召喚魔にいろいろされて人間止めてみた話4


明光との行為が終わり、祐樹が妖魔になるための下準備は一つ済んだ。
次の手順は、本当に度胸がいることで、すぐには行動に移せない。
なぜ、ルシファーの気を出したのに、また取り込まなければいけないのかとアゼルに尋ねてみたけれど。
血液と精は全く別物なのだとながながと語られ、祐樹は途中で逃げ出していた。

正直なところ、未知の行為に対して恐怖心はある。
けれど、妖魔になりたいと自分で言ったからには、どうしても通らなければならない道だった。
他の方法はない、仕方がないんだと、祐樹は四六時中自分に言い聞かせる。
そうこうしている内に時間はどんどん過ぎて行き、眠る直前になってまで踏ん切りがつかなかった。

「祐樹、入ってもいいかな」
寝ようとしていたところで、ユノが扉を叩く。
祐樹はさっとベッドから下りて、扉を開けた。
「ユノ、どうしたんだ?」
「・・・祐樹、だいぶ悩んでるみたいだったから、ちょっと背を押しにね」
そう言って、ユノは祐樹に赤い小瓶を握らせる。

「それを飲めば、たぶん、君が望む効果が表れると思う」
「これが?ただの水みたいに見え・・・」
祐樹が言葉を言い終わらない内に、ユノはさっと離れて行った。
呆気にとられつつも、祐樹は扉を閉めてベッドに座り直す。
蓋を開けてみると、何とも甘い香りがして、魅惑的だった。
望む効果とは、度胸をつけてくれる栄養剤のようなものだろうかと、祐樹は疑わずに中身を飲み干す。
とたんに、甘さが口中に広がってうっとりとした。


最初は特に変化はなかったけれど、数分ほどした後、異変が訪れた。
体温が上がってゆき、どこか、気が落ち着かなくなる。
とても眠れる状況ではなくなってしまったとき、祐樹は液体の効果に気付いた。
あれは、きっと興奮剤で、ユノは早く妖魔になってほしいと望んでいるのだと。
そこまで気にかけられたのだから、召喚しないわけにはいかない。
祐樹は自分を鼓舞し、ぽつりとその名を呼んでいた。

待ちかねていたように魔導書が光り、霧が噴き出す。
そして、目の前に、妖魔の姿をしたルシファーが現れていた。
「覚悟ができたようだな」
もう、逃れることはできない。
祐樹は、自分の体に異変を感じつつ、ぎこちなく頷いた。

ルシファーの手が寝具にかかり、前をはだけさせていく。
広い手が腰元へまわると、祐樹は肩を震わせた。
くすぐったさとは違う感覚が、背に走る。

「もう体温が上がってきているな、興奮しているのか」
「そ、そんなこと・・・」
ないとは言い切れなくて、祐樹はぐっと押し黙る。
そんな様子を可笑しそうに見て、ルシファーはベッドに乗り上げ、その身を軽々と抱き上げた。
突然、体が浮いて、ルシファーの足の上に座る形になる。
体の前面が隙間なく密着すると、心音が反応していた。


両の腕に抱かれると、いけないと思いつつも身を寄せたくなってしまう。
安心感を与えてくれるのは、明光も同じだったけれど。
ルシファーと接しているときは、また違うものを感じていた。
少し強張りが解けたところで、ルシファーが祐樹と向き合う。
あまりに近い距離に動けないでいると、すぐ唇が重ねられていた。

「っ、ん・・・」
ここでも、お互いの距離がなくなって触れ合う。
反射的に目を閉じると、上唇がやんわりと噛まれた。
軽い音をたてては離れ、また重ね合う。
その小さな音がやけにいやらしく聞こえ、耳を塞ぎたくなる。
けれど、腕をまわされている状態では何もできず、息が詰まってきてしまう。
口を開けば何をされるのか、わかっていても、そうするしかなかった。

一瞬、ルシファーが離れた隙に、隙間を開いて息を吸い込む。
祐樹はすぐに閉じようとしたけれど、間髪入れずに塞がれていた。
好機だと言わんばかりに深く重なり、柔い感触が侵入する。

