進撃の巨人13
翌日、は一睡もしないまま朝を迎える。
いつものように朝食の時間をずらして、食堂へ行こうとした。
「遅い飯だな。今日から班行動だと、忘れたとは言わせねえぞ」
部屋を出ると、待ち構えていたようにリヴァイが立ち塞がる。
「う・・・うっかりしてただけだよ」
本当は故意だったけれど、そんなことを言えるはずはない。
しばらくは厳しい視線が注がれていたが、やがて逸らされた。
「昼から時間をずらすな。わかったな」
肯定以外に選択肢はなく、は小さく頷いた。
「食べ終わったら広間に来い」
それだけ言って、リヴァイは去って行く。
は緊張で、食事が入りそうになかった。
ほとんど味のしない食事を終え、広間へ行く。
怖々と扉を開けると、複数人の視線を一気に感じて、硬直した。
「、おはよう」
聞き覚えのある声に、強張りが解ける。
視線を向けるとそこにはエレンがいて、とっさに駆け寄っていた。
広間へリヴァイが入ってきて、視線はそっちに集中する。
注目されることに慣れているのか、平然と一番奥の上座に座った。
「今日から、この班にが入る。お前ら、自己紹介しろ」
リヴァイが視線を向けると、一人が立ち上がって名前を告げる。
そこから順番に、名前と簡単な挨拶が述べられたけれど、は興味が沸かなかった。
おそらく、10回聞いても覚えられないだろうと思ったけれど、とある人の声がふと耳に残った。
「私はペトラ。肩の力を抜いて、気楽にしてね、よろしく」
たぶん、その人が紅一点で、声の質が違ったからだと思う。
ペトラという人の名前だけは頭に残り、認識できていた。
ハンジとは違う、まともな女性だから印象に残ったのかもしれない。
自己紹介が終わると、外へ出て訓練に移る。
は、エレンから離れようとしなかったけれど
リヴァイに睨まれて、渋々距離を置いていた。
「君、私と組もう?」
「あ・・・あ、うん」
声をかけられたことに驚きつつ、はペトラに続く。
最初は戸惑っていたけれど、戦闘とあらば目の色が変わった。
女性だから手加減をするなんて気遣いはなく、素早い動きで模擬刀をかわす。
合間に、反撃しようと背後にまわろうとするけれど
猪突猛進なエレンとは違い、相手も素早くてなかなかとらえられない。
それでも、相手のうなじをとらえることだけに集中できる時間は、楽しかった。
班員の実力は確かなもので、お互いに一度もうなじをとらえられないまま訓練が終わる。
さっとエレンの方に目を向けると、ぜいぜいと肩で息をしていた。
駆け寄ろうとしたところで、視線を感じて足を止める。
エレンもを見るけれど、訓練の相手に声をかけられて注意が逸らされた。
「、すごく素早いのね。一度も後ろをとれなかったわ」
「え、あ・・・うん」
何を話せばいいのか、は返事を返すことしかできない。
警戒心が伝わっているのか、ペトラは一定以上の距離を詰めようとはしなかった。
「せっかく班員になったんだし、のこといろいろ知りたいな」
「・・・兵長さんに、仲良くしろって言われたの」
普通の人間がこんな怪物に興味を持つはずはないと、はいぶかしむ。
「そうじゃなくて・・・失礼かもしれないけど、弟ができたみたいって思って。
ほら、憲兵ってだいたいごつくて筋肉質だから」
「ふーん・・・」
そういうものなのかと、はとりあえず納得する。
それに、誰かに気に入られたほうが、リヴァイの機嫌を損ねないだろうと反論しなかった。
「、向こうで休憩しよう」
「・・・うん」
後ろ髪を引かれる思いで、エレンから離れてペトラの後に続く。
リヴァイの目があるとはいえ、こうして交流できるのが自分でも不思議だった。
それから先は、何かと時間が合わなくてエレンと接する時間が全くなかった。
その代わり、隣にはペトラがいて、共に行動していた。
やはり、お目付け役を任命されているのかと疑いたくなるけれど
