ヘタリア 番外日本編#4(日攻めver)

―微妙ではなくなった関係―


風呂から上がり、菊さんが用意してくれた楽な寝具に着替えているときも
すでに布団が敷かれている寝室へ移動するときも
僕はずっと緊張していた

これから、菊さんに触れる
さっき触れた以上に、密接に
そのことを想像するだけで、僕は狼狽してしまいそうだった
いよいよ寝室への襖が開かれようとしたとき、すでに僕の心音は緊張で高鳴ってしまっていた


「緊張していますか?」
「え、あ、ええ、まあ」
ふいにそう尋ねられ、僕はしどろもどろになった
その後、「大丈夫です」と答えたが、とても大丈夫には見えなかったと思う
僕のそんな様子がおかしかったのか、菊さんはくすりと笑って襖を開いた


襖の奥に敷かれている布団は、一組だけだった
それを見て、ここで行為をするのだと思った瞬間、僕は不安感にとらわれた
今からこんなに緊張していて、はたして僕にそんな行為ができるのだろうかと
こんなことでは、菊さんを満足なんてさせられないのではないかと
僕は、そんな懸念で一杯だった
そのせいか、菊さんが布団に寝転がったとき、僕も並んで横になってしまった

「あ、す、すみません」
行為を先行する者が相手を見下ろす形でいなければならないのに、
のうのうと横になってしまった僕は慌てて起き上がろうとした
しかし、体を起こしている最中に、菊さんが僕の肩を押さえた

「いいですよ。リンセイ君は寝ていて下さい」
「え、でも・・・・・・っ!?」
起き上がろうとしていた僕は、目を見開いて驚きを露わにした
言葉を発そうとしていた僕の口は、菊さんの口付けによって塞がれていた
菊さんからされるその行為は二度目だったが、僕を動揺させるには十分なことだった
そして、僕はその後さらに動揺した

「菊さ・・・っ、は・・・んん・・・っ」
再び言葉を発そうとした隙間から、温かみを帯びたものが口内へ入ってくる
初めて感じるその感触に、僕はなぜか目を開けていられなくなっていた
口内に入ってきたものの動きはとてもゆっくりとしていて、まるで僕を怯えさせないようにしているかのようだった
それはやんわりと僕の舌に触れ、心音を高鳴らせる要因となった
僕は一瞬身を固くしたが、焦りのないその動作に慣れていったのか、だんだんと緊張が解けてゆくようだった
僕が強張らせていた身を少し弛緩させると、口内にあるものが新たな動きを見せた

「・・・ん・・・は、っ・・・ぁ」
舌が、柔らかなものに絡め取られる感触がする
思わず身震いしてしまうようなその感触に、僕は声を抑えることができなかった
体から力が抜けて行き、体が熱くなってゆく
その深い口付けが終わる頃には、僕は完全に菊さんを見上げる形になっていた

「き・・・菊さん・・・」
相手の名を呼ぶ僕の声は、少し熱っぽくなっていた


「リンセイ君・・・私は、あなたに触れたい。・・・いいですか?」
その問いに、僕は「はい」と答えるしかなかった
今の菊さんからは、どこか有無を言わさぬ雰囲気がかもし出されていた

僕が返事をすると、すぐに腰元の帯が解かれた
それはこの楽な服装を固定する唯一のもので、それを失った服は自然とはだけた
さっきはこれ以上に露出の高い状態でいたにもかかわらず、今のほうが緊張しているのが不思議だった


菊さんの手が、割れ物を触るような慎重な手つきではだけた肌を撫でる
そこから心音が伝わっているのではないかというほど、僕の鼓動は強い
肌を撫でられているだけなのに、僕は頬が紅潮するのを感じていた
菊さんは菊さんで緊張しているのか、頬に赤みがさしていた

僕の肌を一撫でし終わると、中途半端にはだけている寝具は取り払われた
もちろん恥じらいはあったが、ただじっと菊さんの行動を見ていた
僕はもう、菊さんに完全に身を委ねていた
しかし、下着に手がかけられたとき、僕は制止の言葉を発した

「ま、待って下さい。・・・僕、菊さんの肌が・・・見たいです」
菊さんは、まだ腰元の帯すら解いていない
それが僕はじれったかったので、思い切って遠回しに頼んだ

「わかりました。それでは、私が先に脱ぎます」
意外なことに、菊さんはさほど恥じらう様子もなくそう言った
菊さんも、覚悟を決めてこの行為に及んだのだと思った
自分が戸惑ったり、恥じらったりすれば、相手を不安にさせてしまう
そう気遣ってくれているのかもしれない
菊さんは戸惑うことなく自分の帯を解き、身につけていた寝具を床へ落とした

「菊さん・・・」
思わず、僕は感嘆を込めて名を呼んだ
最初に目にしたときから、綺麗だと感じていた姿が目の前にある
僕はその白い肌に触れたくて仕方がなくなり、手を伸ばした
そうやって僕が触れたがっていることを察してくれたのか、菊さんは姿勢を低くした
そして、お互いの肌が重なり合った
菊さんの素肌の感触を、その体温を鮮明に感じ、僕は胸が温かくなった
僕は菊さんの背に両腕をまわし、引き寄せるようにして抱きしめた
これだけで、言い表せないほどの幸福感が僕に溢れていた

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