「う、んん・・・っ」
思わず呻いても、ルシファーは構わず祐樹の舌へ触れる。
逃れようとするものを捕らえ、無理にでも液を交わらせていく。
まるで、己の存在感をその身に刻み付けるように、祐樹の中を掻き乱した。

「あ、うぅ・・・っ、は・・・」
どんなに逃げようとしても、すぐさま捕らえられ、絡み付かれてしまう。
相手を昂らせようとする激しい交わりに、息が熱を帯びるまで時間はかからなかった。
体が密着しているせいで、嫌でも鼓動が早まっていることを感付かれる。
ルシファーは一旦祐樹を開放し、口端を上げて笑った。


「今日は、感じるのが早いな。この先の行為を期待しているのか?」
「そ、んな、わけないだろ・・・!」
息も満足に吐かないまま、精一杯の声を振り絞る。
この熱は、一服盛られたせいだと信じたかった。

「まあいい、今回は途中では止めんぞ。お前ばかりが満たされていては、不公平と言うものだろう」
宣告されて、祐樹はぞっとする。
ルシファーの手が下方へ下がってゆき、寝具の後ろへ入ろうとした。

「っ・・・!」
瞬間、祐樹はルシファーの肩を押して引き離そうとする。
そのとき、鎖が放たれ、瞬時に祐樹を束縛した。
背に硬い鎖が巻かれ、再び、お互いの隙間がなくなり密接になる。
体をよじってもびくともしなくて、ルシファーの手は下肢の衣服をずらす。
息を飲んだとき、指先が奥の窪みに滑り込み、触れられる。
もはやどうやっても抗えないと察し、祐樹は奥歯を噛み締めた。
そして、以前は触れるだけだった指が、中へと入り込んだ。

「あ・・・!」
感じたことのない箇所への刺激を受け、祐樹の声が裏返る。
窪みは異物を押し返そうと縮こまるが、そんな反発はルシファーを興奮させるだけだった。
圧迫感じをものともせず、指は奥へ奥へと埋められていく。

「あ、うう・・・っ」
自分の中に、確かにルシファーが入ってきている。
それはまだ指の一本でしかないのに、どうしようもなく気が昂って仕方がない。
奥を侵され、軽く曲げられると、体の内から熱くなるようだった。
そこへ、ルシファーはもう一本指をあてがい、押し広げるようにして埋めて行く。

「ああ・・・!」
さらに刺激が強まって、祐樹はたまらずルシファーの肩にしがみつく。
徐々に自身の中が開かれてゆく感覚に、触れられていないはずのものも固くなってきていた。
「じっくりと解してやろう。達したいだろうが、堪えているんだな」
「言われなくても、わかってる・・・っ」
ここで限界を迎えてしまえば、今までの行為が無駄になる。
祐樹は奥歯を噛み締め、ひたすら快感に耐えていた。



もう、何回身を震わせ、喘いでしまったのだろう。
慣らされてきた窪みはだんだんと力を無くし、異物を受け入れつつある。
下肢の衣服はとっくにずらされ、昂りを防護するものはなくなっていた。
頃合いを見計らい、ルシファーが指を抜く。
刺激がなくなり祐樹は息を吐いたけれど、まだ熱はくすぶったままだった。

「いい具合だな。そろそろ、満たしてもらおうか」
ルシファーは鎖を緩め、祐樹の体を持ち上げて浮かす。
そして、自分の服をわずかに乱し、慣らしていた個所へ進めようとした。
「いっ・・・」
明らかに指とは違うものが当たり、祐樹は足を踏ん張って体を支えようとする。
けれど、無理な態勢ではあまり力が入らなくて、膝が笑う。

「今更、無駄な抵抗をするな。妖魔になる為なのだろう」
そう言われると、じたばたしている自分が情けなくなる。
このまま身を委ねてしまった方がいいのかと、力を抜く。
すると、鎖と腕の両方に背を引き寄せられ、下肢が沈んでいた。

「う、ああ・・・っ・・・!」
熱を帯びているものに窪みが開かれ、祐樹の声に苦痛が混じる。
たまらず腰を浮かそうとしても、もう遅い。
背に回されている腕に力が込められると、徐々に中が侵されていく。
体が反射的に収縮しても縮むことができなくて、ずきりと痛むばかりだった。