ペトラには穏やかな雰囲気があるからか、逃げずに会話をしていた。
「って、結構壮絶な人生を送ってきたんだね・・・ごめんね、根掘り葉掘り聞いて」
「ん・・・別にいいよ」
そうして、興味を持たれて交流することを怖がっていたはずなのに
気付けば、そんな恐怖感は薄れてきていた。
「そろそろ夕食だし、行こうか」
「うん」
夕食の時は、エレンの隣に並べないだろうかと期待していたけれど
食堂ではもう両隣に男性が座っていて、だいぶもどかしくなった。
が、エレンをじっと注視している様子を見て、ペトラはくすりと笑う。
「は、本当にエレンと仲が良いのね」
「・・・エレンは、初めてできた友達だから」
「じゃあ、私もの友達になれるかな」
「えっ」
は、目を丸くしてペトラを凝視する。
その驚くべき発言が、建前か本音かを見極めるように。
やましいことがあったら、人は視線をそらしたがるものだけれど
ペトラは、の目を見続けていた。
「・・・うん、いいよ」
友達になるのが許可制なんて、不自然なことだ。
ペトラは、おかしそうにくすりと笑う。
「ありがとう、」
は、まだペトラを見続けている。
それは、やんわりとした微笑みから、目をそらせないと言った方が正しかった。
はたから見れば、仲睦まじい兄弟のような二人を、エレンはじっと凝視していた。
夕食も終わり、貴重な自由時間が始まる。
自由と言ってもほとんど時間はなく、体を洗ったらベッドへ直行する者がほとんどだった。
は肉体的よりも精神的な疲労感が強く、同じく部屋へ向かう。
けれど、入った場所は自室ではなく、地下室だった。
「エレン、いる?」
薄暗い室内に呼び掛けると、ベッドに横たわっていた人物が起き上がる。
「・・・来てもよかったのか?」
「うん。さすがの兵長さんも、寝るときまで監視しないだろうし」
は小走りで駆け寄り、エレンの隣に座る。
自分のすぐ近くにが来ると、エレンは自然と手を重ねていた。
もはや拒むことでもなく、は肩を寄せる。
やはり、気の知れた相手といるのは安心した。
「夕食のときに見てたけど、ペトラさんと気が合うみたいだな」
「気が合うっていうか・・・女の人が珍しいからかな、ちょっと興味を持ったんだ」
「女性なら、ハンジ分隊長もいるだろ?」
「分隊長さんは、性別不詳だよ」
ハンジの姿を思い浮かべ、二人は納得したように笑った。
「でも、初めてまともな女の人と接したからかな・・・ペトラさんは、危険じゃない気がする」
その言葉を聞き、エレンの表情から笑みが消える。
「・・・もしかして、恋愛感情を抱いてる・・・のか?」
「恋愛感情?」
は目を丸くして反復し、真剣にものを考えるように眉を寄せた。
「・・・・・・わかんない」
は否定せずに、答えを濁す。
会ってまだ1日しか経っていない相手なんて、他人でしかないはず。
そのはずなのに、もう名前を覚えていることが、を迷わせていた。
もしかしたら、知らず知らずの内に好意を抱いてしまっているのではないだろうか。
曖昧な答えに、エレンは不安になる。
ペトラがいれば、自分はにとって不必要な存在になるのではないかと。
負の感情に押されて、エレンはたまらずの肩を抱いていた。
「エレン?」
突然、体が強く押し付けられて、不思議そうにエレンを見上げる。
すると、すぐに顔が目と鼻の距離まで迫り、そのまま口が塞がれていた。
「っ、ん・・・」
感情をぶつけるような強い口付けに、は怯む。
そのせいで、つい隙間を開いてしまい、そこから柔い感触が進んできた。
は思わずエレンの肩に手をやったけれど、行為は止まらない。
それはすぐさま舌に絡み付き、液を交わらせていく。
「う、ん・・・っ・・・ぁ」
早急な行為に、の吐息が熱くなる。
自ら動く余裕はなく、全体的に、まんべんなく舌をなぞられていく。
