、昨日のことを語るほど厚顔無恥ではなくて、黙っていた。

「ほら、さっさと着替えて支度しないと集合に遅れるぞ」
幸人は、自分の服をせかせかと拾い集める。
その背後に純也が立ち、ふいに肩を掴んだ。
「夢にしておいた方が、先輩にとって都合が良いですか」
「え・・・っ?」
幸人が振り返ったときには、純也はもう離れていた。

「何でもありませんよ。顔洗ってきます」
返答を待たずに、純也は部屋を出る。
幸人は、微妙な面持ちで純也を見詰めていた。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
微妙な感じになりましたが、単純にひっつけるよりいいかと思いまして…
最高にいかがわしくなるのはいつになるやら