流星は浴室の壁にもたれて座り、ネズミはその正面に居た
風呂の中ではのぼせてしまい、床に寝れば冷たい
しかし、また服を着てベッドに行くのは面倒だった

寒くならないうちに行為を進めようと、ネズミは流星の後頭部をそっと引き寄せ、口付けた
流星は言われた通りに、ネズミに身を任せてじっとしていた
ネズミはすぐに相手の唇を割り、舌を差し入れる
その感触を感じた瞬間、一瞬流星の肩が震えたが、それでも抵抗しなかった

嫌悪は感じてはいないが、羞恥心は今までにないほど感じている
けれど、抵抗できない
知らず知らずの内に、求めてしまっているのかもしれない
自分に触れてくれる、この相手を


ネズミは激しく流星の口内を蹂躙し、淫猥な音をたてる
一時も離れることなく相手を絡め取り、触れ合わせてゆく

「っ、ん・・・ぁ」
感じる柔らかなものの感触にか細い声が発されるが、ネズミは動きを止めない
流星の息が荒くなるまで、ひたすらに合わせ続けた


相手の体から力が抜けたのを見計らい、ネズミは絡まり合っていたものを離した
流星は不慣れな激しい行為に、肩で息をしていた

お互いから伝う糸をそのままに、ネズミは行為を進める
流星の胸部から下方へ、なぞるように指を滑らせ、タオルに手をかける
その瞬間、流星は反射的にネズミの腕を掴んだ
先の好意で熱を帯びていた表情は、とたんに不安げなものに変わる
こんな状態になっても、その箇所だけは露わにされたくなかった


「・・・わかった。これは、そのままにしておく」
ネズミはタオルを離し、一旦手を引っ込めた
流星は安堵し、小さく溜息にも似た息を吐いた
けれど、その安堵感は瞬く間に消え去ってしまう
ネズミがタオルの中へ手を入れ、一番下方にある敏感な個所に触れた
見られたくないと思っていた箇所の、さらに下のその箇所に

「だ・・・だめだ、ただでさえ僕は汚れているのに、そんな・・・」
流星の言葉が気に入らなかったのか、ネズミは一瞬眉を寄せた
そして、有無を言わさず中指をその中へ埋めた
「あ、っ・・・!」
とたんに感じた感覚に、流星は裏声にも近い、上ずった声をあげた

瞬間的に心臓が跳ね、体が震える
入ってきた異物を押しだそうと、内部が凝縮してネズミの指を絞める
そのときに、自分の中に相手が入っていることを鮮明に感じてしまい、体が熱くなった

「汚れているなんて、もう二度と言うな」
ネズミは少し強い口調で言い、指をぐっと奥へ進めた
流星は口内を噛んで声を抑え、薄く眼を開いてネズミを見た

「い・・・嫌だとは、思わないのか・・・?そんなところに、指を・・・」
その言葉に、ネズミはまたわずかに眉を寄せた
「嫌だなんて、思っちゃいない」
そう答えるとすぐに、今度は二本目の指を流星の中へ埋めた

「あ・・・っ・・・!」
さらに増した感覚に、流星は抗えなかった
どんなに羞恥を感じていても、反応してしまう
だんだんと、自分の息が熱くなってゆく

「むしろ、興奮してる。・・・あんたのそんな表情、滅多に見られないからな」
その言葉でさらに羞恥心を感じたのか、流星はさっと顔を背けた
予想通りの反応だったのか、ネズミはくすりと笑い、流星の頬に手を添えて正面を向かせた

「あんたの表情、もっと見たい・・・。感じてるところを、もっと見せて・・・」
囁くようにそう言い、ネズミは指を動かし流星を掻き乱してゆく
そして、指をさらに一本増やした

「んん・・・っ、ぁ・・・!」
増した刺激に、上ずった声が発されようとする
それを必死に堪えているせいもあってか、息が荒くなる
ネズミが指をわずかでも動かすたびに、熱を抑えられなくなってゆく
自分の中が、だんだんと解きほぐされてゆく―――