加えて、歯列の裏を撫でられると、ぞくぞくとした寒気が背に走った。
だんだんと息が荒くなり、苦しくなってくる。
力を込めて肩を押すと、やっとエレンが離れた。
間に伝う液が、行為の激しさと長さを物語る。
は袖で口を拭うと、虚ろな眼差しでエレンを見上げた。
エレンは何も言わず、を強く押して後ろに倒す。
そして、小柄な体を覆うように抱き締めた。
「ど、どうしたの、エレン・・・」
いつになく積極的な行動に、の鼓動が早くなる。
「・・・取られたくないんだ」
「え?」
か細い声に、は思わず聞き返す。
もう一度は言わず、エレンは少し身を下げての首筋に口付ける。
ただやんわりと触れさせるだけでなく、皮膚を軽く吸って刺激を与えた。
「ん・・・何、してるの」
応える余裕がないのか、エレンは微妙に場所を変えて口付けていく。
首筋にちくちくとした細かな感覚がして、は身じろぐ。
その首筋には、ぽつぽつと赤い痕がつけられていた。
自分では確認しようがなく、ただされるがままになっている。
昼間は、接したくても近づけないもどかしさがあっただけに
こうして触れられる温かみを、感じ続けていたかった。
大人しくしていると、エレンがの服をはだけさせていく。
そして、首と同じように、胸部へも触れていった。
そこかしこに軽い刺激を感じるたびに、痕が増える。
胸部が終わると腹部へと移動し、エレンが下がっていくとの鼓動が強くなった。
「エ、エレン、一体、どこまで下がる気・・・?」
「・・・が欲しいんだ。こんなの、自分勝手なことだってわかってる。
けど、がペトラさんに夢中になる前に・・・」
エレンは、の下半身の服にも手をかける。
あまり無茶をされてしまうと、明日の訓練に影響が出かねない。
けれど、エレンに求められているのだと思うと、拒めなかった。
服が下ろされ、は無防備な状態になる。
エレンは躊躇いなく身を下げてゆき、中心にあるのものへも口付けた。
「ひゃ、う」
敏感な箇所に触れられ、驚いたような声が上がった。
エレンはいきなり口内に含むことはせず、そこへ軽い口付けを落とし続ける。
微かな刺激でも感じるものは強く、は下唇を噛んでいた。
声は抑えていても体は堪えようがなく、反応してしまう。
下肢が熱くなってきたと思ったときには、もう起立してきていた。
「・・・声、我慢しないでくれ」
「だ、だって、変な声、恥ずかしいし・・・」
今更なことだけれど、羞恥心は自分でどうこうできるものではない。
そんな抑制を外させたくて、エレンは行為を進め、のものに舌を這わせた。
「や、ぁ・・・っ」
触れられている部分が多くなると、それだけ感じるものも強くなる。
思わず口を開いてしまい、すぐに閉じるけれど
エレンに下肢を弄られると、駄目だった。
舌先が、起立しているものの側面や先端を、丁寧になぞっていく。
その途中で弱い箇所に触れたのか、の体がびくりと震えた。
「、どこが気持ちいいんだ・・・?」
エレンは、探るようにを慎重に舐める。
「あ、ぅ・・・んん・・・」
すぐには達させないようにしているのか、刺激が弱くなる。
はしばらく身もだえしていたが、自身の裏側を弄られると、またびくりと震えた。
弱い個所を見つけ、エレンはそこへ舌を押し付ける。
「あっ・・・や、んん・・・っ」
柔いものに蹂躙されて、とても声を抑えられなくなる。
執拗に攻めたてることはせず、エレンは一旦舌を離した。
「欲しいんだ、が欲しい・・・」
若々しい欲望は、もう止めることができない。
エレンは、欲するがままにの先端を口内に含んだ。
「ああ・・・っ・・・!」
先の方が覆われ、の声が上ずる。
エレンは、熱を帯びているものをどんどん深く含んでいく。
舌で弄られつつ、しっとりとした液体に覆われてしまうと、の息は荒くなった。
「あ、ぅ・・・エレン、もう、駄目だよ・・・っ」
