進撃の巨人10
内地へ帰って来たはひとまず体を洗い、リヴァイの部屋で大人しくしていた。
巨人を殺しても満たされない理由を、ハンジに相談しに行くと言われて早十分。
もし、解決方法が見つからなかったらどうなるのだろうかと、は不安にならずにはいられない。
ソファーの上で身を縮こませていると、やがてリヴァイが戻って来た。
「お前の欲求の解消法が出た。・・・、ベッドへ行け」
方法が見つかったと聞き、はすぐにベッドの背もたれに寄り掛かって座った。
リヴァイもベッドに乗り上げ、視線を合わせる。
「覚えてるか、前にハンジがお前に足りないって言ってたものを」
は、以前、訓練兵の集団へ入る前の事を思い出す。
あのとき、ハンジはそれさえあれば殺戮衝動が抑えられるかもしれないと言っていた。
「・・・愛情」
自分とは縁が遠い感情を、ぽつりと呟く。
「そうだ。だが、それはそう簡単に芽生えるもんじゃねえ。。
だから、一時のかりそめのものでもいい、今から俺のする事に抵抗するな」
まるでわけがわからなかったが、は黙っていた。
「口を開けろ」
言われた通り、軽く口を開く。
そうしたとたん、すぐにリヴァイがその箇所へ覆い被さった。
「っ・・・!?」
押し付けるように口を塞ぎ、口内に柔い物を入り込ませる。
舌へ触れ、絡ませると驚いたが身を引こうとした。
リヴァイは一時も逃さぬよう、後頭部に手を当て、自分の元へ引き寄せた。
「んんっ・・・」
お互いが深く繋がり合い、はくぐもった声を出す。
柔らかい感触に、混じり合う液の音。
呼吸をしようとすると、相手の吐息が流れ込んでくる。
その交わりが熱くて、頬に熱が上って行った。
解放されると、二人の間に液が伝う。
リヴァイがそれを舐め取る様に、の唇へ触れる。
そのとき、はいつか感じたことのある寒気を覚えていた。
次に、リヴァイの唇は、耳元へ移動する。
そして、そこにも舌を這わせ、柔い感触ものを感じさせた。
はびくりと、肩を震わせる。
耳朶を弱弱しく甘噛みされ、全体を弄られ、液の音が直に届く。
うっかりすると変な声が出てしまいそうで、歯を食いしばって耐えていた。
「何か、感じるか」
言葉と共に耳元へかかる吐息が、やけに熱い。
「さ、寒気がする、けど・・・熱い」
リヴァイはかすかに笑みを浮かべ、耳から首へと舌でなぞってゆく。
はまたぞっとしたが、その寒気は熱を伴っていた。
矛盾する感覚に、戸惑わずにはいられない。
柔い感触がなくなったと思ったらとたんに腰を持ち上げられ、座っていた体制から仰向けになった。
危機感を覚えたは、反射的にリヴァイを押し返そうとする。
だが、その手を取られ、指先から掌、腕にかけて弄られた。
「あ、あ・・・」
血管に沿って這わされると力が抜け、腕がベッドに落ちる。
抵抗する力を無くすと、上半身の服が手早く取り払われてゆく。
リヴァイは、はだけて露わになった胸部へも、同じように触れていった。
「ひ・・・っ、や」
の声が、わずかに上ずる。
弄られた箇所が熱くなり、自分の中でくすぶっている。
一瞬で冷めてしまう蒸気とは違い、まるで体内から湧き上がってくるようだった。
「何も、体を温める方法は血飛沫や蒸気を浴びることだけじゃねえ。それを今から教えてやる」
リヴァイは、のズボンにも手をかける。
ははっとして、とっさに手を伸ばして止めた。
瞳に、不安の色が写る。
ふいに、リヴァイはの体に残る痣へ口付けた。
「あ・・・」
痕に唇が触れると、不思議と安心感を覚える。
まるで、傷付けられた過去が上書きされてゆくように。
気付けば、リヴァイの手を掴む力を弱めていた。
そうすると、下肢の衣服がずらされてゆく。
その間も口付けは続いていて、抵抗できなかった。
何もかもが取り払われると、それだけで体が硬くなる。
リヴァイは身を下ろし、露わになったのものへ、おもむろに舌を触れさせた。
「あ・・・っ!あぁ・・・」
下肢が弄られたとき、今まで以上に強い感覚がを襲った。
