ユガンダココロ12


「なあ、蓮、またネットで買ってほしいもんがあんだけど、注文してくれよ」
「お前、今週に入って何本目だ?まあ、いいけど」
依頼の合間に、島津はよくDVDを見るようになっていた。
以前は、かわいらしいキャラクターが惨殺されるアニメを見ることがほとんどだったけれど。
最近は、グロテスクなホラー映画や、蓮がとあるルートで仕入れた無修正映像なども購入している。
通販サイトのパスワードを教えると好き勝手されてしまうと、注文は全て蓮が請け負っていた。

「ほら、今日はこいつが届いてたぞ」
蓮は、表紙にも裏にも何も書かれていない、真っ黒なケースを渡す。
それは、明らかに普通のホラー映画などではなかった。
「そいつ、フツーじゃ手に入らないやつだよな?恩に着るぜ」
島津は目を爛々と光らせ、DVDを受け取る。

「なあ、凪、一緒に見ようぜ!」
意気揚々とした声に、凪は本を閉じる。
いいところだったけれど、続きはいつでも読める。

「いいよ。どっちの部屋に行く?」
「今回のはマジでやべーやつだから、オレの部屋行こうぜ!」
島津は待ちきれないのか、凪の腕をせかすように引く。
そのはしゃぎようは、まるで大きな子供に接しているようだった。


部屋に着くと、島津は早速デッキにDVDを入れる。
リモコンを取りボタンを操作すると、画面に真っ暗な映像が浮かんだ。
凪は床に座り、画面を見る。
電源が切られているのかと思ったけれど、そうではない。
暗闇は徐々に薄れて行き、いつも依頼をしているような殺風景な部屋が映し出された。

「これ、生半可な映画なんかじゃないぜ。蓮が特別に仕入れてくれたやつだしな」
島津は隙間を作らないよう凪の隣に座り、肩をひっつけた。
島津がよくDVDを見るようになったのも、凪と一緒に見たいからという理由が大きかった。
以前、人を捌いている様子を見た時、思った以上に興奮し、発情していた。
そして、凪と欲を抜き合ったときの快感が忘れられなくて。
DVDが届くと、必ず一緒に見るようになっていた。

興奮した島津に噛みつかれるおかげで、凪には傷跡が耐えず、今も首や腕には包帯が巻かれている。
それでも、凪は島津の誘いを断る事はなかった。
快感の最中に殺されても、別に構わない。
むしろ、それは自分に最高の悦楽を与えてくれるものだと薄々感じていた。


島津が早送りをすると、画面に人が表れる。
そこで再生ボタンを押し、通常の速度に戻した。
がたいの良い男が、部屋の中心に寝袋を投げ出す。
ジッパーを開けると、中から人が表れた。
目を見開き、必死に身をよじるが、ミイラのようにロープで体が縛られていて何もできないようだった。

大男が縛られている相手に馬乗りになり、体重をかける。
かなり重たいのか、呻き声が聞こえた。
そこで、大男が何かを告げたが、日本語ではないので内容はわからない。
それを言い終わると、ナイフをぎらつかせた。

下にいる男がしきりに何かを訴えたが、ナイフは眼球へと近付いていく。
眼前に迫る恐怖はよほどのものだろう、男が強く目を閉じる。
その瞬間、瞼にナイフの刃が突き刺さった。

演技ではない絶叫が、室内に響く。
音量を控えめにしていても、その苦痛が伝わってくるようだ。
大男は、何度も、何度も目へ刃を突き立てる。
回数が増えるたびにめり込む幅も深まり、ナイフが赤く染まっていく。
その様子は、まるで怨み言をぶつけているようだった。

この惨殺の背景には、どんな事情があるのだろうか。
ただの快楽殺人者とは思えず、凪は大男の背に悲しいものを垣間見ていた。
一方、島津はただ溢れ出る血と悲鳴に興奮しているようで、画面を凝視している。
B級ホラーの作りものではないと実感しているのか、凪が下肢をちらと見ると、もう反応していた。


「なあ、凪、またお前の手借りてもいいか?」
「・・・いいよ」
まだ映像が序盤にも関わらず、島津は抑えきれなくなったようだった。
いそいそとベルトを外し、恥ずかしげもなく下肢を曝す。
邪魔な布から出て来たそれは、自分で上を向いていた。

