スマホ君とガラケー君
(スマホの007SHと、ガラケーのT007擬人化小説です)


そいつは、見慣れない型をしていて、電子世界にぽつんと立ってた
全身水色でつやがあって、大人しそうな感じの奴
自分から誰かに声をかけるなんて滅多になかったけれど
ガラケーにしては珍しい色と光沢があったので、何気なく声をかけてみた

「こんちわ。珍しい色してんな」
声をかけられた水色の相手は、一瞬肩を震わせて振り向く
その顔には、はっきりと驚きが見てとれた
「え、あ、あ・・・」
突然のことで戸惑っているのか、相手は視線をせわしなく動かしていた

「そんなに驚かんでもええやろ。
ただ、綺麗な色してたから目に入ったんや。型番は?」
「え、えっと・・・007だけど」
見ず知らずの機種を目の前にして戸惑っているのか、声が小さい
「へー、俺も007やねん、奇遇やなー」
数千種類の機種がある中で、同じ型番に出会えることは滅多になかった
同じ型にこんな色はあっただろうかと思ったけれど、新型なのかもしれない

「き、君も、同じ型なんだ。本当に、奇遇だね」
相手はせわしなく動かしていた視線を止め、正面を向く
そのとき、間近にある水色の瞳が目に留まった
自分の緑色とは違えども、似た光沢の瞳が綺麗だ
「なあ、何か、名前あるん?俺は、ライムグリーン色やからライムっていうんやけど」
同じ型番に会えたことで少し興味がわき、もう一つ質問を投げかける

「ライム・・・じゃあ、僕はスカイブルーのスカイ、かな」
「かなって何やねん、かなって」
「あ、えっと、ご、ごめん」
「いや、怒ってるわけとちゃうから」
スカイは、申し訳なさそうに目を伏せる
押しの強い奴とは真逆の性格のようで、自分のペースに合いそうな相手だった


「・・・なあ、よかったら、メアド教えてくれへんか?」
少し迷った後、そんな申し出をしていた
広い電子世界では、一回会った相手にすんなりともう一度会えるとは限らない
折角、珍しい色で、同じ型番で、気が合いそうな相手に出会えたのだから、聞いておいて損はないと思った
その発言にかなり驚いたのか、スカイは目を丸くしていた
「ほら、同じ型番に会えた記念に、残しておきたいんや」
「記念・・・そっか、うん、いいよ」
嫌じゃなかったのか、スカイがわずかに頬笑む
どこか可愛げのある表情につられて、わずかに頬が緩んだ

「よっしゃ、じゃあ、赤外線で・・・」
そう言うと、スカイは申し訳なさそうに眉を下げる
「ご、ごめん。僕、赤外線ないんだ」
「あれ、そうなん?」
今時、赤外線通信がついていない機種なんてあるのかと思ったが、世の中にはごまんという機種がある
それも一つの個性だろうと、またこれも気にならなかった
「じゃあ、直接教えるわ。アドレスは・・・」
つらつらとアドレスを告げると、ほとんど一瞬で記録されていった
その間、アドレスを聞いている中で、スカイはずっとかすかな頬笑みを浮かべていた

「うん、登録できた。じゃあ、僕のアドレスを・・・」
「いや、後でメール送ってくれればええよ。その方が俺としても楽やし」
「そ、そっか」
正直、アドレス入力は面倒な作業だというのもあったが
こうすれば、またメールをやりとりすることができる

「じゃ、俺は壁紙探索中やからもう行くわ」
「あ、うん、じゃあ・・・」
スカイは名残惜しそうにしていたが、初対面の相手をいきなり誘う程、フレンドリーではなかった
「ま、気が向いたらメール送ってな」
それだけ言って、リンクを飛ぶ
ページが切り替わる直前、スカイは何か言いたげに口を動かしたけれど、その声は聞こえなかった




壁紙探索が終わった頃、見慣れないアドレスからメールが来た
今日アドレスを教えた相手は一人しかいないので、すぐに開く
『今日はありがとう。びっくりしたけど、嬉しかった。
アドレス、登録してくれると嬉しい』
相手から送られてきたアドレスを登録するのは簡単で、すぐに終わる
『律儀に送ってくれたんやな、ありがとさん』
そこまで文章をつづって、送ろうとしたが止める
少し考えた末に、続きの文章を追加していた

