ユガンダココロ13


凪は、島津と一緒にあるものを買いに街へ出かけていた。
一人では店に入ることも恥ずかしかったけれど、島津は普段通りだった。
使うのなら強いやつのほうがいいということで、お勧めのものを購入する。
それは、一見チロルチョコのように見えたけれど。
成分表を見ると、明らかにお菓子には使われていない物がずらりと並んでいた。

「島津は、こういうものを使った事あるのか?」
「ああ。でも、使ったら全然おさまらなくなってよ、擦れて流血沙汰になってやっと止まった。オレ、ただでさえ性欲強いからな」
急所から出血するところなんて、想像するだけでぞっとした。

けれど、それだけのものなら蓮にも変化があるかもしれない。
ただ、問題はどうやって食べさせるかだった。
いきなりチョコレートを食べてくれと言って、素直に口にしてくれるだろうか。
包装紙はあまり見かけない柄なので、疑われる可能性は高かった。


「それにしても、お前そんなに蓮としたいのか?ムラムラしてんだったら、俺が相手になるけど」
「むらむらはしてないけど・・・蓮のことを、たまには楽しませてあげたい。。
僕がこうして島津と一緒に人を捌けるのも、蓮のおかげだから」
凪は、二人と出会ったときの事を思い出す。
もし、蓮がこの仕事を紹介してくれなかったら、今頃独房の中にいたか、両親の後を追っていたかもしれない。
自分の身を可愛く思えないのは相変わらずだけれど、二人と居る事は楽しかった。
だから、蓮にも満足感を覚えてほしくて、自分に出来る事といえば、身を委ねることしかなかった。

「何とか食べてほしいんだけど、良い方法がないかな・・・」
「んー、パソコン使うときコーヒー飲むし、砂糖の代わりに入れてやったらどうだ?。
集中してると、案外気付かねえんじゃねーか?」
「そうだな・・・やってみるよ」
どんな味になるのかわからないけれど、一粒目はそれで試してみる事にした。




帰宅すると、ちょうど蓮が高速でタイピングをしていた。
かなり集中しているのか、瞬きするのも惜しいくらい画面を凝視している。
凪が静かに歩み寄り、ちらとコーヒーカップの中を見ると、中身はすでに空になっていた。

「蓮、コーヒーのおかわり淹れてこようか?」
「ああ、頼む」
思いの他スムーズに事が進み、凪はカップをキッチンへ持って行った。

コーヒーを淹れている間に、チョコレートを湯煎で溶かし始める。
ほどなくすると、特別嫌な匂いがすることもなく、普通に液体状になった。
ブラックコーヒーに流し入れ、匂いを嗅いでみるけれど特に異臭は感じられない。
スプーンで混ぜるついでに一口すくって飲んでみても、おかしなところはなかった。
うまくいきそうだと安心し、残りの一粒は溶けないように冷蔵庫に入れておき、部屋に戻った。


「蓮、お待たせ」
部屋に入ると、さりげなくパソコンの隣にカップを置く。
「ああ、ありがとな」
蓮はすぐにカップを取り、中身を飲んだ。
凪は少し離れた所に座り、変化を待った。
特に会話もなく、タイピングの音だけが聞こえる。
ちらちらと蓮を見ても、顔色一つ変えていなかった。

「暇なら、島津とアニメでも見てきたらどうだ。あれなら、あいつも欲情しないだろ」
「ん・・・そうだな、そうする」
あまりじろじろ見ても不自然に思われるので、ひとまず部屋を出る。
そういえば、どの程度で効果が表れるのか書かれていなかった。
とりあえず大人しく待つしかないと、静かに読書をして時間を過ごした。




夢中になっているとあっという間に夜になり、そろそろ瞼が重たくなってくる。
入浴後も、限界が来るまで続きを読もうとベッドに寝転がった。
そのとき、ドアがノックされることもなく開き、凪は顔を上げた。

「凪、お前、コーヒーにこれ入れただろ」
入って来るなり、蓮がチョコレートを突き付けて問いただす。
「・・・入れた。僕が蓮にできることは、それくらいしかないから」
「恩返しのつもりか?」
凪が素直に頷くと、蓮がベッドに乗り上げた。