凪は、ややぎこちなく島津のものに掌を触れさせる。
すると、すぐに上から手が覆い被さり、凪の手と共に自身のものを擦った。

「ん・・・・・・は・・・」
掌の中で島津のものが熱を帯びて行き、凪はもう画面に集中できなくなる。
DVDを見る度に相手をして、噛みつかれて、傷が増えると蓮が良い顔をしない。
だから、こうして手だけを貸して、自慰を手助けするようになっていた。
実際、手は島津に動かされているのだから、一人でしても同じだと思っていたけれど。
他人の温もりがあると感じるものが違うのか、島津はこうして擦られることを望んでいた。


凪は、強く握り締めないようにしつつ、緩めすぎないようにしつつ、島津に動きを任せる。
動かさないと言っても、上へ下へ誘導されると、生々しい感触が鮮明に伝わってきてしまう。
血液が集中して熱くなる皮膚、凝固している固さ。
たまに指先が押し付けられると、そこが感じる箇所なのか、その身が震えた。
一時も手を離すことは許されず、島津が満足するまで何度も上下運動が繰り返される。
今更、嫌悪感はなかった、ただ気恥しかった。

「は・・・っ、ああ、やっぱ、イイな・・・」
それは映像に言っているのか、それとも自身を包む手に言っているのか。
島津の顔を見上げると、早々に恍惚が見て取れた。
ふいに、テレビから叫び声が聞こえて来て、凪は横目で画面を見る。
そこでは、大男がナイフを斧に持ち替え、今にも降り下ろそうとしているところだった。

島津の興奮はピークに達しているのか、手の動きが早くなる。
潤滑剤もない状態で皮膚が擦れ、痛んでしまうことなんて気にしていない。
ただ悦を求める、まるで獣のようだ。

画面では、斧が振り下ろされ、男の絶叫が途切れる。
一瞬で首が切断され、とたんにおびただしい量の血が溢れ出していた。

「っ、ア・・・!」
島津の声が、瞬間的に高くなる。
掌の中にあるものがかっと熱くなり、震えると、溜まった欲がその場に散布されていた。
高い温度とかすかな振動に、凪の頬も熱を持つ。
島津が脱力し、手が退けられると、すぐに掴んでいたものを離した。
まだ、掌には皮膚の感触が残っていて、少しだけ気が昂りそうになる。
けれど、そうなってしまうとまた襲われ、蓮に睨まれてしまうので、自制心で何とか抑えつけていた。


「凪・・・」
島津が凪の方へ腕を回し、引き寄せる。
欲は消化されたばかりなので、今の島津は安全だった。
抵抗することなく島津に向き合うと、見惚れるような眼差しが近付いて来る。
どんな異常者でも、達した後の表情はどこかおぼろげになっていて。
そんな様子を見ると、心音がかすかに反応していた。

眼差しが眼前まで迫り、凪は目を閉じる。
唇が押し付けられ、柔い感触を感じると感嘆の溜息が漏れた。
その隙間から、島津は遠慮なく舌を差し入れる。

「ん、う・・・」
すぐに舌が絡め取られ、凪が声にならない声を漏らす。
欲望が先行しているのではなく、ゆったりとした触れ合いに心地良さを感じていた。

少しでも深く繋がろうと、島津は舌を目一杯伸ばし、凪に触れる。
「は・・・ぁ・・・」
どちらともとれない吐息が混じり、お互いの胸の内を温める。
たまらなくなったのか、島津が凪の後頭部に手を添え、相手からも押し付けるように誘導した。

凪は応えるように、躊躇いを残しながらも口内で島津に触れる。
唾液と、肉の柔い感触に興奮しないよう心掛けていたけれど、流石に怪しくなってくる。
島津も気がおさまらなくなりそうなのか、舌の表面をなぞり、名残惜しそうに身を引いた。


解放され、凪は息を吐く。
島津とこういう行為をすると、指先まで温まるので好ましかった。
余韻に浸っていると、ふいに叫び声がこだまする。
DVDはまだ終わっておらず、画面には別の人物が映し出されていた。
それは、ちょうど床が血に染まる場面で、床には肉塊が転がっている。
島津は画面を凝視し、また興奮していた。

画面に集中している島津を見た凪は、もしやと思い下へ目をやる。
さっきから曝け出されたままのものは、再び精力を取り戻しつつあった。
島津が、凪に向き直る。
もう、悦に浸っている様子は感じられない。

