召喚魔にいろいろされて人間止めてみた話8


最近、アゼルの住処では童心に帰ることがはやっていた。
それは比喩表現ではなく、本当に子供の姿に戻るということで、冷蔵庫にはいつも薄紫色の液体が入っている。
子供になると、何もかもを忘れて本能のままに楽しむことができ
疲れたときは、たまに薬を飲んで遊んでいた。

「ほら、祐樹さん、もう寝ますよ」
「やだー、まだ起きてる!」
明光は幼くなった祐樹の腕を掴み、やれやれと言ったように引き留めている。
もう外は暗いけれど、元気が有り余っているのか、祐樹の尻尾はぴんと伸びていた。
昼間、祐樹は冷蔵庫を開けて、薬を飲み干していて
今週はこれで二回目だったけれど、幼くなることを望んでいた。

そうなると、明光はまんざらでもない様子で祐樹の世話に勤しむ。
その姿は、まるで面倒見のいい母親のようだった。

「明日は狩りに行くのでしょう、起きられなくなりますよ」
「うーん、でも・・・」
祐樹は、迷いがちに視線を背ける。
薬の効果は一日だけで、明日になれば元に戻ってしまう。
それが惜しくて、眠ることを躊躇っていた。
少しでも長くこのままでいたくて、明光の手から逃げ出す。

「祐樹さん、外へ出てはいけませんよ!」
呼びかけても、祐樹はさっさと走って行ってしまう。
ちらと後ろを気にしたものだから、曲がり角を曲がったところで誰かの足にぶつかった。

「何を慌てている」
「あ、ルシファー・・・」
直樹がルシファーを見上げると、背後から足音が近づいてくる。
それを聞くと、ルシファーは祐樹の腕を引いた。

「煩い奴が来ない内に、外へでも行くか」
夜の森は少し怖かったけれど、このまま眠るのは勿体ない。
祐樹は、腕を引かれるままルシファーと共に外へ出た。


森の雰囲気は昼間とは違い、静かだけれどどこか不穏な空気がある。
祐樹がルシファーの服の裾を掴むと、ひょいと体が抱き上げられた。
追ってこれないようにするためか、ルシファーはそのまま大きく跳躍する。
次の瞬間には、森の木々が真下に見え、二人は空を飛んでいた。

「すごい・・・」
空中からの景色に、祐樹は目を輝かせる。
空を飛んでいる爽快感に、眠気はさらに吹き飛んでしまうようだった。

「おれも、ルシファーみたいにとべるようになるかな?」
「結構な筋量が必用だが、できんことはないだろう」
とたんに、祐樹は嬉しそうに、はにかんで笑う。
こうして素直に表情が出せるのは、幼い状態のときだけだった。

ルシファーは祐樹をちらと見た後、泉のある空間へ向かって高度を下げる。
途中で少しぐらついたものの、静かに着地した。
祐樹は跳び跳ねて腕から抜け出し、泉を覗き込む。


「きれいだな・・・」
泉には、夜闇に映える月が映し出されていて、目を奪われる。
そっと水に触れると、心地好い冷たさに包まれた。
一緒に見ようと誘いたくて振り返ると、ルシファーは木にもたれて座っていた。

「ルシファー、つかれたのか?」
とっさに駆け寄り、心配そうに見上げる。
「普段ならこんなことはないが、一枚欠けているとバランスが取り難い」
それは自分が妖魔になる代償だったと思い出し、祐樹の尻尾が下を向く。

「ごめんな、おれのせいで・・・」
「お前の世話役から力を取り返せば、たちまち再生するだろうな」
「それはだめだ!だって、みょうこうはすごくたいせつだし、それに・・・」

祐樹の本音に、ルシファーは面白くなさそうに眉をひそめる。
尻尾を引っ掻いてやろうかと手を伸ばしたけれど、その前に祐樹が言葉を続けた。
「それに・・・ルシファーがもとにもどったら、もうそばにいてくれないんだろ・・・」
その発言が意外で、ルシファーは動きを止める。


「ルシファーがおれのそばにいるのは、みょうこうから力をとりかえせてないからだ、そうだろ?」
答えを考えているのか、なかなか返事はない。
祐樹はたまらなくなって、ルシファーに飛び付いていた。
小さな手を必死に回す姿は、その存在を自分の元に留めたがっているようだった。
ルシファーは、祐樹の頭を軽く撫でる。
柄にもないことをしていると自覚していたけれど、突発的な衝動がそうさせていた。

