妖魔の森12


翼が生えてから眠るまで、ユノの翼はしまうことができなかった。
戻そうにも方法がわからず、とりあえず服の代わりに布を切ってそれを羽織っていた。
入浴するとしっとりと濡れ、乾かすと艶が出て、構造は髪の毛に似通っている。
眠るときは、潰れてしまうのではないかと恐々とベッドに横になったが。
羽は思いのほか柔らかく、自分の体に巻きつけるとほんのり温かかった。
翌朝になると翼はいつの間にか消えており、肩がだいぶ軽くなっていた。

「ユノ、お早う。アゼル様が服を作ってくれたよ」
ちょうど目を覚ましたところで、カイブツが部屋に入ってくる。
手には新緑の葉の色をした衣服を持っており、それを差し出した。
「ありがとう。早速着てみるよ」
袖を通すと、森の爽やかな香りに包まれる。
柔らかな葉をまとっているような感じがし、着ているだけで安らげるようだった。

「それなら、翼が生えても破れないから大丈夫らしいよ。
光の粒子を通すとかいろいろ説明されたけど、よくわからなかった」
1日でそんな便利な物を作ってしまうアゼルは、やはり妖魔の長の一人なのだと実感する。
食事のとき、アゼルに服のお礼を言うと、しばらくは翼を使う練習をするように言われ。
朝食後、ユノはカイブツと共に森の木々が開けた場所に来ていた。


「ユノ、早速だけど翼出せる?」
「・・・やってみる」
出し方なんて知らないけれど、とにかく何かやってみるしかない。
ユノは目を閉じ、背中に意識を集中させた。
自分の肩甲骨から、黒い翼が生える情景をイメージして。
神器を扱うときの様に、力をそこへ集める。

すると、針で軽く突かれている感覚がし、むずむずとしてきた。
肩甲骨から、集めた力を解放することを意識する。
光の剣を形づくったときを思い出すように、翼の輪郭を鮮明に描く。
その瞬間、背中に衝撃が走り、二枚の翼が生えていた。

肩が重たくなったところでユノは目を開き、息を吐く。
太陽の下だと羽の中に銀の粒子があるのがわかり、光を浴びてちらちらときらめいていた。
「やっぱり、綺麗だな・・・」
「あ、ありがとう」
カイブツに真顔で誉められ、少し気恥ずかしくなる。


「折角羽が生えたんだし、空を飛んでみようよ」
「そうだな、やってみる」
ユノは期待を込めて、背の辺りに力を込めて翼を動かす。
最初はゆっくりと羽ばたいていたが、さらに力を入れると動きは早くなった。
けれど、辺りに風が送られるばかりで、体は全く持ち上がらない。
そうして羽を動かしていると、腕を全力で回しているようですぐに疲れてしまい、動きを止めた。

「だ、駄目みたいだ・・・」
まるで短距離を全力失踪した後のように、息が荒くなる。
今まで体になかった部分を動かすことは、かなり疲労するようだった。
「うーん、筋力が足りないのか、スタミナがないのか・・・。
そうだ、ユノ、ちょっと来てくれ」
カイブツがユノの手を引き、森の奥へ誘導する。
まだ疲れているユノを気遣い、歩みはゆっくりとしたもので。
目的地はさほど遠くなく、ほどなくして鍾乳洞に辿り着いた。


中はひんやりとしていて、薄暗い。
さらに奥へと進んで行くと、やがてだんだんと周囲が明るくなってきて。
完全に明かりが差したとき、目の前には洞窟の中とは思えない景色が広がっていた。

天井の巨大な水晶から、日光のように温かな光が差し込んでいることにユノは驚く。
その光のおかげか、地面には青々とした芝生が生え揃っており。
岩場からは小さな滝が流れ、汚れのない泉を作り出していた。
それだけなら人の世界にもありそうか光景だったが、泉の近くには山菜のように渦を巻いた、見たことのない植物があった。


