強制的な欲情 後編

流星の息が治まっていない事に気付いたネズミは、色欲を含ませた笑みを浮かべた
そして流星を見下ろす形に位置を戻すと、疼いているそこに指を差し入れた

「やっ・・・あ・・・っ・・・!」
達した後だというのに、流星の体は敏感さを取り戻し、入れられた指に反応していた
すでに緩み、液を纏っていたその個所に指は難なく埋められた
あまり奥までは進めず、第一関節が入るか入らないかのところでネズミは指を曲げ、中を掻き回した

「んん・・・っ」
それでも、疼きは治まらない
指の一本だけでは満たされないと、そう言っているかのようだった

そして、その疼きは流星に欲求を与えていた
相手を求め、そして満たしてほしいという欲求を
これが、媚薬の本当の効果なのだと、思い知らされた瞬間だった

流星は、さっき与えられた感覚を嫌でも覚えていた
だからこそ、その感覚を、熱を、再び与えて欲しいと体が欲求していた


「流星・・・おれが、欲しいか・・・?」
動かす指はそのままに、目上からネズミが同じ問いをかけてくる
ネズミが欲しい、そして、与えてほしいと言ってしまえば、さぞかし楽だろうと思った
だが、それを言ってしまえば自分のプライドは崩壊してしまう
今はかろうじて、こうして理性が本能の言葉を留めていた

「それとも、このままにしておくか・・・?」
ネズミが、意地悪そうな笑みを浮かべた
このままにしておけば、相手は溢れ出る欲求に悩まされるという事をわかって言っているようだった
ネズミが言葉を発している間も、流星の中の欲求は高まって行くばかりだった

しきりに、相手を欲する言葉を発してしまえと本能が訴えかけてくる
その一方で、そんな事はできないと主張している意地とプライドがある
だが、欲求は治まる所を知らず、理性をも犯そうと侵食してきていた


「あんたは、自分で欲を満たす方法を知らない・・・そうだろ?」
ネズミは、流星の欲をあおるように、未だに指をじれったく動かしていた
「っ・・・ぁ・・・」
流星には、その問いに答える余裕などなかった
本能を抑える事に必死で、少しでも油断してしまえば、とたんにネズミを求める言葉が発されてしまいそうだった
そんな態度にネズミは小さく溜息をつくと、流星の中の指を引き抜いた

「あんたがその気なら・・・おれはもう、必要なさそうだな」
そう言って、ネズミは身を上げ、流星から離れようとした

「っ・・・!」
流星は思わず、反射的にネズミの腕を取り、引き止めていた
これではまるで、口に出さずとも相手を求めてしまっているようではないかと
そう思ったが、その動作を止める事はできなかった
ネズミは動きを止め、流星を見詰めた。誘いかけるような、妖艶な眼差しで

流星も制止し、ネズミと視線を合わせた
思わずとった自分の行動への動揺
そして、眼差しからの誘い
その二つが、本能を駆り立てた
意地とプライドという抑制が、飲み込まれてゆく
流星は、自分の理性を留めていた要因が消えてゆくのを、感じていた


「・・・君・・・が・・・・・・」
喉から、小さな囁きが零れ落ちた



「君が・・・・・・・・・・・・欲しい・・・・・・」



絞り出すような声が、流星の口から発された
ネズミが望んだ、その言葉が
その言葉を聞いたとたん、ネズミはこれ以上にない高揚感を覚えていた

「流星・・・」
ネズミは、さっきまでの意地の悪い笑みとは裏腹に、優しい笑みを流星に向けた
そして、流星が求めたものを、中へ進めた

「ああぁ・・・っ!は・・・っ・・・」
中はすでに先程の液で濡れていたので、痛みは感じなかった
その代わりに感じたものは、強い快楽
羞恥も、プライドも、意地も、そして理性さえも犯す感情が、流星を侵食してゆく
ネズミが動くたびに、淫猥な液が絡まり合う音が聞こえてきていた
その動きは滑らかに、そして激しく相手を責め立てる

「ぅ・・・あぁっ、あ・・・!ネズミ・・・」
喘ぎ以外の言葉が、流星から勝手に発されていた
乞うような、求めるような、無意識の言葉が荒い息の中に混じっていた
その言葉を合図にしたかのように、ネズミはいっそう激しく自身を動かした

「ああ・・・っ・・・!は・・・っ・・・」
本能が、欲を求めている
この欲求を満たしてほしいと、訴えかけている
自分ではどうする事もできない欲求が、溢れ返っている
流星は、これもまた無意識の内にシーツから手を離し、その両手をネズミの背にまわしていた
その動作に、ネズミはまた一瞬優しい笑みを浮かべると、流星の最奥を一気に突き上げた

「あぁっ・・・!・・・ぁ、あ・・・っ、ああぁっ――!」
急激な、そして強い衝撃に、流星の欲が解放された
とたんに全身に力が入り、中のものが圧迫される

「はっ・・・―――」
その圧迫感にネズミも達し、流星の中に熱い欲を放った




二度目の欲を解放した後、流星はやっと落ち着きを取り戻しつつあった
体には、思い倦怠感と疲労感がのしかかってきていて、指一本動かす事さえ億劫だった
ネズミも流石に疲労したのか、流星の隣に寝転がっていた

流星の息が落ち着き、熱が治まってくると、それと同時に侵食されていた感情が蘇ってきていた
そして、自分を叱咤し、情けないと感じた

今まで幾多の事に耐えてきたのに、なぜあの欲求に耐えられなかったのかと
薬の効果があったとはいえ、相手を求める事がよくもできたものだと
羞恥とプライドが、そんな自分を責め立てていた

ネズミに、何か言う気も起らなかった
言葉を発する事も嫌になるほどの疲労感が、まとわりついているせいだった

抗議するのは、明日にすればいい
本調子の時に、散々嫌みごとでも言ってやればいいと思った流星は、一瞬ネズミに反抗的な目を向けた後、瞼を閉じた



瞼を閉じた流星が寝息をたてるまで、五分もかからなかった
ネズミは流星の寝顔を眺めつつ、呟いた

「あんたが自分からおれを求めるようになるまで、毎晩でも使ってやるさ。
それこそ、枯渇するまでな・・・」
ネズミが持ってきた小瓶の中には、隙間なく白い錠剤が詰められていた――




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
少し黒い雰囲気が漂ってますが、一回こういうの・・書いてみたかったんです
かなり長々と書きましたが、これで管理人のストレス指数がよくわかります←どうでもいい
何が時間かかったって、喘ぎ声のパターンに一番苦労した件について・・・