「それで、欲望の解消に使われてもいい、か。・・・まあ、責任は取ってもらうぜ、俺の部屋に来な」
黙ったまま、凪は蓮の後を着いて行った。


蓮に続いて部屋に入った時、凪はベッドの上を見て目を見開いた。
枕元に置いてあるボックスティッシュ、瓶に入った透明な液体。
スイッチに紐がとボールがついている機械、指にも見える細長いものが散乱している。

「俺は、島津みたいに単純にやるだけじゃないぜ」
蓮が凪の腕を引き、ベッドの前へ誘導する。
凪は初めて見るものに少し戸惑っていたが、散乱している物を避けて座った。
続けて蓮もベッドに乗り上げ、真正面に座る。
どこか雰囲気の違いを感じ、凪は後ろ手をついて体を逸らしたが、さっと引き寄せられた。

「こいつに即効性はないが、後々効いてくるだろ」
蓮がチョコレートの包みを開け、口へ入れる。
そして、すぐさま凪に唇を押し付けた。

「ん・・・!」
重なった瞬間に柔いものを感じて、反射的に隙間が開かれる。
そこから、蓮の舌だけでなく、甘い物が一緒に入り込んだ。
突然感じた固形物に怯み、凪は舌を引こうとする。
けれど、その前に蓮によって引き寄せられ、甘い物が舌に触れた。

「う・・・」
二つの舌の間で、じわじわとチョコレートが溶けていく。
蓮の唾液と入り混じった液体が口内に広がり、零れない内に飲み込む。
喉を鳴らすと甘味が通り過ぎ、香りが鼻をくすぐった。
ただのチョコレートにしか思えず、本当に効果があるのか疑いたくなる。
あまり無駄な動きはせず、全て飲み終えたところで、蓮が口を離した。


「甘味に騙されるなよ。俺のがこうなるくらいだしな」
蓮が凪の手を取り、自分の下肢へ誘う。
掌が中心に触れると固い物が当たり、はっとして蓮を見た。
今の今まで、全く反応を見せなかったものがはっきりと感じられる。

「あんたもいずれこうなる。でも、悠長に待ってやれるほど余裕はないんでね」
蓮が、凪の服に手をかける。
もう眠るだけだったので楽な服装をしており、一枚取るだけで上半身が露わになった。
続けてズボンと下着も取り去ると、凪は何も身につけていない状態になった。

「もう傷は直ってるみたいだな」
蓮の指先が、凪の首筋をなぞる。
そのまま押し付けてほしかったけれど、指はすぐに離れた。

「けど、今日首締めはなしだ。簡単にいってたら身が持たなくなる」
「・・・わかった」
いつもと違うことになると察し、自分の身がどうなるのか、どうされるのか不安でもありながら期待もする。
凪がベッドに仰向けになると、蓮が瓶の液体を掌に垂らした。
それを、人差し指のような細いものに塗ると、凪の窪みにも液をまとわりつかせた。
粘液質な感触に驚き、一瞬体が震える。
外側がしっとりと濡れると、蓮が凪の片足を持ち上げた。


「最初は、少し慣らしてやるよ」
足を持ち上げたまま、蓮が液で濡れた器具を凪の窪みに埋めた。
「うぁ・・・っ」
液体と共に、無機質な物が入り込む。
途中にある丸みを帯びた起伏が内壁を刺激し、いつもと違う奇妙な感触を与えた。
潤滑剤で滑りが良くなり、器具は簡単に奥まで入る。
その分刺激も少なくなっているのか、凪はただ息を吐いていた。

もう進まなくなったところで、ふいにカチリという音がする。
そのとたん、中の器具の先端が上下に動き始めた。
「あ・・・っ・・・!?」
奥へ入って来るだけではない、予想外の動きをされて凪は目を見開く。
自分の中でうごめくものが内壁に当たると、熱い感覚が下肢に集中していった。

動きを止めようと収縮するけれど、とても止められなくて。
わずかに引かれると別の場所も解され、徐々に窪みが緩む。
ゆったりとした動きだったが、その先端がある箇所に触れたとたん、凪の体がびくりと跳ねた。