「ユノ、こっちだよ」
手を引かれ、芝生の中に足を踏み入れ、奇妙な植物に近付く。
背丈は自分と同じくらいあり、先には丸い水泡のようなものがついていた。
カイブツは茎を切り取り、その水泡を手に取る。

「カイブツ、それは?」
「今まではユノが人間だったから使えなかったけど、これは妖魔の気力を回復させる雫なんだ。飲んでみて」
ユノは水泡を受け取り、茎の部分を口に含んで吸う。
すると、清らかな液体と共に、口内にほんのりとした甘さが広がった。

「何だか、身が洗われて行く気がする」
「疲れたときは、この液体を飲んでるんだ。栄養財みたいなもんかな」
ユノはあっという間に甘露を飲み干し、満足感に溢れる。
そこで、カイブツは何かに気付き、翼から羽を一枚抜いた。


「ユノ、羽が変化してる」
「え?」
カイブツが抜いた羽は、やや鋭く尖っていた。
武器になるかと思い触れてみだが、見た目によらず柔らかい。
もっと水を飲めば固くなるだろうかと、ユノは植物の水泡を掴み、もぎ取ろうとする。

「あ、それは茎から切らないと・・・」
カイブツがそう言ったのも束の間、取ろうとしていた水泡が破裂した。
「あ・・・」
水泡が弾け飛び、カイブツはさっと離れる。
ユノは一瞬でずぶ濡れになり、翼も鋭さがなくなってしんなりとしてしまった。

「乾かしてから、帰ろうか」
「・・・うん」
ユノはよく光が当たる場所へ移動し、服を脱ぐ。
外で裸になるのは恥ずかしくて、翼を引き寄せて体を隠した。
微かにきらめく黒衣をまとう姿に、カイブツは目を奪われていて。
引き寄せられるように近付き、隣に腰掛けると、ユノをじっと見詰めた。


「あの、じっと見られてると落ち着かないんだけど・・・」
「ユノ・・・ごめん、ちょっとだけ」
カイブツがユノの背後にまわり、肩に手を置く。
そして、しっとりと濡れているうなじに唇を寄せ、ゆっくりと舌を這わせた。

「っ、カイブツ・・・」
とたんに背筋にぞくぞくとしたものが走り、ユノはわずかに身震いする。
液を拭っているのかもしれないが、触れた箇所はまた違う液で濡れていた。
カイブツがうなじを余すとこなく弄っていくと、舌が往復するたびに、体を固くする。
不思議と心音が強まるのが早く、まるで妖魔の気と同調しているようだった。

ちょっとだけと言ったが、カイブツはうなじだけでなく、背中へも下がって行く。
液の甘美な味と、肌の滑らかさに歯止めが効かなくなっているのだろうか。
翼の辺りへ這わせると、羽が驚いたように動き、はためいた。
「俺の血を使ったからかな・・・ユノの鼓動がよくわかる」
カイブツは膝立ちになり、後ろから手を回して心臓の辺りへ触れる。
そうやって掌を添えられるだけでも、ユノの気は落ち着かなくなっていた。


「そういえば、しばらくユノに触ってなかったな・・・」
胸部の手が移動し、カイブツはすぐ傍の起伏へ触れようとする。
「だ、駄目だよ、ここ、外・・・っ、ぁ・・・」
制止の声も無視し、カイブツの指先は小さな箇所を撫でていた。
腹の部分で軽く押すと刺激が強まり、か細い声が上がる。
感じているのか、ユノは足をよじり、反応を抑えつけようとしていた。
けれど、指先を使い、細かな動作で愛撫されると、体温が高まっていってしまう。
もっと気を昂らせ、同調したくなって、カイブツはユノの下肢へ手を伸ばしていた。

「だ、だから、外だし、誰か来るかもしれないし」
「ここはアゼル様の領域だから、簡単には入って来られないよ。ユノ、無茶はしないから・・・」
耳元で懇願されて、ユノは戸惑う。
躊躇っている間に手は下へと移動して行き、中心にある物へ指が触れた。