弱い個所を刺激され、さらに全体を包まれてしまい、限界が近づく。
このままではエレンを汚してしまうと、髪の毛を引っ張った。
けれど、エレンの動きは止まらず、とうとう全てを自身の中へ含む。
そして、いよいよ達させるよう全体を吸い上げて行った。
「は、ぁ、だ、だから・・・っ」
は、たまらずエレンの髪を引く。
それでも、エレンの舌に弱い個所をなぞられると、力が抜けてしまった。
触れられるたびに衝動が募り、抑えきれなくなっていく。
エレンは、をとらえて離さず、全体を余すとこなく味わう。
甘い声も、皮膚の感触も、先端から滴る液も、自分のものにしてしまいたかった。
苦味を感じると、その液を最後の一滴まで飲み込んでしまいたくなる。
エレンは、の弱い個所に強く舌を押し付け、這わせて、全体を吸った。
「ああっ・・・や、ぁ、あ・・・!」
とても耐えられなくなって、の下肢が脈打つ。
その瞬間、募りに募った止めどない欲望が開放されていた。
欲の余波に悶えるように、体が数回跳ねる。
その震えが修まった後、エレンはゆっくりと口を離した。
口内に、独特な味と臭いがする液が溜まっている。
頬を紅潮させているを見て、エレンは喉を鳴らしてそれを飲み込んだ。
粘液質な感触が、喉元を通り過ぎていく。
「・・・」
小さく呼び掛け、エレンはと視線を合わせて見下ろす。
虚ろな眼差しを目の当たりにすると、また衝動がよみがえってきそうになった。
「だ、だめだって、言ったのに・・・そんな、気持ち悪いもの舐めて・・・」
「ごめん。どうしても味わっておきたかったんだ。ペトラさんの方が、オレなんかより魅力的に違いないから・・・
の気がまだオレに向いてる内に、しておきたかった」
自分勝手にも聞こえる言葉だが、はエレンの方へ手を伸ばす。
「僕、エレンから離れないよ。すごく、大切な友達だから」
受け入れるように、エレンの頬へ掌を添える。
友達、という単語がひっかかったものの、エレンは胸の内に温かなものを感じていた。
「、ありがとな・・・」
拒まないでいてくれただけでもいいと、エレンは身を下ろしてと唇を合わせる。
そのとき、は僅かに顔をしかめた。
「エレン、口ゆすいできた方がいいよ。あの・・・匂いが、するから」
はっとして、エレンはとっさに身を離す。
「ご、ごめん、すぐに歯磨いてくる」
エレンは、駆け足で地下室から出て行く。
慌てた様子を見て、はくすりと笑っていた。
少し経って、エレンが帰って来る。
がまだベッドに横になっているのを見ると、自分も隣に寝転がった。
「ごめんな、無理にして・・・」
「別に、エレンが嫌な思いしてないんならいいよ」
もはや、優先するものは自分ではなくエレンになっている。
どんなに大胆なことをされても、そんな相手を拒むなんてできないと感じていた。
「明日が、訓練じゃなくて座学でよかった。
あんなことしてから言うのも何だけど、の体にあんまり負担を残したくないから」
「ありがと。でも、勉強かー・・・」
は、気乗りしなさそうにぽつりと呟く。
疲れたとしても、むしろ、自分にとっては訓練の方が楽しいに違いなかった。
「難しかったら、一緒に勉強しよう。二人して頭抱えることになるかもしれないけど」
「あはは、そうかもね」
お互いあっけらかんに笑い、はそっとエレンの手を握る。
この残酷な世界で、共に笑い合える相手がいる喜びを共感するように。
エレンは、の肩を抱いて自分の方へ引き寄せる。
人の温もりが心地よくて、はうとうとと目を閉じた。
知らない集団へ入れられて、不安だったけれど
エレンが居てくれるなら、明日の座学までも楽しめるかもしれないと感じていた。
―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
いつの間にやらいかがわしい方面へ・・・恐ろしい脳味噌だ。