「う、う・・・っ・・・い、痛・・・」
最初は痛むとユノに言われていたけれど、感じたことのない種類の痛みに涙がにじむ。
無茶をされれば、身を裂かれてしまうのではないかという恐怖も相まって、弱音を吐きたくなっていた。
そこで、ルシファーは下方へ腕を回し、祐樹の体を支える。
今のままでは不安や怯えが先行して、簡単に達することができなくなってしまうだろう。

「痛みは仕方のないことだ。ここで止めておくか」
頷いてしまえば、とても楽だと思う。
けれど、内にくすぶる熱が祐樹を押し留めていた。
肯定しないでいると、ルシファーが祐樹の後頭部を撫でる。

「いい子だ、祐樹」
「っ・・・」
あからさまに子ども扱いをされることは気に食わなくとも。
それでも、なだらかな手つきで撫でられると、どうしても振り払うことができなかった。


動きを止めたままでいると、体が下肢への圧迫感に順応してきたのか、痛みが和らいでくる。
少しずつ呼吸も規則的になり、恐怖心も薄れてきていた。
安定してきているのを感じると、ルシファーは支える手を離し、もう一度祐樹を引き寄せる。

「ああ、う・・・」
まだ余っている空間へ、ルシファーが進んで来る。
いつの間にか痛みは緩和していて、代わりの感覚が脳を侵していた。
前を擦られているときよりも強い悦が、思考を麻痺させる。
自分の身が下がり、最奥までルシファーを受け入れてしまったとき、祐樹はもう何も考えられなくなっていた。

心臓の鼓動に合わせて、下肢から熱が巡って行く。
呼吸をするたびに、自分の中にルシファーがいるのだと実感していても。
感覚の全てが侵されているようで、嫌悪感は生まれなかった。
「どうだ、異種と繋がり合うことも、悪いものではないだろう・・・?」
「う・・・」
嫌ではないけれど、かすかに残る羞恥心が返答を躊躇わせる。
もう、鎖は緩んでいるのに、ルシファーの肩にしがみついたまま動けなかった。


少しでも腕に力が込められると、下肢が疼いてしまう。
そして、自分とルシファーの体の間にあるものは、刺激を求めて脈打っていた。

「触れられたくて仕方がないようだな」
ルシファーは意地悪く笑み、祐樹のものへ手を伸ばす。
今の状況ではとても拒むことはできず、祐樹は何も反論しなかった。
お互いの間に隙間が開き、その中心へと指先が触れる。

「あ、う・・・っ」
とっくに昂っている箇所は、わずかに触れられるだけでも声を上げさせる。
同時に後ろの箇所も収縮し、ルシファーのものを締め付けていた。
改めてその存在感を感じてしまい、羞恥心がよみがえる。
祐樹は口をつぐむと、前のものがゆったりと愛撫された。

「あぁ・・・っ、は・・・」
閉じたはずの口は反射的に開かれ、どうしても喘いでしまう。
自分の前がルシファーの掌に包まれると、体の反応を抑えられなかった。

「敏感だな、まださほど激しくはしていないというのに」
「っ、は・・・仕方、ないだろ・・・こんな、こと・・・したこと、ないんだ・・・っ」
祐樹の言葉を聞いたとたん、ルシファーに欲望が沸き上がる。
自分の召喚者である相手を辱しめ、その身の貞操を奪っていると思うと
全てを支配できた気になり、高揚していた。


「お前の体に刻み付けてやろう。何物にも替えがたい悦楽を」
与えてほしいと、そう望んでいるのか、祐樹のものが濡れていく。
この相手が確かに感じていると実感するとさらに気が高振り、ルシファーは液もろとも祐樹のものを上下に擦った。

「あ、ぁ・・・っ、は、あっ・・・」
限界が近いものはその脈動を全身に伝え、祐樹は悦に捕らわれていく。
熱いものに後ろも犯され、意識が朦朧としてきて、余計なことが考えられなくなる。
ただ、自分と繋がっている相手のこと以外、感じる余裕がなかった。

