誘惑、中編


ネズミはゆっくりと、肩で息をしている
悦に浸っているのか、その視線はぼんやりと流星を見ていた
そして流星には、ネズミのそんな目が魅力的に見えていた
その瞬間に、強く惹かれていた
流星は、今までにない感情が湧き上がってくるのを感じていた

「ネズミ・・・」
愛しい者へ向けるような、優しい声でその名を呼ぶ
そして、そっと顔を近付け、口付けた
この行為を一回するだけでも羞恥を感じていた自分からは、信じられない行動だった
だが今は、引き寄せられるように唇を重ねていた
衝動的に、口付けたいと、そう思った
それは、相手を労わるような軽い口付けだった
それだけでも、流星は自分の胸の内がじんわりと温かくなるのを感じていた


一旦重ねていた個所を離すと、今度はネズミの方から流星を引き寄せ、甘えるように再び口付ける
軽い重ね合いが何回も繰り返され、流星もそれに答えた
自分に注がれている眼差しに見惚れ、抑制心が麻痺しているようだった
その行為の最中、ふいにネズミが首にまわしていた手を離した
そして体を起こすと、流星の体を押し、立場を逆転させた

「今度は、あんたの番だ・・・。ちゃんと、満足させてやる」
ネズミの目から悦に浸っていた眼差しは消え、今は獲物を捕らえたような高揚感を含んでいるものになっていた

「えっ、ま、まだするのか」
ここで終わりだと思っていた行為の続きに、流星は動揺した

「このままじゃ、あんたもおさまりがつかないだろ?」
流星は身の危険を感じたが、今更抵抗しても無駄なことだとわかっていた
今の自分は、心音の高鳴りがおさまらないでいる
そのせいか不思議と、ネズミの行為を拒む気にはならなかった
その気が変わらない内に行為を進めようと思ったのか、ネズミは先に流星の下肢を覆っているものを全て取り去った
下半身が一気に外気にさらされ、流星はわずかに身震いした

「今日は潤滑液があるから、早く慣れるかもな・・・」
ネズミは自分の液で濡れた指を、ゆっくりと流星の中へ埋めた

「ひ、っぁ」
粘液質な感触に、流星は一瞬怯んだような声を発した
その液で指の動きは滑らかになり、慣れるのを待たずに奥へ進められていった

「ぅ・・・ん・・・っ」
液と共に、奥へと指が入ってゆく
その感触はいっそう心音を激しくし、熱を上昇させるものだった
ネズミが指を軽く曲げると、流星は短い喘ぎを漏らした

「どう・・・?おれの液の感触、満足いただけますか・・・?」
そう尋ねつつネズミは指を二本増やし、早急に中を慣らしていった

「あっ・・・!ん、ぁ・・・」
急に中を開かれ、流星は上ずった声を発した
液の感触と指の刺激は一気に増え、荒くなる息を抑えきれない
ネズミが中で指を動かすたびに、液が絡み合う淫猥な音が耳について仕方がなかった

流石に狭いのか、指の動きは鈍いものになる
しかし、奥で少し擦れ合うだけでも、それは悦を与える感覚となった
そろそろいいかとネズミが指を抜くと、そこにはネズミのものだけではない液が絡みついていた
ネズミはその液を自身のものに絡め、そして指を入れていた敏感な箇所へあてがった
それは、先の行為もあって濡れていた
流星はこの行為独特の痛みに耐えうるべく、身を固くした

「ナイト、そんなにお力を入れないでください。すぐに、悦楽へと導いて差し上げますから・・・」
緊張を解かせるためか、ネズミがうやうやしい口調で言う

「恥ずかしい・・・ことを・・・っ」
だが、流星からはわずかに肩の力が抜けていた
その緩和した雰囲気を感じ取り、ネズミは弛緩した流星の中へ自身のものを進めた

「あぁ・・・!ぅ・・・っ、ぁ・・・」
最初に高い声が上がり、堪えるように声が小さくなる
絡んだ液は淫猥な感触を与えながら、中のものの動きを滑らかにしてゆく
身震いするような悦の感触に、流星は上ずった声をあげた
一旦奥まで入れると、すぐに直前まで引き抜き、再び奥まで動作を進める
動きを滑らかにする液があるからか、その動作はほどなくして激しさを増していった

「は、あぅ・・・っ、あ・・・!」
激しさを増したネズミの動きに、流星の声は熱を帯びた
寒いはずの部屋の温度が気にならなくなるほど、体が熱く、息が荒くなってゆく
抗うことのできない欲に、突き動かされてゆく
ネズミに奥を犯されると、流星はもう声を抑えられなかった

「ネズミ・・・っ、もう・・・!」
荒い息の中、限界が近いことを流星は訴えた

「ああ・・・。今度はおれから捧げましょう。ナイトから賜った以上の熱も、欲も、すべて・・・」
うやうやしい言葉とは裏腹に、動きはいっそう激しさを増した
引き抜く直前で止め、一気に奥まで自身を進める
激しく突き動かす欲に任せた行為に流星は体を震わせ、そして喘いだ

「ぁあっ・・・!は、あ、ぁ・・・っ、ぁあ―――!」
最奥を突き動かされ、流星は果てた

「ん・・・は、あっ―――」
内部が収縮し、自身のものが締め付けられ、ネズミは二度目の精を放った
放たれた熱い液は流星の中へ注がれ、粘液質な感触を残した

「っ・・・ぅ・・・」
自分の中に流れてきた液に、流星は短く呻いた
嫌なものではないのだが、慣れない感触に戸惑っていた
ネズミが自身を引き抜くと、お互いは大きく息を吐いた
だが流星の中に残る熱と感触は、まだ相手を感じていることを錯覚させるようだった

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