「あ、や・・・っ、そこは・・・」
ひときわ敏感な個所に当てられると、とたんに声が上ずってしまう。
「ああ、あんたはここが良いんだったな」
あまり刺激を加えることなく、器具を引き抜く。
中途半端に解された箇所は、触れ合いを求めるように疼いていた。


「それ・・・もしかして、今日の為に買って来たのか・・・」
「いや、昔、俺が使ってたやつだ。俺にだって思春期はあったし、性欲だってあった」
凪は顔を上げて、今しがた抜かれた器具を見る。
それが、以前に蓮の中にも入っていたのだと思うと、淫らな想像をしてしまいそうになった。

「けど、何の前触れもなく勃たなくなった。。
精力強壮剤を使えば何とかなったが、無理矢理自分を慰めるなんて面倒で、虚しかったな」
昔を回顧しているのか、蓮はいつもより饒舌だった。

「人の三大欲求の一つを失ったんだ、色んな事に無関心になって、刺激を求め続けたのがこの結果だ。。
ま、飽きのこないホラー映像を見続けてる感じだな」
初めて知った蓮の過去に、凪は確かな人間性を感じ取っていた。
滅多に表情を変えない、無感動で無関心な蓮が、たまに無機物に見えるときがあった。
けれど、島津と同じく蓮もそうなってしまった理由があった。
生まれついた時から残酷なわけではなかったのだと思うと、共感性が生まれる。


「さてと、おしゃべりはここまでだ。次はこいつを使うぜ」
蓮は細い器具をベッドの外へ放り、紐の先に玉が付いたものを手にする。
見ただけでは、何をするものなのか見当がつかなかった。
首を上げているのが辛くなってきて、凪は天井を見上げる。
濡れたままの窪みに球体があてがわれ、中へ埋められた。

「う・・・」
途中で出ないよう、蓮が球体を奥へと入れる。
反射的に内壁が縮んだが、あまり大きくもないので体は楽だった。
その球体は、ひときわ感じ易い箇所の近くで止まり、指が抜かれる。
そこで、またカチリと音がすると、中の球体が振動した。

「あ、っ・・・ぅ・・・」
まるで、携帯のバイブのような、弱弱しい振動が中に伝わる。
感じ易い箇所にあるせいで、裏返った声を上げるほどではないけれど、閉口していられるほどでもない。
じわじわと与えられる感覚には、どこか心地良いものがあったが。
蓮が器具のスイッチを操作すると、振動が強まった。

「う、あ・・・ぁっ」
微かにモーターの音が聞こえてくるようになり、震えが早くなる。
流石に体が反応して、凪は足をよじった。
いくら抵抗しようとしても、奥に入り込んでいるものは出てこない。


「おっと、あんまり動くなよ。位置がずれる」
蓮が凪の足を抑えつけると、反発することもなく大人しくベッドに下ろされる。
そして、蓮がもう一度スイッチを押すと、振動がさらに増した。

「や・・・っ、ああ・・・!ぁ、あ、っ、あ・・・!」
音が大きくなった瞬間、急激に刺激が強まり、声を抑制できなくなっていた。
さっきまでの微細な動きではなく、中で球体が暴れている。
そこが収縮するとさらに振動が伝わってきてしまい、連動するように体が小刻みに跳ねた。

あまりの衝撃に、取り出してしまいたくなって手を伸ばす。
その前に、蓮が器具の電源を切った。
一気に力が抜け、凪は肩で息をする。

「かなり良いみたいだな、触らなくても十分だ」
次々に変化する感覚に、凪の下肢は熱を帯び、反応し切っていた。
溜まった欲を解放させてほしいと思うけれど、そこには触れられない。
蓮も服がきつくなっているのか、上着も肌着も脱ぎ、下半身の服も躊躇いなく取り去る。
その体には無駄な肉がついておらず、なおかつ痩せすぎでもない。
好意をした事はあっても素肌を見た事はなくて、凪は均衡のとれた体に一時の間見惚れていた。
やがて、その肌が重ね合わされるのだと思うと、胸が熱くなる。


「いきなり後ろに入れると、あんたの体がもたなくなるだろうな。一回目は、こっちを使わせてもらうぜ」
蓮が凪の上に馬乗りになると、同じように反応しているものが目に入る。
それは徐々に顔へ近付き、口元に触れた。