『面倒くさくなかったらでいいんやけど、明日一緒に壁紙探しに行かへんか?』
一台より、二台分のお気に入りサイトがあれば、壁紙の幅も広がる
戸惑わせてしまうかと思いきや、案外返事は早く帰ってきた
『僕でよければ、喜んで』
軽い気持ちで送ったが、返事の早さから、スカイが結構乗り気なのがわかった

『よっしゃ。じゃあ明日の昼、ブラウザの入口集合な。フル充電にしてきーや』
送り終えると、またすぐに返事が来る
『わかった。楽しみにしてる』
たった一行の文章だけど、すぐに良い返事が貰えると、何だか嬉しかった




翌日、時間ぎりぎりまで充電していて、少し遅れてしまった
スカイはすでに待ち合わせ場所にいて、不安そうにきょろきょろとしていた
「すまん、ちょっと遅れてしもた」
声をかけると、スカイはぱっと顔を明るくした
「よかった・・・来てくれたんだ」
「こっちから誘ったんやから、当たり前やろ。ほな、行こか」

無数に張り巡らされるリンクの中ではぐれないよう、自然な動作でと手を取る
スカイは、心底驚いたように目を見開いたけれど
はにかむように笑うと、その手を握り返した
「まず、俺のお気に入りサイト行こか」
ブックマークからサイトを選択し、一気に飛んだ


そこは、多くのフリー壁紙が掲載されているサイトで、定期的に更新がある人気サイトだった
壁紙が豊富で人気な分、接続に多少手間取るのだが
今日はアクセスが少ないのか、えらくすんなりと壁紙一覧が表示された
スカイは、物珍しそうにきょろきょろと周りを見回している
「なんや、このサイト来るの初めてか?ガラケーやったら、ここは外せへんで」
「あ・・・う、うん、僕、デフォルトの壁紙しかないから」
「今時デフォルトだけなんて、また珍しいなー。
そんなら、良さそうな壁紙一緒に探そうや。オススメのやつ教えたるわ」

壁紙がデフォルトしかないというのも、最近ではとても珍しいこと
自分には何十枚もの壁紙が登録されているからか、デフォルトしかないというのは勿体なく思えた
「・・・ありがとう」
相手は、少し戸惑いながらも微笑む
あまり、こうしてサイトを探索することに慣れていないのかもしれない

「オススメのやつはな、この水平線が見えるやつやろ、雪景色やろ、虹がかかってるやつやろ・・・」
気に入っている壁紙を見せて行くのは楽しくて、何箇所もリンクを行き来する
移動が多いのは面倒かと思ったが、なぜかとても移動がスムーズで、画像の読み込みは一瞬でできていた
それよりも、お勧めの壁紙を見せる度に、スカイが目を輝かせて興味深そうにしていることに満足していた
特に、自然の風景画像が好きなのか、日暮れの森や夕焼けの大草原などなど、どんどん保存していっていた


「凄いや・・・こんなにたくさん綺麗な絵があるなんて」
「まだまだ、こんなもんとちゃうで。
壁紙だけやなく、絵文字やフラッシュなんかもあるしな。他のジャンル探しに行こか?」
そう提案したが、ふと、スカイの顔色があまり思わしくない事に気付いた
「どうしたんや、疲れたか?」
「うん・・・ちょっと。僕、あんまり長くもたないんだ」
バッテリーが古くなっているのか、そういうのはたまにいる
古い機種には見えなかったが、充電不足だったのかもしれない

「ま、今日はいろいろリンク飛んだしな。他の探索はまた今度にしよか」
「ごめん、君の壁紙を探しに来たのに・・・」
「気にせんでもええ、今日の更新はなかったみたいやし。
ま、相手がいるっていうのも悪くないもんやったしな」
たいていは、自分のペースで探索することが多いけれど
大人しいスカイとは相性が良いのか、面倒くさい、ではなく楽しみがあった
それは何気なく言った言葉だったが、スカイはよほど嬉しかったのか、ぱっと顔を明るくした

「あの・・・ま、また、一緒に探索できないかな。邪魔じゃなければ・・・」
遠慮しているのか、語尾が小さくなる
「ああ、ええよ。そや、何かオススメのサイトあったら、今度はそっち行こか」
「お勧め・・・うん、わかった。探しておく」
「そんじゃ、また明日、同じ時間に落ち会お。
あ、長くもたへんのやったら、ええもん持ってくるわ」
自分の壁紙は得られなかったが、その他の満足感があって
冷めている性格のはずの自分は、明日を楽しみにしていた