「なあ、凪・・・やっぱ、お前を抱きたい。半端に抜いたんじゃダメみてーだし」
直接的な言葉に、凪は一瞬だけ鼓動が強まったのを感じる。
そこに恋愛感情など一かけらもなく、ただ欲望が発させている言葉だとわかっているのに。

「あー、でも、そうなったら噛み付くくらいじゃ済まねえよな。。
そうしたら、オレが蓮に殺されっかも」
「それは・・・嫌だな」
触れ合うだけで噛み付くのなら、それ以上のことをしたらバラバラにされるかもしれない。
だが、凪はそれを嫌だと言うのではなく、島津が咎められることが嫌だった。
島津が本能と理性の狭間で悩んでいるとき、ふいに部屋の扉が開いた。


「おい島津、DVDの代金だけどな」
部屋に入ってきた蓮は、島津の状態を見て一旦言葉を止める。
二人は、今更恥じらうことなく蓮を見た。
「相変わらずお盛んだな、程々にしておけよ」
邪魔をする気はないのか、蓮は用件も言わずに出て行こうとする。

「蓮、待ってくれよ、ちょっと協力してくれ」
「はっ、見苦しいもん出したまんま頼み事かよ」
「別にいいだろ。オレさ、凪を抱きたいんだけど、歯止め効かなくなるかもしれねえから、見といてくれねえか」
何の恥ずかしげもなく、堂々と島津が告げる。
凪は厚顔無恥な発言に目を丸くして、島津と蓮を交互に見た。

「そんなもん、気が済むまで自分でしとけ」
「それじゃあ解消されねえんだよ。それに、蓮だって凪のこと気に入ってんだろ?。
だったら、勃つかもしれねえじゃねえか」
島津の言葉に考えるものがあったのか、蓮は凪をじっと見る。

「凪、あんたはそれでもいいのか。島津に犯されるところを、俺に見られても」
胸の高鳴りが、言葉を詰まらせる。
けれど、それで島津が自分を殺し、蓮に咎められなくなるのなら、断る理由はなかった。


「・・・二人がそうしたいんなら、それでいい」
凪は自分の意志など毛頭なく、そう答えていた。
「わかった。島津の予測が実現するか、試してみるか」
蓮は座ったままの凪の背後にまわり、逃れられないようその身に両腕を回す。
体を自分の足の間に引き寄せ、下肢が反応を示せばすぐわかるようにした。

正面に島津が座り、凪のベルトを外しにかかる。
蓮に抱かれ、島津に犯されそうになっている状態に、恥じらいを覚えないわけではない。
大人しくしているのは、ただの好奇心だった。
島津と蓮がどんな反応をして、どんな痛みが与えられるのかを感じてみたかった。

「やっぱ、グロいやつじゃ反応しねえんだな」
島津が凪のズボンを下ろし、中心にあるものへ触れる。
凪はわずかに肩を震わせ、自身のものを見ないように顔を上げていた。
愛撫もなく、島津は早々に下肢の窪まりに手をやる。
そして、まとわりついている液ごと、指をその中へ挿し入れた。

「っ・・・ぁ・・・」
内側に異物感を覚え、凪が微細な声を漏らす。
瞬時に指が締め付けられたが、島津はお構い無しに根元まで埋めていった。

さっきより高い声が出そうになり、凪は唇を噛む。
相手が二人いるからか、羞恥心が言葉を封じ込めていた。
中で指が動かされると、声の代わりに体が震える。


「おい、いつまでも堪てんなよ。あんたの声に反応するか、試してみたい」
蓮の指が凪の口元をなぞり、唇を割ろうとする。
口が薄く開かれると、すぐに二本の指が入り込み、舌をいじった。

「は・・・っ・・・」
呼気が解放され、凪は息を吐く。
細い指先は表面を撫で、舌を挟み、淫猥な水音をたてる。
その最中に、島津は窪みへの指を増やし、一気に奥まで押し入れた。
「あぁ・・・っ!」
急激に強まった刺激に、凪は思わず声を上げた。
自分の声に羞恥が沸き上がり、口を閉じようとする。