何も言われなくとも、どうすべきなのか察する。
見た目はグロテスクだけれど、蓮のものだと思うと嫌悪感はなかった。
おずおずと口を開くと、先端が中へと含まれた。

固くなっているものが、口内を侵食する。
顎が少しも閉じられないようになり、呼吸はできるが息苦しかった。
半分ほど進んだところで、一旦止まる。

「ほら、舌を動かしてみな」
言われるがままに、凪は舌で蓮のものに触れた。
尻込みしつつも、先端からゆっくりとなぞっていく。
特別な箇所の感触は強張った筋肉のようで、そこに溜まった熱が逆に口内を暖めていた。
何度も単純な愛撫を繰り返すと、蓮が少しずつ腰を前後に動かし始める。

「ぅ・・・ん」
相手からも舌に触れるようになると、口内から犯されているような感覚にとらわれる。
いつの間にか目が虚ろになり、羞恥心が麻痺してきていた。


「良い顔してるな、もっと奥まで咥えてみな」
蓮が腰を落とし、さらに深くまで身を進める。

「んん・・・っ」
喉を突かれそうになり、わずかに呻く。
ぎりぎりのところで引かれたが、また奥まで迫ってくる。
達させるまで解放されないようで、凪は狭くなった口内で何とか蓮のものに触れ続けた。

そうしていると、だんだんと蓮の息遣いが早まる。
上目遣いで見上げると、平静な表情に変化が表れていた。
悦が口端を緩ませているのか、蓮が微かに笑みを見せている。
興奮している、そんな表情を目の当たりにした瞬間、凪の心音が高鳴った。


「そろそろ、あんたも良くしてやるよ・・・」
蓮が、凪の中に入ったままの器具のスイッチを点ける。
出力を最大にすると、振動が一気に体を襲った。
「ん、んん・・・っ!」
内部で再び球体が暴れだし、呻かずにはいられなくなる。
声を発したくても、口内は完全に塞がれていて、満足に息さえ吐けなかった。

「っ・・・もうやばいな、一回イくか」
抜き差しするたびに凪に淫らな感触を与えると共に、蓮も同じものを感じている。
さっきからひっきりなしに動いているので、限界が近かった。
弱い箇所で球体が振動し続け、凪の先端から液体が流れ出す。
その液ごと、蓮は凪のものを掴み、上下に擦った。

「んん・・・っ!は、あ、ああ・・・!」
凪の体が強張った瞬間、蓮が自身を引き抜く。
解放された声はひときわ高く、抑制を忘れていた。

「ッ・・・」
蓮が微かに呻き、一瞬だけ吐息を吐く。
凪が吐精するとほぼ同時に、蓮のものからも白濁が吹き出ていた。
それは傍にある凪の顔にかかり、粘液質な感触を与える。
独特な匂いがしたが、凪は達したばかりで余計なことは考えられなかった。

窪みが球体の動きを止めようと、必死に収縮する。
けれど、一向に振動は収まらず、まだ弱い箇所で震えていた。

「れ、蓮っ、もう、止めてほしい・・・っ!」
達したばかりの体は敏感になっていて、さっきまでと反応がまるで違う。
シーツを握りしめて堪えようとするが、このままだと気がおかしくなりそうだった。
「ああ、悪い」
蓮がスイッチを切ると、音が止む。
窪みから出ている紐を引いて取り出すときも、凪はか細い声を発した。


やっと刺激がなくなり、全身から力が抜ける。
そこで、顔にかかっている白濁の匂いが鼻につき、わずかに顔をしかめた。

「へえ、顔射もなかなかいやらしいもんだ。今拭いてやるよ」
蓮が凪に顔を近付け、舌を伸ばして液を拭う。
そうして頬を拭くと、喉を鳴らして自分の精を嚥下した。
もう感じることはないと思っていた味に、高揚を覚える。
口元についている液へも舌を伸ばすと、そのまま凪の唇を割り、中へ流し込んだ。

「は・・・」
息を整えている最中に舌が入ってきて、熱を逃すことができなくなる。
同時に苦味も感じ、吐き出さないように奥まで落ちてきて。
それが蓮の精液だと気付くと、また気分が昂るようだった。