次の日は、時間きっかりに待ち合わせ場所へ着いた
だが、スカイがやって来たのは、それから10分後だった
「ご、ごめん、遅くなっちゃって・・・」
「ええよ、俺も昨日遅れたんやし、これでチャラや。で、どこ行く?」
「あ、うん、探してきたよ、壁紙がたくさんあるところ」
示されたURLを見て、思わず眉をひそめる
そこは、携帯ではなくPCサイトだった

「どうかした?」
スカイが、不思議そうに問いかける
サイトをまわることに慣れていなくて、PCサイトに入ってしまったのだろう
あまり気は進まなかったが、ここで断るのも気が引ける

「いや、何でもないわ。行こか」
今日は、スカイに先導してもらい、リンク先へ飛ぶ
接続が遅いことは遅かったが、以前に来たときとはまるで速度が違った
自分一人で来たときは接続の遅さがじれったくて、もう来るものかと思ったが
昨日の今日と、スカイと一緒にいると接続がだいぶは早くなっているようだった
もしかして、長くもたないのはそのせいなのかもしれない

そんなことを考えている内に、リンク先に着く
そこは流石PCサイトだけあって、画質も量も桁違いのものが揃っていた
何百枚というレベルではなく、何千枚、とても1日では見きれそうにない
「ここ、画像のジャンル分けがされててコンテンツが分かりやすいんだ。
それに、自然の風景もたくさんあるし」

「そやな。俺は結構ファンタジーっぽい風景が好きやから、それもあるとええな」
「うん、たくさんあるよ。行こう」
スカイと手を繋ぎ、画像のリンク先へ飛ぶ
そこには、1枚のページに多くの画像が表示されていて、幻想的なものが多かった
これだけ画像の読み込みが多いサイトなら、早々にへばってしまいそうなものだったが
やはり、表示が携帯ページと同じくらい早く快適だった

「そういえばお前、壁紙どんなやつに設定したん?もうデフォルトのままじゃないやろ」
「あ、うん。君が勧めてくれた中でも、水平線が見える海の絵がいいなって思ったから、これにした」
スカイが宙を指差すと、壁紙が目の前に表示される
青い海と空のグラデーションが美しい、何度見ても良い画像だった

「お、そうなんか。実は、俺も今それやねん。気が合うな」
「そうなんだ。・・・お揃いだね」
スカイは、照れたようにはにかんだ
おそろい、なんてくすぐったい言葉
けれど、感性が合うことは、嫌じゃなかった


「おや、ガラケーがこんな重たいサイトに来るなんて。
読み込みが遅くて大変なんじゃないのかい」
そうして良い気分でいたのもつかの間、部外者の声がした
どこから移動して来たのか、視線の先には金色の塗装が施された長身の機種がいた

「・・・スマホか」
面倒な奴に声をかけられ、不機嫌になる
PCサイトへ行くことに気が進まなかった理由は、接続が遅いだけではなく、スマホ達が飛び交っていることもあった
「おや、水色の子は見慣れない形だね。
携帯がPCサイトに憧れを抱くことは結構だけど、ガラケーは充電切れにならない内に引き上げた方がいいよ」
スマホは、その性能の高さからガラケーを見下している奴がいた
ガラケーとしても、スマホのせいで仲間が減っていっているのだから、快く思えるはずがなかった

「・・・行くで、スカイ。こんな奴がいたんじゃ、ろくに画像を選ばれへんわ」
不安そうな表情をしているスカイの手を引き、早々に携帯サイトへ戻った


「はー、まったくスマホの奴に出会うなんてついてないな。あいつらは高飛車で嫌になるわ」
ブラウザの入口へ戻ると、スカイは申し訳なさそうに俯いた
「ごめん、ライム・・・僕、昨日、充電してからいろいろ探してたんだけど、君に嫌な思いさせて・・・」
「スカイのせいとちゃうて。ま、PCサイトにはああいう奴等が多いし
俺等ガラケーは携帯サイトをのんびり探索しようや」
そう言うと、スカイは何かを言いたそうに口をもごもごと動かす
けれど、そこから言葉が出てくることはなかった