応えてくれたことが嬉しいのか、祐樹の尻尾が左右に揺れる。
その反応を見て、ルシファーは頭だけでなく、尻尾も指先で撫でた。
「や・・・」
祐樹は微かに肩を震わせ、尻尾を指から遠ざける。
けれどすぐに捕まってしまい、切っ先が弄られた。

「や、だ、だめ・・・」
祐樹がいやいやと首を横に振ると、案外すぐに手が離される。
そうして、ルシファーは顎の辺りをくすぐった。
誘導されるように、祐樹は上を向く。

「そんなに、我に傍に居てほしいか」
面と向かって言うのは恥ずかしいのか、祐樹は答えない。
けれど、尻尾はすぐさま反応していて、ルシファーの手首に巻き付いていた。

ルシファーは目を細め、祐樹を抱き上げる。
そして、そのまま小さな口を塞いでいた。
「んん・・・」
とたんに、唇が柔らかいものに舐められ、祐樹は思わず隙間を開く。
そこへ、ルシファーは躊躇いなく自らを差し入れていた。

「は・・・う・・・」
口内を侵され、祐樹は自然と吐息を漏らす。
小さな舌は瞬く間に絡め取られ、思うがままに蹂躙されていく。
覚えのある感覚に、頬が紅潮して尻尾が震える。
それでも身を離そうとはせず、ルシファーの服を強く掴んで堪えていた。


ようやく身が離され、祐樹は肩で息をする。
力無くルシファーにもたれかかると、後頭部にそっと掌が添えられた。
やけに落ち着いて、祐樹は静かに息をする。

「望みを叶えてほしいのなら、我を満足させてみることだな」
「どうやって・・・?」
「お前の喘ぎが聞きたい」
ルシファーは、祐樹の下肢へと指先を移動させる。
楽な服は片手でずらすことができ、中へ進入しようとする。

「ひっ、だめ・・・」
頭の片隅で警告音が鳴り、ルシファーを突っぱねようともがく。
子供の力では敵うはずもなく、そのまま下肢の中心が捕らえられた。

「や・・・っ」
先の行為で反応しかけていたものに触れられ、祐樹は驚きの声を上げる。
小さなものはすっぽりと掌の中におさまり、全体に刺激が走った。
祐樹はとたんに息を荒くして、必死にルシファーの服を握りしめる。
そんな抑制など無くすように、ルシファーは掌で祐樹のものをしきりに擦った。

「あ、あ、だめ、だめ・・・っ」
口では嫌がっていても、体は素直に反応してしまう。
包まれているものは硬く強張り、幼いながらも欲を示していた。


「姿は幼子でも、体が快感を覚えているのか」
「う、や・・・」
ルシファーは祐樹の顎を取り、自分の方を向かせる。
強い感覚に体がついていけないのか、その目は潤んでいた。
そんな表情を見ると、さらに欲望が沸き上がる。
もっと喘がせたくなって、ルシファーは祐樹の尻尾もなぞり始める。

「やああ、んん・・・」
前も後ろも同時に触れられ、高い声が上がる。
逆らえない感覚に襲われて、感情が抑えられない。
そこで、ルシファーは一旦手を止める。

「幼子の高い声もいいものだな。抑制が外れていて聞き心地が良い」
「うー・・・」
刺激が止み、祐樹は大きく呼吸をする。
気を落ち着かせたいと思う一方で、もっと触れてほしがっている自分もいた。
それをわかっているのか、ルシファーは焦らすように、指先で尻尾の先を弄る。
今の状態には刺激が弱すぎて、無意識の内に指に絡みついていた。

「いじらしいことをする。触ってほしいのか」
羞恥心に耐えかねて、祐樹は唇を噛む。
けれど、尻尾は指に絡みついたままだった。
ルシファーはにやりと笑い、祐樹の小さなものを再び包む。
尻尾がびくりと反応して離れた瞬間、根元から切っ先までを指の腹でなぞった。

「ひゃ、あ、ぁぅ・・・」
弱い所を二か所も刺激されて、また声が裏返る。
どんなに喘いでも、もう愛撫は止められなかった。
前は完全に包み込まれ、後ろはしきりになぞられる。
体がついて行かなくて、脳が悦楽の感覚で覆われてゆく。