凪もそれを飲み込むと、唇は離される。
お互いに達したのだから、これで行為は終わると思っていた。
けれど、ふいに蓮の下肢を見たとき、欲を解放したばかりのものは硬直したままだった。
視線に気付き、蓮が口元に笑みを浮かべる。

「強壮剤を使ったんだ、たった一回じゃあ終わらない。それは、あんたも同じはずだ」 。
「っ・・・」
蓮が凪の下肢へ手をやり軽く触れると、未だに反応があった。
まるで、先の愛撫だけでは足りないと言うように。

「けど、まだ完全には効いてないみたいだから、こいつを使わせてもらうか」
散らばっている物の中から、蓮がシリコン製のリングを摘まむ。
凪が不思議そうに見ていると、起立している下肢の根本に輪がはめられた。
きつくもなく、緩くもないものに何の意味があるのか、そのときはまだわからなかった。


「前座は終わりだ、もう手加減しないぜ」
蓮が瓶の液体を自身の昂りにかけ、凪の足の隙間にも垂らす。
空になった瓶を床に放ると、凪の足を開けて固いものをあてがった。
わずかに腰が引けたが、拒むまでには至らず、蓮の先端を受け入れた。

「い、あ・・・っ」
潤滑剤があっても、やはり最初は痛みを覚える。
一旦は縮こまったものの先の行為で緩んでいて、割けるほどの衝撃はなかった。
擦り切れるような摩擦もなく、徐々に蓮の身が奥へと沈んで行く。

「あ、あぁ・・・」
自分の内側で熱が混じり合い、圧迫される。
艶かしい液体と反発してくる肌の感触は、凪の気を高揚させるのに十分だった。
蓮が最奥まで辿り着き動きを止めると、内壁が抵抗するように収縮した。

「っ、あんたの中、本当に敏感だな。もっと遠慮なく締め付けてもいいんだぜ」
「そんなこと言われても・・・っ、ああ・・・」
抑制を外すよう、蓮がゆったりと動き始める。
器具よりもだいぶ太いものに擦られ、悦を感じずにはいられなくなる。
それは下肢の中心にあるものにも伝わっていったが、凪は違和感を覚えた。
はめられた輪がきつくなり、根元で熱が留められている。


「それはな、簡単に達させないようにする抑制器具だ。同じペースでやってたら、あんたを壊しかねない」
気遣いをされ、凪は少し嬉しくなる。
けれど、この輪はできれば今すぐにでも取ってほしかった。
蓮の動きが、徐々に早くなる。
中を往復されるたびに感じるものが強くなって、凪は荒く息を吐いた。

「は・・・っ、あ、あぁ・・・」
身を引いたものが再び奥を突くと、脳が痺れるような感覚に捕らわれる。
それは絶頂が近いことを示していたけれど、きつく締まる輪に阻まれていた。
全体的に欲が溜まっているのに、吐き出す事が出来ない。

「蓮・・・っ、もう、取ってほしい・・・っ」
「駄目だ。そもそもあんたが仕掛けた事だろ、最後まで付き合いな」
そう言われて、凪は言葉に詰まった。
これは、自分の体力を保たせるためなのだと言い聞かせ、何とか堪える。
それでも、蓮が奥の方で小刻みに動き、何度も突かれると、それに合わせて体が跳ねた。

「や、あ・・・!っ、う・・・」
たまらず、下腹部に力が入り、蓮のものの全体を圧迫する。
「ッ・・・」
強みを増した収縮に耐えきれなくなったのか、蓮が小さく声を発した。
そして、動きがぴたと止まったとき、粘り気を帯びた液が注ぎ込まれた。


「あ・・・あ・・・」
独特で淫猥な感触が自分の中に広がり、凪は身震いする。
それを発したものは脈動し、やがて静かになった。
蓮が慎重に身を引くと、引き留めるように窪みが縮む。
異物感がなくなったが、奥に注がれた液を出すことはできない。
達し切れていないもどかしさを感じているのか、しきりに疼いていた。

