後輩攻めをさせてみたかった5


今日も、幸人は純也の家に来ていた。
特に恥ずかしいゲームをするわけではなく、幸人は座ってマンガを読んでいる。
キスフレ、となった今、家に行くのはやはり緊張したけれど。
楽しみにしていた新刊がありますよ、という言葉につられて、
先輩の写真が撮りたいですという、創作活動に協力するために来ていた。

写真を撮るときの純也はいたって真剣で、今もデジタルカメラを構えている。
マンガが面白い場面になり、幸人がくすりと笑ったところでシャッターが切られた。
「よく、笑っているところをピンポイントで撮れるな」
頬を緩めたのはほんの一瞬だったけれど、純也はすかさずファインダーに収める。
他の人に被写体を頼む時も同じく、良い表情のものを撮影できる、一種の才能だった。

「笑いそうだなっていうタイミングがわかるんです。特に、先輩のことはよく見てるんで」
「そ、そうか」
うまくリアクションをとれなくて、幸人はマンガに目を落とす。
それからも、何度かシャッターが切られた。
これが初めてのことではないので、あまり気にせずページをめくっていく。
やがて読み終えると、幸人は満足気にマンガを閉じた。

「ありがとう、面白かったよ」
「今回の話はよかったですよね。特にこのキャラが」
純也がさりげなく幸人の隣に座り、ページをめくる。
距離はだいぶ近く、腕は密着していたが、これもあまり気にならなくなっていた。
こうして、一緒に笑い合えることが何よりも楽しい。
やはり、疎遠にならなくてよかったと幸人はしみじみと感じていた。


今度こそマンガを閉じ、机に置く。
そこで、ふと純也が黙り、幸人の肩に腕を回して引き寄せた。
雰囲気が変わったのを察し、幸人は大人しくしている。
「先輩、してもいいですか」
瞬間、心音が反応する。
返答に少し時間はかかったが、幸人は小さく頷いた。

待ちきれないように、純也が顔を近づける。
幸人が反射的に目を閉じると、すぐに何も言えなくなった。
躊躇いなく唇が重ねられると、慣れていないことに緊張し、思わず生唾を飲んだ。

数秒ほど重なり、離れるとまたすぐに触れ合う。
やがて、柔いものが口の隙間をなぞると、そこは自然と開かれていた。
純也のものが差し入れられ、舌が絡まる。
「ん、ぅ・・・」
鼻から、声にならない声が抜けてしまう。
純也は目を細め、怯えさせないよう、ゆったりと表面を撫でる。
少しでも長く相手の感触を味わうように、その動作は緩やかだった。


そのとき、だれも操作していないはずのシャッター音が鳴る。
幸人は驚き身を引こうとしたが、後頭部に手がまわされて留められていた。
純也の動きは少しずつ大胆になり、幸人を捕らえて離さない。
ほとんど動けない相手に、執拗に絡みつかせて蹂躙する。

「は、ぁ・・・っ、んん・・・」
呼吸が不規則になり、幸人の息が熱を帯びてくる。
いつまでも接していると、脳が熱に侵されてしまいそうだった。
長い口付けに、口端からわずかに液が零れ落ちる。
そこで、二回目のシャッター音が鳴り、純也は絡まりを解いた。


「っ・・・セルフタイマーで、こんなところ撮るなんて・・・」
羞恥のあまり、幸人は俯く。
「すみません。絶対、誰にも見せませんから」
顔を伏せている様子を見るとたまらなくなって、純也はその体をきつく抱いた。

少し早い息遣いを感じると、解放したくなくなる。
まだカメラが動いているのを確認した後、幸人の耳元へ唇を寄せた。
吐息がかかり、幸人は肩を強張らせる。
その反応をもっと見たくなり、純也はすぐ傍の耳朶をやんわりと食んだ。

「いっ・・・」
一点に触れられただけで耳全体に刺激が走り、幸人はおかしな声を発しそうになる。
純也は構わず舌を触れさせ、その形をなぞっていった。

「キ、キスだけって言ってたじゃないか・・・っ」
「誰も、口だけにするって言ってないですよ」
「ず、ずるい・・・」
幸人は唇を噛み、声を抑えようとする。
けれど、舌が内側まで触れると、喉の奥からくぐもった音が発されてしまう。
その音を発させるため、純也は耳の奥まで侵していった。

