ヘタリア 番外イタリア編#4(伊攻めver)

―告白の返事―

僕は、指輪を前にしてしばらく考えていた
本当にどちらでもいいという思いがあったから、葛藤ではなかったが迷っていた

少し間を置き、そして僕は答えを出した
僕はイタリアに、ゆっくりとした動作で左手を差し出した

イタリアは優しく微笑み、指輪を手に取った
そして、僕の手を下から持ち上げるようにして支え、その薬指にそっと指輪をはめた
僕がこうして指輪を受け取る側になるなんて、少し妙な感覚があった

だが、それは決して嫌悪するものではなかった
僕は手を引き、自分の指にはめられた指輪をまじまじと見た
すると、なぜか自然と頬が緩んでいるのを感じた


一晩だけの花嫁
それを滑稽だと思って微笑んだのか、それとも、まんざらでもないと思ったのかもしれなかった
イタリアは、まるで女性をエスコートするかのように優しく僕の手を取った
そのときのイタリアの表情は、また大人びて見えていた
そんな表情を見たとたん、僕は胸が温かくなるのを感じた
僕はイタリアの手を握り返し、立ち上がった




「リンセイ、先にお風呂入ってきてもいいよ」
家に着き、イタリアは緊張しているのか、どこか声がぎこちなかった

「わかった。じゃあ、お先に」
そんな緊張を解す言葉は持ち合わせていなかったので、僕はさっさと浴室へ移動した
やはり、相手の身を預かるということにプレッシャーを感じているのかもしれない
逆の立場だったら、僕ももっと緊張していたと思う
僕は、身を委ねる側
緊張感が全くないというわけではなかったが、僕はイタリアを信頼していた
だから、多少痛いことはあるだろうとわかっていても、それは覚悟の内だった

僕は、指輪を受け取ることを選んだ
そのことに、もう何の後悔はない
僕は改めて自分の思いの確認をし、浴室を出た




寝室へ向かうと、イタリアは真剣な顔つきで本を読んでいた
「何を読んでるんだ?」
珍しいことだったので、思わず尋ねた
すると、イタリアは慌てた様子で本を閉じた

「なっ、何でもないよ。俺も、お風呂入ってくるね」
イタリアはなぜか本を持ったまま、小走りで浴室へ移動していった
そのとき、表紙に書かれている文字がちらっと見えた
そこには、「正しい野郎同士でのやり方」と書かれていた
僕は一瞬唖然としたが、必死にそんな本を読んでいるということが、かわいらしく思えた
僕はベッドに寝転んで、イタリアが戻ってくるのを待つことにした
枕元に用意されているティッシュの箱が、これからすることを示しているかのようだった




数十分後、扉が開く音がして、僕は顔を上げた
イタリアは、もう本は持っていなかった
しかし、驚いたことに寝具を身につけていた
未だかつて、イタリアが風呂上りに服を身に着けていたことなんて一度もなかったというのに
今日に限ってなぜだろうかと不思議に思ったが、そんなことを疑問に思う暇はなくなった


これから、事が始まる
寝具を身につけたイタリアが、僕の上に覆い被さってきた

「あ、指輪は外しておいたほうがいいか」
ふとした表紙に肌を傷つけてしまうことを懸念した僕は、そう提案した

「ううん。リンセイが、俺のお嫁さんなんだってこと、感じていたいから・・・」
そう言うと、イタリアは息がかかるほど近くに、顔を近づけてきた


「・・・して、いい・・・?」


耳元で、イタリアが囁いた
主語のない言葉だったが、今の状況なら十分に理解できた
僕は返事のかわりに、軽く微笑んでイタリアの頭を撫でた
僕がそうすると、すぐにイタリアと唇が重なった

深く重ね合わされたものに、もはや動揺も焦燥も覚えなかった
むしろ、その感触が心地良く感じられた
僕はその心地良さから、無意識の内にイタリアの後頭部へ手を添えた
それを合図としたかのように、昨日も感じた感触が、口内へ進んできた


「っ・・ん・・・」
唇を割って入ってきたものを感じ、思わずくぐもった声が発される
少し戸惑っているのか、口内のものはわずかにしか動かなかった
しかし、少し経つとその戸惑いは掻き消えたのか、ふいに舌が絡め取られる感触がした

「ん・・っ、は・・・・」
その感触に、どこから発されているのかわからないような、上ずった声が隙間から漏れ始めた
一旦絡められたものはそのまま離されず、水音をたてながら口内が侵されてゆく
僕は呼吸がままならなくなっていくのと共に、頬が紅潮してゆくのを感じていた


少し苦しくなってきたところで、唇が離された
お互いの口から、細い糸が伝う
それがとても淫猥に見え、僕はそれから目線を逸らした

イタリアは、ぼうっとしているような、はたまたうっとりとしているような表情で僕を見詰めていた
今の僕も、同じような表情をしているのかもしれない
僕は、今の感触を悪くはない、好ましいものだと思っていたから



次に、イタリアは僕の寝具のボタンを外し始めた
その、服を脱がせてもらうという行為が、どことなく恥ずかしかった
ボタンを外し終わると、イタリアは僕の肘を曲げて、袖の部分を脱がした
取り払われた服は、どこかへ放り投げられた
そしてイタリアも自分の寝具のボタンを外し、服を脱ぎ始めた
それなら最初から脱いでくればよかったのにと思った僕は、ふと思いついた疑問を投げかけた

「本に、そうするように書いてあったのか?」
僕は、少しからかうような口調で問い掛けた

「う・・うん。いきなり裸になるのは、ムードがないって・・」
イタリアは恥ずかしそうに、口ごもりながら答えた
僕はくすりと笑って、イタリアの手首を掴んだ
必死にマニュアルに従おうとしている彼が、どこかかわいらしく思えた

「そんなの、自分の好きなようにすればいいんだ。全部本のとおりにする必要はないよ」
風呂上がりに服を身に着けているイタリアは、とても窮屈に見えた
以前は服を着てくれと言っていたのに、今は服を脱いだ方がいいなんて思っている自分がおかしかった

「いいの?俺、窮屈だな〜って思ってたんだ」
そう言うと、イタリアは遠慮なく服を全て抜いた
僕はあまり下の方は見ないようにして、イタリアの顔をじっと見ていた


「じゃあ、リンセイも・・・」
イタリアが、僕のズボンに手をかけた
寝具には楽な服を選んでいたので、それはあっさりと下ろされた


とたんに、心臓が跳ねた
風呂場でもないのに、僕はイタリアの目の前で布一枚身につけない状態になろうとしている
体に触れられる前からこんなに心音を高鳴らせていては、この後どうなってしまうのか少し不安になった
だけど、僕は全てをイタリアに任せようと、そう思っていた
そして、慎重な手付きで下着が取り払われた


「・・・っ」
こんな姿は一度も見せたことがなかっただけに、恥じらいは大きかった
僕はたまらず、イタリアから視線を逸らした
ここからは、もういつもしているようなスキンシップでは済まされない
そう思うと、緊張して体が強張ってしまっていた

「リンセイ・・・」
イタリアが僕の名を呼び、そして抱きついてきた
「あ・・・」
その動作はまるで、僕の緊張を察し、それを解してくれているかのようだった

直に、イタリアと肌を重ね合わせている
風呂上がりの温かい温度に僕は安心し、体の力がわずかに抜けた
イタリアが体を離してしまうのが、名残惜しかった

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