「っ・・・は・・・ルシファー、もう・・・っ」
もう抑えきれない、もう達させてほしいと、本能のままに求めてしまう。
「素直になったものだな。・・・お前の望むようにしてやろう」
ルシファーは祐樹の顎を取り、自分の方を向かせる。
そして、下肢を刺激すると同時に、開いたままの口内へまた舌を進めた。

「は、んん、あぁ・・・っ」
上も下も繋がり合い、もう熱を感じていないところなんてなくなる。
舌を撫でられ、下肢を擦られると、体が悦に打ち震えてしまうのが止められない。
反応する窪みに締め付けられ、同じように感じているのか、ルシファーの吐息も早くなってきていた。
呼気の全てを独占するよう、口に覆い被さり、蹂躙したまま。
祐樹を引き寄せた瞬間、埋まっている昂ぶりが最奥を突いた。

「んん・・・!ああ、ぁ・・・っ、あ、あ・・・!」
口内が解放されたとたん、とても耐えることができない感覚に、羞恥も忘れて声を上げていた。
これまでにない程窪まりが収縮し、全身が打ち震える。
ルシファーに強くしがみついたとき、高まりきったものから、欲が解放された。

「っ・・・」
ルシファーはわずかに呻き、祐樹の背を抱く。
全てが注ぎ込まれるまで逃さぬよう、その身を引き寄せていた。

「あ、うう・・・っ」
自分の中へ、生暖かくて、粘液質なものが流れ込んでくる。
ぞくぞくとしたものが背を走っても、それを取り込むよう収縮してしまう。
一度縮まると、とても出せなくなるような最奥まで入ってしまっていた。
荒く息を吐いていると、徐々に相手を圧迫する力がなくなってくる。
無抵抗になるのを察すると、ルシファーは祐樹の体をゆっくりと持ち上げていった。

「や・・・あ」
達したばかりの体は敏感になっていて、身が抜かれるときも窪まりが縮こまってしまう。
まるで、欲を与えてくれるものを引き留めるように。
無理に体は持ち上げず、ルシファーは一旦反発が納まるまで動きを止める。
祐樹が落ち着くとまた身を抜いてゆき、ほどなくして止まり、負担を与えないようにしていた。


やがて、祐樹の中からルシファーのものが引き抜かれる。
圧迫感がなくなり、祐樹は力なくルシファーに寄りかかった。
大きく息を吐き、気を落ち着けようとするけれど、まだ後ろが熱い。
そこは弱弱しく疼いていたけれど、注がれた液は出せないでいた。

ふいに、ルシファーが祐樹の首筋へ口付ける。
その吐息は普段よりもだいぶ熱っぽくて、祐樹は目を細めた。
一か所だけでなく、軽い口付けが何度も落とされ、微かに赤い痕をつけていく。
自分の所有物だと、そう主張されている気がしたけれど。
嫌な感覚ではなくて、祐樹はされるがままになっていた。

「どうだ、我の物になれば、いつでもこの快楽を与えてやるぞ」
「っ・・・だから、逆だって言ってるだろ・・・」
「強情な奴だ」
そう言いつつ、ルシファーは面白そうに口端を上げ、祐樹の頭をそっと撫でる。
祐樹は、ほとんど無意識の内に、ルシファーの背におずおずと腕を回していた。
まだ恥ずかしい状態でいることには変わりないのに、身を預けてしまう。
飴と鞭の使い分けが上手くて、その策略に捕らわれてしまっていると自覚する。
それでも、腕はルシファーの背から離れようとしなかった。

「・・・もう、だるい・・・」
いつものように、行為の後は一気に倦怠感に襲われる。
指の一本を動かすことも億劫になり、完全に相手に体重を委ねていた。
「好きなだけ眠れ、朝になれば、何かしらの変化が表れているかもしれんな」
ルシファーの言葉に期待と不安を覚えつつ、祐樹は目を閉じる。
心強い腕に抱き止められている今なら、すぐに眠れそうな気がしていた。




