NO.6 短編、誘惑
(誘いの続きです。前半はネズミ受けですので御注意)



ネズミに触れてから、数日後
あれから、流星はネズミの家に行かなくなっていた
しかし、今はネズミが流星の家に居る

仕方のないことだった
街を歩いていたら、流星は偶然にもネズミに出くわした
流星は何か話しかけられる前に立ち去ろうと思った
だが、そこへタイミング悪く大雨が降ってきた
そこからは流星の家のほうが近かったので、二人ともそこへ避難した

そして、今に至る
流石にネズミを大雨の中へほっぽり出すのは気が咎めた
だから今、濡れた体を温めるためにシャワーを貸している
流星は壁によりかかって、ネズミが出て来るのを待っていた



しばらくして、水音が止まった
そしてほどなくして、ネズミが出てきた
いつもの服は濡れてしまっていたので、ネズミは流星が貸した服を着ていた

「悪いな、服用意してもらって」
「まあ・・・散々君の家のストーブに世話になったからな。じゃあ、交代だ」
流星はあまり言葉を交わそうとはせず、そそくさと浴室へ移動した
前のように誘いをかけられるのが、怖かった


シャワーを浴びている間、部屋に戻ったらどんな空気が流れてしまうのだろうかと流星は気が気でならなかった
前は、紫苑が来てくれたからよかった
でも、今度誘いをかけられたら、自分の力でそれを拒める自信がない
ネズミに触れて、汚いなんて感覚は微塵たりとも感じなかった

たぶん、自分がネズミのどんなところに触れたとしても、全力で拒否することはしないのだろうなと薄々思っていた
表面上では羞恥が湧き上がってきていても、どこかで触れたいと思っているのかもしれない
そして、あの妖艶な眼差しに誘惑され、その思いは抑制できなくなっていた
紫苑が来てくれなかったら、おそらくネズミの望むまま、行為を続けてしまっていたと思う

今度は、紫苑は来てはくれない
抑制するしかない
そう思っても、やはり確かな自信を得ることはできなかった




着替え終わり、流星が部屋へ戻るとネズミはベッドに横になっていた
眠っているのだろうかと、流星は静かにネズミに近付いた
上から覗き込むと、目を閉じている端正な顔立ちが見えた
だからといって、油断はできない

流星はベッドから離れようとしたが、ふと思った
ネズミが本当に眠っているのだとしたら、起きるまで椅子に座っているのはとても冷たい
かといって、ずっと立っているのも億劫だ
ネズミに先にベッドを占拠された時点で、もう流星は思惑にはまっているようなものだった
流星は仕方なしに、ベッドの空いているスペースに腰かけた
しかし、ネズミは反応しない
本当に、眠っているのだろうか
それでもやはり油断はできないと、流星は警戒心を解かないでいた




それから数十分後
ネズミがわずかに身じろぎ、流星の方を向いた
そして、ゆっくりと目を開いた

「・・・本当に、眠ってたのか」
流星はほっと一息つき、警戒を解いた
いきなり詰め寄られなければ、相手の状況がわかっていれば、誘いを回避することはできる
寝起きのぼんやりとした状況ではしばらく何もできないだろうと、流星は油断した
しかし、その緩和された雰囲気は、見逃されなかった
ネズミは素早く流星の腕を掴み、思い切り引き寄せた

「な・・・」
突然のことに対応できなかった流星は、そのままネズミに覆いかぶさった
そしてすぐに、後頭部を引き寄せられ、言葉を発する箇所が重なった

「んっ・・・んん」
強く重ね合わされたものの感触に、流星はたまらず目を閉じた
ネズミは目を細め、紅潮してゆく流星の様子をじっと見ていた
そして自らの舌を滑り込ませ、流星の口内を蹂躙した

「ん・・・ぅ・・・っ」
丹念に舌を絡ませ、相手から力を奪ってゆく
自分に覆い被さっている流星が体重を少し預けてきたところで、解放した
流星は息を荒げ、とっさに身を起こそうとした
しかしそれは予想されていた行動だったのか、ネズミの腕が首にまわされ阻止された

「詰めが甘いな。今のあんただったら、紫苑にさえ襲われそうだ」
「っ・・・」
また、まんまと騙された
ネズミは最初から眠ってなどいなかった
ずっと、警戒心が消えるのを待っていただけだった
油断してはならない相手に隙を見せてしまった自分が情けなくて、流星は言葉に詰まっていた

「前はいいところで紫苑に邪魔されたけど、今度は逃がさない」
ネズミはまた素早く流星の手を取り、躊躇することなくその手を自分の下肢の服の中へ入れた

「あ・・・っ」
抵抗する間もなく無理矢理に手を誘導され、流星はすぐに以前も触れた柔らかいものを感じた
今度は性急にそれを握り込まされ、そして動かされる

「やっ・・・やめないか、こんなこと・・・」
ネズミの手が動き誘導されるたびに、掌に柔らかなものを感じる
それはネズミに欲を与えるものだと、流星は知っていた

「もうあんなお預けくらうのはごめんだ」
会話をしつつも、ネズミの動きは止まらない
流星は、自分の手の中でネズミのものが変化してゆくのを感じていた

とたんに、羞恥が湧き上がる
ネズミは、最後までさせるつもりだ
しかし最後まで行為を進めたとき、ネズミはどんな表情をするのだろうか
悦に達したとき、どれほど妖艶な瞳をするのだろうか

そんな興味が湧いてきている自分に、戸惑いを感じた
熱っぽくなったネズミの吐息と眼差しが、忘れられないでいる
ああ、もうあのときから捕らわれていたんだ
ネズミという魔に魅入られ、眼差しを向けられたときから、僕はもう―――



ネズミは性急に、自身の手と流星の手を動かし続けた
たまに指を曲げ、自身のものに指を絡ませる

「っ・・・は・・・」
ネズミが、熱っぽい吐息を吐く
そして瞳は、誘いかけるように流星を見詰める
心音が高鳴ってゆく
ネズミだけではなく、流星の音も

「最後は・・・あんたの手だけで・・・」
ネズミが、手を離した
その離した手は、流星をさらに求めるように、首にまわされた

流星の手の中にあるものの感触は、完全に変わっていた
熱く、脈打ち、猛りを解放させようとしている
それは隆起し、服の中で息苦しそうに張っていた

流星は何を考える間もなく、それに触れやすいように障害物となっているものを下げた
相手の衣服を脱がすなんて、そんなことが自分にできるとは思わなかった
けれど今は、まるで操り人形のように、その行動を躊躇うことはなかった

誘いに逆らえない
感化された本能を、抑えきれない
流星は、慎重な手つきで解放したネズミのものを撫でた

「ん、っ・・・は・・・」
ネズミが声を堪え、息だけを吐く
流星は、それがじれったかった
欲に呑まれたとき、ネズミがどんな声を出すのか、聞いてみたい
そんな欲求に突き動かされるかのように、流星はまた手を動かし愛撫した

「ぁ・・・っ・・・」
ネズミから、わずかに上ずった声が漏れる
その声は、耳に焼きつくかのように届く
聞いたことのないようなその声は、本能を刺激した
手の中のものは限界を感じているのか、柔らかいという表現は似合わなくなっていた
そして、流星の手が掴んでいるものをふいに強く刺激したとき
ネズミは片方の手を、自分のものの切っ先にあてがった

「っ、は・・・ぁ・・・あ―――!」
ネズミは、流星が聞いたことのないほど甘い声を発し、そして悦に呑まれた
脈打ったものは欲を抑えきることができず、液を散布させた
そのほとんどは、ネズミの手におさまっていった

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