「そや、ええもん見せるの忘れてた。ほら、これや」
持ってきたアダプターを、スカイに差し出す
初めて見るのか、スカイはきょとんとしてそれを受け取った
「これはな、電池で充電できる機械や。
これがあれば、ちょっとやそっとのことではへばらんで。差し込み口どこや?」
同じ型番なのだから同じ所にあるだろうと、スカイの髪を避けて差し込み口を探す
頬に触れたときくすぐったかったのか、スカイは少し身を引いた

「あ、あの、僕、差し込み口は、肩にあるんだ」
どこか動揺しつつ、スカイは型の部品を外して差し込み口を開く
けれど、それは自分のより一回り小さくて、アダプターが接続できそうになかった
「うーん、こいつは接続できそうにないな。他にはないんか?」
どこかに開きそうな場所はないかと、腕や背中に触れて探す

「え、あ、ぼ、僕、差し込み口は一個しかないから、無理だと思う。
・・・ごめん、折角持ってきてくれたのに」
「だから、スカイのせいとちゃうんやから、謝らんでええて。それにしても不思議やなー。
同じ型のガラケーでアダプタは繋がらんし、一緒に居ると接続早くなるし、壁紙もデフォルトのまんまやったしな」
そう言うと、スカイはばつが悪そうに目を伏せた
さっきから、どこか様子が変だ

「どうしたんや?何か、気になることでもあるんか?」
「あ、うん・・・」
何かあるらしいが、スカイはそれ以上答えない

「・・・ごめん、僕、今日はもう行かないといけないんだ」
不安げな表情で、突然告げられる
大人しい性格だから、意地の悪い相手と接して気疲れしたのかもしれない
いろいろと気になることはあったけれど、メールで少しずつ聞いていけばいいと思った
「そっか。じゃあ、また今度な」
すんなりと別れを告げて、ブラウザから出た




その後、昼間の会話の続きをしようと、文章を作る
『今日は嫌な奴に会ってしもたなー。
でも、次は壁紙ばっかりやなくて、音楽配信してるサイトもまわろうな』
今まで、一人でマイペースに、気楽に過ごすことが多かったけれど
自然と、本文に次のことを書いてしまっていることに気付く
ペースを乱さないでいてくれるスカイのことを、思った以上に気に入っているのかもしれない

そんなことをぼんやりと考えつつ、メールを送る
今回も早く返事が来るかと思ったが、数十分経っても返信はなかった
充電中で、気付いていないのだろうか
催促せずとも、また会えるんだから、そのとき聞けばいい
明日も探索するために、自分もフル充電にしておこうとアダプターを差し込んだ




次の日、フル充電にしてブラウザの入口にいたが、スカイはいなかった
遅刻して来るだろうかと待っていたが、いつまで経っても誰かが近寄ってくる気配はなかった
はっきりと約束したわけではないので、仕方ないかもしれない
軽く溜息をついて、今日は一人でサイトをまわることにした
そのときは、やっぱり接続速度がやや遅くなっていて、もどかしさを感じていた

明日は来るかと思って、また同じ時間に、同じ場所へ行ったが
やはり、そこにスカイの姿はなかった
そのとき、たまらずメールを送っていた
『俺、今ブラウザの入口にいるんやけど、音楽サイト探索しに行かへん?』
しばらく返事を待ってみるが、一向に新着メールはない
こうなると、もどかしさを通り越して不安になる
意地の悪いスマホにいちゃもんをつけられて、ブラウザに出てくるのが怖くなったんだろうか

『なあ、どうしたん?最近、返信ないけど、サイト回るの嫌になったんか?』
再び送信したが、待てども待てども返事が来ない
それでも構わず、続けざまに送信する
『わずらわしくなかったら、一行でもええから、返事送ってくれへんか。
・・・心配なんや』
最後に、自分でも意外な言葉がついた

そのメールを送信してから数分後、一通の新着メールが届いた
そこにスカイの名前を確認すると、すぐに開く
『ごめん。・・・僕、今、動けない』
本文を見て、ぎょっとする
充電にこんなに時間がかかるわけはないし、それ以外の原因に何があるのだろうか

『なら、俺がそっちに行くわ。今居るアドレス教えてほしい』
戸惑ったのか、返事が来るのに多少時間がかかった
『http・・・・・・』
メールを受信すると、すぐにアドレスへ飛んだ