「蓮・・・」
虚ろな眼差しのまま、訴えるように名前を呼ぶ。
「物欲しそうな目だな。足腰立たなくなるまで突き上げて、何も考えられなくさせてほしいか」
凪は、小さく頷く。
薬が効いてきているのか、満たされない欲求のせいか、それともいつものことか。
この先、自分の身がどうなるかなんて考えられず、本能しか働いていなかった。


「・・・僕は、蓮を悦ばせるためにやったんだ。。
たとえ、腹を突き破られたっていい。・・・好きなように、してほしい」
理性が掻き消えた言葉に、蓮が凪を凝視する。

「あんた、度胸は一人前になったもんだな。誘いかけた事、後悔するなよ」
もう気が昂ったのか、蓮が今一度凪の窪みへ自身をあてがう。
腰を落とすと痛みもなく埋められ、一気に奥まで突き上げた。

「ああ・・・!あ、うう、ぁ・・・」
急激に侵食され、声を抑える余裕などなく体を弓なりに逸らす。
蓮が動くと、先に溜まった液体が絡まり、淫猥な音を立てる。
いやらしい音に、いつもなら羞恥心が湧き上がってくるところだけれど、今は構っていられない。
ただ、悦を増し、達してしまいたいと思うばかりで、蓮の背に腕を回す。
求められていることに高揚したのか、蓮は容赦なく自身を前後に動かし、凪の中を掻き乱した。

「ひ、あ、あぁ・・・!」
悲鳴に近い声が発されても、蓮は動きを止めない。
揺り動かされて悦楽を感じても、輪がきつく締まって欲がそこで留められる。
耐えるように蓮にしがみつくけれど、一向に納まりがつかない。

「もう効いてきた頃か。取ってやるよ」
自身を動かしながら、凪にはまっている輪を外す。
そして、同時に身をぎりぎりまで引き、一気に最奥へと突いた。

「や、う、ああぁ・・・っ!」
抑制器具が外され、欲を押し留めるものがなくなる。
二度、三度と、大きく身が動かされると、とても耐えきれなくなった。
窪みは、早く強く収縮運動を繰り返し、蓮を激しく締め付け。
ようやく解放された昂りは悦ぶように震え、濃い白濁を散布させていた。

「まだ、結構余力あるみたいだな・・・ッ、は・・・」
きつく締めあげられ、蓮が呻く。
薬の効果で高揚しきっているものは、収縮が納まる前に精を吐き出した。
身が半分ほど埋まっているところで解放され、凪の中を濡らす。
一滴残らず流し入れたところで、身を抜いた。

「んん・・・・・・」
圧迫感がなくなると、緩みを戻そうと窪みが縮む。
そのとき、生温かいものが内壁を通り、中から蓮の液が零れ落ちた。
卑猥な感触を残したまま凪は脱力し、大きく息を吐く。


「熱いな・・・あんたの体も、俺の指先も」
蓮が、凪の頬に掌を添える。
いつも冷たい手はお互いの体温で温まっていて、凪は微かに微笑んだ。
自分の体を使うことで蓮に温もりを与えられるのなら、どんなに手荒に扱われても構わなかった。
蓮と、島津と共に居ることでしか、生の意味を見出せない。
行きすぎた献身的な考えは、二人に依存している事を示していた。

「もう完全に効いてるな。解放してやったばかりなのに、あんたのもまだ固い」
蓮が、勃ったままでいる凪のものをやんわりと握る。
「う・・・」
凪はわずかに身をよじったが、蓮の背に回した腕は解かなかった。

「どっちかが枯渇するまで続けるぞ。案外、俺の方が先にバテるかもな」
「こ、枯渇するまで・・・」
一体どこまでされてしまうのか、予測もつかない。
けれど、凪はそれ以上何も言わず蓮を軽く引き寄せた。
最後の最後まで身を委ねたままでいたいと、そう主張するように。
凪の意思を読み取ったのか、蓮が口端を上げて笑う。

「全部注ぎ込んでやるよ、お前の中にな・・・」




―後書き―
読んでいただきありがとうございました!。
二話分のボリュームで全てがいかがわしい・・・pixivで高ぶってしまって、つい←。
この連載の雰囲気はダークで、多少無茶なことをやらせても違和感がないので。
歯止めがきかなかったという。