「や、うぅ・・・っ」
ぞくぞくとしたものが背筋を走り、幸人は身震いする。
シャッター音がすると、純也は案外あっさりと離れた。
ほっとしたのもつかの間、今度は反対側の耳へ吐息を吹きかけられる。

「な、そ、そっちも・・・」
「当たり前じゃないですか。少しでも、多くの場所に触りたいんです」
純也は同じように外側をなぞり、内側へも舌を這わせる。
「んん・・・っ・・・」
液の音が直に耳に届き、幸人の頬は羞恥と刺激で真っ赤になっていた。
声を出さないようにすると息が荒くなり、熱が体の中にくすぶる。
その温度は、頬だけでなく、他の場所にも伝わってしまう。
一番反応してはいけない、下腹部へも。

「っ・・・純也・・・」
たまらず、純也の肩を押して引き離す。
無理強いする気はないのか、すぐに身を引いた。


「そうだ、写真見てみましょう」
純也がデジタルカメラを取ってきて、写真を再生する。
最初は、幸人がマンガを見て頬を緩ませている、微笑ましい写真だった。
けれど、次々と切り替えると、突然キスシーンが映し出された。
ちょうど舌を差し入れている最中で、お互いが繋がり合っているのがわかる。

写真を切り替えると、次は純也に翻弄されている最中のようで。
幸人の頬は赤みを帯び、きつく目が閉じられていた。
やたらと恥ずかしくて、とても直視できない。

「これ、後で消してくれるよな」
「・・・先輩、良い顔してますよね」
純也は答えず、写真を進める。
次の場面では耳に触れられているようで、幸人の眼差しはおぼろげだった。
純也の舌先が這わされている場面を見るだけでも耳がぞわぞわし、視線を逸らす。
これ以上見せられると、下肢の熱が昂ってしまいそうだった。



やっと写真が終わり、幸人は胸を撫で下ろして純也から離れた。
もし、これ以上何かされたらきっと抑制がきかなくなる。
「先輩、どうしたんですか。こんな写真撮られて嫌でしたか」
「そうじゃなくて・・・」
「なら、近付かせてください。オレは先輩に触れていたい」
純也が距離を詰めようとするが、幸人は後ずさる。
その反応を奇妙に思い、純也は下肢の方へ目をやった。

「もしかして、勃ってます?」
「ま、まだ、かろうじて堪えてる・・・」
そんなぎりぎりの状態のところへ、純也がにじり寄る。

「オレがしますよ、他人にされた方が気持ち良いし」
「そんなの、行き過ぎてる・・・キスまでって言ったじゃないか」
「だから、そこにもキスしかしません」
何をする気なのか察し、幸人は想像してしまう。
その瞬間、下肢がかっと熱くなり、もうごまかしようがなくなってしまった。
離れようとしたが、とっさに抱きすくめられて純也の腕の中に納まる。

「は、離してくれ・・・」
「させてください。もう撮影はしませんから・・・幸人先輩」
「う・・・」
耳元で囁かれ、つい力が抜ける。
強張りが解けたのを感じ取ったのか、純也は幸人のベルトを外し始めた。
跳ね除けるなら、今しかない。
けれど、手は体を支えているだけで、相手を押し退けようとはしなかった。


手早くベルトが解かれると、すぐにズボンがずらされる。
羞恥を感じて仕方がないのに、そこは意に反して刺激を求めていた。
下着もずらされ、突っ張っていたものが外気にさらされる。
もう、自分のものの状態を見ていられなかった。

「先輩、絶対後悔させませんから」
純也が伏せの姿勢を取り、露わになったものへ顔を寄せる。
幸人が拳を握ったとき、その先端が口内へ誘われた。
「あぁ、っ・・・」
まるで、体に電流が走ったような感覚に捕らわれ、上ずった声が上がる。
手で愛撫されているときとは、まるで違う。
純也が先を含んだまま舌を這わすと、幸人の体が震えた。