「おっと、食いちぎらないでくれよ。人肉は嫌だろ?」
蓮が舌を撫で、閉口させないように阻む。
人の肌が歯に当たり、凪は怯んだように口を開いたままでいた。
先に島津が出した液が潤滑剤になり、人差し指も難なく埋まる。
早く解してしまいたいのか、二本の指は凪の中を掻き回した。

「あ、ぁ、ぅ・・・」
どうしようもない声が出てしまって、島津の顔を直視できず俯きがちになった。
自分の中の、奥深くで動かされ、全身に熱が上っていく。
触れられていないはずの、敏感な箇所にも。

「あー、何かヤバい・・・もう、オレのギンギンになってんだけど」
凪の声に反応しているのか、島津の昂りはDVDを見ていたときの比ではなかった。
先端から焦るように液が漏れ、刺激を欲している。

「島津、噛み付くなよ。まだ首の傷が治ってないからな」
蓮の手が、凪の首元に添えられる。
力が込められるかと期待したけれど、指先が首筋をなぞっただけだった。
それでも、背筋に寒気を感じ、凪の気を高揚させた。


「凪、もう、いいか?」
「・・・ああ」
何がどうなったらいいのかわからなかったけれど、一応肯定する。
島津が指を引き抜くと、急に刺激がなくなって窪みが縮まった。
同時に口内にある蓮の指も抜かれ、やっと口を閉じる。
ところどころ泡立った液体が卑猥に見えたけれど、蓮はさして気にしていないようだった。

「お前とさ、こういうことしてみたかったんだよ。死体相手じゃあ、イけなかったしな」
気違いじみたことを言われたけれど、もはや嫌悪する事はなかった。
島津が腰を落とし、指を入れていた窪みに自身をあてがう。
凪は一瞬身を固くしたが、島津のものが強張る箇所を押し広げた。

「うあ・・・!」
島津が入り込んで来た瞬間、下半身から身を裂かれてしまうような錯覚に捕らわれた。
解されたとはいえ、あまりにも大きさの違うものに圧迫され、鋭い痛みに襲われる。
悲鳴に近い声にも構わず、島津はさらに腰を落とし、凪の中を広げて行く。

「あ、うう・・・っ・・・!」
体が痛みだけに集中してしまい、顔をしかめる。
必死に収縮して阻もうとするけれど無駄な抵抗で、固いものを締め付けると、逆に感じるものが増した。

「すげー、イイな・・・性感帯、全部犯されてる感じ」
締め付けられることに快感を覚えているのか、島津が酔いしれるように言う。
一方で、ナイフで切られたときとも、首を絞められたときとも違う痛みに、凪は苦痛を覚えていた。


「この痛みはきついのか。少し、気を散らしてやるよ」
蓮が耳元で囁き、そこへ舌を這わす。
ほどほどの刺激では掻き消えてしまうと、その中へ柔い感触を与えていった。

「ひ、や・・・」
下肢以外の箇所にも触れられ、身震いする。
動かされると液の音が直に聞こえ、背筋が寒くなった。
蓮が息をするとその呼気も届き、連動するように息が熱くなる。
寒気と熱の感覚が痛みを緩和したのか、少しだけ苦痛が引いていた。
そうして収縮が一瞬止んだとき、島津はさらに自身を押し入れる。

「ああっ・・・!あ、あ・・・!」
奥へ押し込まれるほど悦の感覚が強まって、声を抑える事を忘れてしまう。
最初は痛んでいた窪みも、今は相手を受け入れていた。
島津は凪を最奥まで犯し、下腹部を触れ合わせる。
少しでも動くと全体が圧迫され、お互いに熱を帯びた吐息を吐いていた。


「は・・・あったけーし、やわらけーし、何か・・・何か、すげー、イイ・・・」
「語彙力のない奴だな」
「仕方ねーだろ、今、凪に夢中になってんだからよ・・・」
喜ばしい言葉が告げられても、凪は反応する余裕がない。
島津はよほど感じているのか、全てを埋めたまま制止していた。

「凪、気持ち良いか」
冷静な声に問われ、恥じらいつつも何とか頷く。
男のものを完全に咥え込み、体は確かに悦を覚えていた。

「なら、もっと良くしてやるよ。島津に壊される前にな」
蓮の手が凪の下肢に伸ばされ、起ちきっているものに添えられる。
「れ、蓮・・・」
さっきまで含んでいた指の液が、敏感な個所につく。
蓮は躊躇いなく凪のものを握り、上下に揺さぶった。