その間に、ネズミは空いている方の手で流星の手を取った
何をする気なのかと、流星はぼんやりとネズミの動作を見ていた
すると、ふいにネズミは流星の手の甲にうやうやしく口付を落とした

「ぁ・・・ネズミ・・・」
自分の最も汚れている部分にそんなことをされた流星は、動揺する
しかし、ネズミはおかまいなしに今度は掌に口付ける

「だめだ、そんな・・・っ」
流星は息を飲み、言葉を途切らせた
ネズミは掌から舌を這わし、指先を自分の口内に含んでいた
下腹部の方から伝わる刺激のせいで、ただでさえ言葉をうまく言えない状態なのに
そんな信じられないようなことをされた流星は、何も言葉にならなかった

ネズミはわざと音をたてて、指に順々に舌を這わせ、口内へ招き入れる
流星は動揺していたが、その中で温かいものを感じていた


自分の全てを受け入れてくれる相手がいる
この汚れた手も、異質な体も、全て
そう感じた時に湧き上がってきた温かさは、他にたとえようのないものだった
もう、抵抗する意思なんて、湧き上がってきそうになかった


流星が完全に身を任せていると、この後の負担を軽減させるために、ネズミは丹念に内部を弛緩させた
目を閉じるとより鮮明に与えられる刺激を感じてしまうのか、流星は何とか目を開き続けていた

必死に、悦に呑まれまいとしている姿
それは、ネズミの欲を駆り立てるのに十分だった


指が少し楽に動けるようになったところで、ネズミはそれらをゆっくりと引き抜いた
中にあったものがなくなったことで、その箇所は委縮しようとする
しかし、よほど丹念に解されたのか、うまく力が入らなかった
そこが委縮してゆかないうちに、ネズミは欲を欲している己の物を、指を入れていた箇所へあてがう
流星の体は反射的に震えたが、拒否しようとはしなかった

ネズミの手が、流星の腰を支える
言葉を交わさずとも、抵抗する意思がないことが伝わる
そして、ネズミはあてがっていたものを、中へと進めていった

「ぅ、あ・・・ぁ・・・っ!」
指とは明らかに違うものの感触に、思わず上ずった声が発される
痛みはあったが、それはもっと強い感覚によって掻き消された

「は・・・っ」
とたんに収縮した内部に同じ感覚を感じているのか、ネズミも熱い息を吐いた
あまり痛みを与えないように、ゆっくりとネズミは進んでくる
流星は小刻みに息を吐いて、強くなってゆく感覚に耐えていた


ネズミとの距離がなくなり、肌が重なる
そこで、ネズミは流星の手を取り自分の背へ誘導した
自分から他人に抱きつくなんて、滅多にしないことだ
しかし、今は羞恥心などに構ってはいられなかった
流星はネズミの背を抱き、与えられる感覚のあまり開ききらない目で相手を見詰めた
ネズミは一瞬ふっと笑い、柔らかな笑みを見せた
そして、限界まで入っている己の物を、動かし始めた

「っぁ、あ・・・は・・・っ」
わずかに内部のものが動いただけで増す感覚に、流星は声を上げた
その声をもっと上げさせるように、ネズミは自身を動かす
少し腰を引き、奥へ進め、ぎりぎりまで引き抜いたかと思えば、再び最奥へと突き上げる
欲が求めるままに、ネズミは流星を掻き乱した

「は、あ・・・・・・!っ、ネズミ・・・」
息つく暇も与えられないとき、無意識に相手の名を呼んでいた
「っ・・・・・・流星・・・」
断続的な動きはそのままに、ネズミも相手の名を呼ぶ
流星が、ネズミの背にまわしている腕に力を込める
それを合図にしたかのように、ネズミは強く、最奥へ己を進めた