「あ、ぅ・・・」
そこはすでに反応しかけていて、指が絡んだとたんに熱くなった。
カイブツは、何かを絞り出すように、下から上へやんわりとそれを撫でる。
やたらと体が敏感になっていて、優しい愛撫でもユノは声を発さずにはいられない。


「ユノ、感じてるんだね」
「うう・・・」
確かに反応しているけれど、改めて言われると羞恥心を覚える。
媚薬を飲んでしまったときほどではなくとも、熱が回るのが早かった。
カイブツは服が濡れるのも構わず体を密接にし、ユノの背中から心音がはっきりと伝わる。

触れられていないのに、同じ様に強くて早い。
カイブツがこの体に触る事で胸を高鳴らせているのだと思うと、ユノは完全に身を委ねたくなった。
自身のものが掌で包まれ、擦られると、また翼がはためく。
片手だけでなく両手が回され、触れていない個所などないように全体が包まれた。

「あ、あ・・・んん・・・っ」
両手が連動するように動くと、さらに感じるものが強くなる。
先端から液が流れて来てしまうと、カイブツの手はより流暢に動かされるようになった。
その感触が淫らで、いやらしくてたまらなくなる。
そんな恥ずかしい感情で気はどんどん昂っていって、カイブツに包まれているものも脈動していた。

「もう、出てきてるんだ」
カイブツが片手を離し、指についた液を見る。
そのとき、ふいにもう片方の手の動きも止まった。
刺激が一旦おさまり、ユノは息を吐く。
「・・・カイブツ?」
様子を伺うように首を動かすと、カイブツの指に自分の液体が絡みついているのが見えた。
恥ずかしくなって、とっさに正面を向く。

「ユノの液、前と違う。中に、銀色の粒子があるみたいだ」
「え・・・?」
もう一度振り返り、カイブツの指を見る。
照らされて光っているだけかと思ったけれど、液体の中には確かに他の輝きがあった。
「何だろう、栄養剤を飲んだからかな」
カイブツは、おもむろに液を口元へ近付け、舌先ですくい取る。
ユノは開いた口が塞がらなくなっていたけれど、カイブツは平然としていた。


「ん・・・これ、少し甘い感じがする。ユノも舐めてみる?」
目の前に、透明な液体が差し出される。
好奇心からおずおずと舌を触れさせると、えぐい匂いはなく、確かにさっきの甘露のような味がした。

「もっと欲しいな・・・ユノ、仰向けになって」
肩を押されて仰向けになり、穏やかな光を見上げる。
全身に光が当たって心地よさを感じたのもつかの間、下肢に柔らかなものが触れた。
「カ、カイブツ・・・っ」
思わず顔を上げると、カイブツがさっきまで手で触れていたものに舌を這わせているのが見えた。
止めようと手を伸ばすけれど、逆に掴まれ制される。


「痛くはしないから、寝転がってて」
これから何をされるのかうっすらと予測がついてしまったけど、カイブツの頼みは断れなかった。
ユノは頭を下ろし、また仰向けになる。
すると、とたんに柔らかな感触が下肢をなぞった。
「あ、ぅ・・・」
敏感な箇所を弄られ、驚いたようにユノの体が跳ねる。
はずみでわずかに液が溢れると、カイブツはすぐにそれを舐め取った。

「やっぱり甘いや・・・もっと、欲しいな」
刺激を与えて液を出させようと、カイブツは執拗に、ユノに舌で触れていく。
全体に這わせるように、下から上へゆっくりと動かすと、その身が震えて。
我慢できずに先端を舌先で舐めると、ユノがか細い声をあげた。
カイブツの欲求は、それだけではおさまらない。
弄っていただけの先端を自らの口内へ含み、軽く吸い上げた。

「や、ああ・・・っ」
さらに柔くて温かなものに包まれ、ユノは声を抑えきれなくなる。
唇でやんわりと食まれると、脳が痺れるような感覚にとらわれた。
カイブツが一旦口を離し、ユノを見る。
その頬は羞恥で完全に紅潮していて、カイブツの気を昂らせた。