「や、あ、あぁ・・・っ」
新たな刺激に凪の体が跳ね、窪みが収縮して島津のものを締める。
「ああ、イイな・・・もっと圧迫してもいいんだぜ」
さらなる快感を求めて、島津が動き始める。
一旦身が引かれると、まるで引き留めるように中が縮こまった。
そこから再び最奥へと進められ、そうして入れられるときにはひときわ強い感覚に襲われた。
そのタイミングで、蓮は硬度のある下肢のものをさらに擦った。

「あ、ああ・・・っ、は、う、あ・・・」
凪は、声を抑えることも忘れて喘いでいた。
「凪・・・」
呼びかけられ、薄目を開いて島津を見る。
完全に頬が紅潮していて、目がまどろんでいて、悦楽に浸っていて。
その表情からは、一切の狂気が消えていた。

「し、まづ・・・」
凪の手が、島津の背に回る。
普通の人と同じ、純粋な欲望を覚えている相手を求めるように。
たまらなくなったのか、島津の動きが早くなった。

わずかに身を引き、押し進め、最奥を突き上げる。
奥を暴かれる度に、脳が犯され痺れていくようで、凪はびくりと体を震わせる。
蓮の手もひっきりなしに動き続け、下肢のものはとっくに熱い。

そのまま、自分の体が貫かれて、血にまみれてしまってもいいと思う。
けれど、その前に体は耐えきれなくなった。
もう達させてしまうように、島津の動きが大きくなり、ぎりぎりまで引き、一気に奥まで突き上げる。
あまりの衝撃で凪の顔が逸らされた瞬間、蓮は精を絞り出すように凪のものを強く握った。

「あ、う、あ、あぁ・・・っ、あ・・・!」
裏返った声が惜しみなく発され、瞬間的に凪の全身が強張る。
蓮に包まれている下肢が脈打ち、吐精する。
同時に、窪みは今まで以上に強く、しきりに島津のものを締め付けた。

「凪・・・っ、ア・・・!」
最後の最後まで、島津は凪の最奥でその圧迫を感じていて。
体を震わせると、そのまま凪の中で達した。

「あ、ぁ・・・」
自分の奥に粘液質なものが流れ込み、独特な感覚に身震いする。
島津の精が注がれたと気付いていたけれど、体はそれを受け入れていた。
少しずつ、島津のものが抜かれていく。
達した後の内部は敏感になっていて、引かれるときにも微かな声が出てしまう。
異物感が完全になくなると、緩んだ箇所を引き締めるように身が縮こまった。


「凪・・・すげー、気持ち良かった・・・」
島津が凪に身を寄せ、口を塞ぐ。
唇から高まった体温が伝わり、凪は安らぐように目を閉じていた。
「終わったんなら俺はもう行くぞ。残念ながら、反応しなかったみたいだしな」
島津が離れると、蓮がそっけなく言って立ち上がる。
性行為の場面を目の前にしても、平静を保っていることに凪は驚いた。

「これでもダメなのかよ。バイアグラでも飲めばいいんじゃねえか」
「それで、今の光景を思い出して自慰でもしてろってか、面倒なだけだ」
そこで、蓮はもしかしたら興奮しない病気なのではないかと、凪は感じ取っていた。
背を預けている最中、蓮の様子はずっと変わりようがなかった。
無関心を装い、冷静でいるのは、そんな要因があるからかもしれない。
人の欲求の一つを感じられないことは虚しいことだと、凪は心配するように蓮を見ていた。
視線に気づいたのか、部屋を出て行こうとしていた蓮が振り返る。

「まあ、あんたの声や息遣い、悪くなかったぜ。気道を塞ぐのが勿体なく思えるほどにな」
素直な誉め言葉に、凪は目を丸くする。
そう言ってくれるのなら、自分が積極的になれば、蓮を感じさせられるだろうか。
そのとき、凪はいつも平坦な蓮の表情を崩してみたいと、そんなことを思っていた。
大胆なことを考えてしまうのは、欲望の余韻が残っているせいに違いなかった。




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!。
まさかの番外編、たまにこういうこと書きたくなる周期が来て仕方がない時があるのですという言い訳←。
とってつけたような話なので、連番になっていますが番外編と言う形にしました。