「ぁあ・・・っ!は、あ・・・・・・あ―――!」
流星が喉の奥から発されるような、荒く熱っぽい声を上げたその瞬間
解されていた内部が一気に収縮を繰り返し、ネズミのものを刺激した

「は・・・っ、あ・・・!」
ネズミも声を発し、そして自身を震わせた
まわされている手に阻まれ、身を引くことはできなかった
震えた自身からの白濁が、中へと注がれていった―――




ネズミは息を吐き、慎重に自身を引き抜いた
タオルで隠れていて見えないが、粘液質なものがついている感触がした
流星の体からは完全に力が抜け、まわされていた手が解かれた
すると、ネズミは再び挿入していた箇所へ中指をゆっくりと埋めた

「え、あ・・・っ・・・もう、むりだ・・・」
これ以上の行為はできそうにないと、体力を奪われている流星は、弱弱しく言った
しかし、行為の後で緩みきっているそこに、容易く指が進められてゆく
それは奥まで辿り着くと、身に液を絡ませてすぐに引き抜かれた

「・・・あんたの中に出した液を掻き出すだけだ」
そう言って、ネズミはまた指を入れようとする
「っ・・・そんなこと、別にいいから・・・早く、洗った方がいい・・・」
おそらく、ネズミにも自分にも淫猥な液が絡みついている
行為が終わった今、そんなものは早く洗い流してほしかった
それに、自分の中に流れ込んできたものに、嫌悪は覚えていなかった
頑固な相手を諭すのは難しいとわかっているのか、ネズミはシャワーを取り、湯を出してまずは自分の手を洗った
その後に、流星の体にシャワーをかけた

「・・・自分で洗う」
まだ立ち上がる力が無いのか、流星は座ったまま手を伸ばした
だが、ネズミはその手を避け、下方にシャワーを向けた

「身を委ねていればいいって言っただろ?あんたのほうが疲れてるんだから、休んでればいい」
ここは、譲らなかった
激しく渇望した相手
その相手が、疲弊していないはずはない
ネズミは流星を労わるつもりで、自身を入れていた箇所を撫でるようにして洗った
羞恥を気にする余裕が出てきたのか、流星はその間ずっと視線を逸らしていた




体を洗い終わった後、熱が冷めてきたので二人は浴槽で体を温めることにした
先にネズミが入り、その後に流星が続く
まだ体には倦怠感が残っていたが、動けないほどではなかった
蘇ってきた羞恥心がそうさせたのか、流星は自然と相手に背を向けて浴槽に身を沈めた
すると、ネズミはすぐに流星の胸部に腕をまわして、自分の方に引き寄せた

「ネ、ネズミ・・・」
まだそれをかわすほどの余力はなかった流星は、そのままネズミに抱き留められた
肌が再び重ね合わされ、お互いの体温を感じる
そのさなか、流星は自分の中に温かい鼓動を覚えていた


「流星・・・」
耳元で、優しい声に名を呼ばれる
その言葉には、優しさだけではなく、今、自分の感じている温かいものが込められている感じがした

思えば、ほとんど成り行きで行為をしてしまった気がする
困惑して、問いかけて、そのまま身を委ねていた
けれど、あんなに羞恥を感じる行為でも、抵抗の意思を示すことがなかった
いや、できなかった、と言ったほうが正しいかもしれない

僕は、ネズミとの行為を嫌なものだとは思っていなかった
そして何より、相手を受け入れ、受け入れられることに僕は心地よい温かさを感じていた
それが何を示しているものなのか、僕は薄々気付き始めていた


僕は目を閉じ、ネズミに体重を預けた
自分の感情に気付いたからだろうか
彼に抱き留められている今は、これ以上にない至福だった―――




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
前々から妄想していた、まさかの分岐ルートです
何だか、ネズミのR-18話が増えていますが・・・
なぜか、ネズミのことを考えると、どんどんいかがわしい方向に行ってしまう罠