とたんに全身が反応し、反射的に声を発してしまう。
わずかに触れられただけで、熱がそこへ集中してゆくようだった。
早くに達してしまわないよう、リヴァイはゆっくりと這わしてゆく。
じらすように少しずつ、この感覚を刻みつけるように。
わずかでも動かすの体が震え、指先まで熱くなっていった。
「や、あ・・・何か、おかし、い・・・」
一時だけの、表面的な熱とは違う。
体の芯から湧き上がり、いつの間にか肩で息をするほどのものになる。
どんどん熱っぽくなっていったとき、ふいに愛撫が止まった。
「お前も、人並に感じるんじゃねえか。顔を真っ赤にして」
リヴァイは体を起こし、の頬へ触れる。
自分より温度の低い手が心地良くて、目を細めた。
とんでもない痴態をさらしているのに、嫌悪感はない。
むしろ、もっと温めてほしかった。
「続きをしてほしいか」
正直に頷きたくなる。
けれど、それはとんでもなく恥ずかしいことのような気がして、は何も言えなかった。
返事がないと、リヴァイはあっさりとベッドから離れようとする。
そのとき、は反射的に腕を掴んで引き留めていた。
お互い動きを止め、視線を交差させる。
は口を結んでいたが、やがて俯きがちになって告げた。
「・・・まだ、触れていて、ほしい・・・」
かろうじて聞き取れる程の呟きを洩らす。
こんなにも誰かを求めることなんてなくて、は委縮する。
残忍な雰囲気と全く違う様子に、リヴァイも自分の気が昂るのを感じていた。
引き止められなかったら、拒否されたものだとしてエレンでも呼んでくるつもりだったが。
もはや、躊躇わせる要因は何もなかった。
リヴァイは濡れているのものを掴み、手を上下に激しく動かした。
「あぁっ・・・!あ、ぅ・・・」
あられもない声を出してしまい、ますます羞恥心がつのる。
一方で、与えられる快感に悦んでいる自分がいて、行為の全てを受け入れていた。
「そうだ、そうやって素直に感じていればいい」
ふいに、リヴァイはの首元へ唇を寄せる。
そうして、皮膚を軽く吸い上げ、赤い痕を付けた。
その間にも、リヴァイは巧みに指先を使ってを攻め立てる。
「は、っ・・・ぁ、や・・・!」
息をつく事さえ許されず、呼気が荒くなる。
限界が来てしまったら、どうなるかわからないけれど。
今は、その限界まで達させてほしいという欲求が生まれていた。
先に弄られたときについたものとは違う液が、指の動きを滑らかにさせる。
息を荒げて何かに耐えようとする彼の頭に、リヴァイはそっと手を乗せた。
「・・・」
優しげな口調で名を呼ばれ、気が緩む。
そうして、緊張が解けた瞬間に弱い部分をなぞられ、今までにない強い衝動が体を襲った。
「あ・・・!っ、ぁ、あ・・・リヴァイ、兵長・・・っ」
無意識の内に、名を呼び返す。
はシーツを皺が寄るほど握り締め、喘いでいた。
限界に達した欲求が解放され、リヴァイの掌が白濁で汚される。
自分の下で息を荒くしている相手に、体が疼いていた。
けれど、今日はこれ以上のことを進める気はなかった。
は、虚ろ気な目でリヴァイを見る。
もう、胸の中のわだかまりも、殺戮衝動も消え去っていた。
人から離れて生活していたせいで、三大欲求の一つがずっと解消できないままだった。
それは殺戮衝動となって、代わりに解消されていた。
だが、リヴァイの監視下の元でそれが抑制され、人と接する機会が増えたことから、欲求が膨らんだ。
もはや、それは巨人を殺すだけでは昇華できず、本来の解消方法でしか取り除けないわだかまりとなっていた。
は、無防備な姿のままリヴァイのベッドで眠っている。
安心しきっている、安らかな寝顔。
リヴァイは、そこに恋愛感情とはまた違う、確かな愛しさを感じていた。
―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
次のエレンの話で、最後になります・・・が、やけにあっさりいかがわしい場面が過ぎてしまったので。
番外編として、がっつり書くつもりでいます。