「体が感じるままに欲していろ、感情を堪えなくてもいい」
その呼びかけは、まるで元の姿の祐樹に言っているようだった。
抑制を外すよう、ルシファーは尻尾を少し強く掴む。
同時に前のものを掌全体で擦ると、祐樹の体がひときわ強く跳ねた。

「やあぁ・・・っ、あ、あ・・・!」
祐樹は高い声を発し、全身に力を込める。
そして、自分の下肢から熱いものが吐き出されていた。
それは全てルシファーの手に受け止められ、白濁が掌を汚す。
液がおさまると、祐樹は虚ろな眼差しをして脱力した。

「は・・・う・・・つ、かれ、た・・・」
「眠たかったら眠れ。お前は、精を放出するといつもそうだからな」
言葉に甘えて、祐樹はルシファーに身を預けて目を閉じる。
たくましい腕に背を抱かれ、すぐにでも眠れそうだった。

「安心するのか」
「う、ん・・・」
うとうとしながら頷くと、背に回されている腕に力が込められる。
温もりが増して、祐樹はほどなくしてすうすうと寝息をたて始めていた。




夜も更けた頃、ルシファーは祐樹を連れてアゼルの城へ降り立つ。
そこでは、明光がじっとその姿を見据えていた。
「帰りを待っていたか、まるで心配性の母親だな」
「・・・主を返していただきます」
明光は否定せず、ルシファーから祐樹をひったくるようにして奪う。
そして、取り返されない内に、早々と城内へ駆けて行く。
もう満たされたのか、ルシファーは引き留めようとはしなかった。

明光が部屋へ入ったところで、祐樹が身じろいで薄らと目を開く。
「ん・・・みょうこう・・・?」
「すみません、起こしてしまいましたか」
抱いている相手が変わって不思議に思っているのか、祐樹はぼんやりとしている。
けれど、警戒する相手ではないとわかると、身をすり寄せた。

「・・・みょうこうは、ずっと、おれのそばにいてくれるよな・・・?」
ふいに投げかれられた質問に、明光は目を丸くする。
その後、ふっと笑って祐樹の頭を撫でた。

「いつまでも、お側にいますよ・・・さあ、もう寝ましょうね」
祐樹ははにかんで笑い、明光の腕に尻尾を巻きつける。
そんな愛情表現が愛おしくて、明光は祐樹の頬に軽く口付けた。
そのとき、気に入らない輩の匂いがして、わずかに眉をひそめる。

「祐樹さん、ルシファーに何かされましたか」
「・・・なにも、ないよ」
恥ずかしいのか、空気を察知したのか、祐樹はとっさに否定する。
けれど、巻き付いていた尻尾が逃げるように腕から解かれたので、嘘だとすぐにわかる。
それだけで、何をされたのか察すると、無性に悔しさが湧き上がってきていた。
明光は祐樹の頬に手を添えて、上を向かせる。
そして、衝動のままに口を塞いでいた。

「う、ん・・・」
柔らかな感触に覆われて、祐樹は一瞬息を飲む。
明光は抑制を忘れたように、その唇を軽く食んだ。
唇を何度か食まれると、変な感覚がして、つい隙間を開いてしまう。
そこへ、柔らかなものが入り込み、祐樹のものに触れる。

「や、ぅ・・・は・・・」
堪えるように、祐樹の尻尾が明光の手首に強く巻き付く。
そこで、明光ははっとして祐樹を解放した。

「うー・・・もう、ねむいよ・・・」
「・・・申し訳ありません、寝ましょう。私の理性が保たれている内に」
明光はベッドに祐樹を寝かせ、自分も隣に横になる。
すると、すぐに祐樹が擦り寄ってきたものだから、明光は必死に己と戦っていた。
けれど、ほどなくして寝息が聞こえてくると、流石に手を出して起こす気にはならなくなる。

「お休みなさい、祐樹さん・・・私の、大切な・・・」
言葉は最後まで告げられず、明光も目を閉じる。
どんな姿であろうと、すぐ傍に居る相手は愛おしい存在に違いなかった。




―後書き―
もうこの大人二人だめかもしれない。そして、私も含めて三人共危ない。