目が覚めたとき、祐樹の体にまだ変化は表れていなかった。
ユノとカイブツのように、明光と血を交わらせていないからか、時間の問題なのか。
祐樹は早く役にたてるようになりたいと思う反面、緊張してもいた。

とりあえず言うだけ言っておこうと、部屋を出る。
そこで、ちょうど部屋を訪れるところだったのか、アゼルとはちあわせた。
「おはよう。昨日は、良い夜を過ごしたみたいだね」
アゼルは面白そうに笑み、祐樹は気まずそうに視線を反らす。
まさか、声が聞こえていてしまったのだろうか、なぜ知っているのかは怖くて聞けなかった。

「あ、言い忘れていたんだけど、妖魔になったら魔導書は使えなくなるから」
「え!?そ、そうしたら明光やルシファーはどうなるんですか」
「消えるわけじゃない、ただ、自由に動けるようになるだけだよ。
その後、二人がどうするかはわからないけれどね」
今更すぎることを言われ、祐樹は開いた口が塞がらなくなる。

今までは、召喚者と召喚魔の関係があったからこそ繋ぎ止めることができていた。
けれど、自分と二人を結び付ける要因がなくなってしまったら、どうなるのだろうか。
明光は、側に居続けてくれるかもしれないけれど。
ルシファーは、とうてい言うことは聞かないに違いない。

「輸血はいつでもしてあげるから、気が向いたら言うんだよ」
祐樹の思いを知ってか知らないでか、アゼルは軽く言ってその場を去る。
一人残された祐樹は、不安感を覚えずにはいられなかった。
部屋へ戻り、魔導書を開く。


「・・・ルシファー」
真意が聞きたくて、ルシファーの名を呼び、召喚する。
その相手が目の前に現れると、すぐに問うた。

「お前は知ってたのか、オレが妖魔になると、魔導書を使えなくなるって」
「まあな」
ルシファーがさらりと答えたので、祐樹は眉根を下げる。
けれど、情けない表情をしては相手の思うつぼだと、すぐに表情を戻した。

「オレが妖魔になったら・・・お前は、どこかへ行くのか」
なぜか、声が小さくなってしまう。
まるで、この後の返答を怖がっているように。

「名残惜しいか」
「・・・当たり前だ、お前を合成するのにどれだけ苦労したと思って・・・」
言葉の途中で睨まれ、祐樹は口をつぐむ。
そこへルシファーが近づき、片方の手で頬へ触れた。
ゆったりと撫でられると、まるで誘惑されているような感覚に捕らわれる。
手放したくないと思うのは、本当に勿体ないという理由だけだろうかと、自問していた。
振り払わないまま見上げていると、ふいにルシファーの表情が緩んだ。

「案ずるな、魔導書に縛られずとも我はお前の元を離れはしない」
「え・・・」
優しい言葉がかけられるのかと、祐樹は目を丸くする。
「明光とやらが我から分離した時、僅かだが力を奪って行った。それを取り戻さなければならん」
期待外れなことを言われ、祐樹はルシファーの手を払い落とした。


「・・・お前は、つくづく人をからかうのが好きだな」
祐樹は溜息をついて、そっぽを向いて反転する。
そのとたん、後ろから束縛されていた。
鎖ではなく、両の腕に抱かれて背が密接になる。

「お前が愛おしいから、とでも言ってほしかったか」
「な・・・に、言ってるんだ!お前からそんなことを言われたら、寒気がする」
そんな甘い言葉なんて、とうてい似合わない。
けれど、抱かれているのは嫌ではなくて、祐樹は苦笑していた。
密接になりたがる相手にも、抵抗しないでいる自分に対しても。

こうして接しているとき、祐樹から不安感は消えていた。
魔導書が使えなくなっても、大丈夫かもしれない。
自分が血に依存したように、この相手も同じようにさせてみせる。
祐樹は、ルシファーの腕を軽く掴む。
力がなくなっても離れさせないと、そう主張するように。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!。
まさかのコラボ小説、でも主役は祐樹で、ルシファーとのいかがわしい話で締めさせていただきました。
モチベーションが上がれば、いつか祐樹が妖魔になったときの話も書くかもしれません。
ではでは、長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。