「ん・・・気持ち良いんですね」
純也が一旦口を離して問うが、幸人には答える余裕がなかった。
そこへ息がかかるだけでも、熱が高まっていく。
そして、それだけでは足りないという本能を抑制できなくなる。
触れてほしい、そんな言葉を言えるはずもなく、ただ唇を噛んでいた。
その表情を観察した後、純也は再び顔を下げ、幸人の根元から先端まで、丁寧に弄り始める。

「う、ぁぅ・・・っ・・・」
口を閉じていても、何か動きをされると、幸人は声を押し留められなくなった。
余すとこなく這わせるよう、純也は何度も往復する。
下から上へなぞる度に、舌へ熱が伝わっていく。
この温度を、全て自分のものにしてしまいたい。
何度目かの愛撫の時、ふいに幸人のものが震えた。

「や、そこ、は・・・」
「あ、ここが弱いんですね」
口端を緩ませ、純也はその個所をすっと舌先でなぞる。
「ああ、っ・・・や、め・・・」
思いもよらぬ刺激が走り、幸人は思わず身を引こうとする。
その前に、純也は相手を決して逃さぬよう、その腰元を掴んでいた。


「今止めたら辛いですよ。オレに任せていて下さい」
その言葉を最後に、純也は再び幸人の先端を含んだ。
「ああ、ぅ・・・っ」
今度は先の方だけにとどまらず、幸人のものは徐々に口内へおさまっていく。
含んだ個所を舌でしきりに愛撫し、深く咥え込む。
口内が温かくて、柔らかくて、とても淫猥で、吐息を抑えていられない。
そして、全てが含まれてしまったとき、息はさらに荒々しくなり、身が打ち震えた。

「ひ、あ・・・う、あぁ・・・」
もう、声を抑えようとか、顔を隠そうとか、そんなことは考えていられなくて。
ただ、純也の舌の感触に翻弄されるがままに震えているしかなかった。
先から零れ落ちる液体を、止めることができない。
嫌な味だと思うのに、それは全てすくい取られてゆき、全体に塗り付けられる。
その液と共に、弱い個所が弄られた瞬間、大きな波が襲ってきた。

「純也、もう、離してくれ・・・っ、もう・・・」
限界を察し、純也の頭に手をやり引き離そうとする。
けれど、純也は幸人の腰を引き寄せ、しきりに感じる個所をなぞった。
このまま、相手の欲までも自分のものにしてしまいたいという独占欲が渦巻く。
動きは一時も止まらず、熱を解放させようとひたすら愛撫する。
そして、ひときわ強く、口内のものが脈動した。

「純・・・っ、あ、あ・・・!」
もはや、高まり切ったものはどうしても留めることができなかった。
強い悦楽と共に、解放される。
行き所のない熱は純也へ注がれ、卑猥な液の感触を与えた。


純也は液を零さないよう慎重に身を引き、幸人を解放する。
唾液とは違う粘液質なものが、口内に絡みついている。
それが幸人の精なのだと思うと気が昂り、全てを飲み干していた。
喉が鳴った音が幸人にも聞こえ、信じられないものを見る目で純也を凝視する。

「まさか・・・飲んだ、のか・・・」
「当たり前じゃないですか、零したら勿体ない」
純也は平然と言って、幸人に向き直る。
向けられている想いは、相手のものを普通に飲み下せるほど強い。
親しみ以上の感情を改めて実感し、幸人は伏し目がちになる。
そのとき、純也の下肢が自然と目に入り、とっさに視線を横へ逸らした。

「先輩、オレにはしてくれないんですか」
率直な問いに、幸人の息が詰まる。
自分だけ達して、相手を我慢させたままでいるのは理不尽かもしれない。
けれど、同じように舌を這わせ、嚥下できる自信はなかった。
何も言えないまま沈黙が流れると、純也は小さく溜息をつく。

「冗談ですよ。トイレでも行ってきます」
立ち上がり、背を向ける純也に、何か呼びかけようと口を開く。
けれど、ここで呼び止めたら、自分がしなければならなくなるのではないかと。
そんな懸念が、言葉をせき止めていた。
その背を引き止められないまま、純也を見送る。
幸人の中には、安心とも後悔とも取れない、不可解な感情が渦巻いていた。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
またもや写真部で発禁モノ・・・大きすぎる想いを受け止めきれなくてもやついています。