飛んだ先のページでは、スカイがぽつんと佇んでいた
「スカイ、来たで」
スカイは、ゆっくりと振り向く
その顔色は青白く、一目で調子が悪いのだとわかった
「ライム・・・ごめん、僕・・・君に謝らないと・・・」
スカイは体を支えるのがやっとという感じで、今にも倒れそうだ

「そんなことより、調子悪いんとちゃうか、ブラウザに来れへんわけやわ。
でも、ガラケーがこんなふらふらになるなんて、ほんま珍しいな」
一緒にブラウザへ行くのが嫌になったのではなかったんだと思うと、もどかしさが消える
けれど、ガラケーがこんな風に体を壊すことなんてあっただろうか
相変わらず、スカイには珍しい事が多い

「僕・・・言わなくちゃいけないことがあるんだ、君に・・・」
そこまで告げたところで、スカイの体が崩れそうになる
慌てて駆け寄り、肩を組んで支えた
「無理すんな。立ってんの辛かったら、座って話そ」
肩を組んだまま、ゆっくりとスカイを座らせる
顔は青白くて生気がないのに、触れている肩はとても熱かった
不思議そうにしていると、やがてスカイが口を開いた


「・・・ウイルスにかかってるんだ・・・遅延型ウイルス・・・
良いサイトはないかって、探しに行ったときに・・・」
「ウイルスって、そんな、スマホみたいな話が・・・」
あるわけないやろ、と言おうとしたが、言葉が止まる
接続が早くなったブラウザ、差し込めないアダプター、そして、このウイルス
全て、スマホの特徴に当てはまることだった
変化を察したのか、スカイは俯いた

「・・・スマホなんだよ、僕・・・
形が似てるから、よく、ガラケーに間違えられる・・・」
平然としていた、と言うと嘘になる
同じ型番のガラケーだと思っていて接してきた相手が、目の敵にしているスマホだったなんて
「もっと早く言わないといけないって思ってた・・・だけど、言い出せなかった・・・」
「・・・低スペックの奴と一緒にいて、優越感でも持ちたかったんか」
ひがみ根性から、ついそんなことを言ってしまう
スカイは、弱弱しく首を振った後、顔を上げた

「声をかけてくれたとき、嬉しかった。
壁紙探しに行って言ってくれたことも、メールを送り続けてくれたことも。
君と一緒に居ると、すごく楽しかった・・・」
スカイは、苦しそうに息をついた後、続けた

「ウイルスにかかってるところを見られたら、さすがにばれるって思ってた。
・・・でも、どうしても・・・君に会いたかったんだ・・・」
最後の言葉に、目を丸くする
思えば、PCサイトで他のスマホに出会ってから、スカイの様子はおかしかった
それは、ガラケーがスマホを良く思ってないことを目の当たりにしてしまったから
目の前で、スマホのことをいけすかない奴だとさんざん言ってしまったから

「今まで、騙していてごめん・・・ずるい事をしたってわかってる。
けど・・・君に、嫌われたくなかった・・・」
胸に突き刺さるような、真っ直ぐな言葉
不快じゃない、むしろ、逆だった


「・・・アホ、嫌いな奴の肩、こうやって支えたりせーへんわ」
腕に力を込めて、スカイの体を引き寄せる
「確かに、スマホにはいけすかん奴多いけど・・・
そんな奴ばっかりやあらへんってわかったわ」
PCサイトで出会ったようなスマホは、確かに嫌いだ
けれど、今、自分の肩に寄りかかっている相手が、スマホだろうがガラケーだろうが関係なかった

「・・・嫌われたくないんは、俺も同じや」
自然と口から出て来た言葉を、ぽつりと呟く
小さな声でも、隣にいる相手に聞こえていないはずはなくて
スカイは、呆然とした後、目を潤ませながらも優しく笑った

「そ、そや、何か音楽聞かせたるわ。
或る街の群青っていうんやけど、良い曲やで」
慌てて曲を探し、再生する
なだらかな前奏が流れ始めると、スカイは目を閉じて身を預ける
触れている箇所だけではなく、どこか、自分の中の何かが温かくなる気がした




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
まさかまさかの携帯擬人化、これも全て友人のおかげ
脳内の妄想力をふんだんに使って想像してみて下さい

補足ですが・・・赤外線ないとか言ってますが、ありました。自分の携帯なのに知識不足でさーせん\(^o^)/