「ユノ、気持ちいいんだ。嬉しいな、感じてくれて」
「だ、だって、そんないやらしいこと・・・」
口に出すのも恥ずかしくて、ユノは横を向く。
カイブツはおかしそうに笑い、また身を下げた。
気が高揚しているのはユノも同じようで、下肢は反応しきったままでいる。
カイブツは躊躇いなくそれの先端へ唇を寄せ、さっきより深くまで含んだ。

「あっ、や・・・ぁ・・・」
柔い感触に包まれて、思わず体が小刻みに震える。
カイブツは半分ほどを咥えたところで止まり、舌の平らな部分でやんわりと愛撫してゆく。
刺激に耐えられず液が零れると、すぐにすくい取り、迷わず嚥下した。
そうして喉を鳴らされると口内のものが吸われ、ユノの背筋を寒気にも似た感覚が走る。
身が震えたのを感じ、カイブツはさらに身を下げ、ユノのものを全て咥え込んだ。

「あぁ・・・っ!は・・・ぁ、ぅ・・・」
全体が包み込まれ、ユノに伝わる感覚はいっそう強いものになった。
もっと液を出させるよう、温かな口内でしきりになぶると、そのたびに体が跳ねる。
じらすように周りを愛撫すると、ユノは堪えるように足を曲げ、翼をはためかせた。
「や・・・ぅ・・・カイブツ・・・っ」
無意識のうちに、求めるように名前を呼ぶ。
それに応えるよう、カイブツは動きを大きくし、まんべんなく這わせていった。

「は・・・ユノ・・・」
たまに息を吐く合間にも舌は触れさせたままで、淫らな水音を鳴らす。
そして、ユノのものをきつく吸い上げたとたん、それの震えがひときわ強くなった。
「ふ、あぁ・・・っ、ん、ああ・・・!」
外だということも忘れて、ユノは声を上げて達していた。
下肢の昂りと連動するように翼が小さくはためいたとき、抑えようもない欲が解放されて。
銀の粒子が混じった液は、そのままカイブツの口内に収まった。
一滴も溢さないようカイブツが喉を鳴らし。
未だに含まれたままのものがまた吸い上げられ、敏感な体が強張った。

「カイブツ・・・っ、もう、離し・・・っ」
わずかに高い声で訴えると、カイブツがゆっくりと唇を離した。
最後の一口を飲み干し、息を吐く。
味の余韻に浸っているのか、カイブツは何かに酔いしれ、快感を覚えているようだった。


「美味しかったよ、ユノの・・・」
「い、言わなくていいから・・・それに、そんなの、全部飲んで・・・」
「でも、苦くないし、きつい匂いもないよ。ほら・・・」
カイブツがユノに覆い被さり、唇を塞ぐ。
まだ息が荒く口を閉じることができなくて、易々とカイブツの舌を受け入れていた。

「う・・・ん・・・」
さっき、自分のものが弄られていた舌が絡み合う。
液を飲み干したはずだけれど、きつい匂いはなく、むしろ甘美なものを感じていて。
それが、自分の液の味だと気付くと、頬がかっと熱くなった。
共有するように味あわせると、カイブツが絡まりを解く。

「ユノにくっついてたから、俺も濡れちゃったな」
そう呟くとカイブツは服を脱ぎ始め、あっという間に一糸纏わぬ姿になった。
突然の事に目を見開き、あまり直視しないよう顔を逸らす。
今更ながら照れている様子が面白くて、カイブツはユノのすぐ隣に寝転がった。

「乾くまで、こうしていようか」
カイブツは、自然な動作でユノの手を取り、間に指を滑り込ませる。
軽く握ると、ユノの心音がとくんと鳴った。
さっき恥ずかしいことをされたからか、どことなく緊張してしまう。
ちら、とカイブツを横目で見ると、何とも幸せそうに頬を緩ませてこっちを見ていた。
また、心音が鳴る。
ユノは視線を天井に戻し、カイブツの手をやんわりと握り返した。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!
せいかn・・・いや何でもないですすみません。
正直、どこで終わりにするか決めてません!ファンタジーなのでいろいろやらかしてみたいと思います。