ヘタリア 番外イタリア編#2

―さらなる告白―

僕がイタリアの家に滞在するようになってから三日後
突然、イタリアが部屋に飛び込んできた

「リンセイ、今からテーマパーク行こ〜!」
そう言いつつ、イタリアは手に持っていた一枚のチラシを僕に見せた
そこには、とあるテーマパークがリニューアルオープンしたということが書かれていた

「・・・イタリア、テーマパークって、どういった所なんだ?」
テーマパーク、と言われても、僕にはぴんとこなかった
そんな質問が意外だったのか、イタリアは驚いたような表情をした
「人がたくさんいて、にぎやかで、おっきな乗り物がたくさんある楽しいとこだよ〜」

「楽しいとこ・・・か」
自国にはそんな娯楽施設はないし、わざわざ他国のテーマパークとやらを訪れたこともない
その場所は、僕にとって未知の場所だった


「いいよ。行こうか」
僕はその未知の場所に興味を抱き、すぐに答えた
視察に来ているわけではないのだから、折角ならその場所で楽しんでみたかった

「やった〜。ね、早く行こ!」
イタリアは嬉しそうに、僕の手を引っ張った
子供っぽいそんなイタリアの様子を見ると、僕の頬にはなぜか柔らかな笑みがこぼれていた




イタリアに連れてこられた場所は、とても華やかなところだった
まず目に入ったのは、目立つ色がふんだんに使われた巨大な門
そして、どこを見てもひしめいている大勢の人
その中には、親子連れや男女の組み合わせが多いように見えた
他国に侵攻するとき以上に多い人だかりに、僕は驚いていた

「リンセイは、テーマパークって来るの初めてなんだよね」
「ああ。こんなに華やかな場所、来たことない」
娯楽の場所といえばあの草原くらいだった僕が、こんなににぎやかな場所に訪れるはずもなかった
でも今はイタリアがいるからか、早く中へ入ってみたいという思いが膨らんできていた

「じゃあ、俺が楽しい乗り物紹介するよ〜」
イタリアは僕の手を引き、意気揚々と門の中へ入った




中へ入ると、イタリアは早速長蛇の列に並んだ
この先には何があるのかと尋ねたら、「ジェットコースターだよ」という、聞きなれない単語が帰ってきた
それは何なのかと尋ねようとしたとき、けたたましい機械音と共に人々の悲鳴が聞こえた
僕は何事かと、とっさに周囲を見回した

「大丈夫だよリンセイ。あれは、ああやって怖いのを楽しむ乗り物だから」
そう言って、イタリアが指差した方向のは、長い機械に乗って叫んでいる人々だった

「楽しいのに、怖いのか?」
「うん。でも、人気あるんだ」
僕は、恐怖を楽しむなんてこと、理解できなかった
そもそも、なぜわざわざ自ら恐怖を求めるのか、ということがわからなかった

「次は俺たちの番だよ」
長蛇の列は意外と早いペースで進み、いつの間にか順番がまわってきていた
僕はイタリアの隣に座り、機械に乗り込んで体を固定するバーを下げた
するとほどなくして、ゆっくりと機械が進み始めた

「うわ〜、どきどきするな〜」
そう言っているものの、イタリアに緊張している様子は見られなかった
機械はしばらく、斜面を登って行った
そして頂点に着く前に、イタリアがふいに僕の手を握った
何だろうかと思い僕が隣を向いた瞬間、一気に重力がかかった

「うわっ」
突風が吹き、機械がさっきとは比べ物にならないくらい早いスピードで路線の上を走ってゆく

「ぴゃあぁー!」
隣でイタリアが奇声を発し、僕の手を強く握った
めまぐるしく通り過ぎてゆく景色を見るので精一杯だった僕は、イタリアを気にかけていられなかった
機械はスピードを上げ、どんどん加速してゆく
大きなカーブを曲がるたびに、女性の甲高い叫び声に混じってイタリアの奇声が聞こえてきてくる
僕は叫びはしなかったものの、その速さに圧倒されていた
しかしその疾走感は、悪いものではなかった

僕はまだ、叫んでいる人々の心情が理解できないでいた
でも、もしかしたらそれは恐怖で叫んでいるわけではなく、この疾走感に興奮して叫んでいるのかもしれないと思った
もっとも、イタリアは恐怖の内から叫んでいるように見えるけれど
そんな恐怖を少しでも和らげてあげようと、僕からもイタリアの手を握り返した
するとイタリアは一瞬微笑みみを見せたが、カーブにさしかかったせいですぐに同じ奇声を発した
僕はイタリアのそんな様子がおかしくて、頬を緩ませていた




その、ジェットコースターという乗り物から下りたとき
さっきの奇声はどこへ行ったのか、イタリアはいつもの調子に戻っていた

「あ〜楽しかった。それじゃ、次の乗り物は〜」
どう見ても怖がっているようにしか見えなかったが、そこは言わないでおいた
僕は、滅多に感じられない疾走感に楽しさを覚えていた


それから、僕は色んな乗り物を紹介して、体験させてもらった
高い所から景色を見下ろして楽しむ乗り物
はたまた、高い所から急降下する乗り物
そして巨大な船に乗り、激しく揺さぶられる乗り物
他にもたくさんの個所をまわり、僕はこれらの乗り物は、日常生活では滅多に体験できない事を体験して楽しむのだということがわかってきた
少し退屈するものもあったが、何よりイタリアが楽しそうにしていた

僕は、無邪気にはしゃいでいるイタリアを見ることが、楽しかった
本心から喜び、楽しんでいる
そんな笑顔を見るたびに、僕もつられて笑ってしまっていた
ここは、共に来た者の、楽しそうな笑顔を見て楽しむ場所でもあるのかもしれないと思った
そして陽が落ちるまで歩き回り、周囲が暗くなった頃には流石に疲れていた

「リンセイ。今日はもう疲れちゃったし、テーマパークにあるホテルに泊っていこ〜」
「ここには、泊まるところまであるのか・・・」
何だか娯楽を徹底しているようで、僕は感心した
僕はイタリアに案内され、そのホテルへ移動した

NEXT